活動開始
爆弾魔見参。
問題を解決する。と決めたら素早く動く元気とミリャナ。先ずは、墓地内の外壁の傍に、子供達が雨風をしのいで眠れる、二階建ての木造のアパートを建てた。
部屋数は一階二階共に五部屋程の大きさで、一部屋四人程の眠れる様になっている。一階の東側はお風呂や台所。右側はトイレ。昭和初期頃の共同アパートをイメージして貰えれば解りやすいと思う。知らない人はググって調べて見て欲しい。
そしてミリャナは、今居る子供達のお風呂のお世話。その間に元気は、母親達に話を聞いて回る事にした。
子供達をほったらかしにしている理由を、元気自信も聞いてみたかった。
「あの人がお母さんだよ!……お母さ~ん!」
街角に立っている、厚化粧のお姉さんに笑顔で駆け寄って行く男の子。元気はその少年の後を追う。
「ちょっとアンタ、仕事中は話し掛けないでって言ってるでしょ?」
「ご、ごめんなさい……」
「ったく……。アンタその服どうしたんだい?盗んだのかい?」
煙草を吹かしながら、少年を見やるお姉さん。お姉さんの発言にも驚くが、この世界に煙草があった事にも驚く元気。
「盗ってないよ!このお兄ちゃんがくれたの!」
「ふ~ん……。そう、あんがとね」
「あ、いえ……」
元気はお姉さんにジロジロと見られ、目を逸らしてしまう。話を聞きに来たのだが、何だか気まずい。
「何だいアンタ黙っちゃって……?……アタシとしたいのかい?昼間は一発。小銀貨一枚だよ」
黒いロングパーマに長い睫毛。赤い口紅にショートドレス姿にガーターベルト。そして中々に撓わな果実を、ポロリとお持ちのお姉さんにそう言われて、元気は焦る。
「い、一発!?……いや!そう言う訳じゃ無くて……。その……この子の事でちょっと……」
「チッ。客じゃ無いのかい……。余計なもん連れてくんじゃ無いよ!お馬鹿!仕事の邪魔だよ!向こうに行きな!」
「ご、ごめんなさい!」
パシンと頭叩き、少年に向かってシッシっと手を振るお姉さん。それにシュンとする少年。元気は、軽い気持ちで来た事を早速後悔し始めた。
「あ、あの。これで、ちょっとお話を……」
元気はお姉さんに、小銀貨一枚を渡した。
「……へぇ。アンタ見掛けに寄らず金持ってんのね?……で、なに?……その子でも欲しいのかい?」
「い、いや……。欲しくは無いです……」
「じゃあ。一体何だい?」
銀貨を受け取ったお姉さんは、話をしてくれる気になった様だが、意図が掴めずイライラしている。顔立ちが良いので不機嫌な顔が綺麗で怖い。
「えっと……。子供を……ほったらかしにしている理由が知りたくて……」
「はぁ?聞きたい事って、そんな事かい……。子供が一緒に居たらお金が稼げないだろ?それ以上でも以下でもないよ……」
「お金……」
「何だい?不満そうな顔だね?仕事せずに子供の世話して、一緒に餓死しろって言うのかい?」
「いやそんな事は……。そうだ……父親とかは……?」
「さぁね?何処かで死んでるんじゃ無いかい?どの客の子供かも知らないよ……」
「い、家とかは?」
「チッ……。本当に……めんどくさいわぁ……」
元気が質問する度に、どんどんと不機嫌になって行くお姉さん。一緒にいる少年もオドオドしている。
「家を買うには金がいるだろ?家が買える様な金がある様に見えるかい?」
「あ……すいません……。じゃあ。寝泊まりとかは……」
「チッ。謝るんじゃ無いよ。失礼なヤツだね。寝泊まりは、客の家か宿屋だよ……」
「借家とか無いんですか?」
「何だいそれ?」
「家を借りて暮らすとか……」
「はぁ?いつ死ぬかも消えるかも解んない人間に、誰が家を貸すんだい?何を言っているんだいアンタ?」
「それも、そうですね……」
「そうですねって……。本当にムカつくガキだね!」
お姉さんにギロリと睨まれて、迫力でキュンと玉袋が縮む元気。地雷を踏みすぎて、そろそろひっぱたかれそうで怖い。なので次の質問を最後にする事にした。
「あの……。住む所があれば……子供と一緒に住んでも良い気持ちは……ありますか?」
「はぁ?アンタが家でも買ってくれるのかい?……まぁ、別に一緒に住む位は構わないよ……面倒を見られるかは知らないけどね」
お姉さんがチラリと子供を見る。その目は冷めた物で、自分の子供に向ける目では無い。
しかし、それでも……。と元気は思う。
「小さな部屋なら……。準備できます……。と言うか……。準備できてます。他の人と共同で生活をする建物なんですけど……」
「何だいそれ?……怪しいにも程がありすぎるだろう……アンタは一体。何を考えてるんだい?詐欺だったら他でやんな」
お姉さんに不気味な物を見る様に見られ、何だかゾクゾクッとする元気。新感覚で悪くない。
「人助け……ですかね?……幸せのお裾分けと言いますか……。なので遠慮もお金も要りません!」
「ふ~ん。幸せのお裾分けで人助けね……」
元気の言った事にニコリと笑顔を見せるお姉さん。思いが伝わった様子に嬉しくなり、元気も笑顔を返す。
「はい!子供達にもお母さん達にも幸せ……ぎゃあ!?」
そして、笑顔のままビンタをされた。
「舐めんな……。クソガキが……」
背筋が凍る程に元気を睨みつけたお姉さんは、ポカンとする元気と少年を置いて、路地へと消えて行った。
この話を、アパートに戻ってミリャナに話した所。ミリャナに深い溜息を吐かれた。
「それは怒るわよ……。大人の女性に……それも、必死に働いている人に、貴方達は不幸だから助けてあげるって……」
「え?……そんな事は言ってないって……」
現在アパート一階の食堂にて、二人は夕食の準備中だ。
「はぁ……。元ちゃんが無自覚だって解るのは、私達家族だけなのよ?……元ちゃんは、幸せな人に幸せをあげたいと思うの?」
「幸せな人には……あげたいとは思わないかな……」
「じゃあ。誰にあげるの?」
「そりゃ。困ってる人に……」
「それって……。誰の事?」
「誰って……。子供達やお姉さん達?」
「何でお姉さんが、不幸せ……。困ってると思ったの?」
「子供と一緒に暮らせないし、家が無いし……身売りしてるし……お金が……無いし……」
「それでも一生懸命生きてる人が、年下の子供に、幸せを分けてあげるって言われて……。手放しで喜ぶと思う?」
「それは……。すげぇ、腹立つと思う……。どうしよう……やっちゃった……。今度は家族以外の人に……」
元気の得意技。『地雷踏み』人の心やプライドを無意識に踏み荒らす。KY特有の必殺技だ。
「言っちゃった物は、仕方ないわよ……。言い方は良く無いけど……。方向性は良いと思うわ……」
「……方向性?」
「うん。アパートを貸家にして、お母さんと子供が一緒に暮らせる場所にするってやつ……。そうね……。家賃はお金じゃ無くて、子供と過ごす時間とかでどうかしら?」
「……良いと思うけど……。でも、どうやって誘えばいいの?」
硝子のハートの元気は、子供の母親達とお話をする自信が、既に萎んでしまっている。元気のその情け無い姿に溜息を吐いてしまうミリャナだったが、同時に愛しくも感じてしまう。
「まったくもう……。明日。私がお話に行ってみるわ」
「ミ、ミリャナ……。ありがとう!」
ミリャナに半べそになりながら抱き付く元気。そんな元気をヨシヨシするミリャナ。今更だが、ミリャナは生粋のダメンズ好きなのであった。
良く言えば、素直。悪く言えばお馬鹿な元気です。皆は、相手の話に同意する際は気をつけましょうねw
次回は、夜に戻って来る子供達と……です。
少しワロタ! もっと読みたい! 心がピクリと反応した! と思われた方は、ブクマ:評価:いいね等々。よろしくお願い致します。
下の ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。
『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw