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甘えん坊将軍

知り合いが迷惑を掛けた人に会うのって、何か気まずいよねw



 元気とミリャナがお茶の準備を終えると、冬美の不在中に何があったのかを、子供達に聞く事にした。


「……ナツはあの日、帰って来なくなったお母様を捜して、集落の外へと飛び出して行きました……」


 俯きながらナツの事を話すハル。しかしアキはそんなハルとは対照的で、クッキーを頬張りながら、嬉しそうにしている。


「アキはね!お母様に怒られるよ?ってナツに言ったんよ?でも、この好機逃す物か!って言って笑顔でお家を出てったの!……うわぁ!このお菓子!美味しい~!お茶も美味し~!」


「はぁ……。ハル?アキを庇っていますね?……大まかにでは無くて、詳細に本当の事を言いなさい……」


「……はい。お母様の監視の目が無くなった事と、お母様が帰って来なくなった事を良い事に。昔、フェルミナ様が滞在中に仰っていた。この大陸の中央にある、ダンジョンと言われている場所へと喜び勇んで出て行きました。ナツはどうしても、力試しがしたかった様です。私達だけでは止められませんでした。お母様……ごめんなさい……」


「まったく、あの娘は本当に……。大体の理由は解りました。……ハル、妹を庇うのは良い事ですが、時と場合を選びなさい。貴女が情報をあやふやにしたせいで、もしもナツが死んでしまったらどうするのですか?」


「ご、ごめんなさい……」


 冬美にお説教をされ、涙目になりながら謝るハルを見て、こちらこそごめんなさい。と思う元気達一行。フェルミナと言う名前が出て来た瞬間から、居たたまれない気持ちでいっぱいだ。


「ふ、冬美さん達もフェルミナを知っているのですね~……?」


「えぇ。二百年程前になりましょうか……。ひょっこりと里に現れた彼女に私達は、季節の神の力の事や不思議な力の使い方等を教えて戴きました……。私達も……と言う事は元ちゃん達も彼女の事を?」


「え、えぇ……まぁ……」


「フェルミナ様は、気さくで、おおらかで、良く笑う方でしたね……。それに強くて美人で……」


「そ、そうですね……」


 物は言い様だな。と元気達一行はそう思う。気さくなのも、おおらかで良く笑うのも、彼女は本当に、物事を深く考えていないからだ。


「……そんな、フェルミナ様にハルが憧れるのは、時間の問題でした……」


「あ、憧れちゃったんだ……。フェルミナに……」


「えぇ。元気が取り柄なだけのナツは、フェルミナ様ととても馬が合った様で……。彼女がタダ飯を喰らいながら、ここに居座った二十年間。朝も昼も夜もハルと一緒に騒いで……。フフフ。……ハルと一緒に遊んでくれていたのです……。そんな彼女がやっと旅に出ると言う日にも、一緒に行くと言って泣く程だったんですのよ?」


「……そ、そうなんですね~……。ナツちゃんはその後どうなったんですか……?」


「……フフフ。ご覧の通り。彼女に憧れてしまってから、ナツは少しばかりやんちゃんになってしまいました……。何であんなにお馬鹿な子になって……。ゴホン……口が滑ってしまいましたわね……失礼致しました。……ところで彼女はお元気ですか?」


「は、はい。お陰様で……」


「そうですか……。それは何よりです事……」


 そうは言ったが、ニコリと笑っている冬美の口元が微妙に笑っていない。


 過去に元気も、昼も夜も関係無く遊び回るフェルミナからの騒音被害に、一度あっているので彼女の気持ちが良く解る。フェルミナの出す騒音は、笑い声から始まり。叫び声に家の中を走り回る音や叩く音と……。本当に笑えないレベルなのだ。


 現在。フェルミナやエルフ達の保護者的な立ち位置にいる元気は、冬美に対して本当に申し訳なく思う。騒音ならまだしも、娘がフェルミナ二号となってしまったのだ。心中穏やかでは無いだろう。穏やかでは無いどころか、嵐が吹き荒れていてもおかしくは無い。


「ナツはねぇ、フェルミナ様の事を人生の師匠だ!って言ってね!毎日剣を折ったり投げたりしてた!何の意味があるの?って聞いたら、意味の無い事こそ面白いのだ!だって言ってたよ!面白いけど、意味わかんないよねアハハ!」


「そ、そうだね……アキちゃん。面白いけど……絶対真似しちゃ駄目だかからね?……教えてくれたお礼に……。はい。クッキーおかわりだ!」


「わぁ!やった~!ありがとう元ちゃん!えっとね!……他にはね!……あ!鳥に向かってウンコも投げてた!」


「そ、そっか……。教えてくれてありがとうな……」


「うん!良いよ!」


 笑顔でナツについての補足情報をくれるアキ。そんなアキの発言を聞いて深い溜息を吐く冬美とハル。疑っていた訳では無いが、どうやらアキの言っている事は本当の事らしい。心中お察し出来すぎる元気達一行は、愛想笑うしか出来ない。


 そして、ナツはどうやら本当に、フェルミナ二号なのだと言う共通認識生まれた。


「ま、まぁ!アレじゃな!子供は元気が一番!っと昔から言うで御座るからな!大人になれば、自然と女の子らしくなる……と思うで御座るよ!幼き日の憧れなど一時的な物で御座るからな!ブ、ブルッファハハハ!」


「そ、そうね!私もそう思います!フェ、フェルミナだって今は大人しいですし……きっといつかは……。いつかは……」


「そ、そうだよね!……俺もそう思う!きっといつかは……きっと……」


 ナツがフェルミナに憧れ、フェルミナ二号となってしまったと認識した途端に、申し訳無さが生まれた元気達は、急いで冬美のフォローに入った。


 どんなに絶望的な事があったとしても、希望は絶対に捨ててはイケないのである。


「……あの子がいつか……大人にですか……。私を含め。私達はもう歳を取らないのですけれど……」


「……神になってから数百年。私達の姿は子供のままです……大人にはなれません……。ナツはフェルミナさんに憧れてから二百年……ずっと変わらず……」


「アキはね!このままで良いよ~。美味しい物いっぱい食べられるからね!へへへ!」


「そ、そっか~……ハハハ」


 笑顔のアキにしか返事が出来ない元気。露死南無天とミリャナも同じである。ポタンに関しては、我関せずのスタンスだ。


 何とかなる!大丈夫!と本当は言いたい一同だが、フェルミナがかかわる事にかんしては何の保証も出来ないので、気休めな程度な事はとても言えないのである。


「と、取り敢えずフェルミナの話しはもう良いとして!まずはナツちゃんの捜索をしなきゃじゃ無いかな!な!露死南無天!……まだまだ成長の余地のある子供だし、危険な目にあっているかも知れないからね!な?露死南無天!」


「そ、そうで御座るな!フェルミナがおバカ……。素直でいられるのは、それなりに実力があるからで御座る!……まずは、まだまだ成長の余地のある。素直なナツの安全を確保しなくてはいかんで御座るな!」


 苦しいフォローを一生懸命しながら、全力でフェルミナの話しを終わらせにかかる元気と露死南無天。その様子を見かねたのか、ここでとうとうポタンが口を開いた。


「そう言う事なら……。ダンジョンに行くつもりだったパパと露死南無天が、ダンジョンまでナツ様を捜しに行くのはどうかしら?」


「お、俺と──」


「──拙者が……?……せ、拙者はダンジョンに行くとは一言も……」


「え?露死南無天は、冬美様とそのお子様達に、自分達でナツ様の捜索をさせる気なの?……冬美様はさらわれたばかりだって言うのに……」


「あ、いや。勿論。拙者はナツを捜しに行くで御座るぞ……しかし、ダンジョン観光は……ミリャナ殿が元気と一緒に……」


「ママは私と南の大陸に行くんだから大丈夫よ?観光は終わってからでも行けるし……」


 ポタンの切り返しに、今度は露死南無天では無く元気が反応する。


「で、でも……それは──」


「──まさかパパ!?約束を破って行かせないなんて言う事は無いでしょうね!?ママは自分の力で露死南無天に勝ったんだよ?」


「うぐ……だ、だけど……」


 ミリャナを、危険な所へは絶対に行かせたく無い元気は究極。小さいハエに変身してでも、一緒について行こうと思っていた。


 しかし、ナツの捜索が始まってしまってはミリャナ達に付いて行けない。なので、どうしてもミリャナと一緒にいたい元気は焦る。


「ママ……。自分の欲望の為に嘘を吐く人って……どう思う?」


「……嘘をつく人は……好きく無いわ……」


 そう言って、焦る元気から目を逸らすミリャナ。それを目にした元気は、焦りを通り越してイラッとしてしまう。独りよがりの思いは駄目だと解っていても、やっぱり。自分の気持ちを思いやって欲しいと甘えてしまうのだ。


「……わ、解ったよ!ミリャナは南の大陸にでも何処にでも行けばいいさ!俺はナツちゃんを捜しに逝くんだからね~!困っても助けてあげないから!」


「そ、そうですか~!私を困らせるのはいつも元ちゃんだから、全然構いませんよ~?今回はポタンも一緒だし~!それに、ポタンは私のパンツや太股をジッと覗こうとしないから戦ってても恥ずかしく無いですしね!」


「の、覗いてなんか無いよ!ジッと見てるだけじゃないか!」


「どっちにしろ一緒じゃないの!」


「ぐぬぬぬぬ……!もういいよ!行こう露死南無天!ミリャナの心配なんかよりも、ナツちゃんの方が心配だわ!」


「う、うむ……」


 元気はバッと立ち上がり。露死南無天を引き連れて、出口に通じるふすまを勢い良く開けた後。玄関に向かって歩き出す。かと思われたのだが……。ミリャナを振り返り立ち止まった。


「……じゃぁ!俺!行くからね!」


「はい……」


「本当に行くからね!」


「どうぞ……」


「本当の本当に──」


「──早く行きなさいよね!露死さんが後ろで困ってるでしょ!」


「ぐぬぬ!この!ミリャナのオッパ~イ!!!うわ~ん!!!」


「げ、元気!?待つで御座る!」


 オッパイと叫び泣きながら、玄関へと駆け出した元気を、急いで追い掛ける露死南無天。


 こうして二人はナツの捜索へと向かった。


「うわ~んって……。ママと旅を始めてからパパの甘えが酷くなってない?」


「そう?あんまり変わんない思うけど?……まったく……元ちゃんは、私の事を心配し過ぎなのよ……フフフ」


 時期を見ての口撃によって、元気に完全勝利し、ミリャナを独占出来たポタンだったのだが、元気が去った方を見ながら微笑むミリャナを見て、何だか元気に負けた気分になるポタンなのだった。


ワガママを言いたいだけ言って、泣きながら家を飛び出した元気。二人は初めて、長い時間離れ離れになりそうです。


甘えん坊な元気は、ミリャナロスにどれ位耐えられるのでしょうか?w


次回は元気が出て行ったその後です。


少しワロタ! もっと読みたい! 心がピクリと反応した! と思われた方は、ブクマ:評価:いいね等々。よろしくお願い致します。


下の ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。


『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw



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