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アウトゾーン

城のアウトゾーンと元気のアウトゾーン

 昇降路が辿り着いた先『アウトゾーン』それは、異様な場所であった。


 昇降路のドアが開いた先には光苔ひかりごけだけが便りの薄暗い洞窟の様な通路。そこを恐る恐る進むと元気はドーム状の広い空間に出た。


 見渡す限り岩で薄暗く、とてもお城の中とは思えない空間に元気は息を呑む。そして辺り一面に吐き気を催す程の腐った魚介類の臭いが立ち込め、元気の鼻を突いた。


「何だ……。ここは……」


 更に目を疑う光景は、そこに人が住んでいると言う事だった。


 洞穴の端から円上に大きな海藻のテントが軒並みを連ねている。屋根はあるが壁は無く中が丸見えだ。


 人が寄り添って座っている様に見えるが、薄暗くて良く見えない。洞穴の中心には大きなキャンプファイヤーの様な物が燃えているが、アウトゾーンは身震いする程に寒い。


 元気が入り口で立ち止まって居ると、通路の奥から昇降路の扉が開く音が聞こえて来た。


「もう二度と上に来るなよ!お前は魔力適正も何も無いんだ……。いい加減諦めろ」


 ドサッと誰かが何かを地面に投げる音がした後、昇降路のドアが閉まると辺りに静けさが戻った。


 元気が通路を戻り様子を見るとそこには、シャリがうつ伏せに倒れていた。


「シャリ!?大丈夫か!?」


 元気は急いでシャリに駆け寄る。そしてシャリの姿に唖然としてしまった。


 服を全て剥ぎ取られ、体中アザだらけ。顔も殴られたのだろう。片目が腫れ上がっていて鼻血が出ている。まだ固まっていない所を見ると凄絶な勢いでやられた事が覗えた。


「ヒール!」


 まだ息がある。それだけが救いそんな状態だ。


「……あ、あれ……。元気さん……何で……?」


「ま、まだ、喋っちゃ駄目だ……。痛いだろ?もう少しで良くなるから……」


「へへへ……。何だろこれ……気持ちいいな……」


 魔力がドンドン吸われて行く……。子供の怪我の回復で減る量では無い。……子供相手に何て事を……。元気ははらわたが煮えくりかえる思いがする。


「凄い……。何で?……もう痛く無い……元気さんは……凄い人なの?」


 小さな手で自分の体を摩りながら、シャリが元気をキラキラとした目で見つめる。


「ち、違うよ……。凄く何か無いよ……。ごめんねシャリ……やっぱりあの時一緒に……」


「駄目よ一緒に王様の所何か行ったら、殺されちゃうわ!」


「殺されちゃうって……」


「王様は……。裏切り者には厳しいの……トリトル様も殺されちゃう位だもの……。でも良かった。トリトル様は無事なのよね?」


「うん。無事だよ。さっきは聞けなかったけど……。トリトルとは知り合いなのかい?」


「うん!良くここに食べ物をこっそりと持って来てくれてたの!……ここじゃ何だから、お家においでよ!お母さんを紹介するわ!」


 スッポンポンのシャリに手を引かれる元気。しかしさっきの光景が頭に浮かび、気が沈んでしまう。


「シャリ……。待って……」


 元気はシャリにポタンがトリトルに渡したと言っていた水に濡れても良い素材で出来たワンピースを出して着せてあげる。パンツは擦れては可哀想なので普通のふわふわ布パンツだ。


「わあ!ありがとう!この履き物ふわふわしてて気持ちいいわ!」


 ワンピースをめくり上げてパンツを見せて喜ぶシャリ。その姿に元気は満足する。元気で健康的なのが一番良いのだ。


 その後。笑顔のシャリに手を引かれ、シャリの住んでいると言うテントへ向かう元気。向かう途中、各テントの中が見えた元気は家に帰りたくなった。


 誰も彼もの顔に生気が無い。そんな母親と子供が寄り添っている。男の子の姿はあるが、男性の姿は無い様だ。


 そして皆栄養が足りていない。元気はアルカンハイトの孤児院を初めて見た時の事を思い出した。


「お母さん!ただいま!」


「お……がえり……ジャリ……」


「あぁ!お母さん!無理して起きないで!良いから良いから!寝てて!」


「お、おぎゃく……様……でじょ?……な、何も無いけど……ごべんなざいね……」


「……。お母さん……罰で喉を潰されたの……」


「そ、そう……」


 喉を潰されたのと言ったが……。元気はシャリの母親から目が離せない……。喉を潰された。そんな物では無いのだ。


 閉じた目は窪み。焼けただれた頭皮に乱れた髪。そして足が無い。彼女も栄養が足りていない様でガリガリだ。


「ぶ、不気味でじょ?」


「い、いえ……そんな事は……」


「いいの……。これ……は、罰なの……わだじの……」


「罰……」


 ニコリと笑う彼女だが、歯も所々抜けている。正直言ってしまえば恐怖以外の何者でも無い。


「罪人共に、国王陛下からの恵みだ!有り難く戴け!」


 元気が唖然としていると、唐突に洞窟の入り口の方から兵士の声が上がった。


 それを聞いたシャリと、シャリの母親が慌てる。


「い、いげない!あなだ!かぐれなざい……こっちにおいで……」


「元気さん早く……」


 シャリの母親の敷いていた海藻のシートの下に入れられた元気。その上にシャリと母親が座り。人間椅子再びだ。


 ワカメがビックリする程に臭いが、今はそれ所では無い。


「ど、どうしたの……」


「配給の時間なの……。兵士にバレたら殺されるかも……」


「殺される……。庇ったらシャリ達もヤバいんじゃ……」


「あ、あなだ……じゃ、ジャリのお友達……でじょ?……じゃあ。守らなぐじゃね……」


「元気さん喋らないでね……。元気さんの事は言って無いから……。大丈夫よ……」


 出て行って逃げるのは簡単だが、元気の存在がバレれば上にいたシャリが疑われるだろう。あんな姿を見るのはもう嫌だ。と元気は思う。とりあえず成り行きを見守る事にした。


「よりによって……。人魚組の兵士……。元気さん絶対に動かないでね……」


「うん……」


 シャリに小さく返事をする元気。テントを周りながら食事だろうか?何かを渡して行く兵士達。その声が元気の心をズズズっと刺激する。


「おい、ゴミ。汚いな……。臭い臭い……ほら、残飯だ食え……役立たず」


「はぁ……。魔力も無いゴミをゴミがこさえやがって……何か喋れよウジ虫」


 兵士の罵倒と足音が響く洞穴内。自然に元気の拳に力が入る。何だ!これは……!?


 海底都市アトランティス……。そこは人魚が暮らす夢の様な国。パラダイス……元気はそう思っていた。


 城の外の綺麗な街の中はそうかも知れないが現在元気の目の前には、綺麗な世界の裏側が広がっていた。


「おう、今日も臭いな、シャーリー」


「ご、ごぎげんよう……ベリンド……」


「シャリは……。何だ?言い服を着ているな……。ちょっと来い」


「嫌!駄目よ!この服は駄目!」


「口答えするなゴミが!さっさと来い!」


「じょ、じょっと!ベリンド……乱暴は辞め……ゲハッ……」


 兵士に蹴飛ばされ、元気の上から転げ落ちるシャーリー。シャリは兵士に手を引かれてテントの外へと連れて行かれる。


「触るな……ゴミが!汚い!臭いが移る!さっさと来いシャリ!」


「駄目!この洋服は私の宝物なの!」


「知るか!どうせ上から盗んだ物だろうが!」


「ヤダッ!辞めて!」


「ジャ、ジャリ!?」


 服を脱がし奪おうとする兵士に、泣きながら必死に抵抗するシャリ。元気は黙っていろと言われたが、我慢の限界だった。


「ごめん……。ポタン。パパ約束守れないや……」


 ワカメテントの屋根がヒュッとめくれた次の瞬間。シャリの服を剥ぎ取ろうとしていた兵士が、テントの前から向かいの洞窟の壁まで吹き飛んで行った。


「な、何者だ貴様!?」


 ベリンドと一緒に来ていた兵士が元気を見つけ、槍を持って元気に特攻して来る。ダンジョンで露死南無天ロシナンテ相手にやって、散々いなされた攻撃だ。


 元気は特攻して来た兵士の槍を奪い。ズガン!っと脳天一発。峰打ちで兵士を地面にたたき伏せた。


 それを見て感じたシャリとシャーリーが唖然とする。


「…………。やっといて今更だけどさ……。これ……結構ヤバいよね?……へへへ……どうしよ……」


 振り返りながら情け無く笑う元気に、笑いが堪えきれないシャリとシャーリーだった。



さてさて、元気のハートに火がつきました。


フェルミナは個人単位でのヤンチャガ~ルですが……元気は国を巻き込むヤンチャボ~イの様ですw


次回はアウトゾーン救済開始です。



少しワロタ! もっと読みたい! 心がピクリと反応した! と思われた方は、ブクマ:評価:いいね等々。よろしくお願い致します。


下の ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。


『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw



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