香り
自分の事はてんで駄目だけど、人の様子はよく見ている人って居るよねw
ミリャナ達と別れ、山岳地帯を見下ろしながらダンジョンへと進む元気と露死南無天。ナツの気配を捜しながらなのでスピードはゆっくりだ。
「いやぁ。やっぱりミリャナは優しいし。ポタンは良い子だよなぁ~。フフフ。実は俺!頼りになるんだって!いつもはツンツンどころか、ブスリブスリと俺の心を刺して来るポタンが、実はそう思ってたなんて……フフフ。ミリャナももう、怒って無かったし……。勝手に怒り出した俺をもう許してくれてるなんてさ、ミリャナはマジで天使なんじゃ無いかな?いや、天使じゃ無くて女神だな~……。ねぇ?露死南無天聞いてる?」
「……うむ。聞いているで御座る」
「そう?……あ~あ。ミリャナ達と一緒に行きたかったな~、まったく……オウルフェスめ!俺とミリャナを引き離しやがって!絶対に許さんからな!……フフフ。……でさ~。ポタンがね……──」
「……──元気よ……。その話し、もう三十回は聞いたで御座るよ……。嬉しいのは解ったから他の話しをするで御座る……」
「え?そうだっけ?ポタンが褒めてくれるなんて中々無いからさぁ~嬉しくてさ~えへへ……。じゃあ何の話しをしようかな?……あ!じゃぁ!ミリャナがアパート建設の時に皆の先生しててカッコ良かった話しをしようかな!それとも、ミリャナがミリャナピストルを編み出した話しとか?……はぁ……。強くて可愛いとか、流石ミリャナだよな~……早く会いたいな~……。くそ!オウルフェスめ!俺とミリャナを引き離しやがって!絶対に許さんからな!……でさ~……ポタンがさ~……」
何度も同じ話しを繰り返す元気に、辟易する露死南無天。冬美達の家を出てから約三時間。元気はずっとこの調子で、とてもナツ捜索の役に立ちそうに無い。
なので、露死南無天が一人で人が隠れて休憩出来そうな岩陰などに目を凝らす。しかし広大な山岳地帯から、子供一人の痕跡を見つける事は困難で、現状。いなくなったナツについて、何の手掛かりも無かった。
ナツが家を出てから数日。この登り下りの激しい山道を通ったのであれば、そこまで遠くには行っていないと考えられる。いくら神の身体を得ているとは言っても、神は不老不死というだけで、無敵では無い。
なので足を踏み外し、崖下にでも転落していたら、治るまで動けずに空腹のまま過ごさなければいけなくなるのだ。
「……心配で御座るな……」
「だな……。はぁ……。ミリャナ達大丈夫かな~?」
「そっちでは御座らん!ナツの方じゃ!子供一人でこんな所に来ておるのじゃぞ!何かあったらどうするので御座るか!?」
「そ、そんなに怒るなって……。そりゃあ心配だけどさ、その子って行動がフェルミナなんだろ?心配しなくてもすぐに見つかるさ」
「何故そう言えるので御座るか?」
「何も考えて無いフェルミナは、飯も持たずに真っ直ぐ中央に向かうだろ?今回ナツちゃんも一緒で飯が無い。フェルミナの場合は、何でも食うから大丈夫だろうけど……。ナツちゃんはあの家でちゃんとした暮らしをしてた子供だろ?きっと空腹でどっかに倒れてるよ……。まぁ。力はあるみたいだったし、もし鳥やトカゲ型のモンスターを食べていたとしたら中央のダンジョンで会えるはずさ」
「しかし。崖の下へ転落など……」
「どの程度かは解んないけど、腕試しをしたいって言う位だから、運動神経はいいんじゃ無いか?一応。無駄にすばしっこいフェルミナの動きを過去に見てる訳だし……。フェルミナが去って数百年。ナツちゃんは毎日訓練をしてたって言ってたじゃん……」
それでも崖に落ちるのがフェルミナなんだけど……とは言わない元気。アルプス程に広大な山岳地帯の崖の下まで見回っていたら、ナツの発見までに何年かかるか解らない。
彼女を見捨てる様で酷い感じだが、崖下に落下していた場合。自然回復して、彼女が自分で姿を現すのを待つ方が、無作為に探すよりも早いのだ。
「う、うむ……そうじゃな……。日々の鍛錬で基礎は出来ておるじゃろう……。スマン……拙者ちと心配し過ぎなのかも知れん……。怒鳴ってすまなかったで御座る……」
「謝んないでいいよ。まぁ好きな人の子供が居なくなったんだから仕方ないさ」
「な!?何を言っているのだ!?拙者は冬美殿をその様な目では……」
「え?そうなの?……俺はてっきり露死南無天は冬美さんを好きなのかと思ったよ……。残念だな~。冬美さんは露死南無天の事好きそうだったのに……」
「え?……そ、それは……本当で御座るか?」
「うん。露死南無天が死にそうな時何て、泣きながら叫んでたぜ?この人を助けて下さい!って……その後も、露死南無天のヨダレを気にしなかったり。自然と露死南無天の横に座ったりしてさ……」
「た、たまたまで御座ろう?」
「露死南無天のヨダレって超臭いじゃん?なのにホッペをペロッとされた時も、嫌な顔せずに我慢してたろ?あれは間違い無いよ」
「……せ、拙者のヨダレって、そんなに臭いので御座るか?」
「うん。普通に超臭いよ?うんこレベル」
「う、うんこ……。そ、そうか……。それは悪い事をしたで御座るな……」
「うん。でも冬美さんから嫌な気配が出て無かったから……。露死南無天に春が来るかも!って、俺もミリャナも思ったんだけどなぁ……。露死南無天にその気が無いんじゃな~」
「気があるも無いも……こんな老馬に興味を持つ事など……」
「いや……。馬の年齢とか、普通の人には見ても解んないだろ?」
「そ、それもそうで御座るが、流石に馬と人では持つ感情がまったく違うで御座ろ?」
「いやいや。違ったら獣人なんて産まれて無いだろ……」
「ううむ……。じゃが……」
「この人を助けて!って言ってた時点で、冬美さんの中では露死南無天は動物じゃ無いんじゃ無い?」
「ううむ……」
冬美の話しをする内にどんどんと悩み出した露死南無天を見て、脈ありなのを確信する元気。立派な大人でも、色恋沙汰に関しては、自分みたいに思い悩むんだなと解ってちょっと嬉しい。
そんな元気が、悩み出した露死南無天の代わりに山岳を見ていたところ。山岳の岩肌ギリギリの所を進む小さな人影を発見した。
「露死南無天!あれナツちゃんじゃ無いか!……ってかあれだ間違い無い……」
「ハッ!……拙者とした事が見ておらなんだ!……元気!感謝……する……ぞ……。……あ、あの子は一体何をしているので御座るか……?」
「……さ、さぁ……。と、取り敢えず無事見たいだし……保護して本人に聞いてみよう……」
「あ、あぁ。そうじゃな……」
今にも崩れそうな細い道を進みながら、お尻をこちらに向けてちょっとずつ慎重に進む、身体中泥だらけの上に、素っ裸の女の子。
元気達はそんな彼女を驚かせない様に配慮して、ゆっくりと近づき声を掛けた。
「こ、こんにちは~……」
「うひゃぁ!?」
「あ、危ないで御座る!」
驚かせない様に配慮はした物の、元気の声掛けによって、驚いた少女がバランスを崩し宙へと浮く。それをすかさず元気がキャッチ。
「だ、大丈夫かい!?」
「……う、うん……」
「……君は、冬美さん家のナツちゃん?」
「うん……」
元気の問い掛けに、素直に頷きながらも、まだ驚いた様子のナツ。
そんな彼女の無事を確認すると二人はホッとした……次の瞬間。元気達の鼻孔を、おぞましい程の激臭が突き刺した。
「くっさ!?……これ!泥じゃ無くてうんこだ!コイツうんこまみれだ!」
「ど、どおりで臭いはずで御座る!元気!風下に行け!臭いがこっちに来るで御座る!」
「やだね!露死南無天だけ逃げようたってそうはいかないぞ!スッポンポンでうんこ塗りたくって何してんだよ!このうんこ娘!」
「うんこ娘だと!?ぐぬぬ……。煩い!この変態野郎!えい!」
「ぎゃあ!?お、お前!うんこを鼻の中に入れるなって!お馬鹿!」
「お馬鹿はお前だろ!後ろから話し掛けやがって!落ちたらどうするんだよ!」
「お前神様なんだから、落ちても死なないだろ!……おい!だから!鼻の中に指を入れようとするな!このうんこ娘!速攻連れて帰って、冬美さんに説教してもらわなきゃな!」
「え!?……母さん!?……もしかしてもう帰って来たの……?」
うんこ娘と言われて怒っていたナツだったが、冬美の名前を聞いた瞬間。目を見開きピタッと大人しくなった。
どうやら、怒られる事が確定的だとちゃんと悟っている様子だ。
「滅茶苦茶怒ってたぞ~……。あれは相当叱られるだろうな~……ってかマジでくせぇ……。露死南無天、ちょっと崖下に降りよう……このままとか絶対に嫌だ……」
「わ、解ったで御座る……」
「う、馬が喋った!?」
「今頃で御座るか……。落ち着きの無さと行動の読めなさは本当に、フェルミナの様じゃな……」
さっきまで深刻そうな顔をしていたのに、今は露死南無天を見て驚いているナツ。
そんな、コロコロと変わるナツの顔を見ながら、フェルミナの様にはなってくれるなよと深い溜息を吐き、崖下へと元気達を追う露死南無天だった。
早速ナツを発見した元気達。ですが彼女はスッポンポンでウンコまみれw一体何があったのでしょうね?自分も今考え中ですw
次回はどうしてそうなったかです。……どうすれば面白いのか……。
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『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw




