表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
228/242

動物や物の事を『人』って呼ぶ人っていますよねw


その人達には、この世界がどんな世界に見えているのだろうか?

 

 突如として現れ、目の止まらない速さでベロを伸ばし、ナツをくわえ込んだ巨大な蛙。


 その蛙の口から出ているナツの足は、ジタバタと元気そうなので、死んではいない様子だ。その事に一安心する元気と露死南無天。


「と、取り敢えず俺が魔法で蛙を抑えるから、露死南無天はナツの救助を頼む!」


「うむ!解ったで御座る!」


 二人は頷き合うと、すぐさま行動を開始。元気が巨大蛙の四肢を魔法の鎖で拘束すると露死南無天が駆け出し、ナツの足を口で引っ張り。素速く引きずり出した。


「ぶびゃぁあああぁぁ!!!ろ、ろじなんで~!!!」


「ナツ!しっかりと拙者の背中に捕まるで御座る!」


「わがっだ!」


 ポーンと蛙の口から飛び出たナツが、大泣きしながら露死南無天に落下する。それを背中でベチョリと露死南無天は受け止めた。


「ぐあ!?ベチョベチョで生臭いで御座る!!!……せ、拙者の口の中もこんな臭いがするので御座るか?」


「……もっどぐざい……」


「マジで御座るか……ショックで御座る……」


 ナツを乗せた露死南無天は蛙から離れ、背中のナツのヨダレを水魔法でサッと洗い。お湯の中にドボンと放り込んだ。


 湯船の中でしゃくり上げるナツを見て、何だかんだ言ってもまだ子供なのだなっと思う元気。ナツを守る為に前に立ち。拘束中の蛙と向き合う。


「して、この蛙……どうするで御座るか?」


「このまま永遠に拘束するってのもアリだけど……おわ!?」


 ビュンと高速で伸びて来た蛙のベロを、咄嗟に造った魔法防壁で弾く元気。バキン!と弾かれた蛙のベロはそのまま岩肌へと衝突した。


「な、何と言う威力と速さか……。大砲で撃たれたかの様に岩肌が粉々で御座る……」


「生身で受けたら即死かもな……」


 ガラガラと砕け落ちる岩肌を見て、息を呑む元気達。元気と露死南無天は死なないだろうが、ナツに当たれば本当に即死してしまう。


「か、蛙の中はもう嫌だぞ!し、死ぬのも嫌だ!」


「こ、こら!解ったから!タオルを引っ張るな!」


「……解った……引っ張らないから……ひっく……。あれ何とかしろ元気……」


 元気の腰タオルを両手で引っ張りながら、ニヤリと脅迫を始めるナツ。


「お前……。本当に……蛙に喰わせてやろうか……。うおぉ!危な!?」


「元気!油断するなで御座る!ナツも元気を揶揄からかうのは、戦闘が終わってからにするで御座る」


「うん……わかった……。スススン……」


 露死南無天の言う事に、素直に従うナツ。どうやら、彼女の中で優劣のが決まった様だ。


「コイツ俺を揶揄ってるつもりだったのかよ……ガキの癖に生意気な……」


「ガキって言うな。粗ちん」


「こ、コイツ!もう許さ……うぎゃ!?」


 元気がナツの発言に怒り。振り向いた瞬間だった。元気に蛙のベロが直撃。


 ドスン!っという大きな音と衝撃と共に岩肌まで吹っ飛ばされた元気はそのまま、崩れ落ちて来た岩の下敷きになってしまった。


「元気のヤツ油断しおってからに……。ナツ!拙者の後ろへあぁああぁぁぁああぁぁ!!!」


「ろ、露死南無天ぇぇえぇぇ!!!」


 ナツが急いで露死南無天の背後に隠れようとした瞬間。露死南無天もベロで吹っ飛ばされ。天高く飛んで行った。


 これは露死南無天が油断していた訳では無く、純粋なレベル差。露死南無天のスピードを蛙のスピードが遥に超えているのである。


「ひいぃぃぃ……。く、来るな!」


 檜風呂に一人残されたナツが、のっしのっしと近付いて来る巨大蛙から後ろ去るが、元気と露死南無天が飛ばされた事と、食べられた時の恐怖で腰が抜けてしまう。そしてザブンっと風呂の中に座り込み、動けなくなってしまった。


 もうダメだ……そう思うと、身体がブルブルと震え奥歯がカチカチと甲高い音を鳴らす。


 見上げなければいけない程に近付いた蛙の口がパックリと開き、長いベロがナツの身体にベロリと触れる。その感触と恐怖に、とうとうナツはお漏らしをしてしまった。


「……怪我……もう……無いか?」


「……え?」


 ナツを舐め終わった蛙が、ベロを引っ込めて自分に話し掛けて来た事に驚くナツ。


「……怪我は……もう……無いか?」


「……う、うん……」


「……そうか……。俺の嫁……元気が良い……良かった……。勿体ない。勿体ない……」


「……ひぃ!?」


 巨大蛙が大きな顔を直接近づけて来たので、とうとう食べられると思ったナツ。


 だが蛙はお風呂の水を飲み始めただけで、ナツには何もする気配が無い。


「お、おい蛙。何してるんだ?そんな水を飲んだら汚いぞ……私おしっこしたし……」


「……むしろ……ご褒美……嫁の聖水……旨し……」


「聖水?……お前私の事食べないの?」


「食べ……ない……。もう怪我ない……嫁元気……必要ない……。旨し旨し……」


「そ、そっか……はぁ……良か──」


「──ナツから離れろ!化け蛙!!!」


 ドガン!という音と白い閃光と共に、岸壁まで一瞬で吹っ飛ぶ巨大蛙。ズズン!と岸壁まで飛んで行くと、そのまま地面へ落下し、蛙はひっくり返ってしまった。


「げ、元気!?生きてたのか!?」


「あんなので死ぬか、ミリャナの拳骨の方が数万倍痛いっての。それよりも無事かナツ?」


「う、うん。でも露死南無天がベロに当たって……どっかに飛んで行っちゃった……」


「マジか……。まぁ露死南無天の事だ無事だろう……今は蛙をどうにかしよう……」


 瓦礫の中から這い出し、魔力弾を放ち蛙を吹き飛ばした元気が、再度ナツの前に立つ。今度は油断しないと、ひっくり返ったままの蛙を真剣な様子で見据えた。


 しかし、待てど暮らせど蛙は動く気配が無い。まさか殺してしまったのかと、ちょっと不安になる元気。


「……ま、まさか……し、死んだのか?」


「お、お前!人殺したな!最低だ!」


「ち、違う!俺じゃ無い!俺はやってない!」


「人殺しは皆そう言うんだよ!この変態人殺し!」


「お、お前を助ける為だったんだから仕方が無いだろ!」


「うるせぇ!人殺し!あの人は私の傷を治してくれたんだぞ!」


「何情報だよそれ!?初耳だわ!」


「当たり前だろ!さっき聞いて、今言ったんだから!」


「はぁ?……誰に聞いたんだよ?」


「誰って蛙に決まってるじゃん……。私が嫁で元気だから、もう食べないって」


「はぁ?」


 背中越しに訳の解らない事を言い出すナツに、元気は大混乱だ。


「もういい!あの人が死んでたらお前を私が殺すからな!」


「あ、おい!待てナツ!」


 風呂からザバンと飛び出し、蛙の元に走り出すナツ。急いでその後を追い掛けるが、元気の思考がナツの思考と行動に追い付かない。


「おい!蛙!大丈夫か!蛙!……何だよお前、泣いているのか?どっか痛いのか?死んで無くて良かったよ~」


「ぐふぅ……ぐふふぅ……」


 元気がナツに追い付くと、ひっくり返ったまま、ボロボロと涙を流す蛙の姿があった。


 魔物は元人間なので、取り敢えず蛙が死んで無かった事にホッとする。


「元気!お前のせいで泣いてるんだから何とかしろよな!」


「……わ、解ったよ……。もう本当に敵意は無いみたいだし……」


 元気が蛙にヒールを掛ける間。しきりに蛙に話し掛け、心配するナツ。その姿は純粋な子供なのだが、生意気さが上回ってしまい。元気は素直に評価が出来ない。


「なぁ?何で泣いてるんだ蛙?何かあるなら言えよう……」


「嫁……来た。嬉しい……。俺……デカい……。気持ち……悪い……。世界に……俺必要無い……でも、嫁は来た……。嬉しい……」


「嫁って私か?……私が来て嬉しいのか!そうか……アハハ!」


 人間の魔物化は、自分の心のイメージが強く反映される。鬼となったアリアナは、血を啜る鬼。吸血鬼。シルビアは、子供の頃に母親から聞いた昔話に出て来た伝説の生物ドラゴン。


 海外出身の彼女達が変化した魔物は、どれも外国のお話で伝説となっている怪物だ。


 では、日本出身であるコイツは何なんだ?と元気は思う。何処かにはあるかも知れないが、蛙の怪物の話など聞いた事が無い。忍者が召喚する蛙は思い付くが、あれは怪物であって怪物では無い。


「なぁ。何で蛙の姿なんだ?アンタ日本人だろ?……俺も日本人なんだ……」


「……日本人……。そう……か、なら……解るハズ……。み、醜い者は……怪物……。俺醜い……怪物……。日本怪物いない……。日本人……醜い怪物見つけて……心を殺す……。この世界も一緒……醜い者……。弱い者……皆殺す……。あの娘も……死んだ……」──……


 ……─ポツリポツリとゆっくり喋り出した蛙の話に、静かに聞き入る元気とナツ。


 彼が異世界転移をした後。何故蛙になってしまったのかを語るそのお話しは、とても笑いながら聞ける様な話では無かった……。



喋る蛙に、言葉の足りないナツ。元気の頭の中はてんやわんやです。ナツの言っていた話だけでは全然つじつまが合いませんw


次回。蛙の過去のお話し。1~2話続きます。……この蛙。良いキャラになる予定ですw


少しワロタ! もっと読みたい! 心がピクリと反応した! と思われた方は、ブクマ:評価:いいね等々。よろしくお願い致します。


下の ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。


『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ