一番
オンリーワン……言い言葉ですね……
家に戻った後も不機嫌なミリャナ。せっかくのお休みなのにお話しも出来ない状態だ。
「ミ、ミリャナ……。俺がやるよ……ゆくっりしてて……」
「いいえ~。結構です。お尻が大好きな元気さん……自分の洗濯物位自分でします~」
自分のパンツを干すミリャナ。その光景に心が踊る自分が怨めしい元気。ミリャナは自分のせいで怒っているんだぞ!……そう思うが、美少女とパンツ。絵にして飾ってお部屋の天井に貼って一日中眺めていたい物だ。
「……鼻の下……」
「え!?」
元気をミリャナがジト目で見る。元気は急いで鼻の下を隠す。幸せな妄想をするとすぐ顔に出るのだ。
「ミリャナ……。怒らないでよ……。ワザとじゃ無いんだって……。その……。ミリャナが紹介してって自分から言ってくれたのがあんまりにも嬉しくてさ……。舞い上がっちゃって……」
「そうなの!……舞い上がってお尻が好きだ~!って皆の前で言っちゃったんですね!だったら私も元ちゃんのお尻が好きって言えば良かったわね!」
「え?……ミリャナって俺のお尻……好きなの?言ってくれればいつでも見せるのに……」
ミリャナの意外な発言に驚く元気。自分のお尻はミリャナのタイプなのか!?とちょっと嬉しくなる。が当然そう言う意味では無い。
「何でそうなるのよ!……もう!」
「え~……ミリャナが言ったんじゃん……。そりゃさ……恥ずかしい思いをさせたのはごめんねって思うけど……。本当の事だから仕方ないじゃん……」
「もう良いわよ……。ユートピアに行ってお尻を見てくれば?大好きなお尻がいっぱいありますよ~?」
「確かにお尻はいっぱいあるけど、何か違うんだよな~……」
「何か違う?……お尻何て全部一緒でしょう?」
「はぁ?ミリャナ……解ってないなぁ……。お尻にはね!人それぞれの良さがあるんだよ!?父さんやミールのお尻と俺のお尻が一緒だとミリャナは思ってるの!?」
「え!?い、いや……そんな事は思ってないけど……」
「いい?ミリャナ。お尻にはね!垂れ尻。上げ尻。普通尻って大きく種類があってね!……」
木の棒を出して、地面に色々なお尻を書き出す元気。あまりの熱意に下らないと思いながらも目が行くミリャナ。ミリャナもミリャナで色々と気になるお年頃なのだ。
「健康的なお尻は、こうビッと引き締まってるだろ?例えば……フェルミナみたいな」
「……そうね……フェルミナのお尻は綺麗ね……」
ミリャナはフェルミナのお尻を思い出して、納得する。フェルミナの肉体はいつも動き回っているので健康美そのものなのだ。
「でも、綺麗過ぎて何て言うか置物って感じかな?……ほら。さっきミリャナに渡したドラゴンの人形みたいな感じ?」
「ドラゴンの人形……。格好いいって事?」
「う~ん。それもあるけど……。見るだけで満足と言うか……。鑑賞用と言うか……。オリビアさんの黒竜の顔は生々しい感じだったでしょ?……こう……生きている感じ?」
「あ~。何か解った気がするわ……」
「でしょ?……下げ尻……こっちは母さんとか、ほらさっきの人形達の……。少し現役を遠のいた人達のお尻……。運動不足だね」
「ぶはっ……。ちょっと……失礼よ元ちゃん……そんな事を言っちゃ駄目よ……」
平然と失礼な発言をする元気に吹き出してしまう。リャナが時々「はぁ……。最近運動不足でお尻が垂れて来ちゃったわ……」等と言うので、それを思い出して更に面白いのだ。
「ハハハ……。でも、これにはこれで、良い良さがあるんだよ……フェルミナのは何と言うか、貴族だ。そしたら母さん達のお尻は平民……。何だか落ち着くだろ?緊張しないって言うか、安心と言うか……」
「ちょっと……フフフ……。言いたい事は解るけど……お母さんが聞いたら怒られるわよ……。フフフ……」
「あ、これ……内緒ね……」
リャナにバレたら何されるか解らないので、ミリャナに言わない様に釘を刺す。この前リャナと一緒にお風呂に入った時に「母さんのぽっちって紫なんだね~」と元気が何気なく言ったら、寝ている間に、髪の毛と眉毛と下の毛を全部剃られたのだ。
「良いけど……この普通ってのは?」
「普通尻は、普通尻かな?う~ん。アイリスとかポタンとかの、お尻って言うお尻……。まぁ、アイリスやポタンのは補正が掛かるから……特別な感じがするけどね……」
「補正?」
「うん……。う~ん……可愛さ補正かな?」
「成る程……。それなら解るわ!ポタンのお尻は可愛いもの……。アイリスのもまぁ、可愛いわね……。もうちょっと恥じらいを持つべきだけど……あの子お尻を出し過ぎよ……」
バスタオル一枚でリビングを歩き回るアイリスを思い出して、ミリャナが溜息を吐く。
「そして、これを全て兼ね備えたのが、黄金尻だ!」
「黄金尻?……仰々しい名前ね……」
「フフフ。奇跡の比率を持った素晴らしいお尻だもん」
「そうなの?」
「うん!上げ垂れせず、しかし普通尻よりかは、そこはかと無く主張をするが、クドく無い……」
「難しいわ……」
「う~ん……。ミリャナが好きなバンバーグで例えれば……お肉じゃ無くて……。ソースの様な物かな?……メインじゃ無いけどメインみたいな?」
「あ~……成る程……」
「うん……。それがミリャナのお尻。ハンバーグはいっぱいあるんだけど……。やっぱりソースが重要でしょ?……ハンバーグだけあっても何か足りないんだよね……。ソースはソースだけで美味しいし完成してる」
自分のお尻の説明を始める元気にミリャナは固まる。そして怒っていた事を思い出した。
「そう……。私のお尻はソースなのね……。それは…………美味しそうね……」
何か言おうとしたが、怒り馴れていないミリャナ。何も思い付かない。それにハンバーグのソースが大好きなのだ。
「でしょ?ミリャナのお尻はもう兎に角一番なんだ!凄く良い感じなんだよ~!一番プリッとしてて一番フワッとしててさ!もう、ペロリと食べちゃいたい位だ…………よ…………。…………な、なあんちゃって……」
なんちゃってとは言った物の、時既に遅し。ミリャナを振り返ると、玄関前へと移動してお尻を隠している。
「お、お尻ペロリは駄目よ……お耳ペロリも駄目だけど……。わ、私、お部屋のお掃除して来るわ……」
こちらを見たまま家の中へ入って行くミリャナ。凶悪なモンスターが現れたら、目を逸らしちゃ駄目。と教えた事をちゃんと覚えている様だ。
「……やってしまった……」
地面に書いたお尻を撫でながら、落ち込む元気。気分が乗ったら楽しくてとことんやってしまう。そんな自分が情け無い。
「元ちゃん……。晩御飯……ハンバーグ食べたい……」
「え!……も、勿論……凄く美味しいのを作るよ……」
声のする方を振り返ると、ど玄関のドアから顔だけ出したミリャナの姿がある。耳まで真っ赤だ。
「ソースは?」
「……とても美味しいのを……ミリャナみたいなとっても、素晴らしいのを作る……。皆が大好きって思う様なのを……」
それを聞いたミリャナは、ベッと元気に向かって舌を出すと玄関のドアを閉めた。
そして、元気はそのあまりの可愛さに、その場にひっくり返ってしまった。
「良かった……機嫌……治ったみたい……。フフフ……ミリャナってベロ短いなぁ……フフフ」
元気は秋風に揺れるパンツを見上げ、日の光に包まれながら、ミリャナのあっかんべえの余韻に浸る。そんな元気を家の窓から見るミリャナ。
「……はぁ。元ちゃんったら……何であんなに、パンツやお尻が好きなのかしら……?……耳や足の裏も好きだけど……」
そう言いながら、自分のお尻をさわさわっと触る。
「……私のお尻……。そんなに美味しそうなのかしら……。一番。……フフフ……お馬鹿……」
お部屋の拭き掃除をするミリャナは、すっかりご機嫌。誰かの一番では無く元気の一番である事。それが何でも嬉しいミリャナなのだった。
オンリーワン良い言葉ですが、誰かのナンバーワン。やっぱりそうありたい物です。
次回はポタンの行方w
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