的確で適当
リャナの話しは適当だけど……
ミリャナの涙の理由が解った元気達は、ミリャナを連れて、まずはラピタへと向かった。
鳥娘達は大人しくオリビアの言う事をしっかりと聞いている様だ。
「あの娘達……知能は高い様ね……。フェルミナ何かよりよほど賢いし……しっかりしているわ……」
産まれたばかりのアーシャを抱っこしながら、鳥娘達の様子をオリビアが教えてくれる。鳥娘達は現在、オリビアの指示で朝のお掃除で、城の外側から窓拭き中だ。
「……フェルミナは?」
「まだ寝てるわ……。自由なのは結構だけど……何で城に居座ってるの?あの人達……?」
「……さぁ……」
理由は元気にポタンにも、勿論ミリャナにもさっぱり解らない。元気達からしてみれば、問題児の居場所が解る。それだけで安心なのだが、これからつきまとわれそうなオリビアは少し不満気だ。
「あ、あの……。これ……差し入れです……」
不機嫌そうなオリビアに、前もって準備しておいたサンドイッチをミリャナが渡す。オリビアがそれを受け取りミリャナを見やる。そしてある事に気付いた。
「あら……。ありがとう……。……どちら様かしら?」
「ミ、ミリャナと言います……」
「そう……。私はオリビアよ……よろしく……。怖がらなくても良いわ……何もしないから」
「あ……。ごめんなさい……」
謝るミリャナにオリビアがニコリと微笑む。元気とポタンはミリャナが謝った理由が解らない。そんな様子の二人に溜息を吐くオリビア。
「……はぁ……。見た感じ、ミリャナって元気の奥さん何でしょう?……もっと気を付けてあげなさい……」
「……気を付ける?」
首を傾げる元気。それを見てオリビアは再度溜息を吐く。
「……彼女。妖精の血が混ざっているでしょ?……妖精は色んな事に敏感らしいわ……。今も私の魔力を感じているのでしょう?」
「え!……そうなの?ミリャナ……」
「……ちょっとだけ……。だ、大丈夫、直ぐに馴れると思うから……。それより……妖精ってなあに?」
「あれ?言ってなかったっけ?母さん妖精なんだよ?」
「え!?」
っとミリャナ。
「は?」
っとポタン。
元気の発言に驚くミリャナとポタン。驚いた顔も可愛いなぁと元気は思う。その様子を見てオリビアがミリャナとポタンに同情する。
「あなた達……これから苦労しそうね……。取り敢えず……。ミリャナにこれを……」
オリビアが自分の髪の毛を一本抜くと、黒く輝くブレスレットへと変えた。
「これは?」
「御守りみたいな物よ……。身に付けておけば、私より弱い相手での魔力酔いを防げるわ。……さっき大丈夫って言ってたけど……これまでもあったんじゃ無いの?」
「えっと……。はい……」
「え!……そうなの!?……言ってくれれば良かったのに……」
「そうよママ……」
「あ、うん。ごめんね……」
「はぁ……。原因はあなた達なんだから言える訳が無いでしょう……」
オリビアの発言に固まる元気とポタン。ミリャナも会ったばかりで、自分が隠していた事を言い当てるオリビアの発言に驚く。
「妖精にとって、私やあなた達の強大な魔力は凶器でしか無いの……。魔力酔いは心に干渉して精神が不安定になる……心当たり……あるでしょ?」
心当たりがあり過ぎる元気。出会ったばかりの頃は泣いてばかりだったミリャナ。そして元気が誰かを連れて来る度にミリャナは不安定になる。心が脆くなるのだ。
「もう……。そんな顔しないで二人とも……。今は大丈夫だから」
ミリャナを見て唖然とする二人に、ミリャナが笑顔を向ける。
「……まぁ。その腕輪を付けておけばもう起きないわ……。お近付きの印よ」
「あ、ありがとうございます。オリビアさん!……あ……凄い……気分が楽に……」
ミリャナがブレスレットを付ける。すると今まで感じていた、不安感等が吹き飛び心が軽くなるのを感じた。
「それは、良かったわ……。魔力に馴れると言っても溜まった魔力の残滓は中々消えないの……」
「……何か凄い詳しいけど……。オリビアさんって……妖精と関わりがあったの?」
「この子の父親が妖精よ……。里を抜け出して人里で暮らす変な男だったわ……。男の妖精はホビット族で女がフェアリー族だったかしら?」
「え!?……じゃあ、アーシャって……。妖精とドラゴンの……ハーフって事?」
ポタンがオリビアの話に目を輝かせる。ミリャナも妖精のお話しと、赤ちゃんに興味心身だ。
ポタンが詳しい話を聞きたがったので、五人は寝室から客室へと場所を変えた。
ポタンが話を聞いている間に、元気は孤児院に行き、孤児院の裏手にある井戸で洗濯をしていたリャナに、ミリャナのお休みを伝えた。
そして昨日の様な事は、もう言わないで欲しいと抗議する事にした。
「母さん!ミリャナに変な事を言うのは辞めてよね!……ミリャナ泣いちゃったんだから……」
「あら?そうなの?……で?……それからどうしたの?」
「え?……どうしたって……?」
「あなたを心配して泣いている女の子がいるのよ?……まさか……。何もしなかったの?」
「あ……。いや……抱き締めたよ……。ポタンが……。……ちょ、ちょっと真顔でこっち見ないでってば……怖いから……」
「元気……。あなた……おちんちん無いんじゃ無いの?……流石元ちゃんだわ……」
リャナはそう言うと元気に呆れて、洗濯物を持って広場の方へと行ってしまった。
「……おちんちんって……」
何となくだが、リャナの言っている事が解るだけに、元気は少し落ち込んでしまう。
前に進むには覚悟を決めて何かをしないとイケない。だが、心地が良い今の関係が変わるのが怖い。でもいつかは必ず。……最近はその繰り返しなのだ。
「意気地無しって……言いたいんだろうけど……」
自分の息子を眺めながら、元気が独り言ちる。欲望だけでミリャナとそう言う関係になるのは絶対に嫌な元気。
「解ってるじゃない……。自分のおちんちん見ながら一人言とか……。あなた、変態にしか見えないわよ?」
「うわ!?母さん!……向こう行ったんじゃ無いの!?」
「行ったけど、量が多いのよ。一度で運べないのよ。暇なら手伝いなさいな、元ちゃん」
「……はい」
リャナの洗濯物運びを手伝う元気。恥ずかしい姿を見られたが、恥ずかしい気持ちは直ぐに消えた。
「……はぁ……。助かったわ。ありがとう……一つだけ良い事を教えてあげるわ……」
「……なに?」
「愛だの恋だのってね……クソの役にも立たないわよ?」
「何だよそれ……。ひねくれすぎだって……」
「そうかしら?……愛なんかよりも私は、お金が欲しいわ……。好きだ。とか言われた所でそんなの一銭にもならないんだから……」
「そりゃ……そうだけど……」
「……だから。言うよりも行動しなさい。ミリャナは愛なんて言う不確かな物が欲しいのかしら?」
「……不確かな……物……」
「まぁ。早く子供作って孫の顔を見せて頂戴ね……。モタモタしてるとミールとアルトに先を越されるわよ」
「え!まさかぁ……ミールってまだ、十四でしょ?アルトだって……まだ……」
「……私の初体験は十三よ?」
「え!?」
「何を驚いているのよ?こんな田舎の町……他にする事無いじゃない?」
シスター服を着てとんでも無い事を言うリャナに、元気は開いた口が塞がらない。
「……あなたは女に幻想を抱きすぎよ……」
「……はぁ。母さんと話してると頭が混乱して来るよ……」
「そう。悩むのは良い事よ」
ザ・異世界人なリャナ。そんなリャナの直接的な物言いにカルチャーショックを受ける。
恋愛制限や飲酒等。日本では違法な事でも異世界ではセーフ。良く言えば自由。悪く言えば無法地帯な異世界だ。
そして、リャナの言う事は元気の胸に良く刺さる。今もこれまでも元気の中でのミリャナの存在は、何よりも誰よりも上だ。
ミリャナは可愛いピンクのオナラをする。とまでは思っていないが、いつも良い匂いだし、ウンコしないんじゃ無いかな?とか、きっとコロコロの可愛いウンコだ。等と時々思ったりするレベルで、ミリャナが元気の中でアイドルの様に神格化されてしまっているのだ。
好きだ。愛してる。そんな言葉で満足して良い時期はとっくに終わっている。その事に、リャナと話して少しだけ気付く元気。しかし、だからと言ってどうすれば良いかは、まったく解らない。
「じゃあ、はい」
話しが終わると元気に向かって手を差し出すリャナ。
「え?何?その手……」
「何って、アドバイス料」
「デジャブ……」
今朝ミールにあげたのと同じ小銀貨を一枚渡す。
「毎度どうも……。。……一度ミリャナと二人だけで旅行でもしてきなさい……あなたの周り人が多すぎよ……。それも濃い人ばかり……」
そう言いながら貰った銀貨を胸にしまうリャナ。リャナはシスター服を改造して胸が見える様にしている。こうしていると男の相談者が良くやって来るのだ。
「……母さんが一番、二番を争う濃いさだよ」
「へぇ。元気も冗談が上手くなったわね。……まぁ。二人で旅をする事で見えてくる事もあるでしょう……」
「……見えてくる事?」
「……………………。愛とか?知らんけど……」
そう言いながら、洗濯物を干し始めるリャナ。愛は役に立たないって言ったじゃん。とツッコみたくなったが、平然としているリャナを見て、悩んでても仕方ないか。と思えてきた元気。そして、リャナの適当な人生相談室が人気な訳が少し解った。
「考え過ぎても仕方ないか……」
「その通り……。人間。自然でいいのよ……」
ミリャナに余計な事を吹き込んだ人の言葉では無いな。と適当な返しをするリャナに、苦笑する元気なのだった。
適当な話しをするリャナですが、的確に的を射ますw
お互いにお互いを思いやる元気達三人です。アイリスはアイリスで色々と……。
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