頑張る乙女
せっかくのミリャナの頑張りが……
裸で走り回る人魚達に町のあちこちでは、女性の悲鳴と、男の歓喜の声が上がりお祭り状態である。
「あ!元気!それにポタンも!ミリャナもいるのね!会えて嬉しいわ!」
「ト、トリトル様!お召し物を!」
満面の笑みで駆けて来るスッポンポンのトリトルと、それを必死に追い掛けて来るヒルトン。二人共に元気そうで元気は安心する。
「とても良いわねこの町気に入ったわ!皆優しいし!」
ヒルトンに服を着させて貰いながら嬉しそうにするトリトル。そんなトリトルに、元気がアトランティスであった事と、ローレライの話をした。
「……お、お母様が……。ほ、本当に?……お母様が……」
「トリトル様……。早く帰りましょう!」
「で、でも……。帰るとヒルトンが……」
「私の心配何かよりも、ローレライ様と会う事の方が大事です!」
「……私が一緒に行くわ……。私もローレライはに会いたい……」
「セイレーン様……ありがとう!」
セイレーンに抱き付くトリトル。嬉しそうな二人に、町は混乱状態だが元気は良かったと思う。
その後。水辺に戻って来た人魚達の半数約、五十名程がユートピアに残る事に決まった。
アトランティスに、もう親戚や家族が無い人魚達だ。
帰る事を決めたトリトル達三人を含めた人魚、約五十名を一斉にアトランティスまで瞬間移動させる元気。
「こ、今度は何事だ……。其方は……。ト、トリトル!?」
「まぁ……。トリトル……大きくなったわね……」
「お母様!?……お母様~!!!」
ローレライに飛びつくトリトル。それを見送ると、元気はユートピアでの話を驚くトリトンへとおこなった。
「……そうか……。了承した……我が民をどうか……宜しく頼む……元気よ」
「宜しく御願いしますね……元気さん……」
「はい……。それと……この方達なんですが……」
「……言うな……解っておる……。地下は永遠に封鎖する……。丘に行くのも……アルカンハイトになら……許可を出そう……」
「……そ、そうですか……それは……良かった……」
どうやら、トリトンは自由恋愛を許可するつもりの様だ。それは良いが、アルカンハイトへの人魚の進出は予定外。ヴァイドへの報告にアルカンハイトの町への告知や、警備の強化等々色々と増える案件なのでは?と元気は不安になった。
「元気!……ありがとう!絶対にまた来てね!」
「あぁ、勿論だよ!」
「丘の勇者よ……感謝する……」
「え?……あ、はい……。では……」
元気は手を振るトリトルと、仰々しくお辞儀をするヒルトンにへへへっと笑うと瞬間移動でユートピアへと戻った。
町の方の騒動は収まった様で、橋の上でミリャナが水路を泳ぐ人魚の姿を見てニコニコしている。
「あ、お帰りなさい元ちゃん。どうだった?」
「うん!自由恋愛も大丈夫な感じで上手く行ったと思う」
「そう!良かったわ!……皆気持ち良さそう……」
「凄いよな……。昼間と言っても、今日は肌寒い位なのに……」
そう思って元気は気が付く、今日もミリャナは薄手のワンピース。ミリャナの冬服を作らなければならないのだ。
「ねぇ。ミリャナ……。雪が振る前にさ……一緒に何処か旅行に行かない?」
「え!……どうしたの急に……」
「あ、いや……。何か……ミリャナと一緒にさ……遊びに行きたいな~って思って……」
「……でも、家が……」
「家には母さんも父さんもいるし、アイリスだって、ポタンだって、ミールだっているよ」
「……そうね……。皆……いるのね……」
そう言って遠くを見るミリャナ。これまでの事を色々と思い出しているのだろう。
「嫌かな……?」
「フフフ……。そんな訳無いでしょ?……あ!そうだわ!お出かけするなら、ポタンの手袋編まなきゃね!」
「……。違うんだ。ミリャナ……。ミリャナと二人で行きたいんだ……」
「え!……何で?」
「何でって……そりゃ……。まぁ……その……」
「あ……」
見る見る赤くなって行く元気。それにつられてミリャナも赤くなる。驚きのあまり聞き返した自分に後悔するミリャナだ。
「ドクター……。そこは、お前が好きだから二人でラブラブしたんだ。でしょ~って」
「ヒトリア……下品が過ぎるわよ……。……でも、確かにうぶ過ぎるわね……。丘の人達って皆こんな感じなのかしら?」
水中から橋の上を見上げるヒトリアとヤール。
「シャリは純粋なドクターが良いと思うわ!……きゃ!」
「おませなガキね……。シャーリーアンタちょっとちゃんと面倒見なさいよ……。とんでも無い事になるわよ?」
「子供の前で下品な事を言わないでよヤール……。シャリ……ああ言う事は大人になってからするのよ!」
「……は~い」
イチャラブする元気とミリャナを指差すシャーリーに、渋々返事をするシャリ。その指さしによって、元気とミリャナに一斉に人魚と町の人の視線が集中する。
「ヘイ!ヘイ!ヘイ!ドクターママ~!女は愛嬌よ~!そして度胸よ~!……ドクターママがいらないなら、私がドクターを貰うわよ~」
「ちょっとヒトリア!アンタ本性出し過ぎよ!」
「ド、ドクターは私が!」
「シャリ!何言ってるの!?」
橋の下が騒がし過ぎて、元気とミリャナの恥ずかしさがピークを越えてしまう。
「ミ、ミリャナ……話の続きは……家でしよっか……」
元気がミリャナに手を差し出し、瞬間移動で家に戻ろうとした時だった。
「……。ちゃんと紹介して……。元ちゃん……言ったでしょ……皆に紹介してくれるって……」
そんな事を言うミリャナは耳まで真っ赤っか。元気はその可愛さに気絶しそう。こうしてアドレナリンが止まら無い元気の、思春期的暴走が始まった。
元気は興奮状態で大きく息を吸い込むと、橋の手すりに飛び乗り、大きな声で宣言した。
「皆さ~ん!俺の嫁を紹介しま~す!ミリャナで~す!大好きで愛してま~っす!よろしくお願いしま~す!」
「アハハハ!いいぞ~ドクター!何処が好きなんだ~い!」
「ちょっと煽り過ぎよヒトリア……」
「好きな所は全部で~す!ですが特に可愛いお尻が好きで~……ひえぇぇぇ~……!?」
「お馬鹿!」
ドボン!っと水路に落ちる元気。橋の上を見上げると怒って帰って行くミリャナの姿が見える。
「……ドクター……。あれは無いわ……。お尻が好きって言われて女が喜ぶのは、三十越えてからだよ……」
煽っておいて呆れるヒトリア。
「え!?……そうなの!?」
「……思春期ボーイの暴走は、恐ろしいね……まったく……」
驚く元気に、呆れるヤール。
「わ、私もお尻が可愛いですよ!ドクター!」
「シャリ!いい加減にしなさい……もう。ほらドクター早く追い掛けないと……」
「そ、そうだった!……それじゃまた!」
元気は人魚達に挨拶すると、急いでミリャナの後を追った。
町の外の農業地帯をズンズンと進むミリャナ。プリプリと揺れる可愛い後ろお尻からしてご立腹な様子が解る。
「ミ、ミリャナ。ご、ごめん……。あれは……違わないけど……違うんだ……」
ミリャナからの返事が無い。目も合わさず前を向いたままだ。
「ねぇ~。ごめんよ~ミリャナ……。ごめんよ~……」
元気がミリャナの回りを、謝りながらクルクルと器用に回り出す。無表情でいるミリャナだが、内心早歩きする自分の回りをクルクルと回る元気にビックリする。そしてとうとう我慢の限界だ。
「ぶっは!」
ひょっとこ踊りの様な、訳が解らない物や動きがミリャナのツボ。堪らず吹き出してしまった。
「ミ、ミリャナ!」
それを見て喜ぶ元気にまた腹が立つミリャナ。公衆の全面でお尻を好きです!等と言われたのだ。許せるハズも無い。
「……私、怒ってるんですけど……」
「あ……。すいません……」
怒ったら敬語のミリャナ。元気はその様子にシュンとしてしまう。そしてトボトボと付いて行く……が、早歩きのミリャナの隣をトボトボと早歩きで元気が歩くのだ。
「はぁ……。ワザとやってるんじゃ無いんだろうけど……。それ面白いからやめて……」
「え?……何が?」
「もう!」
そう言って走り出すミリャナ。だが、元気がそのままトボトボトボトボと付いて来る。その様子はとても気持ちが悪く、それは遠目からでも農作業をしている人達の目を引く光景だった。
頑張れば頑張る程、余計な事をする元気君です。普通に紹介して貰えれば良かっただけなミリャナなのでした。
……ポタンは何処に行った?w
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『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw