表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
187/241

越えた先にあるもの

なろう系では好かれない感じの進め方かな?w



 元気達がロウベルグから次の町へと山越えをしている頃。アルカンハイトではコルネリウス中央国王就任計画を潤滑に進めるべく、新たな計画が発足しようとしていた。


「……と言う訳で……中央国を取れば、良いと言う訳でも無い様です……。下手したら内戦が起きるかも……」


 新発売しようと作った。紙パック型苺ミルクをストローでチューチューするポタン。


「ふむ……。地方の治安がそこまで酷いとは……。む……美味しいなこれは……」


 同じく試作品をチューチューするヴァイド。渋い顔に可愛い苺のパック柄が意外と良く似合う。


「孤児とは言え、子供達を追いかけ回して殺すとは信じられんな……。これは……甘過ぎやせんか?……子供向けだろう……」


 グレイは一口飲んでギブアップ。苺ミルクよりも、顰めっ面の方が自然で似合っている。


 アルカンハイトの執務室でソファーに座り向かい合うポタンとヴァイドとグレイ。ポタンが子供達の情報をリャナから買い取り、ロウベルグの情報をゲットした。


「しかし……。物価に税収に、孤児や領民の扱いを我々が知った所で仕方無いのでは無いか?ケプゥ……。あ。スマン……。ゲップが出た……。一気に飲み過ぎてしまった様だ……」


 ゲップをしてしまい照れ笑うヴァイド。ヴァイドは苺ミルクがとても気に入った様子。そんなヴァイドにニコリとするポタン。一国の王が新商品のリピーターであるならば万々歳だ。


「フフフ……。気にいって貰えて良かったです……」


「ヴァイド。我々だけだからと言って気を抜きすぎだ……まったく……」


 そんな二人の様子を見てグレイが溜息を吐き、そんなグレイにヴァイドが噛みつく。


「兄さんだって良くグレイスとイチャついてるじゃ無いか?……城の中で位良いだろ?」


「イ、イチャイチャなど……しとらん……。ポ、ポタンよそれで……本題は何なのだ?」


 ヴァイドにジト目で睨まれ話題を逸らす。もとい、元に戻すグレイ。今日は仕事の後にグレイスと二人。星空の下で読書感想会だ。


「えっと……以上を踏まえた上で……魔族が東の大陸を攻める事になりまして……」


「「はぁ?」」


 ポタンの発言により、まったりとしていた執務室の空気が一気に凍る。驚きでポカンとしている二人を見て、いつもならほくそ笑むポタンだが、今回は少し申し訳無い気持ちだ。


「……ばあちゃんに情報を聞いてたら……。じいちゃんが入って来て……。そしたらアイリスも入って来て……」


「最悪だ……」


「油断が過ぎるぞポタン……」


「す、すいません……」


 リャナとダルドリーの参戦に頭を抱えるヴァイドとグレイ。世界を揺るがす中央王国乗っ取り計画。そんな計画に入ってはイケない人間の参戦。頭を抱えてしまうのは当然の事だ。


 ダルドリーの「面白そうだな!」の発言から広がった話は、広がりに広がり。


 王の威厳を最大限に引き出す為。ニコラウスを神の代行者ではなく、魔族や弾圧から国民を救った英雄、勇者に仕立て上げるのはどうだろうか?と言う話になった。


「へぇ~……。面白そう……。オジさんバイク出してよ……。ちょっとお父様に言いに行くわ!」


「おう!わかった!」


「ちょ!ちょっと!?」


 行動的なアイリス。そして直感で動くダルドリー。そんな二人をポタン一人で止められるはずも無く、二人が家を飛び出して即日の夜中。


「明日から進行するって……。パパが率いる魔王軍がアルカンハイトを拠点にロウベルグから攻めるらしいわ!」


「いや~……魔王と聞いてどんな男かと思ったが、気持ちの良い男だな!流石アイリスの親父だ!」


「フフフ……まぁ。当然よ!」


 勝手に話を進めて帰ってきて、満足そうに笑顔でハイタッチする猟奇的なお馬鹿と、中年ニートお馬鹿に頭を抱えるポタンだった。


「……面倒な事になったのは確かなんだけど……。考え様によっては……悪く無いのが悪いのよね……」


「悪く無いと言うのは?何故だ?」


 溜息を吐くポタンにグレイが素早く反応する。


「魔王様が……悪役を引き受けてくれるって……」


 魔王軍が東の大陸へと進行。程々に東の大陸で悪さをして回り。それをニコラウス率いる勇者達が懲らしめて回る。そして魔王軍撃退後に中央王国へ凱旋。ニコラウスは英雄としてそのまま王へと就任と言う流れだ。


「……流れは解ったが……上手く行くのかそれは……」


 即興の提案過ぎて不安そうなヴァイドとグレイ。


「……ニコラウスとは……じいちゃんと、魔王様が面白そうだから一緒に行くって……。魔国は……ミノスが一時いっとき国王代理……」


「面白そうだからと攻め込む魔族側の王が直々に同行し……。兄上は……面白そうだから一緒に行く……理由が酷い……メンツもだ……」


 グレイの深い溜息でヴァイドが頭を抱える。問題しか起こる気がしない。


「……とりあえずは、横暴な事をしている貴族の領地だけを占領して領民を救う、侵略を語った世直し活動みたいなので……。好きにさせようかなって……思ってます」


「思ってますって……。まぁ。兄上達の好きにさせるしか無いか……」


「ハチャメチャだが……。子供が追いかけ回されて殺されるよりかは良かろう……」


 納得したくは無いが、するしか無いグレイとヴァイド。


「それで我々は何をすれば良いのだ……アルカンハイトへやって来る魔族への支援か?」


「あ、いえ……。キャンプ場所の提供だけで良いそうです」


「は?……何故だ?……魔国の王が、人間国のまつりごとに協力するのだぞ?何かしらの配慮はするべきだろう……」


「……娘のお願いに対価を求める親がいるものか!と言ってたみたいです……」


「そ、そうか……」


 ヴァイドの発言を最後に言う事が無くなった三人。そんな重い沈黙の中静かに執務室のドアがノックされた。


「旦那様……お客人です……」


「メルヒオーネか……。会議中は誰も通すなと言っておいたはずだが……一体誰だ?」


「あの……。ポタン様のお知り合いの……オリビア様と言う方が……」


 メルヒオーネの少し焦った声にヴァイドとグレイが少し警戒をする。


「オリビア?……一体誰だポタン?」


「あ……えっと……。紹介がまだでしたね……とりあえず。お通しして下さい……」


「はい」


 ポタンに促され、メルヒオーネがドアを開けると、そこには黒い薔薇のドレスを纏ったオリビアが佇んでいた。


「お初にお目にかかりますわね……。国王様……。わたくし……オリビアと申します」


 整った目鼻立ちでニコリとするオリビアが、ドレスの裾を上げて丁寧な挨拶をする。しかしその丁寧な挨拶とは違い、全方位に放たれる禍禍まがまがしく凄まじいオーラ。


「う、うむ……。丁寧にどうも……ヴァイドアルカンハイトだ……」


 ヴァイドはオーラに当てられ挨拶を返すだけで精一杯。グレイは腰の剣に手を掛け臨戦態勢に入っている。感じる実力の差に吹き出る汗が止まらない。


「フフフ……。そんなに恐れなくてもよろしくてよ……」


 ニヤリと妖艶に微笑むオリビアにヴァイドとグレイが息を呑む。彼女との距離は五メートル以上離れて居るのに、首元に刃物をあてがわれて居る様な感覚が拭えないのだ。


「オリビア様……。お遊びはそこまででお願いします……。本日は一体どうされましたか?」


 軽くだが、ヴァイド達に放った殺気をお遊びとポタンに言われ、溜まらず笑い出すオリビア。


「アハハハ……。やっぱりアナタ面白い子ねポタンちゃん……」


 オリビアから殺気が消えた事により。どっと疲れと安堵がヴァイドとグレイに訪れる。隣に立っているメルヒオーネも安心した様子だ。


「今日は、国王への挨拶ついでに……魔国の方から、結構な量の船影が見えたから……沈めて良いか聞きに来たのよ……元気に留守は任せなさいって言った以上放って置けないでしょ?」


 周囲の行動が早過ぎて、三人がギョッとする。


「ふ、船は沈めないで下さい!あれは味方の船なので!」


「そうなの?……残念……暇潰し出来そうだったのに……。フフフ……フェルミナが飛んで出て行ったから……早くした方が良いかもね……」


 それを聞いてポタンが顰めっ面になってしまう。これ以上の問題事は本当に必要無いのだ。


 そして、いつも飄々(ひょうひょう)としているポタンの顰めっ面を見て、ヴァイドとグレイは大変な事が起こりそうな予感に襲われ不安になる。


「ちょっと、フェルミナが何かしてないか見て来ます!……後はお任せしますね!」


「あ!おい!ポタン!……任せると言われても我々は一体何をどうすれば良いのだ!?」


 瞬間移動でフェルミナの元に向かったポタン。取り残されたヴァイドとグレイは慌てふためく。説明はあったが何も解決も対策も取れて居ないのだ。


「はぁ……。情け無い……」


 ドアの外から慌てるヴァイドとグレイを冷めた目で見やるオリビア。そんなオリビアの前に立ちヴァイド達を、ビシッといさめるメルヒオーネ。


「旦那様方……。まずは……出来る事からするのは如何でしょうか?……ご婦人をそのままにしておくのは宜しくありませんよ?」


「あ、そ、そうだな……。お見苦しい所をお見せした……」


「う、うむ。名乗るのが遅れたが……私はグレイ……執務書記をしている者だ……」


 メルヒオーネに声を掛けられ、居住まいを正す二人。オリビアはその姿を興味無さそうに少し見ると、次にメルヒオーネを見やった。


「アナタ……。年収はお幾ら程かしら?」


「ね、年収で御座いますか……?」


 オリビアの質問の意図が解らず、メルヒオーネがヴァイドとグレイを見る。先程殺気を受けている二人は、メルヒオーネに素直に答える様にと目で合図をした。


大金貨いっせんまんえん一枚で御座います……」


 オリビアにニコリと答えるメルヒオーネ。そんなメルヒオーネに質問を続けるオリビア。


「そう……。ご結婚は?」


「恥ずかしながら、未婚で御座います……わたくしは……汚れた半端者……。ハーフエルフですので……」


「そう……。私も混ざり物だから大丈夫よ……」


「は、はぁ……さようで御座いますか……」


「アナタ……私を見てどう思うかしら?」


「それは……。とても美しいと思います」


 透き通る様な黒い髪に、整った目鼻立ち。それにドレスを着ていても解る程のナイスバディー純粋に美しい。


「そう……。では、最後の質問よ……」


 そう言うとオリビアの目がキラリと光った……様な気がした三人はゴクリと息を呑む。質問の意図が本当に解らないのだ。


「子供は……好きかしら?」


「こ、子供ですか……?勿論好きで御座いますよ?……何に代えてでも守るべき存在で御座います」


 どんな質問が来るのかと警戒した三人がホッとした瞬間だった。


「合格ね……行きましょう」


「へ……!?えぇ!?」


 バサッと黒い大きな翼を出したオリビアが、メルヒオーネを抱え、一足飛びで窓に向かってドロップキックをかまし、自分の体とメルヒオーネを硝子から守る様に翼に包まり。旋回しながら城下へ落下した。


「ひえええぇぇぇぇえええええぇぇぇええぇぇ!?」


 何が起こったか解らない恐怖と何よりも苦手な浮遊感に、いつもクールなメルヒオーネも流石に悲鳴を上げてしまう。そんなメルヒオーネの危機的状況を何とかしようと、急いでヴァイドとグレイがオリビアが飛び出した窓まで駆け寄る。


 そして、ヴァイドとグレイは窓の外を見やって絶句。そこには伝説の魔物、黒竜の姿とその頭の上にしがみつき、ガクガクプルプルと震えるメルヒオーネの姿があった。


「……国王と書記。浜辺まで乗せて行ってやろう……捕まるが良い……」


 黒竜に話し掛けられ驚くヴァイドとグレイ。黒竜は捕まれと言うが……。鱗がツルッツルのピカピカで捕まるどころの話では無い。確実に滑り落ちそうだ。


「どうした?」


 黒竜に攻撃の意志が無い様で、ヴァイドとグレイは落ち着きを取り戻す。そして、心配だったメルヒオーネもガクガクプルプル元気そうに震えて居る。


「わ、我々は……ちょっと準備する物があるので……。馬車で向かおうかな……。ねぇ、兄上……」


「そ、そうだな……魔国からの援軍。手ぶらで持てなす訳にもいかんからな……」


「だ、旦那様方!?ひぃ……」


 メルヒオーネが目で助けて欲しいと訴えて来るが、それ以上に普段クールで居るメルヒオーネの怯えた姿が恐ろしい二人。


「メ、メルヒオーネ……。先に行ってオリビアさんとお話しでもしながら待っていてくれ……」


「案ずるな!我々もすぐに向かう!」


 ヴァイドとグレイが、笑顔でメルヒオーネとオリビアへと手を振る。メルヒオーネはそんな二人を睨む事しか出来ない。嫌だと言って落とされたら困るからだ。そんなメルヒオーネからそっと目を逸らす二人。


「では先に行くわね……。フフフ大丈夫よメルヒオーネ。落としたりはしないわ……絶対にね……」


「ひ!ひひひひぃぃぃぃぃぃ!!!」


 ゴウゥ!……。っとけたたましい轟音と共に飛び去った黒竜とメルヒオーネ。ヴァイドとグレイはその方向を呆然としながら見やる。


「……準備とは……何をするのだ……ヴァイド……」


「ど、どうしよっか兄上……」


「と、とりあえず。大事になる前に急ごう……向こうにはポタンもいるし……」


「そうだな……」


 その後、急いで騎士団を招集し浜辺へ向かったヴァイドとグレイ。魔族の船の姿が無い事に安心したのも束の間。魔族の船よりも先に謎の団体様が浜辺に到着していた。


 その先頭で、フェルミナが正座してポタンに怒られている。


「いや……。海と言ったら……その魚人だろ?オリビアが船を沈めるとか言ってたから……。そんなの……可哀想だろ?だからアトランティスに教えに言ったんだ……でも、そんなはずは無いって言われて……。んじゃ!アルカンハイトに来いよ!馬鹿たれめ!って言ったら……皆来ちゃった……」


「何でケンカ腰なのよアナタは!?」


「いや!だって!助けに行ったのに嘘つき呼ばわりされたら怒るだろう!?」


 ポタンに向かって必死に言い訳するフェルミナ。その背後にはアトランティスの王や王妃を含めたメンバー約二百名が勢揃いしていた。


「フフフ……。エルフの女王さん……あまり怒らないであげて……私達も話半分で来たのだから……」


「うむ。魔国が面白い事をしようとしているのが、水面を通じて伝わって来たのでな……見に来たのだ……アルカンハイトは安全なのだろう?」


「え、ええ……」


 トリトンとローレライに見据えられ、何も言えなくなるポタン。そこへヴァイド達が合流しお互いに挨拶。そして暫くして魔族達の船が到着した。


 魔王『ヴェルゴレ』海王『トリトン』人間の王(仮)『ヴァイド』エルフの女王(仮)『ポタン』種族の王が集まり。城へ行くのは面倒だ。といきなりアルカンハイトの浜辺で始まった会談と言う名の宴会。


 始めは会談をするつもりだったのだが、物流に関して以外、大した議題が無くヴェルゴレの話し始めた悪い貴族達を懲らしめると言う話が中心となった。


 すると、孤児や苦しめられている人々を救う慈善事業的な活動に、ローレライ大いにが賛同し、トリトン率いるアトランティス軍が参加を表明。やる気満々なアトランティス軍を前に断る事も出来ず。参加しない訳にもいかなくなったポタン達も、なし崩し的に全面的に参加する事になった。


 そして、話が落ち着いて来た頃。話を聞きつけたダルドリーやユートピアやアルカンハイトの町の獣人や人魚も入り混じり、総勢千人を超える人々で浜辺を埋め尽くす、大宴会となったのだった。


 一方その頃。山を下り終えた所にコンテナハウスを建てる元気とミリャナ。


「ロマが言ってたとおりハーピーは全然姿を現さなかったわね」


「そうだね……。女性がいると寄って来ないってのは本当だったね」


「何だか……残念そうね?元ちゃん?」


「え!いや!そんな事は無いよう?」


「解りやすく焦っちゃって……」


「ほ、本当だって……。……でも、本当はちょっと見たい気持ちもあったかな……へへへ」


「もう!……フフフ……実は私もちょっと見たかったかも……」


 ロウベルグから子供を送って、貴族の横行をアルカンハイトへと意識せずに知らせた二人は、まるで動物園を回った後の様な気分だ。


 戦死者の多く出た元戦場の浜辺で、異種族同士が笑い合う。そんな新しい歴史の幕開け的な出来事が起きている事など、当然知るよしも無かった。


 そして……もう一方……。


「アーシャ……ご挨拶なさい……メルヒオーネよ……」


「こ、こんばんは……アーシャ……」


 ラピタの客間で、子供をメルヒオーネに紹介するオリビア。アーシャは親指をしゃぶりながらジッとメルヒオーネを見ている。


「フフフ……抱っこしてあげて……私お茶を入れるから……」


 ドレスから寝間着のネグリジェへ着替えたオリビアが、抱っこしていたアーシャをメルヒオーネに預け台所へ向かう。


「あ、はい……。ありがとうございます」


 年貢の納め時とは、こう言う事なのか……とメルヒオーネ思う。オリビアからは逃げられる気がしない。そして腕に乗せられた小さなアーシャ。彼女からも到底逃げられない。


 年収に婚姻歴。そして子供が好きかどうか、その質問の意図は伴侶としての選別だったのだ。


 今更気付いた所で時既に遅しだ。


 お茶を準備し終わり。テーブル越しに座るオリビア。薄い紫のネグリジェが良く似合っている。そして色々とボロンボロンで目のやり所が無く大変だ。


「……やっぱり……おぞましいわよね……魔物落ちした人間なんて……」


「……そうですな……」


「フフフ……正直な人ね……。ちょっと暴走しすぎちゃったみたい……。送って行くわ……」


「……おや。まだお茶がまだ残ってます……それに……アナタは……私の母の様な顔をなさる……それは駄目です……」


 差し出されたお茶を口に含み、オリビアに向かってニコリとするメルヒオーネ。オリビアを見ていると自分も居るのに、寂しそうにする母親の事を思い出してしまう。


「貴方の母親の様な顔が駄目って……。どんな顔よ……解らないわ……」


 メルヒオーネの正面に腰掛け、オリビアもお茶を口に含む。


「……そうですね……。お茶が冷めるまで私の母のお話をしましょう……。それが終われば……貴女のお話をお聞かせ下さい……」


 そこまで口にして、何故自分は彼女の話を聞こうとしているのか?とメルヒオーネは戸惑う。


「何よそれ?……私は貴方の話が聞きたいわ……。貴方の瞳の奥にある悲しみの理由は何?」


 メルヒオーネは、オリビアの発言に少しばかりドキリとしてしまう。母親の話をすると少しばかり悲しい気分になってしまうのだ。


「……悲しみ……ですか……フフフ。いやはや驚きましたな……」


 普段は隠している感情を読み取られ警戒するメルヒオーネ。これは職業病。そして小さい頃からの癖だ。


「フフフ……化け物相手に警戒しても無駄よ?それに……その瞳……私も毎日見ているもの……」


「見ている?」


 メルヒオーネがオリビアの発言の意味が解らず聞き返すと、ゆっくりと彼女が自分の瞳を指差した。


 そして、メルヒオーネは自分が選ばれた理由について理解した。


「化け物だって汚らわしい物だって……。誰かに愛されたい物よ……。そうでしょ?」


 フッと儚く消えそうに微笑むオリビア。メルヒオーネが見たその姿は、伝説の魔物。黒竜のそれでは無く、独りで孤独と戦いながら子供を育てる一人の女性の姿だった。


「ハハハ……女は魔物とは良く言った物ですな……参りました……。当の昔に諦めていた気持ちをこうも簡単に引き出されてしまうとは……。本当に参りました……」


「そう……。参ったのなら……貴方の話……聞かせてくれるかしら?」


 そう言って楽しそうに笑う彼女に、自分の話を聞いて欲しい。そしてそんな彼女の話を聞いてみたい。自然とそう思うメルヒオーネ。


「……そうですな……しかし、アーシャの前では……聞かせられませんな……。子供には明るい話だけを聞いてワガママに育って欲しいですから……」


「そう……。そうね……」


 眠たそうに欠伸をするアーシャを静かに見つめながら、少しぬるくなったお茶を呑む二人。傷付き続け一度終わった獣達は、そんな穏やかな空間の中で、一つ二つと言葉を交わす度に、今まで知らず知らずに何処かで負った傷を、優しく舐め合うのだった。


こうしてそれぞれの夜が明けた次の日。後々歴史に残る語弊(ごへい)だらけの大事件。人間国と魔国との大戦争。『一年戦争』が始まった。


後にそれをその目で見たと言うエルフの女王はこう語る。『あれは全部パパのせい』だと……。


魔王軍の侵攻だけ覚えておいて貰えれば良いですw

メルヒオーネとオリビアのは何と言うか……ノリで書いちゃいました!


少しワロタ! もっと読みたい! 心がピクリと反応した! と思われた方は、ブクマ:評価:いいね等々。よろしくお願い致します。


下の ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。


『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ