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胎動

人間国の最終話です。


流刑:島流し~。帰って来られない所へ船で流される刑罰。


例:元気はパンツを見過ぎて、ポタンから島流しの刑に処され、アルカンハイトから永遠に姿を消した。


 元気達がダンジョン攻略を終え、魔国へと向かっている頃。中央では、ニコラウスの為の新国王の就任式が行われた。


 新国王の誕生に、中央の住民は大いに喜んだのだが、困った事に地方地域の住人達には祝福はされなかった。


「ガハハハ!今日からこの町は我々の支配下に置かれる事になる!」


「ま、魔族が攻めて来たぞぉ!!!逃げろ~!!!」


 魔族による人間の町の侵略。それは、計画通り順調に進み、悪徳貴族に対しての魔族達の粛清も滞り無く進んだ。


 そして、魔族に支配され、混沌とした町をニコラウスが救い、英雄として国民の指示を得る。そんな手はずだったのだが、そう上手くは行かなかった。


「な、何だ!あんた達!新しい貴族か!折角貴族達から悪魔様が俺達を救ってくれたんだ!余計な事はしないでくれ!」


 魔王から「貴族を懲らしめろ」と言われた魔族達の軍隊は言われた通り。悪さをした貴族達を捕縛し強制労働させ、そして殺人等を行った貴族達は、町民達の前で、その貴族がやった事と同じ事を行い処刑した。


 これには、身内を無実の罪で殺された人や、妻や娘。妹や姉を攫われた人達が協力的だった。


 そして、一部。まともな神経を持っていた貴族達の密告もあり。処刑は滞り無く進んで行った。


 処刑を行ったのは、アルマジロ族の『ランド』新。四天王の一画だ。


 二メートルを超える巨体で、鉄よりも硬い甲羅に包まり繰り出す。『ローリングクラッシャー』は、五メートルもの大岩をも粉砕する。顔付きは、つぶらな瞳がとても愛くるしい。正義感が強く、悪は絶対に許さないオス。ミノスの学生時代からの親友だ。


「ガハハハハ!愚民ども!我々に逆らえば!死が訪れると覚悟せよ!」


「わぁあああぁあぁああぁぁぁあああぁ!」


 魔族達のこの宣言に、『逆らわなければ、意味も無く殺されないのだ』と町民達は歓喜した。


 勿論。初めの内は、町を我が物顔で徘徊する魔族達を町の人々は恐れていた。


 しかし、その魔族達は鬼や狼男やトカゲ男と、姿形が怖いだけで、現魔王ヴェルゴレの元に集った、平和主義な魔族達である。


「ガハハハハ!何だ!その姿は!そんなに痩せ細っていては!我々が食う事も出来ぬわぁ!」


 そう言って、貧民達には食事を与え。


「グハハハハ!我々魔族が人間に等施しを受ける物かぁ!」


 そう言って納税を拒否し、町で普通にお金を払い買い物をした。


 そして……。


「何だと!我々の占領した町の近くに害獣が出るだと!グフフフフ……。御飯が食べられないと困るではないか!討伐に行くぞぉ~!」


 町や畑を獣から救い。


「なぁにぃ!殺人が起きただと!?我々の町で悪事を働く等!舐めているな!犯人を見つけ出して縛り首だぁ!」


 犯罪者から市民を守り。


「何だ!愚民共!今度はどうした!……何?解放した奴隷の働き口が無いだと?グフフフフ……。それでは我々が面倒を見てやろう!死ぬまでこき使ってやるぞ!覚悟しろ!」


 貴族達に、誘拐。拉致監禁され、親兄弟を失った人達は、三食飯付き個室完備である、魔族達の奴隷となって、もう、誰にも害されず、殺される心配は無いのだ。と心の安寧あんねいを手に入れた。


「何だと!?貴様の身体を好きにしていいので、命は助けて欲しいだとぉ!?ふざけるな!奴隷と寝床を共にする事など、するものか!我々、気高き新魔王軍は、愛が無ければ女は抱かんのだ!愚民が調子に乗るなぁ!命乞いをする暇があるのならば、昼休憩を取りながら、夕方まで水汲みでもしておれぇい!」


 奴隷となった女が命乞いに行った際に、怒られたこの噂は、町の人達に瞬く間に広がった。


 何故なら奴隷が、勤務時間以外は外出自由だったからだ。


 それからと言うもの、町の支配者として、貴族の館を占領し、口が悪いけど優しい魔族様となった彼達の所には、日々。町民達からの相談事が殺到する事なった。


 そして、それを素速く解決して行く魔族達は、すぐに町にとって、必要不可欠な存在となった。


 そんな、優しくて優秀な魔族達から、町を守る為に旅をして回っていた、ニコラウスとヴェルゴレとダルドリーの一行は、町の人達にとっては、とても迷惑な者達となってしまったのだった。


「こんな事になるとは……」


 町につく度に、魔族と人間が仲良くしている風景に頭を抱えるヴェルゴレ。


「ダハハハハ。まぁ、平和になっているのならば、良いのでは無いか?」


 面白そうに笑うダルドリー。


「ぼ、僕はどうすれば良いのでしょうか?」


 やる事が無くなり、困惑するニコラウス。


 結局三人はその後、東の大陸の、魔族達に占領され平和になった東側の町々を、まったりと観光する事しか出来なかった。


「……。こうなったからには、仕方あるまい……。作戦変更だ……」


 ニコラウスを英雄として担ぎ上げる事が出来なくなったヴェルゴレが、次に考え出した作戦は、人間と魔族との同盟であった。


 この作戦変更は、すぐさま各国へと通達され、皆がそれに向けて動き始めた。


 そして、数ヶ月が過ぎた、ニコラウスの就任式当日。


「我々の仲を取り持った親善大使として、前王族の血を引くニコラウスを国王とし、ここに誓いを立てよう!」


 中央の王国の広場で、煉獄の魔剣を天へと突き上げる。魔王ヴェルゴレ。


「我々は、この瞬間から同胞だ!今までの怨み辛みは海の底に、今消え去った!」


 バブルの浮き輪に乗って、トライデントの槍を天に突き上げる海王トリトン。


「ち、中立国であるアルカンハイトは、これを見届けた!」


 元気が昔、中央の宝物殿からパクって来た、タロウケンの杖を掲げるヴァイド。


 中立国って何だ?と思うが、元気が旅行で不在なのと、ポタンが出たく無いと言った為、場違いだが、ヴァイドが代理で強制参加となった。


 中王国民達は、祭壇に揃った各王国の王達に歓喜し、三日三晩。各王へ対しての歓迎の祭りを行った。


 地方地域の住人達も、貴族からの支配では無く、魔族が町に残る同盟ならば安心だ。と歓喜し、治安が良くなった町々で、盛大にお祭りを開催した。


 今までは祭り等を行うと、貴族がやって来て邪魔をされていたが、現在はそれが無い。なので各町々の祭りは、大いに盛り上がりを見せた。


「ガハハハハ!愚民共よ!あまり騒ぎすぎて危ない事をするんでは無いぞ!怪我をしてしまったら、我々が食うに困るからなぁ!ガハハハハ!」


「あ、ラントさん!これ食べてよ!美味しい肉が焼けたんだ!」


「肉だと!?俺は草食だ!野菜は無いのか!……。こら!そこの貴様!酒を飲んで女性に絡むな!引っ捕らえるぞ!酒は飲んでも吞まれる物では無いのだ!キチッと覚えておけ!愚民めがぁ!」


 町に馴染んだ魔族達は人気者で、人々の治安の為に町を見回るその姿は、口の悪い町のお巡りさんそのものだった。


 こうして、各国が同盟を組んだ事により。とうとう戦争の意味が無くなったのだが、その後も、戦争は終わる事が無かった。


 暴れたい者にとっては、争いの意味など必要無いのである。


『悪い事をすると戦争送りになるぞ!』


 戦争の意味さえ変わり、戦場が犯罪者の流刑地るけいちになる時代が来るのだが、それはもう少し未来のお話しだ。


 何はともあれ、前王に両親を殺され、城に閉じ込められていた王子ニコラウスは、色んな人々の力を借りる事によって、両親の後を継ぎ、新たな王へと就任する事となった。


 そこには、色々な思いや感情が交錯するが、皆の願いは一つ。終わらない平和である。


「……僕に出来るか、正直解りませんが……。僕見たいな人がもう現れない様頑張りたいなと思います……」


「そうか……」


 城のバルコニーから、祭りで騒がしい町を見下ろす人間国の王ニコラウスと、魔王ヴェルゴレ。海王ポセイドンとお付きの兵士達は、中央広場で、騎士団達と手合わせと言って暴れている。平和とは何だ?と言われても解らないが、眼下に広がる。色んな種族の者同士が笑い合い、たたえ合う。そんな楽しげな雰囲気を、守れるのならば守ってみたいと、王として生きる覚悟を決めるニコラウスなのだった。


 因みにヴァイドは、宣言が終った後。場違い感に耐えきれず。すぐに退散した。


 一方その頃、新王が誕生した事を知らない元気達は、魔国の入り口である。とある場所で足を止めていた。


 そこは、魔国側の戦場から少しばかり西に向かった先の、枯れた木々しか無い岩の平原。


 そんな何も無い場所に、身体の半分が焼きただれた、猫耳族の少年が倒れているのを発見したのだった。


「尻尾が動いた!まだ、息があるぞ!」


「元ちゃん!助けましょう!」


「了解!」


 戦争には関わらない。とそう決めていたが、目の前の怪我人を見捨てる事が出来ない二人は、急いでバイクから降りて、その少年にヒールをかけた。


「この首輪……。奴隷か……」


「酷い傷……。どうしてこんな……」


 猫耳の少年は奴隷の首輪をしている。しかし奴隷だからと言って、放っておける元気とミリャナでは無い。そのまま治療を続ける。


 すると、意識を取り戻した少年が、倒れたまま震える手で元気の足を握り。二人を見上げた。


「お……俺は、良いから……い、妹を……お願いします……」


「他にも、誰か居るのか……」


「お願いします……」


「解ったから……。ちょっと黙ってろ……」


「……はい……」


 元気に言われた通り黙る少年。どんどんと治って行く自分の傷に驚く。そして、自力で起き上がれる様になった少年を見て、元気とミリャナはホッと一息ついた。


 しかし、ホッとしたのも束の間。元気の手を引いて駆け出す少年。彼の必死な様子に、元気とミリャナは理由を聞く事はせず、手を引かれるがまま、黙って付いて行く事にした。


 かれこれ十分程、西へと走っただろうか、少年は汗だくになり必死に肩で息をしている。子供の足で走る程度で、疲れる事の無い元気とミリャナだったのだが、徐々に現れる光景に、額から冷や汗が流れた。


「これは……」


「酷すぎるわ……」


「あ、あの……。い、妹も助けて下さい!お願いします!……俺は何でもしますから!どうか……お願いします……。耳を切っても、尻尾を切っても良いです。なのでどうか……妹を……」


 元気達に向かって、泣きながら地面に頭をこすりつける少年。その背後には、瀕死状態の奴隷達が、癒えぬ傷もそのままに、無残にも積み上がっている。状態の描写は割愛するが、虫。匂い。傷の具合。全てが尋常では無い。そして、その全ての奴隷が、酷い事に、年端も行かない獣人の子供達ばかりなのであった。


次回から新章です。思いのほか、ダンジョンが長くなったので一応分けますw


皆さんは、奴隷狩りに捕まった子供達が、戦場で何に使われていたか覚えていますでしょうか?描写は控えますがそんな、彼等のお話になります。そして、そんな彼等は勿論。救われ無ければいけませんw


少しワロタ! もっと読みたい! 心がピクリと反応した! と思われた方は、ブクマ:評価:いいね等々。よろしくお願い致します。


下の ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。


『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw



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