表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
215/242

一日の始まり~ハーディー

辛い過去は、何かに依存して過去の物としてしまいましょう!……しかし、依存相手はちゃんと考えましょうねw



 あぁ。何という幸せな時間なのでしょう。ミリャナちゃんの瞳と心からは、一切の悪感情が感じられません。そんな彼女が私の夢の中で、私の準備したお茶を美味しそうに飲んでくれています。


 そんな彼女は、私にとっての救世主であり。女神様です。だって、苦しみと悲しみだけだった私の夢を、こんなにも幸せな時間に変えてくれたのですから……。


 死神に滅ぼされて今は存在しない町。『グザンダル』。そこで、ちょっと人よりも可愛くて、ちょっと人よりもおっぱいが大きく産まれてしまった私は、町や学校で妬みや嫉みのネタとして扱われ、弾かれ者として生きていました。


 その頃の私のあだ名は『乳牛』。そう言って町や学校の皆が私の事を笑いました。


 弱き者は徹底的に叩く。昔の魔国と魔族達の間に共通してあった、とても嫌な風習です。


 人型の魔族で、体と気が小さかった私は漏れる事無くそれに該当し、大きな身体のトカゲ属やミノタウルス属達。そしてその取り巻きの女の子達から、毎日の様に訓練と言って、追い掛けられたり。殴られたり。罵倒されたりと虐めにあっていました。


 しかし、年の頃にもなると、人よりも可愛かった私を、男の子達が守ってくれる様になりました。


 私は、この世界にもいい人達は居るのだなぁ!っと少し嬉しくなったのを覚えています。しかしそれは、優しさでは無くただの卑しさでした。


 彼等は、私を守る代償として体を要求して来たのです。


 子供は子供なりとも、そう言う事は好きな人とする事だと知っている物です。ですので、そう説明して彼等の要求を断ったら、その日から態度が一転し、彼等から死ぬかと思う程に激しく暴行されました。


 その日。命からがら家に帰り着いた私は、殴られた事を両親に話しました。


 しかし、そんなのはお前が弱いから悪い。とお酒を飲みふけっていた父親に、ヒョイッと投げる様にベッドに放り込まれました。


 私は、痛みと悲しみと恐怖でそれ以上にされた事に対しては、もう何も話す事が出来ませんでした。


 この日折れてしまっていた、腕や足の関節は今も上手に動きません……。


 その日から悪夢にうなされる様になった私は、「私をそちらへ連れて行って下さい」と毎晩、毎夜。真夜中に飛び起きては、暗闇の中で、必死に死神様に願う様になりました。


 よわい九つの頃のお話しです。しかし、その願いは届きませんでした。


 その日を境に、町で私を見掛ける度に男達が、私を暗がりに連れ込みました。


 抵抗すると、折角治った手足の骨をまた折られるので、抵抗はしませんでしたが、ミノタウルス達が行ってくる行為は、毎回お腹が破れそうな程に痛かったです。


 その内。私は恐怖で家の外に出る事が出来なくなりました。


 そんなある日の事。部屋から出て来ない私の事を心配した男親が、私に部屋から出ない理由を聞いて来ました。


 大きくなったとは言え、まだ私は十前の子供。親に心配して貰えたのが嬉しくて、あの日の事を正直に全て話しました。


 しかし男親のそれは、心配しての事からの事情聴取ではありませんでした。


 私の話を聞きながら、恍惚(こうこつ)(えつ)に浸るその男は、私の心にトドメを刺しに来た本物の悪魔でした。


 こうして私は、夜明けと共にこの町で一番高い町の時計塔から、優しかったお婆ちゃんのいるお空へ向かおうと心に決めました。


「……貴女……とうとう死ぬのね……。……そうだわ……。神様の力って便利なんだけど……いらない?……神様って偉くて、皆に優しくして貰えるから……。もう、人間共に良い様にされなくなるわよ?ふひっ……」


 下半身から流れ出た自分の血で、真っ赤に染まったベッドの上で、痛みが治まるのをジッと待ちながらうずくまっていると、暗闇の中から優しい笑顔のお姉さんが現れました。


 貧血で意識が朦朧とする中。時計塔から飛ぶ為に、何とか意識を保っていた私には、彼女が誰かは解りませんでしたが、誰かに優しくして貰えるのなら……。とそう思い。私はお姉さんにそっと頷きました。


 その時にやっと夢叶って、人間の私はこの世界から消える事が出来たのでした。


 この話をミリャナちゃんにすると、ミリャナちゃんは泣きながら私を優しく、でもギュッと強く抱き締めてくれました。


 彼女の様な心の優しいお人間さんに出会ったのは、いつ振りでしょうか?……初めてかもしれません。いえ……。会った事があります。私の大好きだったお婆ちゃん。その人の温かさに良く似ています。


「ハーディーは何も悪く無いわ……。ハーディーが良い子なのは私が良く知っているもの……」


 そう言って頭を優しく撫でながら、私を膝に抱えてくれるお婆ちゃんと一緒に居る時は、誰も攻撃して来ないので、とっても安心出来ていつも幸せでした。


 でも、そんな優しいお婆ちゃんは町にお出掛けしている時に男に刺されて、お財布を盗まれて死んじゃいました。


 ソイツの魂は今、私の中にいます。一生転生させる気はありません。私の心の闇に永遠に浸しておきます。あの時の私の様な絶望を永遠に味わいながら、苦しんでいれば良いのです……ふひっ……。


 ふひひ……。話が少し脱線しましたね。なにはともあれ、今、私の夢の中も心の中も、優しいミリャナちゃんでいっぱい。


 流石に。お婆ちゃんみたいで大好き!なんて、うら若き乙女さんのミリャナちゃんには言えませんが、私はミリャナちゃんが大好きになりました。


 なので、頼まれた孤児院のお仕事はミリャナちゃんに嫌われない様に完璧にこなします。


 そして、その内ミリャナちゃんが死んだら、彼女の魂をお迎えに行って、一生ここで一緒に引き籠もって暮らすのです。


 さてさて自分語りもこれ位にして、もうそろそろ夢の終わる時間です。今日も一日ミリャナちゃんの為にお仕事を頑張らなきゃ……。


 ……あぁ。愛しのミリャナちゃん……。一日でも早く死んで、早く私の所に来てくれないかなぁ……ふひっ……。


 ミリャナちゃんの事を思いながら、例年よりもずっと幸せな、ミリャナちゃんと一緒に過ごせるという夢の様な夢のお陰で、ズッと重くなった(まぶた)をもそっと開く私は、今日もミリャナちゃんのお陰で、とてもとても幸せな朝を迎える事が出来たのでした。



新たなミリャナ信者。死神。改め、命の神ハーディーの過去話です。元々ハーディーの住んでいた町は、ハーディーが神になったその日の内に、ゾンビの群れを使って、木っ端微塵に滅ぼしちゃってます。


次回は、小話かメインを進めるか未定w


少しワロタ! もっと読みたい! 心がピクリと反応した! と思われた方は、ブクマ:評価:いいね等々。よろしくお願い致します。


下の ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。


『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ