知の女神。メレオーネ
『アース』電気を地面に逃がすヒモ。
『モノクル』レンズが片方だけなのに、どうやって目に掛けているのか不明な眼鏡。格好いい人が掛けると格好いい。
第五層。雷の試練。
それはそのまま、落雷が落ちる。岩の平原をゲートまで、一キロ程進む。と言う物だった。
『バリバリバリズドーン!』
雷曇がビカッと輝き、鮮明に姿を現すと、避難する場所が無い元気達を、落雷が襲って来る。その襲い来る白い閃光は、雄叫びを上げる龍が如し。そしてそれを……。
「ひえぇ!」
「うおっ!」
ヒョイッと上手に避ける元気とミリャナだったのだが……。
「ぎょえぇぇええええぇぇぇ!!!ひぃぃぃぃいいいいぃぃぃ!!!」
ユラは毎度喰らってしまっていた。
「だ、大丈夫か?ユラ……。ぶっは!……ぷくく……」
「げ、元ちゃん!笑っちゃ駄目よ!……ぷっふふ……。ご、ごめんさなさい……」
進み始めてまだ、二百メートル程しか歩いていないのだが、既に四度。雷の直撃を受けているユラは、お馴染みアフロヘアーになっている。鬼のパンツを履かせれば、可愛い雷様の出来上がりだ。
「念の為に武器にアースを付けておいて良かったわ。残り八百メートル程……。雷を全部受けていたら死んでしまうぞ……。何で雷をよけられるんじゃお前ら……」
「何でって言われても……。雷を見てから反射的に?」
「私は……。空が光った瞬間に上を見て、風魔法を靴に纏わせて……それでこう。雷をヒョイッと避けてるの」
ミリャナがユラに、ヒョイッと飛んでみせるが、そんな説明では納得の出来ないユラ。
落雷とは、雲が光って雷が出現してから音が鳴る。ミリャナや元気が言う様に、見てから雷を避けるのならば。音や雷よりも速い。光の速さで移動しなければ、避ける事は無理なのだ。
これに関しては、元気の場合。高速に近い動きで咄嗟に避けているだけだが、ミリャナの場合は、落雷の軌道を先読みしてからの回避なので、音速程度の速さで避けている。……とは言っても、二人のそれは既に人間の動きでは無いので、ユラが納得出来ないのも当然の事だった。
「避けられるとは言っても、毎回雷を避けるのも面倒だよな……」
「面倒とは言っても何も出来まい……」
「フッフッフ……。まぁ。見ていたまえ。ユラソン君……」
「カカカ。お手並み拝見と行こうか、名探偵殿……。……本当にたのんだぞ……。レベルが上がったとは言え……何度も何度も雷に打たれるのは無理じゃ」
某有名探偵小説のネタが通じて嬉しい元気は、ネタにノッてくれたユラにニコリとすると、ダンジョン内部に、とある物を大量に設置した。
「カカカ。こりゃあたまげたわ!」
「なあにあれ……。鉄の柱?」
「フフフ。あの柱に雷が呼び寄せられて、僕らには雷が落ちなくなるのだよ。ミリャストレード警部」
「警部?……そうなのね。凄いわ!」
ミリャナには、探偵ネタが通じなかったが、褒めて貰えたので良しとする。そんな元気が出した物とは『避雷針』だった。
その避雷針のお陰で、響き渡る雷の音にビビりながらではあるが、三人は落雷に襲われる事無く、ゲートへと向かう事が出来た。
「召喚者ってのは、化け物見たいな魔力を持っておるんじゃの……」
「え?あ、うん……」
ユグドリアスやフェルミナ。そしてラストに、神の力をなすりつけられて、魔力がほぼ無尽蔵になりました。とはもういちいち説明しない。人からの評価は、神では無く。魔力いっぱいあって良いね。程度が心地良いのだ。
元気が実は、神様と言う存在である事を内緒にする代わりに、アフロになってしまったユラの髪の毛を元に戻してあげた。
こうして無事ダンジョンを攻略し終えた元気達は、最終目的地である。最下層へと到達した。
最下層の部屋は、真っ白の空間に椅子とテーブルがあるだけだった。
「……やぁ。いらっしゃい……。誰かがやって来るのは百年以上振りだ……。私はメレオーネ……。知の女神だ」
そのテーブル椅子に座り。元気達を見て微笑む。メレオーネ。モノクルを掛け、白衣を着た四十歳程の聡明そうな女性だ。
紫色の髪を後ろで丸く櫛で纏めていて、その姿は女神では無く、実験室にいる科学者だと言われた方がしっくりと来る様な風体だった。
「俺は元気と言います。そして、こっちがミリャナとユラです……」
「……そう。それで望みは何?」
メレオーネは人の名前には興味は無い様子。それに無駄話もしないタイプの様だ。
そんな彼女に望みは?と聞かれ、ミリャナがユラの背中を押す。
「ほ、本当に俺が願いを言っても……良いのか?」
「えぇ。ダンジョンを攻略した時点で、私は満足だから」
「俺はミリャナが満足なら満足だから!」
ユラに向かってニコリと笑う元気とミリャナ。ユラはその二人の姿に少し戸惑った。
利用してやろう。最初ユラは、そんな気持ちで元気達に近付いた。
しかし、今は二人の優しさが痛い。三人で冒険をする内に、一緒にいると楽しい。もっと一緒に遊びたい。そんな、唯一無二の友人になってしまっていたのだ。
「カカカ。恩に着るぜ……。遠慮はしねぇからな……」
メレオーネを見据えるユラ。メレオーネは鋭い眼光をユラに向け、挑戦的にニヤリと笑っている。
「俺は……。いや……俺達は、このダンジョンのゲート前に攻略法を明記する事を願う!」
腕を組んで、ドドン!っと無い胸を張るユラ。そんなユラ発言に元気とミリャナが驚く。ユラの願いは、親父さんの工場の借金返済と聞いていたからだ。
「……ふむ。あまり気乗りしない願いだが……。願いがそれで良いならそうしよう……」
ユラの願いに不満気なメレオーネ。しかし願いはちゃんと聞いてくれる様だ。
「ユラちゃん。何で?お父さんの工場はいいの?」
「カカカ。金は稼げば良いけどよう。これ以上世話になると、お前らに恩が返せねぇ……」
「そんなの気にしなくて良いから、今からでも変更しなって、ユラの大切な家族が困ってるんだろう?」
「カカカ。お前らは気にならんだろうが、俺が気になるんだ。お前らとは対等じゃなきゃあならねぇ……。友達だからな……カカカ」
「じ、じじい……」
「ユラちゃん……」
ユラの心意気に感動する元気とミリャナ。メレオーネはとても興味無さ気だ。
その後。約束を守ったメレオーネは、ゲート前に正規の攻略法を明記した。
「己で工夫して知識を学び探究する……。もうそんな時代では無いのかねぇ……。つまらん……」
「学び……ですか……」
「あぁそうだ。ここまで辿り着いたお前達なら解るだろう?力だけでは何も解決しないと言う事に、知恵が無いと言う事自体が罪だと言う事に……。各階層に攻略のヒントは出してやっていたのに、気付かない。考えない。諦める。とても愚かすぎる……」
海で沈む人。崖から落ちる人。火の中を走ろうとする人。無理だからと言って諦める人達を見て来たミリャナは納得してしまう。命を大事にしない行為を行う人は、愚かだと思ってしまうのだ。
「まぁ。知恵も大事だけど……。力も大事だよね……」
「ほう……。どうしてそう思う?」
ポタンに反論する感覚で喋り出す元気に、メレオーネの瞳が少し輝く。持論を語り合う事。それは哲学者にとっては最高の遊びなのだ。
「うーん。智恵だけあっても、町は作れないでしょ?知恵のある人。力のある人が一緒に頑張らないとさ。まぁ。こう言うダンジョンでは、関係無いかもだけど……」
「フッ。そうだな……。確かに知恵だけでは……。無理だな……。……お前名前は?」
「え?さっき元気って言ったけど……」
「ふむ。元気か……。覚えておこう」
そう言ってニヤリと笑うメレオーネに対し、すぐに忘れて欲しいなぁと思う元気だった。
雷の試練。色々と考えました。化学云々。マイナスプラス云々。磁石同士の反発でとか、電気を使ったスイッチ式の迷宮とか、色々と考えましたが、異世界人が造ったのはアルカンハイトダンジョンだけなので、こうしましたw
そう言えば、絶縁破壊っていうのがあってある程度の電流が流れるとゴムでも普通に電気が流れるそうです。電気を流して遊ぶ際はお気をつけて下さい。
次回はその後。
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『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw




