アトランティス
事態が悪化する原因は……
海中都市アトランティス。そこは魚人族の暮らす国。魚人には武人が多く、力を持つ物が偉い。そんな解りやすい国だ。
鎖国制度が厳しくなった経緯は、現王トリトンの妃。ローレライが人間に攫われ殺された事に起因する。
丘に憧れていたローレライは、海で迷った人間を救助する為に、時折地上近郊の海を遊泳していた。
人間と仲良くなって、丘での生活の話を聞くのが彼女の楽しみだったのだ。
しかしそんなある日の事。その話を聞きつけた人間達が人魚の肉欲しさに、ローレライを捕らえてしまった。
その後、それを聞きつけたトリトンが救出に向かったのだが、時既に遅く攫った人間達の村に辿り着いたトリトンが目にしたのは、解体された最愛の妻の姿だった。
「きっと、私達……仲良くなれるわ」
そう言いながら笑うローレライの姿を思い出しながらトリトンは、もっと厳しく取り締まっていれば、ローレライは死ななかった……。と心の底から自分の甘さを悔いた。
ローレライを殺害した漁村の人間達を、その村ごと全滅させたトリトンは、魔法で魔石化を止められていたローレライの身体を魔石に変え国に持ち帰った。
その日から、人が変わったように規制の強化へ力を注いだのだった。
それまでは、少し丘に見学に行って帰って来る。隠れて丘に遊びに行く。等は目こぼししていたのだが、これらも厳しく裁く様になった。
そして今回のトリトルの件だ。
王として許す訳にはいかない。これを許すと後を追う者。丘での犠牲者が増える。丘での人魚の生存率はほぼ零。殆どが人間に狩られるか、海底に逃げ帰るかだ。
掟を破って逃げ帰った罪人の子供。それがサハギン。サハギン事態には罪は無いが、罪の象徴的な存在。忌み子なのだ。
王族と忌み子の駆け落ち。トリトンはトリトルに激怒した。トリトルはトリトルでトリトンに猛反抗した。その結果が死刑だ。
この行き過ぎた処罰に対して、セイレーンが不満を持ち、元気に助けを求めたと言う訳だ。
因みに元気の情報源は勿論フェルミだ。元気に言えば何とかなる。と満面の笑みで言ったらしい。フェルミには悪気は無いが、悪気が無いのがまた達が悪いのだ。
「……トリトンは元々優しい人だったの……だけどローレライが死んでから人が変わっちゃって……」
「成る程……。俺はトリトン王の気持ちが解るよ……。ミリャナが死んだら世界を怨むよ……」
そんな事を言いながらシュンとする二人。しかしポタンはそんな話しの中で一筋の光を見いだしていた。
「ローレライ様の魔石……。持ち帰ったんですよね?……トリトン様は」
「ええ。王室に大切に飾ってあるわ」
それを聞いて元気の顔が一気に明るくなる。
「成る程!魔石があれば俺にも復活させられるな!ローレライ様!」
「えぇ……。それを餌に交渉出来ないかしら?」
「凄いわ!そんな事出来るのね!」
驚くセイレーンは魔石を使った蘇生を知らない様子だ。アトランティスでは知られてい無いのだろう。武力の事に関しては、喧嘩が強い。槍を上手に使う。魔力にあまり頼らないとしか聞けなかったので、ポタンはヒルトンの着ていた武漢の衣装から想像して、拳法家集団なのだろうと考察した。
救助の後はとりあえずは、ユートピアに避難させる事にする。魔国に帰った人達の分空いている部屋が数ヵ所ある。それに、アルカンハイトの町で働く獣人はアルカンハイトに引っ越したりと、受け入れる余裕はあるのだ。
「そこで、セイレーン様にはちょっとやって欲しい事がありまして……」
「いいわ!私が出来る事は何でもするわ!何でも言って頂戴!一緒に行っても何も出来そうに無いもの……。ベイビーちゃんのお願いを私は頑張るわ!」
「ありがとう御座います……。お願いと言うのはですね……」
先にユートピアに行き、神の権現効果によって、避難してくる人魚やサハギンの身の安全を強固な物にすると言う事だ。
「手を出すと天罰が下ります!とでも言って貰えれば大丈夫だと思いますので……。今ユートピアには子育て世帯が多いので、そこまで危険は無いと思いますが、一応念の為です」
「そう。解ったわ!……他には?」
「ほ、ほか?……特には……。えっと……帰って来るまでユートピアの見学でもしておいて下さい」
「解ったわ!見学してれば良いのね!」
素直なセイレーンに少し不安になるポタン。しかし救助の方も元気一人では不安なのだ。
「はぁ。こんな時にフェルミナがいてくれれば……」
「フェルミナ?あの子も今捕まってるわよ?……町に無理矢理入ろうとして捕まっちゃったのよね……。辞めなさいって言ったのに……」
「そ、そうですか……。と言う事は……マーリュク様も?」
「えぇ。マーリュクちゃんもフェルミナと一緒にいると思うわよ?」
「パパ!急がなきゃ!フェルミナが何かする前に!檻の中でジッとしてる訳が無いもの!」
「そ、そうだな!檻をたたき壊して全員を勝手に解放何て事になったら……ローレライ様の時の様にユートピアやアルカンハイトが全滅って事になりそうだ……。ってかどうやって全滅させたの?」
「『海鳴りの槍』って言うアトランティスの宝槍で、大津波を引き起こして村ごと飲み込ませた見たい。波が引いた後は何も残っていなかったわ!私見に行ったもの!綺麗に何も無かったわ」
セイレーンは笑顔で凄かったと話すが、アルカンハイトに大津波が来たら。と考えると笑えない。無人島になってしまう。
「因みにそれって、セイレーン様の力で阻止出来ます?」
「無理ね。槍の力だもの……魔法の力じゃ無いわ。私は役に立たないわ……ごめんね」
「いえ……。大丈夫です……」
また謝りシュンとするセイレーン。過去に何かあったのだろうか?とポタンは思うが、今はそれどころでは無い。向こうにフェルミナが居るのだ。急がなければならない。勿論救助の為では無く、トラブルメイカーが問題を起こす前に引き取りに行かなければならないのだ。
作戦は元気がトリトンと交渉している間に、ポタンがトリトル達を救出。そしてセイレーンがその間にユートピアに行って、魚人達の安全確保だ。
元気の交渉が決裂した場合は、アトランティスの行動次第で対策するしかない。最悪の場合は、元気の力を使って強制的に解決するしかないだろう。とポタンは考えていた。
「よし!じゃ行こうか!ポタン瞬間移動頼むよ!……牢獄からは自分で王座の間を探せば良いんだよな?」
「えぇ……。余計な事はしないで真っ直ぐ向かってね……本当に……。お願いよパパ……」
「わかった!任せろ!」
返事だけは立派な元気だった。
問題に問題児が参戦ですw
次回はアトランティス城へ突入です。
本当はフェルミをこのタイミングでトリトル達と戻して、アルカンハイトの島で騒動をおこそうかと思いましたが、せっかくなので元気と一緒にアトランティス内部を見学したいと思いますw
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