守りたい日常
危機感が無い元気。だからこそ話せる事もある。
色々と報告を済ませたポタンが家に戻ると、元気とミリャナがいつも通り出迎える。アイリスも既に学校から帰って来ていて、お部屋で宿題中だ。
皆揃ったら夕食開始。夕食中に元気からアトランティスや、人魚達の報告が無い所を見ると、もう元気の中では終わった事柄なのだろう。本当に適当な人……。元気を見てそう思う反面、いつも通りの風景にポタンは安心する。
「じ、実はさ……。お願いがあってさ……」
「……何?」
改まってそう言う元気に、ポタンは警戒する。元気のお願いは、相当下らない事か、鬼面倒臭い事の二択。
「えっとね……実はミリャナと……旅行に行こうかな~とか思ったりしてるんだけど……アトランティスの件も終わったし……」
「は?」
おい!終わって無いんだが!?……ポタンは元気にそう言おうと思ったが、ミリャナを見ると少しモジモジしている。どうやらミリャナは行きたい様子だ。
元気のお願いはどうでも良いが、ミリャナのお願いは叶えてあげたいポタン。しかし今の時期に旅行は困る。やる事が山積みなのだ。
「それでさ……。アイリスとポタンには……。お留守番をお願いしたくて……」
「え!?何それ!?……お姉ちゃんばっかりズルいわ!」
「ア、アイリス……」
アイリスは元気のお願いに文句を言うが、ポタンは少し安心する。元気が居ると問題事がいつ増えるか解らない。元気が旅行に行けば問題が起こる事無く一気に片付けてしまえる。ミリャナに会いたくなったら瞬間移動で飛べば良い。ポタン的には何の問題も無い。
「私は良いと思うわよ?……でも、アイリスがママを羨ましがるのも理解出来るわね……だから、パパだけ一生旅行に行くのはどうかしら?……これならママはお家にいるしズルくな~い」
「……そうね。それなら……いいわ」
アイリスはアイリスで何となくごねている様子。ポタンの発言に乗っかる方が面白いと見た。
「……俺が独りで一生旅行に?……それじゃ意味が無いじゃ無いか……ミリャナと一緒に行かないと……。あれ?……おい!それは家から出て行けって事かよ!酷すぎるぞポタン!」
立ち上がり憤怒する元気。それを見て、さてととポタンがお説教スイッチを入れる。ポタンのストレス解消の開始だ。
「はぁ……。パパさ……自覚してる?」
ポタンは今日あった事を元気に聞かせる。そしてこれから、人魚の受け入れによって、生じる不安要素や、衣食住問題等の事もぶつける。それを聞いてシュンとする元気を見てポタンはスッキリ。
「ご……ごめん。ポタン……俺……」
今はシュンとしているが、明日にはコロリと忘れている元気。だからポタンは安心してストレス解消出来る。その事もストレスだ。
一度、ポタンが「やる事ノートを作ったら?」と言ったら「解った!」と言って、ノートを作製。そして次の日にはノートを捨てた。
ポタンがそれに呆れて理由を聞いたら「やる事を書こうと思ったけど……思い付かないから……。考えてる内に落書きしちゃって……。へへへ……」と気まずそうに笑う元気。
それを見て、やる事を理解しないとノートを作らせても無駄のなのだな。と気付かされたポタンなのだった。
「ポ、ポタン……ごめんね……。忙しいのに旅行だなんて……行っている場合じゃ無いわよね……。ママもポタンのお仕事を手伝うわ」
「ママ……」
自分の事よりも自分を優先してくれる。そんなミリャナがポタンは大好きだ。
しかし、思う所もある。ミリャナは箱入り娘過ぎる。優し過ぎて、悪意に鈍感。将来が心配だ。
未来のミリャナの元気が死んだ後の様子。それは、心が壊れてしまいとても悲惨だった。
可愛い子には旅をさせろと言うし……。心を鍛える良い機会かも知れない。ポタンはそう思う。そして元気が死ぬまで五年。元気を必ず救えるかは、解らない。二人の時間は必要だろう。
「お、俺もポタンを手伝うよ!」
「いや……。結構よ……パパが関わると酷くなるもの……」
「あ……。すんません……」
「はぁ……。ママと旅行に行って来て良いわよ……。その代わりママに何かあったら絶対に許さないからね!」
「も、勿論!命に代えても守るさ!」
「……そう」
そう言う元気。……五年後。本当にそうなるのだけど……。
「何でよ!私の意見は無視なの!?」
「はぁ……。アイリス……ごねてる本当の目的は何?」
ごねながらゆっくりと交渉しようと思っていたアイリス。ポタンに核心を突かれて焦る。
「え!?……その……ちょっと……。あの~、お小遣いを……」
「え!……アイリスあなた。この前小銀貨貰ったでしょう?もう使ったの!?」
「と、年頃の女の子はお金が掛かるのよ!……ねぇ~、旦那様良いでしょ~?お姉ちゃんとイチャラブ旅行してる間。ちゃんと家の事とかちゃんとしとくから~」
「イ、イチャラブ……。そ、そんなつもりは……」
「はぁ。何赤くなってんのよお姉ちゃん……ホントに面倒いわね……さっさとやっちゃいなさいよ……。じゃないと本当に私が取るわよ?」
そう言って元気に抱き付くアイリス。元気はお小遣いか~……幾らいるのかな~?等と考えている最中だ。
「アイリス!?何て事を言ってるのあなた!」
「べろべろべ~」
アイリスがするべろべろべ~は、整った顔が絶妙に良い崩れ方をして、とても腹が立つ。ミリャナが唯一。即座に激怒する物だ。
ギャアギャアと、ミリャナとアイリスの喧嘩が始まると、元気はポタンを抱っこして部屋の隅っこに避難。そして巻き込まれない様に静かに成り行きを見つめる。
飛び交う皿に、コップ。揺れるおっぱいにチラつくパンツ。そして取っ組み合う童女と少女。それを静かに見つめる元気とポタン。
「ポタン……。何か隠してるだろ?」
「え!?……何で……?」
「うん?……何となく……。俺に出来る事……あるか?……ラピタで話があるって言ってたろ?」
「覚えてたの……。う~ん。取り敢えずはママと旅行に行って……。ある程度。考えが纏まったら動くから……」
「そっか……わかった……。他には?」
「……五年後パパは死ぬわ……でも、阻止するから……私の邪魔はしないで……」
「邪魔って……酷いな。……それに死ぬって……。何で?」
「南の大陸の奴等にママを人質にされて……それで……さっき言った通り……命を掛けて……ね……」
「そっか、未来の俺……偉いな……。敵ってそんなに強いの?」
「……こっちにいない神様よ……。こっちに残ってる神は落ちこぼれの神らしいわ……」
「神様が敵って……。それにこっちの神様は落ち零れか……」
マーリュクにセイレーン。確かに神様かと言われれば……疑問が残る。フェルミナも元々神だが論外だ。
「未来の私と同期した記憶では……。旅行に行く事に反対した私達のせいで、旅行に行かず。パパが死んだ後。ママの心が……壊れるの……。今の内にママの心を強く成長させなきゃ……」
「え?俺が死んだらミリャナヤバいじゃん……。ってか俺が死ななきゃ良いんだろ?」
「え?……まぁね。でも死なないかは解んないし……。パパが死んでもまぁ。ママが無事ならいいの」
「いや……駄目だろ……」
「まぁ……パパと神々が一気に死ぬ事で、未来では世界が崩壊を始めてるし……。パパが死んだら困るわね」
「それは……大変だな……。ってか世界規模で話をずらしたろ……。ポタンって……俺が死んでも気にしない系?」
「…………そんな事は……無いよ?」
「営業スマイルすんなよ!ショックだわ!」
「嘘よ嘘……。取り敢えずは露死南無天の能力で南の大陸を消滅させずに……戦争を止める方法を考えなきゃ……」
「太陽になって消滅させるんだっけ……」
「そう……。私が露死南無天に提案して私が失敗したのよ……。激情に駆られてね……情け無い……」
「そっか……へへへ……」
「な、何よパパ……気持ち悪い……」
「いやぁ……。俺が死んだら、大陸を消滅させる位に怒るんだな~って思ったら嬉しくてさ……フフフ……」
「が!……失言……。スリスリしないで!……とにかく……今はまだ大丈夫だから、旅行でもして、私に考える時間を頂戴……」
「……わかった。ポタンを信じるよ……」
死ぬかも知れない。そんな事を言われた元気。だがしかし実感が湧かない。
「ねぇ。アイリスのお小遣いどれ位いると思う?」
「知らんがな……。小銀貨三枚も渡しとけばいいんじゃ無いの?」
「わかった。そうする!」
ある程度の話が終わると元気が喧嘩を止める。そして、喧嘩が終わったらミリャナとアイリスにヒールをして皆で片付けだ。
「あいた……」
「ポ、ポタン、大丈夫か?……ほら……ヒール……」
お皿の破片で指を切るポタン。そんなポタンに元気がすかさずヒールする。
「先輩が怪我する何て珍しい……。大丈夫?」
「ごめんねポタン。後は私とアイリスでやるから……」
「何でよ。お姉ちゃんが一人ですれば良いでしょ?」
「もう。ほら!二人とも……今日は終わり……」
「「は~い……」」
怪我をした指を見るポタン。未来の自分とのペアリングが切れた事に動揺してしまったのだ。
「大丈夫か?ポタン……」
「うん。大丈夫……」
この日。ポタンの未来が一つ。終わった。
未来の話しは一旦終わりですw
次回からはマーメイド達の後日談や色々な話しをしてアトランティス編終了です。
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