表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
194/241

訪問者

お父さんとお母さんの役割が逆な二人ですw


 アパートに子供達がやって来た次の日の早朝。元気とミリャナは、子供達の足音で目が覚めた。


「おはようミリャナ……」


「おはよう元ちゃん……」


 二人は挨拶を終えると、寝ぼけまなこで窓の外を見やった。


「まだ外、暗いのに……。早いな」


「そうね……」


 二人はノソノソっと起き上がると、パジャマから着替え、子供達と朝の挨拶を交わしながら共同スペースに向かう。そして朝食の準備を始めた。


 子供達が二十人以上居るので、共同スペースは、学校の教室程の広さがある。そこに椅子とテーブルと暖炉。そしてダイニングキッチンとシンプルな構造だ。


 テーブルにミリャナが食器を並べると、元気がパンとミルクとハムとサラダを出して行く、それに驚きながらも、子供達がテーブルに着席して行く。男の子は黒のウサギさんパーカーにジーンズ。女の子は赤のウサギさんパーカーに短パン、そして黒のハイニーソ。靴は皆スポーツシューズだ。


全ての子供達それぞれに合わせて、似合う服をチョイスとは出来なかったので、皆でお揃いの物にさせて貰った。


 ヒソヒソと笑顔で何かを話す子供達。どうやら朝御飯が食べられるのが嬉しい様子だ。


 朝食の準備をしながら、二人が驚いた事があった。


 それは、子供達が配膳を終えるまでちゃんと大人しく待っていた事だ。


 そして、皆が元気の方を見て合図を待っている。生活の質は悪い様子だが、礼節を覚えている子供達に感心する。例えは酷いが、待てをしている子犬の様にソワソワしている子供達の様子に、元気とミリャナは笑ってしまいそうになってしまった。


「では!戴きます!」


「「「「「い、戴きます!」」」」」


 あまり待たせるのも可哀想なので、元気が挨拶をすると、知らないであろう戴きますを、子供達が勢いにつられて行い、食事が始まった。


 ガツガツとパンやハムを頬張る子供達。食べ方の方は綺麗では無かったが、そこは致し方無いと、注意等はしなかった。


 食後は、一人一人食器を洗って食器棚に自分達で食器を直す様に指示した。


 それは、ここは施設では無く、共同生活の場所と認識させる為である。そして布団を畳む事なども指示し、子供達に自分で行わせた。


 その後。子供達をミリャナがアパートの前に整列させた。


「今日から暫くお仕事は、お休みです!」


「「「「「えぇ!?」」」」」


 一斉に驚く子供達。そんな子供達に元気が準備していたナイフや剣等の武器を渡した。


「今日から貴方達は、暫く訓練をして、ダンジョンでお金を稼げる様になって貰います!」


 ミリャナの提案にざわめき立つ子供達。そんな中、アニーが一歩前に出てミリャナを睨みつけた。


「アナタが強いのは、昨日解ったけどさ!子供を抑えるのとモンスターと戦うのは、別物でしょ!」


「そうね。……全然別物ね……」


「大体、私達みたいな魔力の無い女や子供達が、ダンジョンヘ潜ってモンスターと戦える訳が無いじゃない!中途半端に戦い方を教えるなんて、何を考えてるの!?アナタは私達をダンジョンヘ送り込んで殺す気なの!?」


「殺す気なんか無いわよ……。それに中途半端な事もしないわ……」


 前のめりでミリャナに食ってかかるアニーに、ミリャナが挑戦的に笑う。そして顔を元気に向けるとコクリと頷いた。


 その合図を受けて、元気は昨日ミリャナにお願いされた通り。外壁の前に訓練様の木人を五体程出し、それとは別にミリャナ様にもう一体出した。


「な、何をする気……?」


「私の本気を見せるのが、一番解りやすいかな?と思って……。貴方達……危なから近づいちゃ駄目よ……」


 ミリャナに声を掛けられ、外壁前の木人から恐る恐る離れる子供達。それを確認すると、ミリャナは外壁前の木人の前に立った。


 そして、息を大きく吸い込むと格闘家の様に足を開き、拳を構え。スドドンドン!と正拳突きを打ち込み。そして最後にズドン!と回し蹴りを叩き込んだ。


 すると最後の回し蹴りで、木人を支えていた鉄製の棒が叩き折れ、外壁へと吹き飛び、粉々に砕け散った。


その光景を見て唖然とする子供達と、いつもの拳骨が、手加減である事に気づき、背筋が凍る元気。ミリャナが繰り出した連撃は、パンチラを拝む余裕さえ無い程の早さだった。


 一同が、鉄の棒が刺さった外壁を見ながら静まり返る中。ミリャナは、壁を見てウンウンと頷き、満足げだ。


「ちゃんと訓練してレベルを上げれば、魔力が無くても、これ位は直ぐに出来る様になるわ!一緒に頑張りましょう!」


 ミリャナは、満面の笑みで子供達にそう言うが、その場に居る一同は思う。直ぐにそんな事が出来る様になる訳が無い。と……。しかしそれをミリャナに向かって堂々と言える勇者は、現れる事は無かった。


 早速その日から、元気とミリャナは子供達と一緒に、朝と昼の戦闘訓練を始めた。


 あまりにも幼い子供達と戦闘に向かない障害のある子供達は、アパートの掃除や洗濯物などをさせる事にした。


 障害のある子供達を見捨てないミリャナと元気の姿勢に、子供達は安心した様子で、素直に訓練を受け始めた。


 訓練はミリャナが担当。そしてアパートの掃除等は元気の担当だ。


 障害のある子供達は、口で言うだけでは作業を覚えるのが困難な様子だったので、元気が一緒に同じ作業を行う事で、徐々に掃除や洗い物を覚えて行った。


 元気の根気良い面倒見の良さは、施設で子供達の世話をしていた時の名残。出来なくて泣いてしまう子供や、お漏らしをしてしまう子供達の世話も面倒臭がる事無く行った。


 ミリャナの方も、子供達にミノスや露死南無天ロシナンテに教わった戦闘訓練を忠実に指導し、子供達の基礎能力をグングンと伸ばして行った。


 レベルが低い内に基礎を上げておくと、レベルが上がった時にステータスが伸びるという、ポタンが見つけたこの世界の裏技。それを実行する為に、ひたすら基礎訓練に励んだ結果である。


 こちらの方は、死に目に会わないで御飯が食べられるのと、頑張ったら頑張った分だけミリャナが褒めてくれるので、それが嬉しくて、一生懸命に子供達が頑張った。


 午前は戦闘訓練。午後は魔力の訓練。そして夜になると、ミリャナは子供達のお母さんに、アパートの宣伝をして回った。


 忙しいが、働き者のミリャナにとっては、充実した時間だった。


 しかしミリャナのやる気とは裏腹に、お母さん達の方は、今まで自分達の力で生きて来たプライドを折る事が出来ず。他人の助けを受けたく無いと、アパートに姿を現す人はいなかった。


 元気達がそんな日々を続けていると、アパートに訪問者が現れる様になった。


「おい!テメェら!ガキ共を寄こせ!荷物持ちがいねぇんだ!」


 その訪問者とは、柄の悪い冒険者達だった。


「お仕事の依頼は嬉しいですけど……。お値段はお幾ら程?」


「あ?そんなのお前に関係無いだろ!さっさとガキ共を寄こ……せぎょえ!?」


 凄みながら、ミリャナの肩を掴んだ半裸の男が、ミリャナのビンタで数メートル横に飛んだ。そして数秒間、宙に浮いた後。ドッサっと地面に落ちた。


 その男の同行者二人はその光景に驚愕する。三人ともハゲていて、半裸に肩パッドに胸当て、そして黒いパンツ……ブルマを一枚履いている。更にハイニーソの様な物を履いていて不気味で気持ち悪い。


「……どうぞ。お帰り下さい……」


「あ、はい。……お邪魔しました……」


 変態に子供達は預けられない。ミリャナはそう思う。しかしミそんなリャナの親心虚しく、ビンタされた変態が、白目で泡を吹きながら、仲間に運ばれて行く様子を目にした子供達は、ミリャナは絶対に怒らせてはいけないと、ミリャナの恐ろしさを再確認するのだった。


 そして、そんな冒険者達が来る様になってから、子供達の実戦訓練も始まった。


「あぁん?もういっぺん言って見ろや!このブス……では無いけど、ブス!」


「なので、この子達に決闘で勝てたらどうぞ」


「はぁ?舐めてんのかブ……ぐげあぁぁ!?

 」


 青筋を立てたミリャナにグーで殴られ、空中回転しながら飛んで行くブルマ男。それを子供達が地面に落ちる前に、タイミング良くキャッチする。


「ミ、ミリャナさん!グーは駄目ですって!死んじゃうから!」


 ミリャナを怒りながら、キャッチした男をドサッと放り投げる子供達。


「……あら。ごめんなさい……フフフ……。それで……貴方達はどうするの?」


 ブルマー男の仲間のブルマー男達を、ギロリと睨みつけるミリャナ。普段怒らないミリャナだが、最近は、変態冒険者達に遠慮が無くなっている。一週間に数回来るのだから当然だ。


「お、おととい来やがります……。失礼しやした~!」


 気絶したブルマンを抱え、逃げ去るブルマン達。その後ろ姿を見ながら溜息を吐くミリャナ。


「何でここの冒険者達ってパンツ一枚なのかしら……?しかも……子供を連れて行く前から……。信じられないわ……」


 ブルマン達の様子を思い出すだけで、怖気おぞけが走り、顔を顰めてしまうミリャナ。その様子に子供達が不思議そうにする。


「ミリャナさん?何が信じられないの?」


「こ、子供はまだ知らなくていいの!……訓練を続けなさいね……」


「は~い!」


 素直に訓練に戻る子供達の中に数人、ミリャナが顔を顰めている理由を知っている子供がいる様で、顔が青ざめている。その様子に、ミリャナはまた溜息が出てしまう。まだ十から十二程の少年少女達なのに、男の反り返るアレが何を意味しているのかを、彼女、彼等は理解しているのだ。


「大丈夫だからね……」


 顔が青ざめている子供達に、そう声を掛けて回るミリャナ。すると安心した様に、ホッと息を吐く子供達。


 その子供達の姿に、彼等に何も奪われない強さをと、改めて心に決めるミリャナなのだった。


 ブルマン達と子供達の決闘は、日々の鍛錬のお陰で、見事子供達が勝利する様になっていた。


 その頃元気は、アパートの中で子供達に文字の読み書きや計算を教えていた。


 結局元気達は、その内ここから去る身だ。


 その後からは、アパートの経営は子供達がする事になる。なので、ポタンならこうするだろうと考えての行動である。親は子供を育てている間に、子供から色んな事を学ぶものなのだ。


 遊びながらゆっくりと教える元気のやり方は、ポタンにはイライラされて怒られるが、ここの子供達に大人気。障害のある子供達も、基本的な文字の読み書きに、簡単な計算位なら出来る様になっていた。


 そんな生活がひと月程続いたある日の事だった。


 新たな訪問者達がアパートにやって来た。


「わ、我々にも……。子供達の為に何か出来る事は無いだろうか?」


「子供達の為に……ですか……」


「貴女様の姿を毎日見ていましたら……このままではいけないと思いまして……。その……迷惑でしたら……すいません……」


 申し訳無さそうに、ミリャナに声を掛けてきたのは、町中を徘徊していた浮浪者達だった。

さてさて、二人が何かすると話しが大きくなるのは必然ですねw


次回は浮浪者達の正体とは?的な感じです(*^_^*)


少しワロタ! もっと読みたい! 心がピクリと反応した! と思われた方は、ブクマ:評価:いいね等々。よろしくお願い致します。


下の ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。


『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ