ダンジョン四層
物語読んで、空想や想像をして楽しむ。そんな時代は終わったのかねぇ?by金蔵
ダンジョンの四階層は、ダンジョンだった。
五メートル四方。煉瓦造りの壁に囲まれた迷宮だ。
その中を朝からずっと探索中の元気達。今日はゲート前でユラが待っていたので、三人での行動である。
「トラップにモンスター……。そして変わる地形。一番の問題は地形が変わってしまう事じゃな……。厄介過ぎるぞ……」
「グルグル同じ所を回ってる感じがするわ……」
「隠し通路なんかもありそうじゃ無いし……。一体どうすれば先に進めるんだこれ……」
灯りは所々で松明が燃えている。そんな薄暗い中で襲って来る、アンデッド型のモンスターが怖過ぎて、早く抜けてしまいたいと思う元気とミリャナだった。
しかしユラに限っては年の功だろうか、まったく恐怖を感じていない様子で。
「向こうでは俺も、こうなっているんじゃろうな!カカカ!」
襲って来る骸骨。『ワイト』の頭を、パカンパカンと楽しそうに巨大なハンマーでたたき割っていた。
中身はジジイだが、見た目が美少女なので、残念で猟奇的な光景である。
ユラが使っている巨大な鉄のハンマーは、重量が二百キロ程あるのだが、軽量化の魔法が付与されているので、子供でも扱える。身体強化や防壁程の魔力程では無いが、魔法武器として結構な価値がある物だ。
「カカカ。魔法武器と大袈裟に騒ぐが、軽量化は魔力消費が少ないから普通は誰でも造れるんじゃ。付与したい能力をイメージしながら、それを造り上げられる、魔力と精神力と忍耐力があるかどうかじゃな」
魔法武器の造り方の説明を受けたが、てんで謎な元気とミリャナ。おでんの大根に味を染み込ませる様な物じゃ。と説明をされやっと理解した。
なので、お昼御飯はおでんにした。
お昼御飯を食べたら、探索再開である。
「ここも何も無い……。ダンジョンの小部屋って言ったら宝箱とかありそうだけど……」
「さっきの部屋にも何も無かったわね……」
「うむう。所々に部屋があるんじゃから……何も無い訳が無いと思うんじゃが……」
ダンジョンの壁には、木の扉が点在しており、その先に六畳程の部屋があるのだが、そこには宝箱もその残骸も、モンスターさえも居ない。ただただ石造りの空間だけが広がっていた。
そして、そこから出ると、ダンジョンの入り口に戻る。そしてまた進むとダンジョンの地形が変わっているのだった。
「ぐあぁあああぁあん!頭がおかしくなりそうだ!」
「ひえ!もう!狭い所で大きな声を出さないでよ元ちゃん!ビックリするでしょ!」
「カカカ。若いもんは忍耐力が足らんのう……。しかしここを攻略するまでには、ちと時間が掛かりそうじゃな……」
元気達と一緒に三階層をクリアした冒険者達も、訳が解らんと言って午前中の内に三階層へと戻って行った。
「ここはもう……。最終兵器様に頼っても良いんじゃ無いかな?」
「最終兵器じゃと?何じゃ?それは?」
「……。悔しいけど……。ヒントが何も無いんじゃあ……お手上げだわ……」
ユラは、最終兵器であるポタンの事を知らないのでハテナ顔だが、ミリャナは元気に同意する。
「おっし、そうと決まれば……出でよ!最終兵器!ポタン!」
「……。…………はぁ。…………で、何?」
元気にお姫様抱っこされた状態で現れたポタンは、超絶不機嫌だ。
しかし、この前のアイリスの事で、元気にウサギのお姉さんを探し出して、アイリスに会わせて欲しい。とお願いをしてしまった為、いきなり呼び出されても電撃を喰らわせる事が出来ない。
「ぽ、ポタン。ごめんね……。実は聞きたい事があってね……」
「ママ!?ママなら良いのよ~!何でも聞いて!パパの駆除の仕方でも教えようか?」
元気の腕から飛び降りて、笑顔でミリャナに駆け寄り抱き付くポタン。
「実はね、かくかくじかじかで……」
「成る程ね……。かくかくじかじか……なんだね……」
そんなポタンがダンジョンの説明を受ける間に、元気はユラにポタンの事を説明した。
「元、日本人のユラじゃ、よろしくな嬢ちゃん!」
「ポタンです。よろしくお願いします!……転生者って事は……。『黒翼』のメンバーだったりしますか?」
「何じゃそれ?」
「世界中の転生者達が造った冒険者クランがあるんです。名前はダサイですが、情報交換等が出来て結構便利なので、今度ギルドに行ったら調べて見て下さい。クランに入団する為の合い言葉は、『味噌汁飲みてぇな』です」
「カカカ!味噌汁飲みてぇなか……。覚えやすいな。今度調べておくよ。ありがとうな!」
笑顔で握手を交わすポタンとユラ。そんな二人の様子に笑顔のミリャナ。しかし元気は、転生者クランの事が気になり、ウズウズしている。
「な、なぁ。ポタン。転生者クランって何?……そんなの聞いた事無いけど?」
「……。今は話が脱線するから……。次の章辺りで話すわ」
「そ、そうか。解った……」
普通にメタったポタンは、元気を黙らせると、ユラの前からミリャナの元に戻り抱き付いた。
「ママ?答えが知りたい?それともヒントが欲しい?」
ニコニコとミリャナを見上げるポタンをヒョイッと抱き上げるミリャナ。普通に岩石を投げるミリャナにとっては、大きくなったとは言っても、小学生程のポタンの体重等無いに等しい。
「……私は……。出来るだけ……自分で解きたいから……ヒントが良いけど……」
そう言って、ミリャナはユラと元気を見やる。自分のワガママで時間を掛けるのが申し訳無いと思う。
「カカカ。昨日の魔石のお陰で、工場の借金返済の猶予は出来たからのう。少しばかりここで遊んでも俺は構わんぞ?」
「俺は勿論、ミリャナの思う通りで良いよ!」
「……そう。二人ともありがとう!じゃあ!ヒントが欲しいわ!」
「そっか!解ったわ!じゃあ、ヒントね!」
そんなポタンが出したヒントとは、『ダンジョン攻略の基本は何でしょう?』だった。
そもそも、ゲームをして来なかった為にダンジョンを知らないユラ。ミリャナは迷宮系のダンジョンは初なので、基本を知らない。そして、ゲームやラノベでダンジョンを知っている元気が何かを閃くと思われたが、元気が好きだったのは、スローライフ系の物が多かった為に答えが出なかった。
「ユラさんとママは仕方が無いとして……。パパが知らないのは問題よ?本を読んでパパは一体何を学んでるの?出て来る女の子のパンツ想像してエヘヘってしてる場合じゃ無いわよ?」
「す、すいません……」
『白いパンツがチラリと見えた』と言う一文だけで、そのパンツは真っ白なのか?ワンポイントにリボンがあるのか?フリルは付いているのか?ゴムはキツめなのか、緩めなのか?そもそもそのパンツは、ピッタリサイズなのか?ダボッとサイズなのか?それともビキニタイプなのか?実はパンツっぽいだけで、違う何かでは無いのか?汗で湿ってはいないのか?どんな味がするのだろうか?等と、想像を無限に膨らませられる元気は、ポタンの指摘に何も言えない。
「ポタンは元気に厳しいんじゃのう……。この歳位の健康な男の子じゃったら、スケベな想像は、まぁ……のう……?」
「き、金蔵さん!」
元は同じ男であるユラは、元気が可哀想で養護する。初めての味方に泣きそうになる元気。動画やテレビが無かった頃は、皆が空想家だったのだ。
「想像は良いんですけど……。問題なのは、その限度です。それに、口に出して言わないと学ばないんですもの……言っても学ばないけど……」
「元ちゃんは、パンツが好きすぎなのよね……」
ポタンにミリャナが乗っかる。男子のエロに対しての想像力は、女子組には理解されない様子だった。
「これ言っちゃうと殆ど答えになっちゃうんだけど……。答えが出そうも無いから言うわね……。答えは『マッピング』よ……。この世界には地図自体が少ないからそもそもの習慣が無いのかも知れないわ……。パパ?聞いた事。見た事はあったでしょう?」
「……はい。ダンジョン系のラノベで読みました……」
「……そのラノベのヒロインのパンツってどんなのだった?」
「えっと。基本的には白なんだけどさ、たまに、黒のレースの奴を履くんだよ。でも雰囲気的には、やっぱり白が良いんだよな~。サービス回か何かは知らないけどさ、清楚系は白が良いんだよな~。皆が皆、完全なエロが見たいとは思わないで欲しいよな。あ!因みに、いつもの白いパンツはパンツの前に赤い小っちゃいリボンがあるんだ。そしてサイズはちょっと小さめで、お尻に少し食い込む感じかな。そうそう、そのラノベを見てパンツの畳み方を覚えたんだよ~……それにさ~……」
「……ギルティ」
「ぎえぇえ!」
ミリャナのその一言に頷き、電撃を元気に向かって放つポタン。パンツを語り出すと止まらない元気を強制的に黙らせる。因みにギルティの意味は、ポタンがミリャナに教えた。
「……。そのパンツの知識の隙間に、基本と常識を少しで良いから入れなさいよね。まったく……。……じゃあ、私は帰るけど……。ママ。たまには顔見せてね……」
ミリャナに抱き付き甘えるポタン。ミリャナの為に我慢しているが、いつでも一緒にいたいのが本音だ。
その気持ちが解るミリャナも、ギュッとポタンを抱き締める。
「うん。フフフ。ポタンは、本当に甘えん坊ね……。ありがとう」
「へへへ」
ミリャナに向かって蕩ける様な笑顔を見せるポタンと、そんなポタンを優しく撫でるミリャナ。そして地面に無残に転がる元気を見て、この一家。特にミリャナは怒らせてはいけない。と思うユラなのだった。
その後。ポタンがミリャナ成分を補充し終わり帰宅すると、元気達はダンジョンの攻略を再開。ポタンに言われた通りマッピングする事によって、部屋から出て、入り口に戻った先のダンジョンが、まったくの別物である事が判明した。
そして、十程ある部屋の中で、当たりの部屋は一つで、間違えた部屋に入ると、最初からやり直しと言う、鬼畜仕様のダンジョンである事も同時に判明した。
入り口から当たりの部屋に入り。変わったマップを見回って、更に当たりの部屋を探す。これを数十回程繰り返し、やっと次のゲートに辿り着けたのは、ポタンからヒントを貰って二週間程が経った後だった。
マップ変更の四度目まで行くのに、三時間程度の時間が掛かるのだが、ハズレのドアを開ければ、振り出しに戻される。その時の虚無感と腹立たしさは、半端では無く、マップ変更四回目まで行って、八回連続でハズレの部屋を引き当てた時は、クソが漏れるかと思う程に腹が立った。
今回のダンジョン攻略の答えは『マッピング』地道に地を行く『地の試練』だ。
石の上にも三年である。
地道にマッピングを繰り返し、ダンジョンを周回する事で、モンスターを狩りまくった三人のレベルは大きく上昇したのだが、そんな事よりも、イライラと恐怖で頭がいっぱいになっていた彼等は、ダンジョンを抜けられた事に対する喜びの方が大きく、その事にはまったく、気付かないのだった。
四階層突破です。
今回は迷いのダンジョンでした!RPGゲームで一番嫌いなマップですw
攻略本が無いと、はぁ!?何でかて!ってなってましたw
次回はダンジョンの最終回層です。
少しワロタ! もっと読みたい! 心がピクリと反応した! と思われた方は、ブクマ:評価:いいね等々。よろしくお願い致します。
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『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw




