それぞれのお仕事~ミール~
久々のミール視点です。彼は彼なりにお仕事をちゃんと頑張ってます!
ヴァイドのおっさんの紹介によって商業ギルドで働き始めた俺は、ここ2年の内に商売の才能をメキメキと伸ばし、現在ギルドの一幹部として働いている。そんな俺が働いている部署は交渉人部隊だ。
小さな頃からアルトと一緒に、闇商人のおっさん相手に窃盗品を売りつけ、散々足元を見られ値切られて来た俺にとって、正規のルートでの取引と言うのはとてもぬるいものだった。
しかし人間同士での取引は、レートに乗っての取引を行うだけだからいいのだが、最近は元気達のせいで外国との取引が増えている。そのお蔭で人間同士でしか取引をして来なかった商業ギルドの商人達は日夜てんてこ舞い。なんせギルドの連中が今まで頼りにして来た基本となるレートが無いのだから、当たり前の事なのだろうと思う。思うが、元々レートなんて物を気にしていない俺にとっては、何の問題も無かった。
なので、そんな外国との取引を積極的に俺が引き受ける事によって今の地位を築いたのだ。
まぁ。商人達の実力が低く、俺の実力で上り詰めてやったぜ!的な事を偉そうに言ってみたけど、その実。こっちにはこっちでポタン式の裏ルートがあるだけなんだけどな。
『新しい物は適正価格で売らなきゃ市場が狂っちゃうから……何処かの国と交渉する時は必ず私に相談してね……じゃないと、全部の責任をミールに取って貰うからね。フフフ』
『はぁ?働き始めたばかりで金無しの俺に、外交での損害賠償なんか出来るわけがないだろ?借金しか無い元ニートをなめんなよ?』
『大丈夫よ?このまま行けば、ミールの生涯収入は結構な額になるはずだから……一度二度くらいの失敗なら、ちゃんと三食のご飯くらいは食べられるはず。私はエルフだし、基本死なないから……。ミールが餓死して死にそうな時は、返済を待ってあげるね。フフフ』
『うぜぇ……。失敗する前提で話をすんなよな……』
『まぁ、お城で、礼儀作法を頑張ってるアルトの為にも、お仕事頑張ってね!ミールお兄ちゃん!フフフ』
ポタンはそう言って最後にこやかに笑っていたが、目が笑っていなかった為。俺が何かやらかしたら、アイツは遠慮無く利益の損害金を請求してくるだろう。なので外国と交渉する時は、毎回アイツに相談している。大金貨がポンポン動く外商の責任なんか俺に取れるはずも無いからな。能天気なアルトは、俺に借金が出来たとしても、しょうがないなぁ。とか言って笑うだろうけど、アイツと一緒になってからも、借金生活を続けるというのは流石にあり得ない。
そんな事を考えながら、日々ポタンの指示通りに動いていたら、あれよあれよと商談が面白い様にまとまり。大金の動く商談になど行きたく無かった商人達の間で、俺の評価がどんどんと上がって行った。
そしてそんな奴等の代わりに、俺が外国と交渉を行い。どんどんと身代わり出世して行った結果が、現在俺が座っている。商人ギルド幹部の椅子と言う訳だ。
本当にポタンの奴、とんだスーパーベイビーだぜ……。まぁ今はもうベイビーじゃ無くて、幼女なんだけどな……。どっちにしろ、アイツは怒らせたり。敵には回す事はしない方が良いだろう。こちらが何もしなければ、姉さんに甘えるだけのただの子供だからな。さわらぬ神に祟りなしだ。
さてと……。長い自分語りもそろそろ終わりにして、現在目の前にある問題に取り掛かろうと思うんだけど、どうしたものか……。依頼主である元気の言っていた通りこの子。巨乳で可愛い顔をしているんだけど、発言がとてもヤバいと思う。その発言のせいで、せっかくのおっぱいに少ししかときめけないし。とても危ない香りしかしない。えっと確か……。新孤児院長のハーディだっけ?この人さっきから、姉さんの話しかしないんだけど……大丈夫か?
「この孤児院に必要な物ですか?それは、ミリャナちゃんです……。えっとミールさんは、ミリャナちゃんの弟さんなのですよね?……。あのいきなりなのですが……。私と結婚いたしませんか?」
「いや、間に合ってます……」
「そうですか……では、妾や愛人としてはどうでしょうか?私ってそこそこ可愛いですけれど?そういう行為はあまり好きではありませんが、ミリャナちゃんの為であれば、この身を貴方に捧げても構いません……」
「いや、結構です……」
「そうですか……」
最初の内は、この人特有の冗談か何かかな?と思っていたが、目が本気過ぎて向かい合っているのが少し怖い。ここは書斎か何か解らんけど、この人と狭い部屋の中で二人きりになったのは、間違いだったかもしれない。こんなの仕事じゃ無ければ既に危険回避している所だ。
「今日は商談に来ているので、商売の話を……」
「商売ですか?……ミリャナちゃんて……おいくらかしら?……ミリャナちゃんの為なら、この孤児院……売っちゃって良いわよね?」
「ダメだろ!」
「ひゃ!?すいませんすいません!怒らないで下さい!」
「あ、すいません!つい……」
やべぇ。失敗した。言う事がおバカ過ぎてついつい突っ込んでしまった!ってか、椅子の下に隠れるって……。ただの突っ込みに対して異常に反応しすぎだろ……。この女の子も過去に何かあった口か?……ったく魔国の人間ってはどうしてこうも女子供を雑に扱うんだ……。まぁ、全員が全員では無いんだろうけど……。
「あ、すいません……。男の人の大きな声に身体が反応しちゃって……」
「そうですか……。その内。怖くなくなると良いですね」
「……やっぱり。ミリャナちゃんの弟さんですね……。私のおっぱいをチラチラと見て来ても、不躾にガン見して来ないし、大きな声に私が怖がっても、「大丈夫かい!?」とか言って親切そうな顔をしておっぱいに触れようとして来ない辺り。とても優しくて親切です。……なので結婚しますか……」
「しねぇわ!」
「ひぇ!?」
コイツぜってぇワザとだろ!?そうでなければただのバカだ!フェルミナと同種の猪突猛進系おバカの奴か?駄目だ……。仕事モードのままじゃまともに話が出来る気がしない。
「はぁ……。お前さぁ……。何でそんなに俺と結婚したがるんだよ?」
「お前……。それ、いいですね。お友達になれた様な気分です……。でへ……」
まったく、お前呼びの何が嬉しいのやら。そして笑顔が怖ぇよ……。
「俺は今日、仕事で来てるからさ、話を進めなきゃ帰れないんだよ」
「ほうほう。っと言う事は、この話を進めなければ、ミールさんはずっとここに居られると言う訳ですね?」
「……いや。話がこのまま進まなければ流石に帰る」
「そうですか……。どうやら、ミールさんと結婚してミリャナちゃんと家族になって、一生一緒に住んで、毎日一緒に過ごして、同じご飯を食べて、一緒にお風呂に入って、毎晩同じベッドで眠る大作戦は難しい様ですね……」
「……そうだな」
この子。姉さん崇拝度が元気よりも酷いんじゃ……いや。そうでも無いか……。アイツは姉さんの入った後の風呂の水を、ミリャナ健康法とか言って飲むからな……。まぁ、今は元気の話はどうでもいいんだ。
今は商談を進めなきゃマジで帰れない。姉さんには悪いけどここは名前を使わせて貰おう。……元気に金を借りる時に使っていた手を女性であるハーディーに使うのは少し気が引けるが、俺がさっさと家に帰る為だ。仕方ない……。
「あのさ、ハーディー……。俺は今日、お前との商談をまとめないといけないんだ」
「はい……。しかしですね。私はミリャナちゃん以外はいらないんですよね……」
「それはもう十分解った。そこでだ、今からちゃんと孤児院に必要な物が、何かを考えて話をしてくれるのならば、姉さんの使った後の歯ブラシを、俺が間違えて捨ててしまった事にして持って来てやる……だから……───」
「───えっとですね。毛布が数枚と衣類の替えがちょっと足りないと言ってました。それに、老人たちのおしめの替えが、かなりの数必要みたいです。それと、おやつとお茶です。みんな働いた後の娯楽や嗜好品が欲しい様です……。お金の請求は魔王城へお願いします。……と言う事で……。ミリャナちゃんのよだれが付着した歯ブラシはいつ届くのでしょうか?急いで祭壇を作らなければ……。あ!祭壇って売ってます?あれば最高級な物をお願いします。支払いは魔王城で!」
「……。毎度あり。歯ブラシは納品の時に持ってきますので、これからも末永くよろしくお願いします……」
な、何だよコイツ!話す内容はちゃんと決まってるんじゃないか!
「も、もちろんですよ!もちろんです!あ、あの……。因みになんですけどミリャナちゃんが普段使っている枕等は……?」
「枕ですか……。これは、店側にバレてしまうとヤバいので、個人取引になってしまいます……。なので、魔王城からのお金では購入出来ない物となってしまうのですが……」
「だ、大丈夫です!私が神様になった時に滅ぼした町と、今まで刈り取ってきた人達の財産が隠してありますので!お金は腐るほどあります……死んだ人達もミリャナちゃんの為にお金を使うのであれば、きっと怒りませんよ!でゅふ……」
「神様?死んだ人達?」
「あ。言ってませんでしたっけ?私、実は死神なんです……。でへ……。ポタンさんが言うには、命の神様らしいのですが……一人でいる時は魂を狩るか、死体を動かす事しか出来ないので、命の神って言うよりかやっぱり死神なんですよね……。なので、ミリャナちゃんの事で私に嘘ついちゃうといくら弟さんと言えど、魂を狩っちゃうぞ?……えい!なんちゃって……ぐふふ」
そんな大きな鎌どこから出したんだよ!?いくらおっぱいが大きいからって、それは胸の谷間から出せるサイズじゃ無いぞ!?
「……は、はははははは……。嘘なんて吐きませんよ……」
「流石ミリャナちゃんの弟さんですね!私のおっぱいを見ていて目があった時よりも、いかんせん目が泳いでますが、とりあえずは信じる事にしましょう!……ね?ミールさん?」
「お、お任せあれ……」
こうしてハーディーとの商談を終えた俺は、手を振る度にふるんふるんと揺れるおっぱいに見送られ、アルカンハイトの孤児院へと繋がる転移陣で、一人アルカンハイトへと戻った。
俺は人魚や獣人達との商談で事が上手く運び過ぎていて、ちょっと……。いや、かなり浮かれていたのかも知れない。こんなのちょっと考えれば解る事だったはずなのに……。
「どうしたのミール?死神に出会った人の様な顔をして……。不吉ね……。まぁいいわ、暇なら手伝いな
さい」
俺が死神に会った事を言い当てた母さんは現在。孤児院の中庭で洗濯物中。その手伝い(強制労働)中だったアイリスは颯爽と逃げ去った様だ。
「……まだ、仕事……」
「そう。ならいいわ。働いてお金を稼ぐ事は良い事よ。ダルドリーには売る城があるけど、あなたには何も無いんだから、賢く頑張りなさい」
あれは、父さんの城じゃ無いだろ。しかも母さんは金が無くなったら城を売る気でいるのかよ……。なんて事を色々と突っ込みたいけど、母さんの発言にいちいち突っ込んでたらキリが無い。
あぁ……。何で俺の周りには変人しかいないんだろう。あの元気の頼み事なんだから、一癖も二癖もある奴との商談だって、少し考えれば解ったはずだったのに……。あのふくよかなおっぱいに見事騙された。
あの女。馬鹿の様な振りをして、最終的には俺から姉さんの私物を手に入れるルートを作るのが目的だったんだ。
「ミール……。ピンチはチャンスよ……。って何処かの誰かが言ってたわ。まぁ……頑張りなさいな。ポタンも元気もいるんだから最大限に活用しなさい。貴方たちは血が繋がっていなくても、もう兄弟なのだから……」
「……うん。ありがとう。じゃ、仕事戻るよ」
その兄弟のせいで死神に目を付けられたんだけどな!……あ。言ってませんでしたっけ?実は私。死神です。って何だよ!?あんな狭い部屋で巨大な鎌まで出しやがって!普通に怖ぇわ!
それに姉さんの枕を持っていかないと魂を狩るって何なんだよ!?脅し文句が過ぎるわ!死神にそんな事言われたら、枕持って行くしかねぇじゃねえか!……まぁ。枕は、こずかい稼ぎになるかもとか思って口に出しちゃった俺のせいでもあるけど……。にしてもだ!クソッ!完全にやられた!
こうなったら、あの女から金を鬼の様にふんだくってやる!ピンチはチャンスだ!
ちょっとハーディーをこすり過ぎですかね?w何か嫌いじゃ無いキャラなんですよねw
それに今まで出たキャラを置いて行くのでは無く、まんべんなく使いたい!ので、小話がちょくちょく入ってくる事に関してはご勘弁いただきたいw
次回はまだ未定。行先をダンジョンにしたのは良いけど、どうしようって感じです(~_~;)
少しワロタ! もっと読みたい! 心がピクリと反応した! と思われた方は、ブクマ:評価:いいね等々。よろしくお願い致します。
下の ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。
『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw




