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涙の理由

揺れる乙女心を揺らす悪魔……w



 元気達の帰りを待っている間に寝てしまったミリャナ。目が覚めると隣で寝ている元気の姿にホッと一息つく、しかし、その間にある銀髪の幼女の姿。


「え!?誰?……え?……ポ、ポタン……?」


 ポタンの変化に寝起きで驚くミリャナ。そんなミリャナの声で元気とポタンは目を覚ます。ミリャナのくしゃくしゃの髪が日の光に照らされてとても良い。ちょっとぶかぶかなパジャマが更に良い。


「ふあ~……ママ……おはよう……」


「……お、おはよう……」


 目を擦りながらベッドに座るポタンも長髪になったので髪が少し乱れている。オーバーオールのままだが、こんなにも寝起きが可愛い幼女は、何処を探してもポタンしかいないだろう。そして、それを見つめる女神かと見間違うミリャナ。幸せな光景だ。


「……パパ……心の声が出てるわ……」


「おっと……。幸せな光景に思わず声に出ちゃった様だ……フフフ。おはようミリャナ」


「おはよう……。元ちゃん……ポタンは何で……大きくなってるの?」


 心配そうにポタンを見るミリャナ。ポタンもどう言おうか迷っている様子だ。


「う~ん……」


 元気もどう言った物か悩む。


 朝から、ポタンは神様になって、時空を越えた。等と言った所でミリャナの心配の種にしかならないからだ。


 黙り込む二人を見るミリャナ。すると突然ポロリと涙を流した。


「ママ!どうしたの!?」


「ミリャナ!?」


「あ、あれ……。違うの……何でも無いの……」


 突然の事に驚く元気とポタン。ミリャナも止まらない涙を必死に拭う。その姿に二人は困惑する。元気とポタンが見守る中。暫くすると涙が止まったミリャナがニコリと笑顔を二人に向けた。


「ご、ゴメンね!もう大丈夫よ!さぁ!朝御飯にしましょ!」


 そう言ってイソイソと部屋を出て行くミリャナ。後ろ姿を見送ると元気とポタンは顔を見合わせる。


「……パパが心配掛けるから……」


「ポ、ポタンが急に大きくなるからだろ?」


「わ、私のせいにしないでよ……」


「ポタンだって、俺のせいにするなよ……」


 ヒソヒソ声で責任をなすりつけ合う二人。だがそれも長くは続かない。ミリャナが泣く程の事があったのだ。


「原因が解らないわ……どうしようパパ……」


「う~ん……。取り敢えず……朝御飯作るよ……。そこでミリャナに聞いてみるしか無いと思う……」


「うん……」


 リビングに行くと、ミリャナは洗面所の様でポタンが後を追う。すると入れ替わる様にアイリスが起きて来た。


「おはようアイリス……」


「おはようございます。旦那様……。先輩……何で大きくなってるの?」


「ちょっと訳ありで……。朝食の時話すよ……」


「りょ」


 ギャルっぽくなって来たアイリスと朝食の準備をする元気。ミールは朝から仕事なのでミールの分はお弁当だ。


「おはよう……。元気……ちょっと良いか?」


「どうしたんだ?また金か?」


「違う……。良いからちょっと……」


 仕事の準備を終え、家を出る前に元気を外に連れ出すミール。


「一体どうしたんだよ?」


「姉さんの事だよ……。昨日夜中までずっとお前らの帰りを待ってたんだ……。電気も付けないで独りでさ……」


「まじか……。でも……居場所とか、ポタンが言ってたハズだぞ?何してたかも……」


「……知ってても心配するのが姉さんだろ……。それに今回は……ポタンも一緒だったじゃないか……。俺が言えた事じゃ無いけど……。姉さんを家で独りにするなよな……。強そうに見えて寂しがり屋なんだから……」


「……あぁ。……そうか……。ありがとうミール。謎が解けたよ……」


「……そう。役に立てたなら良かったよ……。じゃあ、はい」


「あぁ。はい……昼の弁当。アルトの分もな……」


「それもそうだけど……。情報料」


「……お前は……有料かよ」


「当たり前だろ……。あんなバイトだけじゃ家なんて永遠に買えねえよ……」


「まったく……ほら」


「毎度!……じゃあ行って来るわ!……姉さんを大事にしたい気持ちも解るけど……何かしてるなら仲間に入れてやれよ……」


「……おう」


 元気の渡した小銀貨一枚と弁当を持って仕事に向かうミール。そんなミールの話はお金の事以外は、とても素晴らしい助言になるのだ。


 ミリャナが感じていたのは、疎外感だ。


 元気はその気持ちが良く解る。異世界に来たばかりの頃。おじさん達から何処に行くにも置いてきぼりにされていたからだ。


 必死に理由を付けて納得していたが、置いて行かれるのは寂しいものである。元気はそう考えると、朝から話題は重いが、ミリャナに隠し事は良くない!と気持ちを切り換える。


「……おっし。全部話そう」


 そう心に決めると元気は家の中に戻った。


 テーブルにはアイリスが準備を終えてくれた様で、朝食が揃いぞれぞれが自分の席に着いていた。


「……お待たせ!」


 元気が着席すると、いつもの様に皆で戴きますをして朝食だ。


「昨日さこんな事があったんだ……」


 それから、アトランティスであった事やラピタにオリビアや、鳥娘がやって来た事を話した。


「……そんな事があったのね……。大変だったでしょ?」


 驚きながらも、笑顔を作っていつもの様に話を聞くミリャナ。だがやはり、少し元気が無い様子だ。


「……だからさ……ミリャナも手伝って欲しいんだけど……」


「え?」


 元気の発言にキョトンとするミリャナ。


「パパ……。ママにはママの仕事があるのよ……」


「……そ、そうね……。孤児院のお仕事があるわ……」


 ポタンの発言に同意するミリャナだが、やはり少しガッカリしている様子だ。これは、元気にしか解らない。ミリャナはガッカリすると眉間が一瞬だけピクッとするのだ。


「……駄目かな?ミリャナ」


「……私が手伝っても……役に立てないわよ……。ポタンの様に賢くも無いし……。元ちゃんの様な力も無いし……」


「そ、そんな事無いわ!……ママにはママの素晴らしさがあるわ!ねぇ?パパ!」


「うん!間違い無い!ミリャナは素晴らしい!」


 どうやらポタンも何かに気付いたらしく、すかさずフォローに入る。


「……はぁ。嫌だ嫌だ……。メンヘラって奴ね……手に負えないわ……」


 アイリスが三人を見て呆れた様な声を出す。そして食べ終わった食器を台所に持って行った。


「アイリスも一緒に行かないか?」


「……お誘いは嬉しいけど……今日は学校です。……また今度誘って下さい旦那様」


 アイリスは元気に笑顔でそう言うと、部屋に戻って行った。


「……わ、私もお仕事の準備をしなくちゃ……」


 アイリスにつられてミリャナも席を立ち、ポタンと自分の食器を台所に持って行く、ポタンがどうにかしろ!とこっちを睨むが、断られてしまったらどうしようも無い。正直、ミリャナにはもっとわがままを言って欲しいと思う元気。自分の気持ちは我慢するから解らないのだ。


「……やめた……」


「え?……何を?」


 元気の言葉にミリャナが反応する。


「う~ん……アトランティスとかオリビアさんの事とか、鳥娘の事とか……後はどうにかなるでしょう……」


「……そんな……。まだ最後まで終わって無いんでしょ?」


「終わって無いけど……。そんな事より。ミリャナの方が大事だもん……今日はミリャナと一緒に孤児院に行くよ!」


「…………そう言えば、私が一緒に行くと思ってるんでしょ……」


「うん」


「うんって……」


 台所に立ったまま振り向かないミリャナ。


「……ミリャナ。我慢しないで気持ちを正直に言ってよ……。このままじゃ何も手に付かないよ……」


 表情や感情は読めても、女心を読むなど元気には到底無理。なので直接聞くしか無い。


「私も知りたい……。ママの気持ち……」


「ポ、ポタンも?……う~ん……」


 ミリャナのお尻が左右にちょっと揺れているのを見て、元気はあれ?っと思う。疎外感だけであれば、仲間外れにした事を怒る事はあっても恥ずかしがる事は無いだろう。他に何かある様だ。


「恥ずかしがらないで良いよ……言って」


「……じゃあ……。……何で元ちゃんはいっつも女の人といるの?」


「……え?」


 仲間外れにしないで欲しいとか、そんな事を言われる思っていた元気はポカンとしてしまう。ポタンも同様、ポカンとしている。


「帰って来ないから心配して見に行ったら、女の人に囲まれて……鼻の下伸ばして……。女の人の為に危ない事ばっかりして……」


「そ……それは……」


「しかも、皆。美人だし……。そんな所に行ける訳が無いわよ……。どうせ行くと元ちゃんは鼻の下が伸びるんでしょ?」


「そ、そんな事は……無い……と思うよ?」


「ポタンの興味は……知らない事を知りたいって解ってるけど……元ちゃんは、綺麗で可愛い女の人が好きなんでしょ?」


「そ、それは……」


 嘘でもそんな事は無いと言えばいいが、言えない元気。


「綺麗な女の人と夜中まで……ずっと……」


「そ、それは、人助けと言うか何と言うか……」


「解ってるの……。解ってるけど……その……心配よ……」


 心配のベクトルがいつもと違うミリャナに元気は違和感を感じる。


「……ミリャナ……。誰かに何か言われた?」


「え?」


 お皿を洗うミリャナのお尻がピクンと反応する。誰かに何かを言われた様だ。


「……誰に何を言われたの?」


「…………お、お母さんに……ちょっと……」


「何を?」


「そ、その……。男の子は直ぐに心変わりする物だから……って……その……早く……」


「ストップ!……解った……その先は大丈夫……」


 娘に何を言っているのだ!と元気は思う。ミリャナが純粋過ぎて元気は心が痛い。様子が変だった原因は疎外感じゃ無くて、元気がおいたをせずに、ちゃんと帰って来るかの不安。そして涙の理由はちゃんと帰って来た安心の涙だ。


 乙女であるミリャナは今。純粋に恋をしているのだ。


「あぁ……。どうしよう……俺はどうすれば良いんだ……ミリャナが愛おし過ぎる……」


 身悶える元気を見て、ポタンが呆れる様に溜息を吐く、ミリャナは振り向けない様子で、ずっとお皿を洗っている。するとアイリスが学校に行く準備を終えてリビングに戻ってきた。


「はぁ……。お熱い事……じゃ……行って来ます……」


「あ。アイリス、お昼御飯代。気を付けて行っておいで」


「ありがとう。旦那様!」


 リュックサックを肩に掛け、アイリスは学校に向かった。


 最近はお友達と買い食いするのが楽しいらしいので、お弁当じゃ無くお小遣いだ。


「わ、私もお仕事に……」


 振り返りアイリスに続こうとするミリャナ。そんなミリャナの行く手を阻み元気は通せんぼする。


「ミリャナ……。駄目……今日は俺と一緒に行こう!……皆に紹介するよ……」


「……紹介?」


「うん。俺の大切な彼女で……未来のお嫁さんだよって……。だから一緒に行こう!」


 元気の行動に戸惑うミリャナだったが、照れもしていない、真剣な元気の様子を見て、ミリャナはコクリと頷いた。


「……本当はね……少し寂しかったの……」


 恥ずかしそうにそんな事を言うミリャナに、元気の中で愛おしさが弾けた。


「ミリャナ!」


 元気がミリャナを抱き締めようとしたその瞬間。


「ママ!ゴメンね!もう絶対独りにしないからね!」


 ポタンが先にミリャナに抱き付いた。


「きゃ!……フフフ……大きくなってもポタンはポタンね」


「勿論だよ!ママ大好き!」


「お、俺も大好きだよ~……」


 愛おしさが弾けた元気だったが……ポタンに先を越され、大きく広げた手をそのまま頭に持って行き、ハート型にする元気なのだった。


リャナのせいで不安定だったミリャナですw


しかし、もうそろそろ二十歳の娘の親としては、元気とミリャナの関係は見ていてもどかしいのかも知れませんねw


ラストでは女性は平均十六で結婚です(*^_^*)

時間の流れが違うので十六でも地球時間で言うと二十歳の過ぎでの結婚が平均になるのかな?



少しワロタ! もっと読みたい! 心がピクリと反応した! と思われた方は、ブクマ:評価:いいね等々。よろしくお願い致します。


下の ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。


『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw



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