元気な二人
ポタンの苦悩が始まります。
「……本当に……パパは私のプライベートを何だと思っているの?」
「ご、ごめん……でも、緊急事態で……」
「緊急事態?」
元気に召喚されたポタン。すこぶる不機嫌そうだが、元気に抱っこされた状態でセイレーンの姿を見ると、すべてを把握した様子だ。
ポタンはセイレーンとの挨拶を終え、元気に今までの説明を受けた。
「あの二人……。アイリスが火を着けちゃたのがそのまま炎上しちゃったのね……」
「アイリスが火を着けた?」
「……何でも無い。それでパパはどうしたいの?って聞くだけ無駄ね……。どうしたものかしら……」
何か解決策を見つけない限り、馬鹿みたいな変装をして、元気はアトランティスに行くだろう。とポタンは思案する。元気は変装すればバレないと思っているのだ。
「元気さん……その、こう言っては何だけど……。赤ちゃんにお任せしても大丈夫なの?」
「あぁ、大丈夫ですよ!……ポタンはスーパーベイビーなんです!世界で一番頼りになります!」
「スーパーベイビー?……そうなの?……頼りになるのね……。じゃあ私も頼りにするわ!よろしくね!スーパーベイビーさん!」
「よ、よろしくです」
フェルミナ匂(問題児の香り)が漂うセイレーンに頼りにされても困る。とポタンは思うが、口には出さない。
とりあえず、圧倒的に情報が足りないのでポタンはセイレーンに色々と質問する事にした。
「あの……。まずは、懲らしめると言うのは……どう言った感じなのですか?」
「どう言った感じ?……そうね……こう……パチンと一発!」
真顔で手を叩くセイレーン。
「そ、そうですか……。じゃあ、アトランティスの王様……トリトン様の強さはどれ位の強さなのですか?」
「そうね……。サメとクジラとシャチを足した位の強さよ!……マグロの様な性格で一度動き出したら止まらないの!」
真面目な顔でそう答えるセイレーン。
「そ、そうですか……」
これが元気の返答であれば電撃魔法物だが、セイレーンの姿勢は真面目そのものだ。
「そうなのか~、トリトン王は相当強そうですね~」
「そうなの~。相当強いのよ~……どうしたら良いかしら?スーパーベイビーさん?」
「どうしたらいいかな?ポタン?」
何と無くのニュアンスで理解し、何と無く返答する元気。その何と無くの返答に同意して納得するセイレーン。ポタンはそれを見て心から帰りたいと思うが、家はここなので逃げ出せない。それに国際問題になっては、安定してきた人間の世界に波風が起こるのだ。
「……とりあえず……時間はどの位あるのかしら……。その二人の死刑まで……」
「明日の朝に執行されるわよ?」
「明日の朝!?」
他人事の様にそう言うセイレーンにポタンの思考が一瞬停止する。死刑執行まで一日と時間が無いのだ。
一度交流を持ってしまっている以上、見て見ぬ振りは出来ない。しかも駆け落ちの火付け役はアイリス。こちらに責任が全く無いとも言えないのだ。
「セイレーン様?トリトン王に会う事は出来るかしら?」
「私は透明だから行く事が出来るけど……。丘の人間のベイビーちゃんと元気さんには、王宮の突破が……と言うか……。アトランティスに入る事も難しいと思うわ……。ここで、隠しアイテム!じゃじゃ~ん!とか言って何かあれば良いのだけど……。無いの……ごめんね……」
「い、いえ……いいです……大丈夫……」
一人称がベイビーちゃんになったが、スルーするポタン。救い出すだけなら容易だが、穏便に済ます考えが思い付かない。
「とりあえず救ってから考えるじゃ駄目かな?瞬間移動でさビュンと行ってビュンと帰って来るとか」
「……それが一番早いけど……。後々……問題になる気しかしないのよね……」
「問題か……。じゃ、俺がトリトン王と話して来るよ!」
「は?」
「面倒事は嫌だけどさ……。嫌じゃん人が死ぬのとか……。それに……好きな人と一緒にいたいって思いは大事じゃん?……多分またポタンとかに迷惑をかけるかもだけどさ……」
「……それは……もう慣れたわ……。まったくパパは……」
申し訳無さそうにそう言う元気。そんな元気を憎らしく思えないポタン。
元気達に会わず森でずっと暮らしていたら、愛だの恋だのポタンには無関係の事柄だっただろうが、元気の発言をポタンは好ましく思う。
「へへへ……。ありがとうポタン」
「私はまだ何も言ってないわよパパ?」
「え?……でもその顔は行っても良いよって顔でしょ?目が怒って無いよ?」
「……はぁ……。変な事は絶対に言わないでね!攻撃もしない事!……神様の威厳をフルに使って……危なくなったら直ぐに逃げてね……解った?」
「うん!解った!」
いつもいつも解った!と言うが、解っていた事の方が少ないので、後々の対処に力を入れようと考えるポタン。
「じゃ、瞬間移動でトリトル様の魔力を辿って飛ぶから準備してパパ」
「俺はいつでもいいよ!」
笑顔でポタンに答える元気。
「わ、私はどうすればいいの!?ベイビーちゃん!」
「あ……。えっと……。セイレーン様の能力は何でしょうか?」
「私の能力は『サイレントヴォイス』辺り一帯の魔法力の遮断よ。魔力を使う事柄はすべて遮断出来るわ!だけど、力にはめっぽう弱いわよ!……アトランティスは武力に特化してる国だから、行ってもあんまり役には立たないと思うわ!」
「そ、そうですか……」
正直者であるのは良い事だが、武力特化した国と聞いてポタンは不安になる。そしてそんな国でサイレントヴォイスを使われたら困る事この上無い。子供の元気や赤ちゃんのポタンは速攻で捕まるだろう。
「武力特化かぁ……だからセイレーンさんのかかと落としはあんなに痛かったんだね!ちょっと頭が割れたもんハハハ……」
「フフフ……。これでも女神になる前は有名だったのよ?」
「へぇ~。有名人かぁ~。あれ?でも人間に見えるけど?セイレーン様はアトランティスに居たの?」
「私は人魚だから足を変化出来るのよフフフ……。私はアトランティスの初代王ポセイドンの妻だったんだから……。だから遠い孫に当たるトリトルには死んで欲しく無いのよ……」
「そっか~、そうだよな~……」
元気は相変わらずの反応だが、とんでも無い事を言い出したセイレーン。情報の塊が重要な事は言わないのだ。そんなセイレーンにポタンが頭を抱える。
「セ、セイレーン様……。アトランティスは武力の国と言いましたが、どんな武力を持っていて、その……鎖国的になった理由とかもご存知なのですか?」
「え?えぇ!勿論知ってるわ!」
笑顔で胸を張るセイレーン。Cカップ程でそこまで主張は無いが、羽衣からチラリと見えていて丁度良い大きさだ。
「お聞きしても良いですか?」
「勿論良いわよ!……で、何を話せば良いのかしら?」
全部だよ!?っとツッコみたいが我慢するポタン。聞かないと答えないセイレーンにもどかしさを感じるポタンなのだった。
ノリで会話をする二人に挟まったポタンw
セイレーンも元気もお馬鹿な訳じゃありません……。何となくその場の空気で話を理解する人間なのですw
次回はアトランティスのお話しです。
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