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東大陸の果ての町~『ダグスラクタル』

ストレス解消の方法は人それぞれw



 中央王国から西へ約八十キロ。『ミリュミエット』この町は世界中の芸術家が集まる、芸術の町。元気が昔、果物を恵んで貰ったお爺さんがいる町はこの町から船で川を渡った先だ。


 現在二人は、船の時間までの暇潰し中。船酔いするのに船に乗るのは、旅なのだから、陸地を行かなければ!と言う謎の意地である。


 ミリュミエットの町の中央広場にて、絵画やオブジェクトを見て回る元気とミリャナ。バザーが色々とあって賑やかで、歩く人々の服装も奇抜で面白い。だが奇抜過ぎてミリャナには難解な様子だ。


「……これは……。お花の絵かしら……」


「いえ。猫です」


「……そ、そうなんですね……。よく見れば……猫に……見えます……」


「そうでしょう!小金貨一枚ですがおいかがですか?」


「しょ、小金貨ひゃくまんえん一枚……。ちょっと他を回って考えてみます……」


 黄色っぽい花の様な、グチャグチャな猫の絵を売る。全身白タイツの男の店を後にする二人。


「絵を売っている人を始めて見たけれど……絵って……あんなに高い物なのね……」


「解る人には解るんだろうけど……」


 売っている物が、難解過ぎて首を傾げるミリャナ。勿論、元気にも難解過ぎて解らない。


 ピンク色のキラキラのコートや、大きなサングラスっぽい物を着けた人。ニワトリの鶏冠とさかっぽい帽子を着けた人に、左右対称の色の洋服を来た人。


 影も形も無く。原型が何だから解らないカラフルな絵画に、変な形の針金アート。元気達に凄さが解るのは、現代の物とあまり変わらない彫刻位だった。


「これなら、元ちゃんのお絵描きの方が上手だわ……」


「そ、そうかな~?フフフ……」


 学校に行かず、本を読んだり。絵を描いていた元気は普通に絵が上手。イメージ力が強いのもその為だ。


 何と無く二人の足が向いた路地裏に、浮浪者らしき人達が数人居たが、お酒を飲んでいたり、パンをかじっていたりと、村の人達とは違い、命の危険は無さそうだったので、声を掛ける事はしなかった。


 その後暫く町の様子を見て回った元気とミリャナは、時間になると船に乗り込んだ。


 一時間程船に揺られると対岸に着き、そこからは徒歩で次の町へと向かう。押し花の旅の再開だ。


 辺りは見渡す限りの平原。一応次の町までの街道はあるが、手入れがされていなくボロボロである。


 押し花をしたり、モンスターを倒したり。イチャイチャしたりしながら、平原を進んでいると、元気達がサバイバルしていた懐かしい森が遠目に見え出す。そしてその森を右手に見ながら少し進むと『パラオ』の町だ。


 ミリュミエットの町を出発して、約一ヶ月後。二人はやっと町に到着したのだった。


 歩いて一ヶ月の旅路。普通ならば信じられない行為だが、元気とミリャナの間で流れている時間はお爺ちゃんお婆ちゃんの「今日も良い天気じゃのう……」的な物なので気にならなかった。


『パラオ』この町は農業メインの町。広大な畑や果樹園等に囲まれ町が存在している。なので、冒険者ギルドの依頼も害獣駆除等の依頼が多い。名産品は梨やリンゴ等が有名だ。


 パラオの農園を数ヵ所回ると、元気はお爺さんの姿を発見し、話し掛けて見たが「誰じゃたかの?」とお爺さんは元気の事を覚えていない様子だった。


 覚えていて欲しかった気持ちもあったが、二年近くも前に一度合っただけの人。覚えて無くても仕方なかった。


 なので、果樹園の果物を木箱二つ分購入し、アルカンハイトの家へと送り。それをお礼とした。


「これで良かったの?」


「うん。まぁ……。果物を恵んで貰ったけど、別に積もる話も無いからなぁ……」


「そっか……」


 元気の前の旅は殆どがサバイバル生活。その事を知っているミリャナはそれで納得する。人との交流が無い以上。思い出もクソも無いのだ。


 買い物を済ませると次は、町の中を探険だ。


 円形の街並みの中心に、宿屋にギルド等の施設、バザーがある。宿屋はロウベルグとは違い。一部屋一泊。小銀貨いちまんえん一枚と良心的。食事はカチカチパンと水っぽいスープ。それに焼いただけの鶏肉だったが、付け合わせのデザートが、とても新鮮で美味しかった。


 中央王国から西の町々を管轄とする貴族達は、基本中央王国に居るので、この辺りは治安が良い。と宿屋のおばさんが教えてくれ、ロウベルグや西側の村々での貴族達の行いを思い出し、納得する元気達だった。


 その後。ミリャナと一緒に、元気の暮らしていた森でモンスター狩りや、珍しい花を探したりして暫く遊んで次の町へと向かった。


 次に訪問したのは、中央戦線に一番近い町『ダグスラクタル』そこからは、町の景色と空気がガラリと変わった。


 高い城壁に囲まれ、町の至る所に大きな武器防具工房が点在している。そこから黒い煙が上がり、鉄を叩く音と鉄が焦げる匂いが町中に広がっていた。


 建物はレンガ造りの物が多く、アパート形式の物が殆どで物々しい雰囲気。


 そんな町中を我が物顔で闊歩する兵士や冒険者達に、昼間から濃い化粧をして街角に立つ女性達。そして、物乞いをする子供達にゴミ箱を漁る浮浪者と、ダグスラクタルは治安の悪いスラムの様な町だった。


「……この町には、長居しない方が良いかもね……」


「……そうね。……でも……」


 遠巻きに聞こえる、男達の喧嘩の怒声にビビる元気とは違い。物乞いをする子供達が気になる様子のミリャナ。そんなミリャナを見て、元気は薄汚れた子供達を手招きをして呼び寄せた。


 そして、寄って来た子供達に食べ物をあげる代わりに、子供達の住処に案内して貰う事にした。


「……ありがとう。元ちゃん!」


「どういたしまして!」


 こうする事で一番ミリャナが喜ぶ。と既に認識している元気。そして、元気も元気で子供を甘やかすのが好きなので、不憫な子供達がいると、自然とこうなる。困っている子供や人達を助けたいミリャナと、子供達や女性を甘やかしたい元気の、自己満足的な偽善救済活動開始だ。


 十人程の子供達に囲まれながら、町の西の城壁に向かって歩き出す元気とミリャナ。兵士や娼婦。冒険者達で賑わう飲み屋の通りを進んだ先の広場へと子供達は二人を案内してくれた。


「……こんな所に……住んでいるの?」


「こいつら……一体何処で寝ているんだ……?」


 子供達に案内され辿り着いた場所。そこは共同墓地だった。


 広さはあるが寝泊まり出来る様な建物の姿は見当たらない。


「寝る所はね。ここの奥」


 一人の子供が元気の呟きに反応し、指差した先にあったのは、外壁にひっそりと空いた大きな穴だった。


 よく見るとその穴は、外壁沿いに等間隔で掘られている。中を覗くと、残飯や汗のすえた匂いが漂う、奥行き百メートル程の石作りの空間が広がっていた。


 ボロボロの毛布が数枚置いてある以外は、食べ物のカスの他に何も無い。そこは明らかに子供達が暮らす様な空間では無かった。


 それなのに子供達は皆、笑顔でニコニコしている。ミリャナはそんな子供達の様子に涙が溢れてしまう。


「お姉ちゃんどうしたの?」


「……な、何でも無いの……ゴメンね」


「何でも無いのに泣くのね?変な人~」


「フフフ……。そうね……」


 ミリャナを見て笑う子供達は、この町で生まれ、物乞い生活をしながら育った子供だ。


 彼等にとって、この墓地で寝泊まりして、物乞いをする生活は普通。なのでミリャナが何故泣いているか解らない。


「お前ら……。お父さんお母さんは?」


 保護するとしても、誘拐する訳にはいかないので、これは一応の確認だ。


しかし子供達の返答に、元気達は困る事となった。


「僕のお母さんは町にいるよ?」


「え?お前ら……。お父さんお母さんいるの?」


「お父さんは知らないけど、お母さんはいるよ!一緒に暮らしていないだけ!」


「一緒に暮らしていないだけって……」


 子供達には、それも普通の事の様で満面の笑顔だ。


 いつもの流れで、アルカンハイトの孤児院に子供達を送って、ポタンに怒られて、マーザーとシスター達に忙しくなるのでと、お礼を渡して終了。と簡単に考えていた元気とミリャナだったのだが、目の前に居るのは孤児では無く……。『育児放棄ネグレクト』された子供達だった。



ダグスラクタルまでは、平和だった旅も一転。戦地近くの町で一気に曇ります……がしかし……。


続きは本編でw


少しワロタ! もっと読みたい! 心がピクリと反応した! と思われた方は、ブクマ:評価:いいね等々。よろしくお願い致します。


下の ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。


『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw



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