願い
元気は相変わらずです。
庭先で押し問答をしていても仕方が無いので、セイレーンを家の中に招き入れ。元気は理由を聞く事にした。
元気は、ドアの前の席にセイレーンを座らせると、いつも通りにお茶の準備をする。そしてお菓子とお茶を準備をし終わると、ずっと気になっていた事に触れる事にした。
「詳しい話を聞きたいんですが……その前にちょっと……失礼」
テーブル椅子に横向きで座って、部屋を見渡しているセイレーンの足に、そっと触れる元気。
「ひゃ!?」
「ぎゃ!?」
セイレーンが驚きのあまり、元気の脳天にかかと落としを喰らわす。あまりの痛みに元気が頭を抑えてのたうち回る。女性でも神様。レベルは相当な物なのだ。
「な、何をするんですか!?ズケベは駄目です!まだあなた、お子様でしょ!こういう事は大人になってからです!…………だ、大丈夫?」
「いった~……。これ俺じゃなきゃ死んでるレベルの痛さですよ……」
「ご、ごめんね……。驚いちゃって……」
律儀に謝るセイレーンだが、元気で無ければ無言で女性の足を触ったりはしないので、自業自得である。
「足……。裸足だから……怪我とか無いかなって……。道中痛く無かったですか?」
「少しだけ……。擦りむいたりはしてないわ」
「ちょっと、回復するので今度は蹴らないで下さいね……」
「あ……。うん、ありがとう」
自分で治せるが、人の好意に素直なセイレーンだった。
セイレーンが長椅子の上に足を伸ばす。全く日焼けなどしておらず。ツルツルのピチピチ。綺麗な御御足からは潮の香りが漂って来る。ペロリとしたい願望に元気は必死に堪え、赤くなったセイレーンの足をヒールで癒した。
「あ、ありがとう……。人間にとって魔力は貴重なのに……」
「いえいえ……。セイレーンさんの綺麗な足のほうが貴重ですよ」
「もう!おませな子ね……。でも、褒められる事なんて殆ど無いから嬉しいわ。ありがとう」
「どういたしまして!」
足の治療を終えるとセイレーンの正面の席へと戻る元気。本当はそのまま隣に座ろうと思ったが、それはミリャナへの裏切り行為だと思い辞めておいた。
「それで、本題何ですけど……。アトランティスの王様を懲らしめるってのはどう言う事なんですか?」
「え?だから……。王様を懲らしめて欲しいんです……」
話しながら、じずっとクッキーと紅茶をチラチラと見るセイレーン。
「……何で懲らしめて欲しいんですか?…………お茶とお菓子食べて良いですよ」
「ありがとう!これ!クッキーよね!フェルミナがこの前来た時にくれたのよ!とっても美味しかったの!フフフ戴きます……ひゃ!?熱い!?」
セイレーンがテーブルの上にカップをひっくり返した。
「だ、大丈夫ですか?」
「ご、ごめんなさい……。熱い物苦手で……」
「ああ、そうか……。ずっと海の中での生活なんでしたね……。こちらこそ……すいません。気が利かなくて……」
元気はそう言うと、台拭きでテーブルを拭いて冷めた紅茶を再度用意する。そしてセイレーンの元へ再度近寄った。
「ど、どうしたの?」
セイレーンが元気の接近に身構える。
「いや……そんなに警戒しなくても……。ベロ出して下さい……治療するんで……そのままじゃ、クッキー美味しく食べられないでしょ?……食べなくて良いんですか?クッキー?」
「……え!……食べたい……。こ、ほれへいいかひら……」
口を開けてベロを出すセイレーン。そんなセイレーンを見下ろしながら元気はベロにヒールをかける。虫歯も無く、歯並び良好。色も真っ白。喉チンコも綺麗なピンク色で愛らしい。丸見えのお鼻の穴には、お毛毛の気配が無いが……。処理はちゃんとしている様だ。
「は、はやひゃひら?」
「終わりましたよ。お茶をどうぞ」
「うん!ありがとう!」
「いえいえ!こちらこそ!」
セイレーンの笑顔を笑顔で返した元気は、席に戻りモシャモシャとお菓子を貪るセイレーンを見ながら思う。これは……大事件である……。手の掛かるお姉さん……素晴らしい逸材だ……と。
最近リャナのせいで、元気には面倒見癖がつき始めている。誰かに頼られる事。お世話をする事に少し喜びを感じるのだ。
「ぷはぁ……。お腹いっぱい……御馳走様でした!」
「いえいえ……。ほら、口の周りに食べカスが着いているよ?」
「え!……ごめんなさい……。あまりにも美味しくて……」
恥ずかしさで赤面するセイレーンに、元気がナプキンを渡す。それを急いで受け取りセイレーンが口を拭う。クッキーを30個程食べて満足した様だ。
「それで……。そろそろ理由を聞いても良いですか?」
「あ!そうね……。アトランティスの王様を懲らしめて欲しい理由……。それはね、差別や鎖国精神が酷いの!」
「差別や鎖国精神?」
「そう!差別や鎖国精神!」
「そうなんですか……」
「そうなの……」
そう言ってシュンとするセイレーン。どうやら、本当にこちらから話を聞かないと、話が進まない様子だった。
「えっと……。どう酷いの?」
「えっと……。海卵って所に私は住んでるだけど、そこに良くサハギンと人魚のカップルが来るの……。それに、丘に上がった人魚やサハギンは死刑なのよ?……酷いでしょ?」
「死刑は……ちょっと酷いけど……。それには何か理由があるんじゃ無いの?」
「あるわ!人魚の肉は万病に効くって事で高く売れるの!食べたら副作用で頭が少し悪くなるけど……。それでも丘に上がったらすぐに捕らえられて殺されるのよ……」
「……それなら、人魚を守る為には……仕方ないんじゃ無いの?」
「そうなんだけど……。今回死刑になるのが……。王様の娘なの……。サハギンの彼と駆け落ちしようとして捕まっちゃって……。あの子達……最近ずっと私にお願いしに来てたのよ……。私には何も出来ないのに……」
下を向いて泣きそうなセイレーン。
「……お願いって?」
「真実を信じる勇気を、一歩踏み出す勇気を下さいって……。そう言った数日後に捕まったのよ。私あの子達が死ぬのは嫌よ……。他の子達も……」
「他の子って?」
「何組かいたんだけど……。みんな捕まってしまって……皆殺されるわ……。トリトンの前に姿を見せたけど……追い返されちゃった……。私は魔法には強いけど……武力にはからっきしなの……」
「……なるほど」
「元気!いえ、元気さん!……王様を懲らしめて、皆を助けてあげて欲しいの!お願いを聞いてくれたら……。私……アナタのお嫁さんになっても良いわ!」
「ま、まじっすか!?……い、いや!違う違う……。俺にはミリャナって言う彼女がいるから……。それは……凄く嬉しい申し出だけど……受けれられないかな……」
「じゃぁ……。無理なの?……私……他には何も持ってないの……」
潤んだ瞳で元気を見つめるセイレーン。本当なら今すぐにでも駆けつけて救出したいが、そうもいかない。力尽くで救助するのは容易だろうが、これはアトランティスの国の問題。元気一人では決めかねる事だ。
中央の戦争に片が着いたのに、アトランティスとの国際問題の末に戦争になってしまっては、お話しにならないのである。
「まぁ……やっぱり。困った時はポタンに相談するしか無いか……」
少しだけ賢くなった元気は、勢いで行動する前に、ポタンを召喚して相談する事にした。
次回はポタンとセイレーンの話合いです。
トリトルとヒルトン。アトランティスは自由恋愛が無い国です。
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