守るべき物
立派な女のママ達とまだ少女のミリャナですw
急に現れたミリャナとポタン。ミリャナは興味深そうに洞穴の様子を見回しているが、ポタンは不機嫌な様子だ。
「どう言う事になっているか教えてくれるパパ?……周りを見れば……大体の事は想像付くけど……一応……」
「うん……」
ポタンとミリャナに向き直り自然と正座をする元気。アトランティスの城で何があったのか、そしてこれかどうするのかを話し始める。その話を聞いて呆れるポタンと、驚くシャーリー。
「フフフ……。怪我とかして無くて良かったわ。元ちゃん頑張ったのね」
「ミ、ミリャナ……」
笑顔でお片付けをする子供達を見て元気を褒めるミリャナ。本当は一人で心細かった元気。ミリャナの笑顔に泣きそうになる。
「……泣くのは後よパパ……何で最初に私を呼ばなかったの?」
「お、怒られると思って……」
「……それで?」
「えっと……。ある程度ちゃんとして、話をすれば……少しは大丈夫になるかな~とか思ったり何かしちゃったりして……。駄目?」
「大丈夫な訳無いでしょ!?アトランティスの許可も無いまま、百人を越える魚人を一手にユートピアで受け入れる何て!パパはアルカンハイトを火の海じゃ無かった……。津波で水没させる気なの!?」
元気の無計画さに怒るポタン。ポタンが怒るのも無理は無い。何一つ有言実行されていないのだ。
「いや……。ちゃんと話はして来るから……。だから……。ねぇ……ポタン……」
甘える様にポタンを見上げる元気。ポタンはその行為にまた腹が立つ。関わった以上はほったらかしに出来ないから余計だ。
「あ、あの……あまり……。元気君を責めないであげて下さい……。私達はもう……十分ですので……。あ、私は人魚のシャーリーと言います……元気君には命を救って戴きました……」
元気を庇うシャーリー。その姿にミリャナが少しピクリとする。どうやら元気君と言う聞き慣れない呼び方と身近さに反応した様だ。
「わ、私はミリャナと言います……。元ちゃんの……か、彼女です!」
ミリャナのその言葉に、遠くで見ていたヒトリアとヤールが顔を顰め、コソコソと話を始める。何かを相談し合っている様子だ。シャリは肩を落とした程度だ。
「そ、そうですか……。ご迷惑をお掛けしました……」
ミリャナに頭を下げるシャーリー。そんなシャーリーを見て恥ずかしくなるミリャナ。
「い、いえ!こちらこそ、大きな声を出してすいません……。あの……。元ちゃんと仲良くして戴きありがとうございますです……」
ミリャナもそう言ってシャーリーに頭を下げる。そしてムキになってしまった自分に困惑する。単純な嫉妬だが、ミリャナも元気も恋愛レベルは中学生。理由が解らない。そんな光景を見てポタンは溜息を吐く。元気は正座をしたまま俯いている。
「あ、あの……。向こうで話を盗み聞き……痛!何よヤール!痛いじゃ無い!」
お尻をパチンと叩かれ、ぷるるんとお尻が震える、ヒトリア。元気は頭を下げたまま目線だけでその光景を目撃。まるでプリンの様な柔らかさだ!と感動する。がしかし、只今反省中なので、スタンディングオーベーションは我慢だ。
「私は、ヤールと言います。先程の話は本当かしら?……私達……。ここから出られるの?」
「そ……それは……」
駄目だとも言えないが、今すぐにとも言えないポタンが困る。外はもう夜。ユートピアの町に連れて行っても、何か起きた場合対処が出来ないのだ。
「え!……赤ちゃんが……喋った!?何で!?うちの子供何て五歳になるのにまだ舌足らずよ!?」
「私の所もよ!……や、やるわね……ドクター……ママ……。どんな育て方をしたのかしら……」
二人の視線がミリャナに行くが、ミリャナはこれと言って何かをした訳では無いので、返答に困る。
「……まぁいいわ……。それは後で聞くとして……どうなの?出られるの?教えて頂戴……」
話題が変わりホッとするミリャナ。今度はポタンが答えに困る。ヤールの目は本気だ。女性の本気の瞳を見慣れないポタンは困ってしまう。これは商談や交渉では無い彼女達にとっては命のやり取りなのだ。
「……子供達だけでもいいの……。駄目かしら……」
ヒトリアがミリャナを縋る様に見る。彼女は完全にこの場での力関係を把握した様だ。
「ぽ、ポタンちゃん……。ほら、あの……。孤児院のお風呂とかで一度待機して貰って……明日のお昼に移動するとか……駄目かしら?……夜が明ければ兵士さんも、お役所さんも手伝ってくれるだろうし……」
「……はぁ。もう!ここで駄目とか言ったら私だけ悪者じゃ無いの!……まったくもう!」
「ポタン!……へへへやっぱりポタンは優しいな~……」
「ぐは~……!パパのその笑顔……腹が立つわ……。王様が攻めて来たらパパどうにかしてよ……」
「あぁ!任せろ!」
こうして洞穴の中の魚人達の移動が決まった。
移動の前にポタンがママ達を集め、シャーリーの言っていた女の事についての情報を集めた。
「目が赤かった」「角が生えていた」「黒いオーラが出ていた」「牙があった」「翼があった」点でバラバラ……一貫性の無い情報だ。
しかし……それを繋げるのがポタンだ。
「パパ!今すぐにフェルミナを呼び戻して!出来るのならマーリュク様も!」
「お、おう……」
声を荒げるポタンに驚きながら、先に王座に向かったフェルミナとマーリュクを召喚する元気。
「フェ!フェルミナ!?」
キャンプファイヤーの前に召喚されたフェルミナの姿を見て、悲鳴の様な声を出す。ミリャナ。他の人魚達もそれを見て息を呑んだ。
息はしているが、四肢が切断され、目玉が無い、傷口は再生出来ない様に焼かれている。致命傷に為らない場所には複数の刺し傷。それも刺して直ぐに癒やされた様で血は付いているが傷の後だけで傷は無い。そしてそれ同様にマーリュクもフェルミナの横に横たわる。マーリュクの方もボロボロだが身体は無事。こちらは魔力切れの様だ。
目からほっぺに掛けて涙の後が付いている。余程酷い目にあったのだろう。そんな二人に元気は急いでヒールを掛けた。
「酷すぎるだろ……」
元気は二人の姿を見ながら呆然と呟く。
「……取り敢えず私達はこの人達を送って来るから……私が来るまで絶対に行動しないで……解ったパパ?」
「あぁ……。解った……」
ポタンに頷く元気。ポタンが瞬間移動で人魚達を運ぶ。ミリャナは元気に何かを言いたそうにしていたが……何も言わないまま帰って行った。
「ごめん……ミリャナ……。無理しないでね……って……。無理だろう……これは……」
ミリャナの言いたい事は八割、表情で解るミリャナマスターの元気。心配は掛けたく無いが……今回は無理。そう思う。
勝手にやって来て勝手に居着いたフェルミナ。迷惑しか掛けない問題児だが、元気にとってはもう大切な友達で大事な家族だ。
マーリュクも言い回しが面倒臭くて小生意気だが、根はいい娘。大切な友人だと元気は思っている。こうなってしまったのは自業自得と言えば自業自得。だが仕返し位は良いだろうと元気は考える。
「……王座にいる女って誰なんだ……」
「……黒竜だ……」
「フェルミナ……、目が覚めたか……」
「あぁ……。マーリュクはどうだ?」
「……もうすぐ目が覚めるはずだ……」
「そうか……」
四肢が再生し傷が癒えたフェルミナが横たわったままマーリュクをジッと見る。
「元気……。どうして私はこんなに馬鹿なのだろうか?」
「……自覚してるなら自重しろよ馬鹿……」
「ごめん……。マーリュクもごめん……。怖い思いをさせてしまった……」
「起きたら謝れよ……。ミリャナやポタンにもな……」
「……何だ……来てたのか……。それは心配を掛けたな……」
勝負に負けてしおらしいフェルミナ。元気は騒がしくなる前に上の様子を聞く事にした。
ノコギリと言われる戦士は無事撃破したフェルミナだったが、その後黒竜が出現。コテンパンにやられた後。フェルミナは四肢をもがれながら拷問を受けた。
「何でそこまで……」
「卵だ……。私が食べた卵……」
「卵って……」
「黒竜にとっては掛け替えの無い……子供だったんだ……」
「……それは……。そうか……」
さっきまでの怒りが消えて行く元気。許せないが、先に黒竜に手を出したのはフェルミナ。仕返しも何も、フェルミナが仕返しをされただけだ。
卵を食べた……。気楽に考えていたが……フェルミナは黒竜の子供を食べたのだ。黒竜からしたらどれ程憎い物かと思う。ポタンを食う輩がいたら元気もソイツを消滅させる。
「フェルミナ!?」
「マーリュク!」
「ふぇ、ふぇるみな~……」
意識が戻り飛び起きるマーリュクが、フェルミナの姿を見つけて飛びつく。フェルミナもそんなマーリュクを抱き締める。
「はぁ……。お前ら泣く位なら後先考えろよな……」
「元気!アンタ!遅いのよ!……でもありがとう……」
泣きながら怒るマーリュクも何だかちょっと素直だ。
マーリュクの方は、目の前で傷付くフェルミナの治療を永遠とさせられたらしい。
「フェルミナ悲鳴で気が狂いそうだったわ……。あんなのはもう嫌よ……フェルミナ」
「うん……」
美女と美少女の抱き合う姿は素晴らしい物だが……。血塗れと言うのが戴けない。元気が抱き合う様子を眺めていると、ポタンが帰ってくる。
「良かった……ちゃんといたわね……ただいま……」
「おかえりポタン」
洞穴の中にちゃんと元気達がいる事にホッとするポタン。信用が無いのは仕方が無いので溜息を元気はスルーする。
その後、それぞれの話をポタンに聞かせポタンが話をまとめ、この先どうするか対策を立てる事にした。
さて、ややこしくなってきたので一度次回で整理しますw
その場の状況によって冷静な判断を取るママ達ですwこの世で女性ほどしたたかで賢い生き物は居ないと思っています(*^_^*)
そんなママ達に俺もずっと守って欲しい……。
次回は、新たな情報を入れた作戦会議再びです。
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