不幸の終わり
憎悪の中にも……
中央から逃げ出したオリビアは、とある海辺の町で出会った男と恋に落ちた。
そして、子供が産まれた。
今度こそは、幸せな家庭を……そう思っていた矢先。大きな津波により町ごと家族を失った。
原因は中央とアトランティスの戦争だ。
オリビアは失意の中で、愛する者を奪ったアトランティスへと復讐を誓った。
そして、二度も我が子を守れなかった自分自身を呪った。
自分や世界を呪い続けた結果。魔が差したオリビアは魔物化してしまう。容姿がドラゴンなのは、幼い頃に母親に良く聞かされていたヨーロッパの伝説の怪物だからだ。
意識の無いまま彷徨うオリビアだったが、ある日眠りから覚めると意識が戻っていた。
人の姿に戻ると、オリビアは人里に降りた。
そこで、新たな生活を始め、再度恋をして家庭を築いたのだが、人間に戻って日が浅いせいか意識が不安定……。浮気をした夫を怒りに任せて殺してしまう。その時既に妊娠していたオリビアは、町を飛び出し目覚めた巣へ戻りドラゴンの姿のまま子供を守る事にした。
ドラゴンの姿のままであれば、今度は子供を守れるそう思ったのだが、産まれた子供は卵だった。
オリビアは驚いたが、ドラゴンの姿のままで産んだのだから、そんな物かも知れないと思い卵の孵化を待った。
そして、フェルミナの出現である。卵を食べてしまったフェルミナを追いかけたが、人間達の力で撃退され復讐が出来なかった。
今度も自分の子供を守れなかったオリビアは、悲しみに暮れ今度は意識が戻った事を嘆いた。
あのまま……。苦しみや悲しみを知らない魔物であれば……良かったのに……。しかしそれ以降は意識が無くなる事も無く……孤独だけがつきまとった。
何度も死のうとしたが、頑丈な身体がそれを許さない……。復讐しようにも相手の姿は何処にも無い……虚無。それがオリビアの毎日となっていた。
そんなある日の事。巣穴の近くの村津波に呑み込まれた。
その光景は過去に自分の子供を奪ったその時の光景だった。
オリビアは引いていく津波を追いかけ、海中にアトランティスを見つけた。
ここから、オリビアの虚無だった心に火が付いたのだった。
復讐の為に若い兵士を捕まえては、罪人を使って集団心理を植え付けて行った。
元々差別意識の強い土地柄。その計画は面白い様に成功した。
秘密にすれば良い。バレなきゃ良い。見つからなければ良い。内部からの腐って行くアトランティスを見てオリビアは満足すると共に、再度、虚無感を覚えた。
『くだらない……』
その後はほったらかしにしておいても、人魚の兵士のサハギンや罪人イジメは続いた。
その頃地上にて、憎きエルフを発見し魔石に変える事に成功したが、謎の子供に返り討ちにされた。
復讐に行こうかと思ったが、丁度妊娠が発覚したオリビアは、城から出る事をしなかった。
もう、二度と子供を失うのは嫌だった。
「そうしたら……。急にまたあのエルフが現れたのよ……恐怖以外の何でも無いわよ……だから二度と動けない様にしたわ……でも、あなたが一緒って事は……またここに来るのかしら?……私の子供を殺しに……」
心底嫌そうな顔をするオリビア。
「あ、いや……。フェルミナも相当反省してるみたいで……」
「反省って……。反省している人が、いきなり斬りかかって来る訳!?」
子供を食った相手に斬りかかられ、憤怒するオリビアに何も言えない元気。オリビアがやった事は許される事では無いが、それを言い出せば皆が許されないそんな世界なのだ。
誰かが何かしら罪を背負っている。
「待たせたな……。これが、オリビアの魔石だ」
トリトンの登場に元気はホッとする。フェルミナの件に関してはフェルミナが悪いとしか言い様が無いのだ。
「ちょっとお借りしますね……」
トリトンから魔石を受け取ると、元気は魔石を浮かせ、元に戻る様にイメージする。今までは魂を解放してから魔力生命体への定着だったが、今回はラストの力を手に入れ出来る様になった完全逆行再生。ポタンとモンスターの魔石を使った実験で成功済みだ。
元気が魔石に神力を送ると見る見る内に、魔石が元の姿に戻って行く。その光景にトリトン、オリビア共に驚愕する。
「ロ……ローレライ……」
「……トリトン……私……どうして……。きゃ……トリトン痛いわ……」
「す、すまぬ……すまぬ……ローレライ……」
ローレライを抱き締め涙を流すトリトン。それを複雑な心境で見やるオリビア。安住の地が今消えたのだ。
「えっと……。どうしよう……」
ポタンが来ないとこれからはどうしようも無い元気。
「……元気。私を新しい住処へ……連れて行って……」
王座から静かに立ち上がるオリビア。
「え?……でも……」
「な、何を……言っているのだ……ドラグリア……其方もここで……」
「ドラグリア……さん?何方だったかしら?」
死んだ当時のままのローレライは、オリビアを知らない。そんなローレライにどう説明した物かとトリトンが口篭もる。
「あ……ローレライ……。ドラグリアは……その……」
「奥方様……初めまして……。ドラグリアと申します。暫く居候をしておりましたが、本日。住む所が決まりましたの……。急では御座いますが……失礼させていただきます……」
「あら?そうなの?……もっとゆっくりとして行けば宜しいのに?ねぇ?トリトン?」
「う、うむ……」
髭をモミモミしながら、目を泳がせるトリトン。そんな歯切れの悪いトリトンに元気はイラッとしてしまう。
「うむって……。そんな態度……。ひゃっ……」
いつの間にか近づいて来ていたオリビアに、元気は抱き抱えられてしまった。産まれて初めてのお姫様抱っこに元気は少しトキメイてしまう。
「……トリトン王……。お世話になりました……。さようなら……」
「ドラグリア……」
元気はオリビアに抱えられたまま、見つめられ、これ以上は無理だなと思い。ポタンを待たずに瞬間移動した。
移動した先、それは、前に遊びで作ったアルカンハイト上空の空飛ぶ城『ラペタ』だ。
「……何これ……。凄いわね……」
「でしょ?……ここ……住んでいいよ……」
「そう……。ありがとう……」
良い匂いがするオリビア。真顔だが、さっきまでの厳しい表情では無い。島の中央にそびえる城に、緑豊かな大地。透き通った泉も完備。城の中の各居室には、布団等も準備してある。そしてお風呂や台所やライト等も設置済みだ。
「……あんな別れ方で良かったの?」
「……フフフ。私のせいで死んだ人も居るのよ?……本物の奥方が帰って来たのなら、責任追及される前に消えるのは当たり前でしょ?……それに、復讐ももういいわ……。ここなら……きっと……」
「……そう」
責任追及とかじゃ無くて……。と子供臭い事を聞こうと思った元気だったが、辞めておいた。
聞いた所で大人の世界の事は解らない。余計な事は言わないまま、オリビアの大人な良い匂いと柔らかなおっぱいを楽しむ事に決める元気なのだった。
城の中の探索は終了です(*^_^*)
次回からは後日談になるのかな?始めます。
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