帰宅
新情報がザックザク。
直ぐさま家に帰ってミリャナに甘えたい元気だが、放っては置けない事柄がある。鳥少女の処遇だ。
「……研究施設ってなに?……ハーピーとエルフのハーフ?モンスターと人種族の交配って可能なの?……ねぇ?仲間ってどれ位居るのかしら……?」
「ひぃいぃぃぃぃぃ……」
ラピタ城の客室にてソファーに座り、ポタンと向かい合い、詰問を受け怯える鳥少女。名前は『実験体』と呼ばれていて無いらしい。ポタンの横には元気だ。
「ポ、ポタン……。あんまり怖がらせるなよ……泣いてるじゃ無いか……」
「ハッ……!?……私とした事が……ごめんなさい……」
元気の声かけにより、我に返るポタン。
研究者モードのポタンの目は、完全にキマっていて元気でも身震いする時がある程に怖い。
「お~い連れて来たぞ~」
客室の扉が開くと、フェルミナと眠そうにしたまま手を引かれたスッポンポンの女の子が立っていた。
鳥少女に良く似た金髪パーマのツルペタ鳥幼女だ。
「そ、その子は……駄目!」
鳥少女がソファーから素早い動きで飛び出し、フェルミナから鳥幼女を奪う。そして部屋の隅にその幼女を守る様にうずくまってしまった。
「……お、驚いた……。凄い動きだな……普通の時の私よりも早いかも知れないぞ……」
フェルミナが少女の素早さに驚く、元気とポタンも同様だ。
「……あなた達……一体……。まだ仲間は居るの?施設の大きさは?……戦争って言ってたけど……」
この様な兵士を造る目的が戦争であれば、大問題だ。とポタンは少女を更に問い詰めようとする。しかし、少女は警戒を解く気配が無い。幼女を連れて来たのが悪手だった様だ。
「何でよ……。さっきは大人しかったのに……」
「……ポタンは賢いけど……時々お馬鹿だよな……」
「はぁ?パパ?喧嘩売ってるの?……脳髄の奥底から焼いて神経全部引っこ抜くわよ?」
「こ、怖い事言うなよ……。……取り敢えず話しをするなら、仲良くなんなきゃ……」
元気はそう言うと、ソファーの前のテーブルにお茶の準備を始めた。
徐々にお茶とお菓子の良い匂い包まれる室内の空気が、柔らかくなる。
「良い匂いするよ?……ねぇ?」
「そ、そうね……」
部屋の隅で鳥幼女が鳥少女に笑顔で話し掛ける。鳥少女の警戒は解けないが、すこぶる気になっている様子だ。
「フフフ……ポタン。俺の勝ちだな……」
「フン!」
元気にそう言われそっぽを向くポタン。悔しいが、礼節を忘れた自分が悪い。そう納得しようとするがとても悔しいポタンだ。
お茶の準備が終わると元気が鳥娘達に手招きをする。しかしまだ警戒が解けない。
「あ、そうだ!裸のままじゃ……可哀想だな……。これ着せてあげな……」
幼女用のワンピースを出すと、鳥少女に渡す。ワンピースを受け取ると自分が着せて貰った様に幼女に着せる。しかし後ろ前が反対。それを見て元気が幼女に近寄る。
「違う違う……。これはこの可愛いリボンが後なんだ」
「リボン?」
「うん。ほら、このフリフリしたのが後なんだよ?うん!とても可愛い!……ね?可愛いでしょ?」
鳥幼女にお仕着せする元気。そして鳥少女に同意を求める。
「うん……。とても可愛い……」
「本当!……フフフ私可愛いのね?」
元気と鳥少女の言葉に喜ぶ鳥幼女。
「ねぇねぇ?先生?……あれ……食べて良いの?」
元気の手を引いて笑顔で歩き出す鳥幼女。
「ちょっと、四番!……あ!」
「大丈夫よ五番……。あ!」
二人で口を押さえる鳥娘達。そのとっても尊く可愛い光景に元気は、ほんわかする。ポタンはドンドンと出て来る新たな情報に驚きが隠せない。
因みにフェルミナはマーリュクがいるオリビアの部屋に、元気がお仕着せをしている間にお菓子を奪って帰って行った。
「それが君達のお名前かな?……言っちゃ駄目なの?えっと……四番ちゃん?」
「……名前がバレると……連れて行かれちゃうって……五番が……」
「四番!言っちゃ駄目!」
「だ、だって……だって……」
ワンピースを握り締めて泣き出しそうな四番。そんな四番のお口に元気がクッキーを小さく割ってそっと入れる。
「あ、あなた何を!?……四番!吐き出して!変なお薬かも知れないわ!?」
元気の行動に焦る五番だが、四番は吐き出さない。
「はわ~……。何これ!?凄い美味し~!?もっと欲しい!」
「四番!駄目よ!」
「大丈夫よ五番!……眠くなったり、苦しくなったりしないもの……。とっても美味しいのよ!?」
「でも……」
「お菓子って言う普通の食べ物だよ?……ほら……大丈夫!」
元気が五番に向かってクッキーを食べて見せる。そして四番を抱っこするとソファーに座った。
そして四番にクッキーを食べさせたり、紅茶を飲ませたりと甘やかす。嬉しそうにする四番。それを呆然と見る五番。
「五番……だっけ……。あなたもこっちに来て食べて良いのよ……。その……さっきはいきなり色々聞いてゴメンね……」
「……うん」
ポタンが素直に謝った事に少し警戒が薄れた様で、ポタンの横に座る五番。
「どうぞ……」
「ありがとう……。……お、美味しい!……何これ!?……研究所の配給なんかより何倍も美味しいわ!」
「…………そう……よ、良かったわ……」
クッキーを美味しそうにパクパク食べる五番。そして、四番が美味しそうにクッキーを食べる姿を、嬉しそうに眺めるクッキーモンスター元気。
が、我慢。我慢。我慢。我慢……。研究所って何!?……先生って何!?……眠くなったり苦しくなる薬って何!?……何で名前がナンバリングなの!?……聞きたい……知りたい……。が……今はまだ……時期では無い。そう思い一人モヤモヤとするポタン。
そして……。ポタンが自分の欲求を我慢した結果……。
「パパ……。金玉引っこ抜いてやろうか?」
「な、何て言う事言うんだよポタン!?……体が大きくなったからって……下ネタはまだ早いぞ!」
「ネタじゃ無いから安心して……。本当に引っこ抜くから……」
「……や、やめて下さい……すいません……」
時間も時間。お菓子を満喫した鳥娘達は……幸せそうに眠ってしまった。
「きょ、今日は、帰って明日話しを聞けばいいじゃ無いか……な?」
「……そうね」
幸せそうに眠っている鳥娘達を叩き起こす訳にもいかないので、渋々納得するポタン。
その後は、空いている客室に元気が運んでいる間。ポタンがオリビアに鳥娘達の監視と世話をお願いした。
「……いいわ。でも……こんなに良いの?こちらの世界には無い物でしょう?」
「大丈夫。今度造り方も教えるわ」
「……助かるわ」
ベビーミルクや幼児服。ウェットティッシュやベビーパウダー、ベビーベッド等々の赤ちゃんセットを準備して貰い、オリビアは快諾。フェルミナとマーリュクも、赤ちゃんとオリビアの護衛として城に残る事になった。
「私よりも弱い人に護衛されてもね……」
「でも……私は……」
シュンとするフェルミナに、オリビアは溜息を吐く。
「……変な事はしないでね……。今度は本当に許さないわよ?」
「あぁ!しない!約束する!」
「良かったわね!フェルミナ!私も赤ちゃんを守ってあげるわ!」
「そう……ありがとう……」
無邪気に喜ぶフェルミナ達を置いて元気達は、一旦帰宅する事にした。
帰宅したが、もう後数時間で夜が明ける。ミリャナと暮らし始めて、初めての無断夜中帰りである。二人は家の前まで瞬間移動で飛ぶと玄関前に立った。
「……流石にミリャナも寝てるよな……」
「ある程度は話してあるから……寝てると思うけど……」
そっとドアを開けると家の中は真っ暗。ミリャナもアイリスもちゃんと寝ている様だ。
「じゃ……。俺……部屋に戻るから……。おやすみポタン……また明日……」
「解った……。おやすみパパ……。またその内……」
その内って何だよ!?とツッコもうと思ったが、夜中なのでやめておく。
そろりそろりと忍び足で元気が部屋に戻りドアを開ける。するとベッドの上に横になる女神と出会った。
「……あれ?何で……ミリャナ……」
自分のベッドの上で眠るミリャナに元気が驚いていると、ポタンが部屋からトコトコと駆け出して来る。
「パパ!……パパ!ママが……ーー」
「ーーしぃ~っ!ポ、ポタン!静かに……。ここに居るよ……ミリャナ……」
「……良かった」
月明かりに薄く照らされ眠るミリャナ。儚げで何だか不安そうに見える。
「……心配……掛けたかな……」
「……多分……とっても……」
「明日、楽しい話しをしてあげような……」
「そうねパパ……」
魔法でベッドを大きくすると、眠るミリャナの横に潜り込む元気。ポタンは元気とミリャナの間だ。
ホッと一息着くと一気に一日の疲れが押し寄せる元気。今日も色々とあった。
「はぁ……。やっぱり……家が一番いいな……。落ち着く……」
「うん……」
ミリャナの寝息を聞いている内に自然と微睡みの中に落ちて行く元気。それがとても心地良い。どんな美人や、おっぱいやお尻何かよりも……。やっぱりミリャナが一番だな。そう思う元気なのだった。
新情報がいっぱい出て来ました。
取り敢えず。一旦は後日談へ回ってアトランティス篇を完結させますw
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『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw