来訪者
居るだけで何故だか安心感が違う人w
「ほらほらお前ら~。まだあるから落ち着いて食べろよ~」
「「「「「は~い先生!」」」」」
食事の準備が終わり子供達と夕食を取る元気。メニューは鳥の唐揚げと、オニギリと大根の味噌汁だ。
美味しそうに御飯を食べる子供達。身体は痩せ細っているが、命の心配は無い様子に元気はホッと一息付いた。
そんな元気の様子を遠目で見つめる人魚のママ組。あの後もママ達の間では酷い死掛け合いが行われた。
そして、カオスなやり取りにて心が折れた者達が脱落していき現在。ヒトリア。ヤール。シャーリーの三人が戦場に残っている。
「先生って……。何か所帯染み過ぎてない……?まだあの子って十五にもなっていない感じでしょ?」
そういいながら、オニギリを頬張る褐色肌のヤール。真っ黒の紐ビキニが良く似合っている。
「あら……。ヤール。それじゃ貴女テントに戻りなさいよ?サヨナラ」
唐揚げを頬張る金髪ショートのヒトリアは、白ビキニ。サイズが少し小さい様で色々と零れそうだ。
「ちょっと!ヒトリア……。アンタこそさっき幼女趣味っぽいわねとか言ってたじゃ無いの!」
「言ったわよ?……だけどそんなのどうでも良いわよ……。私が求めている物は安定だもの……。変な趣味の一つや二つ……我慢するわ……。にしても何でシャーリーがいる訳?……アンタはこう言うの興味無いでしょう?」
ヒトリアがお味噌汁をそっと啜るシャーリーに顔を向ける。
「え?あ……。そうでも無いわよ……。うん……興味あるわ……」
……シャリが……。とは言えない黒髪ウェーブのシャーリー。人魚には珍しい控えめな身体と身長だ。お花がらのビキニを着ている。
シャーリーはヒトリアやヤールが食事準備中に戦っている間。子供達のお風呂のお世話等をしていた。
それが終わると今度は配膳。その時にシャリが食事準備中にあった事をシャーリに話した。そして言った。
『ママ!……パパが欲しい!……私も頑張るからママも頑張って!』
そう言って張り切る娘に困ったシャーリーだったが、元気は絶望の淵から救ってくれた人だ。好意が無い訳では無い。好きかと言われれば謎だが、娘が頑張るのだから、私も頑張ろうと母親であるシャーリーも参戦しているのだ。
「先生!はい!あ~ん!」
「シャ、シャリ……。自分で食べなきゃ……」
「……先生はシャリが嫌いなんだね……」
「え!?……そんな事は無いよ…………。うん……美味しい!ほらシャリもあ~ん」
「あ~ん。フフフ……美味しい!」
「そ、そう?それは良かった」
目下ではシャリが元気に一生懸命アピールしている。母親としては、娘の未来がとても不安になる行いだ。
「……シャーリー……。貴女卑怯ね……。子供を差し向けるだなんて……」
「な、何を言っているの……ヤール……そんなつもりじゃーー」
ーー無い!と言いたシャーリー……。
「先生!お昼見たいにお膝に座ってもいい?……私……パパをあんまり覚えていなくて……」
「……そっか……。良いよ……おいで……」
元気がシュンとするシャリを膝に乗せる。先程の言葉が無ければ微笑ましい光景なのだが、シャーリーに向かってシャリがウインクして来る。横からはそれを見たヤールとヒトリアがジトッと睨んで来る。身体は良くなったが心が休まらない……。
「シャリだけズルいぞ!」
「ちょ、ちょっと!アンタ達!ヒャッ!」
「コラコラ!お前ら!乱暴は駄目だ!順番だ!」
元気に群がる子供達。シャリがそれを見て顔を顰める。その光景にシャーリーは母親として安心する。ヤールとヒトリアも別の意味で安心する。
「まぁ……。勝負はこの後よ……」
「……そうね……。既成事実を作ってしまえば……こっちの物……」
「……そう言えばヒトリア……。六年前に男紹介してあげたわよね……?」
「……はぁ?ヤール……何言ってるの?……そんな昔の事は忘れたわよ……」
「アンタ……!恩知らずにも程があるわよ……」
大きな声に為らない様に気を付けながら言い合いを始める二人。そんな二人を横目にシャーリーは素早く食事を終えると、元気に先に休むと声を掛けてテントへと戻った。
「……はぁ。気持ち良い……」
元気の出した布団に横になるシャーリー。綺麗な布団に包まれるのは、死んだ夫の家を出て以来である。あの男は馬鹿な男だった。目を閉じると時々思い出す優しかった頃の男の笑顔。
ある日漁師の男と恋に落ちたシャーリーは、その男を追って丘に上がった。
丘に上がったシャーリーには、何もかもが新鮮で、全てが楽しかった。
小さな家で男と二人で幸せに暮らし、やがてシャリが産まれた。
しかし、シャリが二歳になる頃には状況は一変していた。
仕事だと言って家に帰って来ない夫。昼も夜も泣き止まないシャリ。シャーリーは心身共に疲れていた。
そんなある夜の事。男が数人の男を連れて帰って来た。
それがシャーリーの丘での最後の思い出。
シャーリーの手足を縛ると、男達はシャーリーとシャリを馬車に乗せた。
「金が無いんだ……。すまないシャーリー……」
困った様に笑う男にシャーリーは何も言えなかった。
馬車が川の近くを通った時。シャーリーはシャリを抱いたまま川へと飛び込んだ。
手足を縛られていようが人魚には関係無いのだ。
足と水があれば逃げられる。どんな所からも逃げられるのだ。
何故……。逃げなければ……いけない……。
悔しいやら、悲しいやら、怒りやらで泣く泣くアトランティスへ辿り着いたシャーリーだったが、そこで目にした事無い女性を目にした。
「子供は……大事よね?」
「は、はい……」
冷たく笑う女にシャーリーは恐怖を覚えた。
「そう……」
その後……。シャーリーの感じた恐怖は現実の物と為ったのだった。
「大丈夫ですか?」
「元気さん……。あ、ドクター様……」
「元気で良いですよ……。顔色悪いですけど……大丈夫ですか?」
「ええ……。大丈夫……」
テントの外では夕食の片付けが終わり掛けている。シャーリーは少し眠ってしまった様だった。
「何かあったら……。すぐに言って下さいね……」
心配そうにする元気にシャーリーは、聞いてみる。
「元気さんは何でここに?」
「あれ?言ってませんでしたっけ?トリトン王とお話をして……トリトルの事をどうにか出来ないかなって……」
「王様とお話を?」
「うん……。でも……こんな事する王様と話なんか……」
辺りを見回す元気。今は賑やかだが数時間前の事を思い出すと未だに腹が立つ。セイレーンの言ったとおり懲らしめる方の対処になるかも知れない。
「王様は……。優しいお人よ……。一緒にいる女が……。あの女が恐ろしいの……」
「あの女?」
自分の身体を抱き、青ざめながらガタガタと震えるシャーリー。話を聞ける状態では無いのは元気でも解る程だ。
「……ご、ごめんなさい……。お、お話を……しなければ……いけないのに……」
「い、いや……大丈夫……。他の人にでも聞いてみます……ヒトリアさんや、ヤールさんも知ってるんでしょ?その人の事?」
そう言ってニコリと笑う元気。その姿にシャーリーの中で何かが弾ける。
「その事についても話があるの……。元気君……ちょっと座って……」
「あ、はい……」
雰囲気が変わったシャーリーに戸惑いながらも、シャーリーの前に座る元気。さっきとは違い顔色も戻り、何とも言えない安心感がある。
「ふぅ……。貴方は危機感が無さ過ぎるわ……」
「ハハハ……良く言われます」
無邪気に笑うこの子は男、女の前にまだ子供なのだ。大人の私達が利用して良い存在では無い……。子供の前で怯える何て駄目。そう思うシャーリー。
「今すぐこの城から逃げて元気君……。生活の改善だけでもう十分よ……」
「何を言ってるの……シャーリーさん……」
「あの女は……悪魔よ……。見つかってはいけないわ……。見つかったら何されるか……。それに……」
そこまで言うとシャーリーがテントの外を見て。固まる。何かを見て驚いている様だ。
そのシャーリーの様子に警戒をしようとして、元気は気付く。背後にあるのはいつも嗅いでいる落ち着く愛しい香りだ。
「遅すぎるわ……パパ……」
「ご、ごめんなさい……ポタン……。それに……ミリャナも……」
後を振り返らず、背後に立つ二人に謝る元気。
「え!?何で解ったの!?」
後を向いたままミリャナの存在に気付く元気。驚かそうと思ったハズなのに驚かされてしまったミリャナだった。
元気の様子を見に来たミリャナとポタンw
連絡が無いのは良い知らせと言う言葉がありますが、ミリャナに何でも話す元気に限ってはその逆ですw
次回は、情報共有のお時間。
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『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw