異世界召喚~旅立ち~
勇者、異世界へと立つ。そして伝説へ……。
年明けに、ニューイヤージャンプをソロで行うと言うとんでもない愚行を犯した元気は、新年から悲壮感で心が地獄に落ちるかと思われたのだが、落ちた先は、先は地獄では無かった。
七色に輝くステンドグラスやレッドカーペット。そして、金色に輝く玉座。それらは実際に見た事は無い物ばかりだが、見た事のある風景。
ソロでのニューイヤジャンプが終わると、元気は何故か、西洋風のお城の中に立っていた。
「……え?……これって……。『異世界召喚』的な感じ?……まじか……。まじか……」
気付いた瞬間から、ドッと押し寄せてくる感動と興奮。俺もラノベの様な、格好いい主人公に……。英雄や勇者になれる!と喜びで泣きそうになった。
そして、異世界と言えば、愉快で楽しい仲間達との出会いである。そんな事を想い心が踊った。
孤独な隠居生活で元気が求めた物、それはどんな事でも、許し合い。笑い合える友達。仲間。家族だった。
しかし、感動していたのも束の間。お城の中を再度見渡し少し不安になる。
目の前には王冠を被った。おじさん。
その隣には袋を持った。おじさん。
左右には鎧を着た。おじさん。
自分の両隣には、筋肉質な髭おじさんと、ローブを被ったひょろおじさん。が立っていた。
女性の姿は無く、おじさんしかいないのだ。
いくら孤独で、友達が欲しいとは言っても、知らないおじさんと、進んで友達になりたいとは思わない。
兎柄のパジャマ姿で、現在の状況にビビり、元気がきょどっていると、青い貴族服に赤マントをまとった、豚豚しい姿をした王冠おじさんが、面倒臭そうに喋り始めた。
「良く来た異世界の勇者よ。一度しか言わぬので、しっかり聞くように……」
「あ、はい……」
「チッ。返事もいらん。……ここは、『ラスト』という世界で、この国はルニマルニア中央王国と言う場所だ。お前は、そこへ召喚された勇者なのだ。今、この国は魔族との戦争で劣勢である。なので、勇者よ魔王を倒してこい。以上だ」
棒読みで説明を終えた豚……。もとい、王冠のおじさんが、ぶふぃ~っと不愉快そうに、不快で、深い溜息を吐き出す。その息は鬼臭そうだった。
しかし、そんな事にはめげない元気。さっきから気になっていた事を質問する。
「あ、あの、異世界召喚特典などはあるんでしょうか?ビックリする様な能力とか、膨大な魔力とか……」
「チッ。自分で調べろ……」
王冠のおじさんが喋り終わると、金貨の入った袋と、紫色の丸い石を一つ、司祭っぽいおじさんから渡された。
「あ、あの……王様。この石は、何ですか?」
「……魔石じゃ」
「魔石って?」
「チッ。隣のに聞け……」
豚な王様に言われた通り、元気が両隣のおじさん達に声を掛けて見るが、ローブを着たひょろおじさんも、髭筋肉おじさんも前を向いたまま黙っている。しかし、ひょろおじさんの口が動いている事に元気は気づいた。
ネズミの様な顔の、ひょろおじさんの口は……『お・も・て・な・し』と動いている。それ見て、成る程な!っと元気は、何かを閃いた風にポンっと手を叩いた。
異世界召喚後のお城でのおもてなし、それは、とても大事なイベントである。大体の情報は、そこで色々と解るのがテンプレだ。
「あ、あの~こう言うのって最初、お持てなしとかあるんじゃ……?」
「はぁ?チッ!クソが……何で、男のお前にもてなしなど……」
「王よ……ハズレでも力は本物です。恩を売っておいて損は無いかと……」
明らかに持てなすつもりの無い豚王に、司祭のおじさんがそう言うと「準備しろ……食ったら追い出せ」と、一応のお持て成しはして貰えた。
その後。昼食は食べさせて貰えたが、仲間とおぼしき、二人のおじさん達は、終始無言で料理を貪り食っていた。
何の情報交換も無く食事が終わると、席の後ろにずっと待機していた兵士達によって、元気達は強制的に城から追い出された。
「あの……。俺、元気っていいます。これからよろしくお願いします」
城の前の、だだっ広い広場に放り出された元気は、一緒に放り出された旅の仲間に、挨拶をしておこうと思い、おじさん達に挨拶をしたが、ローブ姿のネズミひょろおじさんには舌打ちされ、上半身裸でブルマを履いた変態髭おじさんには睨まれ、それ以降の会話を諦めた。
そして、右も左も解らないまま、異世界召喚された元気の、ワクテカな魔王退治への旅が始まったのだった。
ほのぼの、シリアス、ギャグ、エロと、
バランス良くやっていければ良いなぁと思います!
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『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw




