明日は晴れるかな?
町の中に小さな集落が出来ましたw
いきなり現れた浮浪者達の正体。それは四肢や視力、聴力などを失い。まともに戦う事も仕事も出来なくなった。元兵士や冒険者をしていた人達だった。
「正直に言えば……。我々にも……雨風を凌げる場所と、僅かでも構わないので……食事を恵んで欲しいのです……。浅ましい考えだと言うのは重々承知していますが……。どうか……。お願い致します……我々を……雇っては戴けませんか……。報酬はパン一つでも構いません……」
男が、ミリャナの前で跪くと、後ろに並んでいた人達も同じ様にミリャナに跪いた。
目の前の男は、肩から右腕がストンと無い。そして後ろの人達も何処かしらの肢体が欠損している。足が無い人が、バランス悪く地面に座り込んで、地面に頭をこすりつける姿にミリャナは戸惑ってしまう。目の前の人達を助けてあげたい気持ちはあるが、戦争やダンジョンに行って、勝手に傷付いた人達と、子供達の衣食住を共にさせる訳には行かないのだ。
「パン一個じゃ、流石に悪いよ」
「げ、元ちゃん!いつの間に!?」
ミリャナの背後からひょっこりと顔を出す元気。そしてニコリと微笑む。
「いや、ミリャナの困った様な声が聞こえたから、来てみたんだ」
「そ、そう……」
さっきまでアパートの中に居たのに、急に現れた元気に驚くミリャナだったが、何百メートル離れていても、何故か元気には話しが通じていた事を思い出して、急に現れた事も、話の内容を知っている事も、元気ならあり得ると納得した。
「皆さんに住む所を提供する代わりに、働いて貰う感じになるんですが……それでも良いでしょうか?」
「か、構いません!」
「あと……。子供達に何か危害を加えたら、即刻消えて貰いますけど、良いですか?」
「も、勿論。子供達に危害など加えません!……その様な行いをしそうな者には、声を掛けておりません……」
元気の問い掛けに跪いたまま答える男。どうやらこの男が、今居る浮浪者組のリーダーの様だ。
「そうですか……。なら、アパートをもう一件建てなきゃ……。食事はお風呂に入ってからで良いですよね?仕事の話も……」
「はい!構いま……せん……。ありがとうございます……」
雇って貰える様子に、喜びで顔を上げる男だったが、元気の姿を見て口篭もった。
「……何か?」
「あ、いえ……。何でも無いです……」
元気は久々に受ける。え!?子供!?……という視線に、ついつい反応してしまう。そんな元気に睨まれ、男は視線をそっと逸らした。
男達はミリャナの上には、もっと大貴族の様な大物が居て、その人物がこの場所を開拓したと、思っていたのだ。
「おじさん達にお姉さん達!見た目で人を判断しない様に!」
跪く男達にそう言うと、元気は子供達のアパートの横に、同じアパートをパパッともう一軒出現させた。
「な、なんと……」
「何て魔力なの……」
「凄すぎる……」
驚きざわめく浮浪者達の様子に、ウンウンっと頷き満足げな元気。そんな元気の様子が面白くて、ついつい笑ってしまうミリャナだった。
その後。大人用のアパートで入浴を澄ませた人達に、食事を準備しようと思った元気だったのだが、現在集まっているのは、何処かしらに身体的障害のある人達だ。
このままでは、とてもじゃ無いがまともに働けない。なので先ずは、それを治す事にした。
その上で「まだ、ここで働きたい気持ちがありますか?」と元気は、浮浪者の人達に問い掛けてみた。
「勿論で御座います!神に感謝を!」
すると涙ながらに、元気に向かって跪く浮浪者達だった。
元浮浪者となった十五人の大人の男女達が、こうして、新たに共同体に加わる事となった。
大人達の服装は、男性には、トレーナーとジーパン。女性にはワンピースを準備した。
元気製のパンツが、男女共に大好評だった事は、詳しく語るまでも無い事である。
後日から、元々冒険者だった人達には、子供達の訓練に参加して貰い。兵士だった人達にはアパートの警備をして貰う事にした。
そして、娼婦から浮浪者になった女性達は、戦闘は出来ないので、掃除や洗濯だ。
お風呂に入り身綺麗にした彼等は、少し痩せているだけの普通のおじさん、おばさん達だった。
「戦争に行きたい。と息巻いていた若い頃の自分を、今は張り倒してやりたいですな……」
戦争に向かい、死に目に逢った人達は、口々にそう言って寂しそうに笑う。身体が良くなったら、戦場へ戻る人が居るかも知れないと危惧していた元気とミリャナだったが、その様子は無く、次に日から早速、皆が真面目に仕事をしてくれた。
「ふえ~……。おばちゃん!強過ぎだよ……」
稽古をつけて貰い、クタクタになり座り込む少年。そんな少年の発言にピクリと反応し、笑顔で凄む女性冒険者。
「お、おば……。私はまだお姉さんよ?」
「ご、ごめんなさい。お姉さん!」
女性に素直に謝る少年。眉間に皺が寄った笑顔が、震える程に迫力があって怖い。そこに休憩が終わった男の冒険者が、大剣を肩に掛けながら近寄って行く。
「ハハハ。理不尽な事を言うなよグリア。お前は四十過ぎじゃ……あぐぎぇあ!?」
木刀で、男の頭をかち割るグリア。腰の辺りで結んだ長い髪がふわりと宙に舞う。男の方は地面にめり込んだ。
「いい?サント?……気が利か無い男はこうなるから気をつけなさいね?」
「は、はい……」
グリアに笑顔で諭され、笑顔で返事するサント。そんなサントは、ミリャナの次に強いのはこの人だと確信をした。
この様な感じで、大人達と子供達の関係も、訓練を一緒にしている内にどんどんと良くなって行った。
そして、子供達の特徴に合わせた武器や戦い方を教えられる人が出来た事で、訓練の幅も成長のスピードもグンと向上したのだった。
警備の方を任せた、兵士から浮浪者になった人達は、浮浪者をしている時に行っていた人間観察で、町の危険人物をほぼ把握していた為。墓地の門前とアパートの前に立ち。危険人物の侵入を断固として許さなかった。
元気が警備兵用の槍と鎧を準備した為。大きなイザコザが起こる事も、変態ブルマン達がやって来る事も無く、墓地内には、平和な時間が流れ始めた。
こうして、外壁で囲まれた場所にある墓地に存在するアパートは、現在世界で一番セキュリティーが厳重で、何処よりも安全な場所となったのだった。
そんな時間が、ひと月程流れた頃に、子供達の訓練は終わりを告げた。
「明日から、ダンジョンに向かいます!」
「「「わ~!やった~!」」」
訓練の終わりに行われた、ミリャナの訓練終了宣言に、大手を振って喜ぶ子供達。子供達の後ろに並ぶ大人達は、自分達の稽古した子供達が、一体何処までやれるのかを楽しみにしている様子だ。
「危なくなったら即逃げる!お金よりも命の方が大事!絶対に一人で行動しない!これを絶対に守って、元気に戻って来ましょうね!」
「「「「「「は~い!」」」」」
明るく元気にハキハキと返事をする子供達の嬉しそうな声で、基礎訓練期間が終了した。
本来、ダンジョンに入るには冒険者登録が必要だが、子供達は荷物持ちの仕事をする為に、登録は既に終わらせている。なので明日は、皆でダンジョンに直行だ。
元気は、ここの町のダンジョンってどんなんだろな~?的なノリだが、ミリャナは、まだ見ぬ世界を見られる事。実際に行ける事に、ワクワクとドキドキが止まらないのだった。
ダンジョンに入る事になりました!
何も考えて無かったからどうなるかは、書きながら流れ次第と言う事でw
少しワロタ! もっと読みたい! 心がピクリと反応した! と思われた方は、ブクマ:評価:いいね等々。よろしくお願い致します。
下の ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。
『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw