本気(マジ)モード
直ぐに過ぎ去るハズだった町で彼等は一体何を始めるのか……。プロット無いので謎ですw
アパートを開設した夜。最初から居た子供達十人とは別に、更に十人程住人が増えた。
物乞いをしていたのは幼年組で、夜に戻ってきたのは、少年、少女組。十二、三歳程の子供達だ。
「一体何のつもりなの!金なんか無いわよ!私達を捕まえて、変態にでも売るつもり!?子供達を返しなさいよ!」
十二歳程の金髪お下げの女の子が、アパートの入り口で、威勢良くミリャナを睨みつける。彼女の後に立っている少年少女も気後れしながらだが、警戒態勢だ。
「良いわよ。連れて行きなさい」
「え!?」
彼女の要求に対して、素直に応じるミリャナ。その反応に驚く少女達。
「子供達を外に連れて行って、寒い中、臭くて汚い洞穴の中で眠るといいわ。皆さんお迎えが来ましたよ……」
ミリャナが振り向くと、ミリャナの後ろでは、子供達が不安そうにしている。
美味しいオヤツに御飯。そして暖かいお風呂に寝床があるアパートと、暗くて臭くて虫の出る洞穴。比べるまでも無く、洞穴には戻りたく無い子供達。そんな子供達を、無理矢理連れて行こうとアパートに入る少女。それをミリャナが腕を掴んで止める。
「あ、アンタ達……帰るわよ!……ちょっと!何するのよ!」
「無理矢理は駄目よ……。貴方は人間でしょう?お口でお話をしなさい」
「離せ!この野郎!馬鹿にしやがって!」
腕を捕まれた少女が逆上して、ミリャナに殴るかかる。しかし少女の拳が今のミリャナに通用する訳も無い。
「……満足したかしら?」
「ば、化け物かよアンタ……」
腕を捕まれたままミリャナを数発殴打した後、驚きながら肩で息をする少女。子供達と一緒にオロオロする元気は、見守るしか出来ないでいる。終始高圧的な態度のミリャナには、何か理由があるのだと解るので、中途半端に止める事が出来ないのだ。
「もう、いいよ……。離せ……」
「離せ?」
「…………。離して下さい」
「……。人の事をたくさん殴っておいて……それだけなの?」
少女に向かってニコリと微笑むミリャナ。その笑顔の圧に気圧され青ざめる少女。
「ご、ごめんなさい……」
「よろしい。それで……。どうするのかしら?貴方の答え次第では、御飯もお風呂もお布団も準備するけど?」
「何だよそれ……。訳が解んないって……」
子供達とミリャナを交互に見やる少女。
「ア、アニー。ミリャナさんが言っている事は本当だよ!……御飯美味しいよ!お風呂も暖かいんだから!」
「オヤツも美味しいよ!アニー達も入っておいでよ!」
「二人とも優しいし大丈夫だよ!」
困惑する少女。アニーに向かって、アパート内の子供達から援護射撃が飛ぶ。アニーはその様子に更に困惑してしまう。大人は簡単に信用するな。と子供達に言い聞かせていたからだ。
「な、何者なんだアンタ……」
大小なりにも、子供達は危険な目に合っている。そんな子供達が短期間で信用する大人にアニーは初めて出会った。
「何者?私はミリャナであっちが元ちゃん。このアパートも御飯も元ちゃんが作ってくれたのよ!」
バッと広げた手で元気を紹介するミリャナ。
「え!……。あ、こんばんは~……」
急に紹介され、情け無い笑顔で手を振る元気。その様子と元気の情け無い顔が面白くて、一斉に笑う子供達。その様子にアニーの気が抜けて行く。
「か、金は本当に……要らないのか?」
「ええ。要らないし子供達も売らないわ、必要無いもの」
「……そう」
ここで、ミリャナから子供を捕まえて売る為にやっている。と言われても、先程実力の差を見せつけられているので、実際どうしようも無い。戦っても捕まるか殺されるだけだ。
そして、子供もお金も必要無い。と言われればそうだろうとアニーは思う。ダンジョンに潜れば子供一人分位の稼ぎは、ミリャナ程の強さがあれば直ぐに稼げる。その事をアニーは知っているので、言い返す言葉が無い。
「アニー。貴方がリーダーみたいだけど……。どうするの?後ろの子達……疲れているんじゃ無いの?……あら。元ちゃん!ちょっと来て!」
「ど、どうしたの!?」
アニーの後ろの子供達を見て、急いで元気を呼ぶミリャナ。元気が外に立っている少年達を見ると数人怪我をしている。そしてそれをぼろ切れで抑えているだけ。その雑な処置の方法に呆れてしまう。そして見るからに顔色が悪い。元気はそんな様子の子供達を急いで治療して回った。
「ふう。取り敢えず治療は終わり。でも、血は戻らないから、ちゃんと栄養を取らないとな……」
「あ、アンタ……。何者?」
元気の行動に驚くアニーと少年達。前にも書いたが、この世界では他人の治療に魔力を使う人間は少ない。そして無償でそんな事をする人間はまずいないのだ。
「え?俺?……。フフフ。女神様の従順なる下僕で御座います」
ミリャナに向かって、丁寧なお辞儀をする元気。
「げ、元ちゃん!何言ってるの!?それは辞めて!」
ミリャナは、お江戸で女神と言われ、そう言われる事を嫌がる。しかし、彼女が女神だなんて最高。ミリャナが女神?そんなの当たり前と思っている元気は、かなり気に入っている。
「め、女神……様?」
アニーがポカンとしながら、ミリャナを見るとそれにつられて、子供達も一斉にミリャナを見やる。
「ち、違うわ!ちょっと!元ちゃん!」
「おっし!お前ら!飯にするぞ~!」
怒るミリャナを背に、少年達に向かって両手を上げて御飯アピールをする元気。怪我を治して貰った少年達は、元気の言った事を信じてしまっている様子だ。
元気の後について、ゾロゾロとアパートに入って来る少年達を見て、元気を怒るに怒れなくなるミリャナだった。
その後。お風呂と食事を済ませた少年達に、今まで何をしていたのかを聞く事にした。
話を聞いた結果。この町の地下にはダンジョンがあり。そこに潜る冒険者達の荷物持ちをして、少年少女達は稼いでいるとの事だった。
ダンジョンと聞いて、瞳が輝くミリャナだったが、その後の話を聞くに連れ、どんどんと顔色が曇って行く。
子供達を置いて帰って来る冒険者に、お金を払わない冒険者。子供を囮に使う冒険者に、荷物持ちでは無く、性的暴行目的で地下へ連れて行く冒険者。命からがら戻っても、どんなに酷い目にあっても、御飯を食べ無ければ死ぬ。なので、子供達は次の日にはまた、恐怖を抱えたままダンジョンヘ行かなければならないのだった。
「何よその顔……。助けて貰っておいて何だけど……。私達を可哀想だとか思わないでよね……」
「……。そうね……そうするわ」
アニーにそう言われ、謝らず同意するミリャナ。そんなミリャナに感心する元気。元気なら百パーセント謝っている場面だ。
就寝の時間になると、女の子と男の子の部屋分けをして就寝、これに感しても、理由を理解している子供達に心が震えるミリャナ。子供達の就寝を確認すると、自分達の部屋に戻った。
そして、元気とベッドの上で向き合うと、おもむろに口を開いた。
「……元ちゃん。ごめんね……。また……やりたい事が出来ちゃった……」
「そっか。いいよ!何でも手伝うよ」
「フフフ。ありがとう元ちゃん……大好き」
ミリャナに理由はもう聞かない元気。ミリャナのやりたい事が、悪い事なはずが無いと、絶対の信用と信頼をしているので後座早漏。
そんな、素早い夜が明けた次の日の朝から早速、ミリャナの行動が開始したのだった。
増えた子供達と新たな情報。そして……。まだ増えますw
次回は、訓練する予定w
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