愉快な異世界道中記開始
新章開始です。色んな町をミリャナと元気が旅して行きます!
アルカンハイトの港から東の大陸へ船で移動する元気とミリャナ。目的は元気がミリャナと一緒に遊ぶ為の旅。それ以上でも以下でも無い。……建前上はそうなのだが、元気はあわよくばこの旅で大人に……。的な事を勿論考えている。ミリャナもミリャナで内心……。的な感じだ。
お付き合いを始めて結構な時間が経っている二人。ミリャナがいくら疎いとは言っても、やはり年頃の女性だ。そう言う事に興味もあるし、今のままで良いのか?と色々思う所はあるのだ。
そんな思春期真っ只中な二人の旅行ルートは、東の大陸の端から陸路で北へと進み、大陸北部で再度船に乗り。西側の魔族大陸へ突入するという。世界を半周する半年から一年計画の長旅だ。
元気はミリャナとの二人の旅行にウキウキ。ミリャナもまだ見ぬ世界にワクワクしている。家の事はリャナやダルドリー、アイリスが快く有料で引き受けてくれた。
「……お金を払った方が、気兼ね無くお願い出来るでしょう?……払わないのなら……私も一緒に行こうかしら?」
とリャナ。
「おばさんが行くなら、私も行くわ!お姉ちゃんばっかりズルいもん!」
とアイリス。
「お!……家族総出で旅行か!良いなぁ!」
とダルドリー。本当に付いて来そうな勢いだったので、元気も快くお留守番の代金を支払った。
アルカンハイトでならば、いざ知らず。知らない町でリャナ達の面倒を見られる気がしない元気。それにはミリャナも同意してくれた。
リャナ達に支払ったお金は、ちゃんと町で日々パンツを売って稼いだお金なので、問題は無い綺麗なお金。元気が夜な夜な行うパンツ売りは、結構な収入になっているので、旅費の心配も無い。
現在元気達の向かっている東の大陸は、日本の東北地方を逆くの字にして、巨大にした様な大陸だ。
山や森が多く自然が多い。というか発展していないので自然しか無い。大陸の西側には小さな村や里が点在し、東側には、大きな町や各領地ごとに領主城がある。西側と東側のどちらに進んでも最終的には、大陸中央の中央王国に到着する様になっている。
東の大陸の説明ついでに、ラストの地理についての簡単な説明をしておこう。
魔国の方はアメリカや中国の様な平たい大陸で、南の神々の大陸が南極北極的な位置づけだ。しかし寒いと言う訳では無い。そしてその大陸達に囲まれる様にポツリと内海に浮かぶアルカンハイト。こちらはハワイ島の様な感じだ。
アトランティスの場所はアルカンハイトから西北方向。魔国寄りにあり。北の人間の国と魔国が交わる場所が過去から続く戦争の舞台だ。
ラストの世界の果てはナイアガラの滝の様な崖になっている。その先は宇宙空間。落ちたら一環の終わりだ。
しかし現在は内海にしか船は出ないので何の心配も問題も無い。これらの情報は後に流通する情報提供サービス。ポタペディア情報である。
何はともあれ、ラストの世界の地理を何と無くで良いので覚えていて貰いたいと思う。
東の大陸まで空を飛んで行こうとも考えたが、元気とミリャナは旅を楽しもう。と船を選択。大きめの帆船に揺られる事三日。元気とミリャナは、東の大陸の南の果ての町。ロウベルグへと到着した。
「げ、元ちゃん……だ、大丈夫?」
「う、うん……ミリャナこそ……」
「足元がふらふらして……まだ少し気持ち悪いけど……大丈夫……」
青白い顔をして港町に降り立った二人。絶賛船酔い中である。途中で空を飛んで船上を脱出しようとしが……
「ミ、ミリャナ……。これ……無理だって……も、もう……」
「だ、駄目よ!……も、勿体無いわ!……お金払ったのよ……。だ、だから……ほ、ほげ~……」
「ミ、ミリャナ!……だ、だいじょ……ほげ~……」
お金の大切さを知っているミリャナの強い意志で、二人は空を飛ぶ事はせずに船旅を強行。揺れる船内で、お互いに貰いゲロをしながら桶を抱えて三日間頑張った。
東の大陸の南の果て『ロウベルグ』そこは、眼下に海が広がり港と町が一体化している、ポタン情報では、南の大陸との戦争中はそれなりに栄えていたが、現在は住民以外は殆ど立ち寄らないとの事。町の建物は赤レンガ造りでアルカンハイトとは違った歴史を感じる。
元気達の旅はロウベルグからスタートし、北へ進み中央王国を目指す予定だ。
「と、取り敢えず……宿屋を探そう……」
「そ、そうね……」
ミリャナと一緒に、宿屋を探す元気。船を降りると持ち前の異世界能力のお陰で体調が見る見る内に回復して行く。そしてミリャナはミリャナで対応力が凄く、ミリャナもどんどんと体調が回復した。
ミリャナのは、妖精族特有の自然治癒の恩恵だ。
港から町中へと赤レンガの街並みを、暫く真っ直ぐ歩いていると、小さなバザーが見え始めた。
その先には外へ出る大きな門がある。客足はまばらで、観光客用では無くどうやら、町の人々の生活用のバザーの様だ。
観光客が珍しい様子で、元気とミリャナは辺りの人達からジロジロと見られる。その様子に元気はちょっとビビってしまう。ミリャナも何だか気まずそうだ。
「と、取り敢えず……あの店で宿の場所を聞いて来るよ……」
「う、うんわかった……」
バザーの端にある。果物を売っている店へと向かう元気。それをミリャナが不安そうに見やる。そして、他のバザーや、町民達も不安そうに見る。辺りは静まりかえっていて町の様子が変なのだ。
「あ、あの、すいません。この町の宿屋は……」
「え!……あぁ。宿屋ですかい……。それなら……バザー前の十字路を左に行けば……」
キョドキョドと宿までの道を説明する店主の説明を、元気がオドオドと聞いているとミリャナの悲鳴が辺りに響いた。
「ひゃ!?」
「ミリャナ!?」
元気が急いでミリャナの方を振り向くと、ミリャナが膝を着いて座り込んでいる。そんなミリャナの元に急いで元気が駆け寄った。
「な、何があったのミリャナ!怪我は無い?」
「だ、大丈夫よ……でも……お財布取られちゃった……」
「え!?……財布?……ミリャナ。スリにあったの?……そいつ何処に!?」
ミリャナの物を奪って、ミリャナ可愛いお尻を、冷たい地面へと引っ付けた奴は許すまじ。元気が急いで追い掛けようとミリャナに犯人が逃げた方向を聞く、しかしミリャナの反応は怒っている様子が全く無い。
「げ、元ちゃん。いいの……。あんまり入って無かったし……。気を付けて無い私が悪かったんだから……」
「で、でも……」
「ご、ごめんね……。私、お金無くなっちゃった……。これじゃ旅が……」
お金を取られてシュンとするミリャナ。しかしそんなミリャナの嘘の気配に元気は気付く。
「い、いや。お金は良いよ……俺のがあるし……。ほら。ミリャナ……立って……お尻冷たいでしょ?」
「……もう。またお尻の心配?本当にお尻が好きね……。……お金……本当にごめんね……」
「いや……。いいよ。大丈夫」
元気に手を引かれ立ち上がるミリャナ。ミリャナが何か隠しているが、何かが解らない元気。
「あ、元ちゃん宿の場所は解った?」
「あ、うん!……そうだ、果物屋のオジさんにお礼……。あれ?」
ミリャナに怪我が無い事に安心して、元気がバザー通りを振り返る。するとバザー通りには人っ子一人残っていなかった。
「ど、どう言う事?」
「わ、解んない……。何か怖いなこの町……。もう出た方が良いかも……。宿は外でコテージでも建てれば良いよ……」
「あ、で、でも……。せっかくだし……。宿屋も見てみたいな~……」
「え?……ミリャナは怖く無いの?」
「え?……こ、怖いけど……。せっかくの旅行だし……。……駄目かな?」
元気を甘えた様に見やるミリャナ。そんなミリャナのおねだりが、元気相手に通らず叶わない訳が無い。
「駄目な訳が無いよ。じゃ宿に行こうか!」
「うん!……ありがとう元ちゃん!」
お願いが叶い笑顔で嬉しそうなミリャナ。そんなミリャナの姿を見て元気も嬉しくなる。そして二人は、人気の無くなった町の通りを宿屋へと向かって歩き出した。
チラホラいた町の人の姿も、今は全く無く、青く済んだ空の元。人の居ない町の風景はやはり不気味さが残る。
「お、ここだ……」
「結構……大きいわね……」
少し大きめの洋館程の立派な宿屋。これも赤レンガ造り。入り口の扉の上には白いテラスがあり。町を見渡せる様になっている様だ。
元気が先陣を切って宿屋の中に入る。中はカウンターまで伸びる金の刺繍が入った赤い絨毯。そして天井には金のシャンデリア。左右には、大きな暖炉と立派な鉄の鎧が飾ってある。カウンターの左右には大きな階段がありそこから客室に向かう様だ。
「……り、立派な宿だね……」
「げ、元ちゃん……ほ、他を探しましょう……き、きっと高いわ……」
「だ、大丈夫!……お金はいっぱい貯めたから……うん!大丈夫!」
「で、でも……」
大丈夫と言いながらカウンターに進む元気。しかし内心ドキドキだ。そんな元気の後をミリャナがキョロキョロ、オドオドと進む。不思議な力はあっても、小市民な二人なのだ。
「す、すいませ~ん……」
「はい、ただいま!」
元気が緊張しながら、何処にいるか解らない店主を呼ぶ。すると上の階から店主らしき女性が降りて来た。
金のロングパーマに鋭い目付き。黒いスーツっぽい征服を着ている。城の執事の様な装いだ。
「申し訳ありません……。急な来訪だった為。ベッドメイクを致しておりました……。お出迎えが遅れた事……どうかお許しを……」
そう言いながら深くお辞儀をする女性。その行動に元気達は萎縮してしまう。
「あ、いえ!……だ、大丈夫です……。頭を上げて下さい……」
「まぁ……。お優しいお貴族様なのですね……ありがとう存じます」
「え?……貴族?……俺達貴族じゃ無いけど……。ねぇ?ミリャナ?」
「え?うん」
普通に返事をするミリャナだが、ミリャナはアルカンハイト王族直系列の身内。立派な貴族令嬢である。しかし自覚は皆無だ。
「え?でも……その格好……」
「あ……成る程……」
元気もミリャナも町の様子が変だった事の原因に思い当たった。
少し冷え込んで来た冷季節に合わせ、元気は赤いパーカーに、カーゴパンツ。それに白のスニーカー。
ミリャナはいつもの黄色いワンピース。その上に白いファーの付いたコート。それにショック吸収の魔法を付与した赤い靴だ。そして赤い肩掛けのポシェット。
奇抜な格好や、綺麗な服は貴族の特権。アルカンハイトやユートピアの生活水準が上がりすぎて忘れていた二人。そして貴族は平民んにとって、恐怖の対象でもある。そんな貴族様がスリにあって大通りで尻餅を付いた。それは、町毎粛清されかねない大問題だったのだ。
元気達は誤解を解くべく、宿屋の店主に旅の目的を話した。
「はぁ……。紛らわしい……。焦って損したわ……。まぁいいわ……お金は……見た感じ、ありそうだし、ウチは一泊、小銀貨三枚よ」
「しょ、小銀貨……三枚……。た、高い……」
一泊の値段にミリャナが驚く。
「一応、高級宿だからね……。これでも子供相手って事で安くしてやってんのよ……。前世紀は倍の値段だったんだから……」
カウンター内で、煙草を吸い始める。女店主、さっきの清楚な雰囲気と違って、やさぐれた感じが凄い。
「じゃ、それでいいです」
「え!……げ、元ちゃんでも私……お金……取られちゃったから……」
「さっきも言ったでしょ?……お金の事は良いって、あの二部屋お願いします」
「はぁ?二部屋って、あんたら付き合ってんでしょ?一部屋で良いじゃ無い?」
「え!?……あ、いや……でも……ねぇ?……」
元気は店主の急な提案にキョドッてしまう。
大好きなミリャナとの二人旅。そんなハッピーな事を考え無かった訳では無い。いや、毎日の様に考えまくった。そして毎日ハッピーになっていたのだが……。
しかし、いざそうなると話は別。意識するとリアル過ぎてテンパってしまうのだ。
「へ、部屋は一つで大丈夫です……」
「ミ、ミリャナ!?」
「へぇ……。彼氏より彼女の方が肝が据わってんじゃん……。はい、これ鍵……飯は自分達でどうにかしなさいよ……あ、そうだ、今日は私帰らないでおいてあげるから、どんだけ大きな声出しても、暴れても良いわよ~……じゃあね~……」
宿の店主は元気からお金を受け取り、元気達に投げキッスをすると、宿の外へと出掛けて行った。
「あ、暴れるなんて……な、なあに言ってんだろうな!あの人……。あ、暴れる……」
「……元ちゃん……。鼻の下伸びすぎよ……」
「え!?……こ、これは……。その……」
言い訳が思い付かない元気を置いて部屋へと向かうミリャナ。そんなミリャナのお尻を急いで追い掛ける元気だった。
さてはて、二人の関係が進展するのか、しないのか……それは元気次第ですw
次回は夜のロウベルグ。
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