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病巣

透明で綺麗な水程、黒い絵の具を垂らすと直ぐに黒く染まる。

 ポタン達と別れ、王室に辿り着いた元気は現在、黒竜とトリトンと対峙していた。


 一度、黒竜と対峙している元気は瞬間移動で黒竜の元に飛べる。そんな元気の出現に二人は驚きを隠せない様子だ。


「人間の子供?一体どうやって……。まあ良い……。酷い目に合わぬ内に消えるが良い……幾ら人間と言えど子供に手出しはせぬ……」


 元気はその発言にあれ?っと思う……。セイレーンが言うほど酷い王様には見えないのだ。


「トリトン様……。ちょっと今日はお話しがありまして……」


「話し?何だ?……申して見よ……」


 身体が大きくもじゃもじゃの髭が怖いが、話しが出来そうな雰囲気に元気は安心する。黒竜は元気を見据え黙ったままだ。


「トリトル様の事なんですけど、許してあげて貰えませんか……?」


「そうか……。脱走の手引きをしたのは貴様か……許しは出来ん……」


「なんか、掟とか色々と聞きましたけど……子供を処刑だなんて……いくら何でも……」


「処刑だと?何を言っているのだ?」


「え?……掟を破った者は処刑って……」


「地下へ落とし罰は与えるが……処刑など……せぬぞ?」


 元気の言う事に顔を顰めるトリトン。トリトンが知らないのであれば、後は黒竜しかいない。元気が黒竜を見やる。


「好きにしろ……。っと私は兵士に言っただけよ……。フフフ……。人種差別ってとても面白いわよね……私はキッカケを与えたに過ぎないわ……」


 口元だけで笑う黒竜。普通であれば、じゃあ一体誰が……となるが……。似た様な状況を元気は経験済み。犯人が居ない……犯罪……集団的な私刑しけい


 一度それが普通になると止まらないし、止められない……。


「イジメ……」


「ご名答……」


 答えに行き当たる元気に、黒竜は満足気だ。


「イジメとは……何だ?」


 トリトンは本当に何も知らない様で、顔を顰めている。イジメがエスカレートした姿。それがアウトゾーンの正体。弱い者を使った兵士達のストレス発散。死ななければ良い。バレなければ良い。巻き込まれなければ良い。城内の兵士達、殆どがそう思った結果があれだ。


「集団差別や、力が無い物をしいたげる行いの事です……。トリトン様は……アウトゾーンの状況については……?」


「アウトゾーン?何だそれは?」


「えっと……。地下の……」


「あぁ。脱走者保護区画の事か?……そこの状況?……食事も提供しているし……問題は無いはずだ。……そのまま出しても他の人魚の目があるからな……」


 元気はトリトンにアウトゾーンの現在の様子を聞かせる。するとそれを聞いて驚愕するトリトン。問題無く生活出来ている。との兵士達の報告を間に受けていたのだ。


「厳しくしろとは言ったが……。閉じ込めて拷問など……俺はそんなつもりでは……」


 アウトゾーンの現状に青ざめるトリトン。そんなトリトンに元気はため息が出る。そんなつもりでは無かった。


「……そんなつもりでは無かった……。それで大切な者を殺されては……堪らないわね……。ねぇ?人間……?」


 黒竜がトリトンに追い打ちを掛ける様にそう言い放ち、元気を見る。フェルミナの事を言っているのだろう、元気は黒竜に何も言い返せない。こう言うドロドロとしたやり取りが一番苦手なのだ。


「……とりあえず……。地下の人達は全員保護しました……。それに……トリトル様の事を殺す気は無い様子で安心しました……」


 とりあえずは、ポタン達が来る前に話しを進めなければイケないと思う元気。


「殺すものか……。あれはローレライと俺の大事な娘だ」


「……そのローレライさんを生き返らせるので……。トリトル様を許してあげてくれません?」


「……は?……貴様は何を……」


 元気の発言にキョトンとするトリトン。しかしここで黒竜が動く。


「そんな事をさせる訳が無いでしょう……」


「ド、ドラグリア!」


 王座から立ち上がった黒竜が見る見る内に、魔物化していく、頭に黒い角が生え翼に尻尾に鋭い爪。黒い魔力が黒竜の周りに渦巻き一気に王室に緊張感が張り詰める。


 お腹に子供がいる黒竜。今ここでローレライが復活し、城を追い出されるのは普通に困るのだ。


「……もう。失うのは嫌よ……」


「ま、待って待って!……戦う気は無いんだ!……黒竜……。ドラグリアさんの事もちゃんと考えてあるんだ!」


「……どう言う事?」


 元気がドラグリアに、ポタンが言った通りに話しをする。


「……と言う訳でさ……。卵をもうすぐ持って来るんだ……。その後は……俺が住む場所をちゃんと準備する……ってか、実はもうあるんだけど……。暴れるのは少しだけ待ってくれない?」


「……わかったわ」


 聞き分けの良い黒竜にホッとする元気。黒竜も前に戦った時より強くなっている元気の力を感じている。穏便な物言いをしてくる以上は応じるしか無い。


「トリトン様……。ローレライ様の魔石は?」


「寝室にあるが……。本当に出来るのか……?」


 元気を信用しきれていないトリトン。いきなり現れた子供に対し信用しろと言う方が難しいだろう。


「うわ!?……ちょ……ちょっと何を!?」


「ふん……。私の攻撃を、うわ!?で跳ね返すのね……。トリトン。こう言う事よ……信じても大丈夫」


「う、うむ……」


 黒竜の放った光線を、間一髪で弾いた元気。王室の天井には大きな穴が空いてしまったが、トリトンは信じる気になったらしい。王座の後の寝室に魔石を取りに行った。


「ドラグリアさん……いきなりは酷いって……」


 元気が黒竜を軽く睨む。すると黒竜が王座に深く座り直し元気を静かに見据えた。


「……ドラグリアじゃあないわ……。私の名前はオリビア……。ヨーロッパ生まれよ……内戦で……子供を失った後、この世界に来たわ……貴方は?……貴方も地球から来たのでしょ?」


「あ……。俺は元気。日本から来たんだ……」


「日本……。そう……知らない国ね……」


「そうなんだ……。俺達の世代では有名だよヨーロッパ……アルプスの山とか?」


 ヴェルサイユや凱旋門と色々とあるが、地理にも弱い元気はそれ以外は知らない。元気の中でヨーロッパと言えばアルプスの少女なのだ。


「……フフフ。懐かしいわね……。あっちは今は平和なの?」


「うん……。今は戦争している国の方が少ないよ……」


「そう……。いいわね……」


 近くに居るのに遠くを見るオリビア。内戦で失った子供の事を思い出している様だ。


「オリビアさんって綺麗なのに良く、中央で捕まらなかったね?」


 グレイスの事を思い出す元気。今と昔は違うのかな?と思う。


「……城に留まれと言われたけど……断って逃げ出したの……。戦争はもう嫌だったから……」


 ポツリポツリと話してくれるオリビアの話に、幸せにならなくてはいけない人間がまだいる事に気づいたのだった。

復讐。やり方は人それぞれですが、黒竜の取った方法は、内部からの浸食でした。


次回で全てが明らかになります?w





少しワロタ! もっと読みたい! 心がピクリと反応した! と思われた方は、ブクマ:評価:いいね等々。よろしくお願い致します。


下の ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。


『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw



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