ダンジョン~二階層~
今回の試練は……風です
孤島に辿り着いた元気達は、ゲートを潜り次の階層へと進んだ。
ゲートの先は、アルカンハイトダンジョンの様にボス部屋だと思っていたのだが、ボス部屋は無く、そのまま次の階層へと繋がっていた。
第二階層。そこは、背の高い岩肌の続く渓谷地帯だった。
ゲートの入り口の踊り場から、かろうじて岩肌の天辺が見えるが、岩肌の上には、出口ゲートの姿は無い。しかし、ゲートがあるだろう場所の見当は付ける事が出来た。
入り口のゲートからでも、頂上が見えない一本の岩の柱が、渓谷地帯の中心にそびえ立っていたからだ。
「全ての入り口が、あの高い岩の柱に繋がってるし……。出口はあそこだろうな……」
「そうね。それにしても何で、渓谷への入り口が何個もあるのかしら……。ゲートの無い、渓谷の向こう側にも入り口があるわ……」
真ん中の高い岩の柱を中心にして、道が『米』の文字型に展開されている。そしてその道が、ダンジョンドームの端っこまで、突き抜けている。
「四方八方に、伸びる道か……何かありそうだね……。何か意味が……ありそうだね……。多分……あるんじゃ無いかな……」
それらしく、それらしい事を言う元気だが、頭の中は既にチンプンカンプン。まぁ、最終的に飛んで行けば良いやと考える、アンポンタンな元気だ。
「そうね!……きっと意味があるはずよ……。取り敢えず。あそこの高い岩まで行ってみま……っちょひん!」
「え!何今の!?めっちゃめちゃキュンなんだが!」
「キュン……?ゴメンね。お話の途中でクシャミが出ちゃった……」
「そっか。ありがとう。……こことさっきの所じゃ、温度差が違いすぎるね……。このままじゃちょっと肌寒いかも……。はい、パーカー。これ着てから渓谷に入ろ」
「……うん!ありがとう!」
太い口笛の様な音を鳴らしながら、渓谷内を駆け抜ける風が、海水で濡れた元気達の体温を奪う。お礼を言われて、軽く戸惑うミリャナだったが、元気と話が噛み合わない事は、良くある事なので、何故お礼を言ったのかを聞く事はしなかった。
その後、パーカーを羽織った二人は、ゲートの踊り場から階段を降りて、渓谷の入り口に立った。
「風が強いわね……。これも、謎解きに何か関係があるのかしら……」
「……そうだね。……そうかも……。これは、風速三メートルはありそうだ……」
「凄いわ元ちゃん、風の速さが解るのね!」
「え。……うん!まぁね!へへへへ」
知ったかぶりをする元気の答えは、残念ながら不正解。正解は風速二メートル程度だ。
さっきの謎解き展開によって、ミリャナは現在。謎解きモードだ。
元気もそれにつられている。が、ここが謎解きエリアと決まった訳では無い。謎解きは二人の思い込みだが、とても楽しそうで、岩肌を意味ありげに触って見たりしていた。
渓谷には、所々洞窟があり。ゴブリンやオークと言ったモンスターが出現した。
「……風は、この為に吹いているのかも知れないな……」
「そうね。ゴブリンやオークが臭く無いわ!」
豚人は、立っている豚というよりも、二足歩行の猪に近い容姿をしている。遠目に見るだけなら、つぶらな瞳が、とても愛くるしいモンスターだ。
しかし、ゴブリンと住む事の多い野生のオークは、体毛にゴブリンの糞尿の匂いがこびりついていて、獣臭もするのでひたすら臭い。そして。毛にダニやノミがいるので、本来は本当に近寄りたく無い相手。なので、道中。ゴブリンの巣穴の匂いや、オークの体臭を分散させる吹き荒ぶ風が、とても有り難かった。
他にも、『エアーリザード』という。モンスターにも出会った。
体長二メートル程の大きなトカゲ。こちらは、コモドオオトカゲにソックリだ。
「ひえぇぇぇええぇ~!」
「げ、元ちゃん!もう!何で避けないのよ!」
エアーリザードの吐き出す突風により、岩壁に向かって吹き飛んで行く元気。吹き飛ばされる度に、岩壁に上手に着地する。
「ハハハ。だってこれ、ジェットコースターみたいで、面白いんだってば!ミリャナもやってごらんよ!……俺がリザード抑えててあげるからさ!」
「えぇ~……。でも……。戦い中に遊ぶだなんて……。……ゴクリ……。……じ、じゃあ、一回だけ……」
元気がリザードの背中に乗って、動きを抑えると、恐る恐るミリャナが元気達の前に立つ。戦い中にふざけるなど、言語道断である。言語道断ではあるが、あまりにも楽しそうな元気の様子に、ミリャナは我慢出来なかった。
「おっし!行くよ~」
「ちょ、ちょっと!心の準備……ぎゃひえぇぇぇええぇ!!!」
リザードのお尻辺りをペチン!と叩くと、ドン!っと大砲の如く纏まった風が、ミリャナに向かって飛び出した。
その風がミリャナに当たった瞬間。バタバタバタバタ~!っと、スカートが翻り。白いミリャパンツが露わになった。
ゴウ!っという暴風と衝撃により、岩壁へと吹き飛ばされたミリャナは、パンツ丸出しである事に気付かないまま、見事に岩壁に足を付き、無事に地面に着地した。
その後。元気の勧めにより。ミリャナはこれを数回繰り返して楽しんだ。もとい、楽しまされた。元気も元気でもの凄く楽しんだ。
着地した瞬間に、フワリとスカートが元に戻るので、自分が飛んでる間。パンツが丸見えであるという事に、ミリャナが気付く事は無かった。
「……コイツは……倒さないでおこう。とても良いモンスターだ……」
「そ、そうね……。このまま倒すのは、少し気が引けるわ……。突風で凄く遊ばせて貰ったし……」
「とってもね……」
風の吹きすぎで、ぐったりするエアーリザードに元気はヒールを掛けると、最高級松坂牛をお礼としてプレゼントした。
そして、風のジェットコースターに満足した二人は、渓谷中央部へと歩みを進めた。
スカートを風でめくると、美味しい餌が貰えると学習したエアーリザードが、大量発生するのは、遠く無い未来のお話しである。そんなモンスターが増えた理由は、男は馬鹿だから、という説明だけで十分だろう。
渓谷の中央に到着した元気とミリャナは、岩の柱の麓に人だかりを発見した。
「やば……。まじかこれ……」
「これは……。酷過ぎるわ……」
集まった人達は、薄革の上着を羽織ったブルマン達。そんな彼等が行っていた事。それは、百メートルを超える、絶壁の岩壁を自力で上るという。命懸けのロッククライミング大会だった。
「…………ぅぁぁぁあああああああ!!!」
悲鳴の後にバズグジャ!っと、破裂音と衝突音と肉が潰れる鈍い生々しい音が聞こえ。元気とミリャナはそちらを見てしまう。描写は控えるが、そこにあったのは、原型が無い程にグチャグチャになった、元々は人間だった物だった。
そんな物が、チラホラとそこら中に存在している。
「う、うぐっ……。ご、ごめん元ちゃん……」
「お、俺も一緒に……いくぅうおうれれれれれれぇぇぇぇえええぇぇ……」
そのあまりにもの凄惨な光景に、ミリャナは岩陰まで走り。元気はその場で、堪らず嘔吐してしまった。
五階層と何となくしましたが、書きながらさっき閃いた。五属性の試練にすれば良いかな?とw
炎。水。土。風。雷。
行き当たりばったりですが、何処かの誰かが楽しんでくれていると信じて、書いていきますw
引き続きよろしくお願いいたす。
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