想い想われ。
思い合う事ですれ違う想い。
皆が……。特に元ちゃんやポタンが、私に優しくてくれる。それはとてもとても嬉しくて幸せな事。二人が私に優しくしてくれるから、私も同じ位。人に優しく出来るし、毎日めげずに頑張れる。
そしてそんな二人の事を私は心から愛してる。絶対に二人と離れ離れになりたく無い……ずっと心と心で繋がっていたい……。
だから、お願いよ。
私に隠し事をしないで……。
あの日。元ちゃんが死んじゃうって話しを聞いてから、私なりにだけど、元ちゃん達の迷惑にならない様に必死で頑張ったんだから──────……
……──────「この辺りで良かろう……」
遠目に山岳が見える意外には、何も無い平原で向かい合う露死南無天とミリャナ。それを少し離れた場所で見守る元気達。
「……宜しくお願いします!露死さん!……いえ!師匠!」
アルカンハイトダンジョン内部で、ミリャナに戦闘訓練の指導をしていた露死南無天は、当時ミリャナに師匠と呼ばれていた。
それ以来二人は。手合わせを行う時は時は必ず。弟子と師匠として対面している。
「ブルッファハハハ!宜しくで御座る!ミリャナ殿との手合わせは久々じゃからのう!楽しみで御座るな!」
「フフフ……。あれから私も頑張って少しは、強くなってるんだから!……なのに元ちゃん達ったら……」
「……ブルフフフ……。男はいつでも女子を守りたいものなんじゃよ。ミリャナ殿が強かろうと弱かろうと関係ないので御座る……。まぁ。愚痴は後からいくらでも聞くで御座るよ……今は手合わせに集中するで御座る!」
「はい!」
「素直で宜しい。……して、勝敗はどうするで御座るかな……。いつもの通り。拙者の変身能力が切れる十分間勝負で良いで御座るかな?」
「それで大丈夫です。いつもは十分持たなかったけど、今回は一味も二味も違うわよ!」
「ブルッファハハハ!それは楽しみで御座る!では早速……ドロン!……ほう。あの頃よりもはるかにパワーアップしているで御座るな……。信じられぬ程の力で御座る……。能力があの頃の倍以上では御座らんか……」
変化の術で元気に化けた露死南無天は、あまりもの元気の成長ぶりに驚く。それを見たミリャナは、心の中でホッと一息ついて安心した。
姿も能力も元気なのであれば、本気で戦ったとしても死ぬ恐れが無いからだ。
「では師匠!行きます!」
「うむ!参れ!……む!?」
露死南無天が参れ!と言った瞬間に、フッとミリャナの姿が消えた。
素速く目だけを動かしミリャナの姿を探すが、何処にも見当たらない。これは、瞬間移動か?と露死南無天が思った時だった。
影一つが、自分の元へと上空から降りて来るのが視界に映った。
「上で御座るか!」
降ってくる影のあまりものスピードに、上空を確認する暇が無いと悟った露死南無天は、瞬時に後方へと飛び退き、その場から離脱した。
すると、回避した露死南無天の目の前を、上から下へと黄色い閃光がビュン!っと走っって行った。
もうあとコンマ秒遅かったら、直撃だった。と露死南無天が思ったその次の瞬間。ズゴン!っと言う鈍い音と共に、蜘蛛の巣の様な形に成り上がった地面が、十メートル四方程。一瞬にしてめり込んだ。
こんな物が直撃したら、魔法防壁を張った元気の身体でも、ひとたまりも無い。
上空からミリャナが魔法でも撃ったのか?と上空を見上げる露死南無天だったが、上空にもミリャナの姿は無かった。
急いで姿を見つけねば!と露死南無天が地面に着地した瞬間。彼の耳元でピュン。っと言う鋭い音が鳴った。
「当たったら痛いわよ!師匠!避けてね!」
先程黄色い閃光が落ちた場所でモクモクと上がる、濃い土煙の中から、ミリャナの声が聞こえる。さっきの閃光はミリャナか!?っと露死南無天が驚いた瞬間。驚く余裕も無いほどに次々と、露死南無天に向かって何かがピュンピュンと飛んできた。
音は鋭く小さい音だが、飛んでくる物は人の顔程に大きい。その速さからして、直撃したら即死してしまう魔法の類いだろう。と当たりを付けた露死南無天は、音の軌道を読んで、暫くは回避に専念する事にした。
魔力の少ないミリャナが魔法を使って戦っている事には驚きであるが、こんな上位魔法を連発していては、魔力が持つまい。魔力が切れた時が反撃のチャンスだ。と露死南無天はそう考えたのだ。
だがしかし。土煙が消え、割れた地面に佇むミリャナの姿を見て露死南無天は考えを改め無ければいけない事に気づいた。
瓦礫の中心に膝をつくミリャナが露死南無天に向かって放っている物。それは砕けたただの石だったからだ。
「な!?こ、これは石つぶてで御座ったか!?」
「………………。そ、そうです!」
これには元気が『ミリャナピストル』と命名しているが、自分の名前が入っているので、その技名をあまり自分から宣言したく無い。
技の名前を恥ずかしがる余裕のあるミリャナに対して、露死南無天はミリャナピストルを避けるだけで必死の状態だ。
戦闘開始から、まだ一分程しか時間は立っていないハズなのに、既に命の危険を感じている露死南無天は、数時間もの時間が経ったような感覚と疲労に襲われている。
音速を超える速さで飛んでくる無数の石を高速で避けなければいけないのだから、当然と言えば当然。時々石を握り潰して散弾させて投げてくる辺りが、相当たちが悪い。それが来ると大きな動作で避ける必要があるのだ。
ポタンがそれを頷きながら見ているので、きっとポタンの入れ知恵だろう。ポタンが他にも何か入れ知恵をしているかも知れないと考えると、露死南無天はゾッとしてしまう。
「……ミリャナ殿相手にあまりこう言う手は使いたく無かったのだが……。これはもう仕方あるまい……手加減が出来るレベルでは無い……」
「……!?」
ミリャナが石を投げる先から忽然と姿を消した露死南無天。それを見たミリャナは瞬間移動だ!と一瞬で気付き、急いで警戒態勢に入った。
ミリャナは魔力が少ない。なので魔力を使わない事でフェアになると露死南無天は考えていたのだが、今はそれどころの話しでは無い。手加減などしていたら普通に負けてしまいそうなのだ。
下手したら、石が直撃して死ぬ。
「許せミリャナ殿……」
ミリャナの背後に瞬間移動した露死南無天が、ミリャナの後ろ首元に向かって手刀を放つ。ミリャナが何か変な事を行う前に、気絶させて終わらせようと言う魂胆だった。
「一……二……。えい!」
「うがぁ!?」
「ひえっ!?ほ、本当に……当たったわ!……えい!」
「ぎやぁあああぁぁあぁ!!!」
しかし、その計画は見事に失敗。瞬間移動してきた露死南無天にどうやってか、ミリャナが裏拳を喰らわせたのだ。
そして、地面にしゃがんでいたミリャナの裏拳は、丁度良く彼の大事な所に見事にヒットした。
その衝撃で膝をついてしまった露死南無天の頭が丁度目の前に来たミリャナは、すかさずに追撃。思いっきり拳骨を喰らわせた。
瞬間移動は消えてから出るまで三秒と、手合わせの前にポタンから聞いていたミリャナは、露死南無天の移動先を先読みしたのしたのだ。
不意打ちを行うハズだったのに、見事なカウンターを受けてしまった露死南無天は、痛みと苦しみで地面の上を転げ回事しか出来ない。
「師匠!降参しなければ後ろから、あ、あれを全力で蹴り上げます!」
「こ、降参じゃ!流石にそうされては死んでしまうで御座る!」
「ママ!凄いわ!やった!」
「手合わせ!ありがとう御座いました!……あ、あの……大丈夫?露死さん?」
「こ、これは無理で御座る……。は、早く元気を……。うぐぐ……」
露死南無天に勝利したミリャナに、ポタンを先頭に元気達が駆け寄る。
ポタンは笑顔だが、まさか勝つとは思っていなかった元気と、好意をよせている露死南無天をボコボコにされた冬美。それと、男がタマタマをやられると、本当に痛いと言う事を、つい最近覚えたミリャナは複雑な心境で、三人とも少し笑顔が引き攣ってしまっている。
しかし今は複雑な心境の整理よりも、苦しんでいる露死南無天の治療が先決だと判断した元気は、急いで露死南無天にヒールを掛けた。
「か、かたじけない……」
「い、いや……いいから。出来るだけじっとしてて……」
「が、頑張るで御座る……」
持って行かれる魔力の量で解るのだが、露死南無天の玉が二つとも砕けている……。
その事に気付いた元気は、これはもうミリャナが南の大陸に行く事を止められないなと、じっと動かないように痛みと苦しみを堪える。露死南無天が化けた自分の姿を見ながら、そう思うのであった。
実はアイリスとケンカしていたあの日に、元気が死ぬ事を聞いてしまっていたミリャナ。色々と積極的だった事も、強さに対して貪欲になっていた事も全部元気の為でした。
大事にされるだけ。と言うのも歯痒い物なのでしょうねw
次回は、作戦会議かな?多分w
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『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw




