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名付けと習慣

エルフのお話しです



 二度寝を終えた元気は、エルフの子供を抱っこ紐で抱えて、森の泉へ水汲みに来ていた。

 泉に到着するとエルフの楽しそうな笑い声が聞こえてくる。エルフが引っ越して来てるんだったな……そう思いながら、水を汲もうと泉に近寄る。


「あ!元気様!?」


「あ!ほんとだわ!!」


「きゃ~、勇者様よ~!!!」


「あ、こんにちぐはぁ!?」


 元気は挨拶をしようと思ったが、回れ右すると全力で家へと駆け戻った。


「何で全員全裸なんだよ!?ぽよんぽよんのぷるんぷるん!じゃあないか!」


 元気が椅子に座り肩で息をしていると、ミールが屋根裏から顔を出した。


「どうしたんだ?元気?」


「うぉ、何だ、ミールか……いやぁ、裏の泉が大変な事になっててさ」


「あぁ、天国になってたな!ぷるんぷるんのぽよんぽよんだった!」


 ミールは先に見に行っていたようだ。


「覗いてたらさ~フェルミナに見つかってさ~殺されるかと思ったよ」


 ハハハっと笑うミールは、ゲーム三昧の生活をしていた頃よりも健康的な生活を送れている。フェルミナとの追いかけっこが日課だ。


「あ……んじゃ僕、行くところあるからまた後で!」


 少し焦ったように、ミールは壁から飛んで出て行った。


 どうしたんだ?と思っていたら、フェルミナが壁からスッとリビングへと入ってきた。


「ミールを見なかったか?あの小僧、エルフの神聖な水浴びを下卑た目で覗いておったのだ!」


「……向こうの壁から外へ出て行ったよ。今ならまだ追いつくんじゃないかな?」


「ふむ!そうか!ありがとう!」


「フフフ……どういたしまして」


 元気がニコリとフェルミナに笑顔を見せる。


「まったく、エルフの裸を見た途端に両手で顔を隠しながら、凄いスピードで逃げ帰って来た、元気の紳士さをミールには見習って欲しいものだな!根性を叩き直してやらねば!!!」


「う、うん。そうだね……」


「それではな!元気!」


 フェルミナはそう言うと、ニカッと笑い飛んでいった。


「ど、何処にいたんだアイツ……」


「う~、あぁ~」


「あぁ、そうでちゅね~、まんまにしましょうね~」


 元気は抱っこ紐をほどき、エルフの子供を膝に乗せ離乳食を食べさせる。口の端から離乳食が少し溢れるので、柔らかいタオルで拭き取りながら子供の名前をどうしようか考え始めた。


 「エルフの子供だから、エル……安直過ぎるか、将来名前の理由を聞かれたときにエルフだからでは可哀想だ……」


 日本製の名前かなぁ?でも、この世界で生きていくなら目立つよなぁ?世界観とも合っていないと。ミリャナ、ミール、フェルミナときて、元気、絶対に合わない。俺もグェンキーとかに改名するか?まぁ、それは後々だ。


 かといって、名前の法則とか知らないしなぁ~……花の名前とかどうだろう?


 桜、薔薇、秋桜、朝顔、向日葵、蒲公英……タンポポ……たんぽぽか良いかも?そのままじゃアレだし、たんぽぽ、たんぽ?ぽんた?ぽぽんた?ぽぽたん?


 ぽぽたん……ぽぽたん!可愛いな!


 ぽを二回続けるとあざといな、一度にしてポタン!良いんじゃないか!蒲公英って、ライオンがどうのこうのって歌とか多い気もするし、気高く、可愛く、のびのびと!育つ様にポタンにしよう!


 名前を決めると元気はポタンに喋りかけた。


「お前の名前、ポタンにしようと思うんだけど、どうでちゅか~?」


 ポタンは口をむぐむぐしながら、元気の問いかけに、にへらっと笑う。


「……か、可愛い!パパが一生大事にするからな~!あんまり美人さんにならなくても良いからな~!彼氏とか連れてきたらパパその男をぶっ飛ばしちゃうかもしれないよ~?」


「あ~」


「そうか、そうか~フフフ……ポタンは良い子でちゅね~」


 名付けをした途端にポタンの可愛さが跳ね上る。施設である程度の子供達の面倒は見てきたが、ポタンは遥かに別格だった。


 元気は愛おしさが溢れ出過ぎて止まらない。そんなポタンに元気が話しかけている時だった。


「あの、元気様?」


「え!?」


 イケメンエルフが背後に立っていた。


「お、おま!何で勝手に入ってきてるんだよ!!!ビックリするだろ!!!」


「す、すいません!!!ドアをノックしたのですが、中から何だかゾワゾワっと耳が逆立つような話し声がしてきたもので、心配になり……つい」


「で、その話、聞いたの?」


「えっと、その……食べちゃいたいとか……ペロペロしちゃおうかな~とか……?私には意味がわかりませんでしたが、子供を愛してくれている様で安心しました。」


 イケメンエルフがいい笑顔でニカッと笑う。周りにキラキラエフェクトが見え、歯がキラリと光った気がした。


「怒鳴って悪かったね、それでどしたの?」


「そうでした!エルフの女性陣が元気様に何か粗相をしたのではないかと泣いていまして、何があったのかと思い、聞きに来たのです……何か粗相がありましたか?」


「マジか!ごめん!粗相っていうか、ご褒美だったから、彼女達には気にしなくていいよって言っといて貰える?」


「ご褒美ですか?」


「あの、ほら、お、俺って子供じゃん?女性の裸を突然見てしまって、動揺してしまったと言いますか」


 こういう時だけ子供のふりをする元気。


「女性の体で人間は動揺するのですか……エルフは森の中では基本裸なのですが……」


 「何だよ!?その幸せな空間は!……え?でも攫われた時は服着てたじゃん?民族衣装みたいなの……」


「あれは、戦闘の衣装の様なものです。基本全裸ですよ?」


「な、なるほど……む、ムラムラとかしないの?」


「ムラムラですか?どういったものか解りませんが、どうでしょう?気にしたことはありませんね」


 エルフは基本、同種族間での生殖はしない。なので色欲等が薄いのだ。


「に、人間にとっては刺激が強いので、森の中でも服を着てくれると助かるかな……」


「そうですか、解りました!同胞達に伝達しておきましょう」


「うん、助かるよ」


「いえいえ、お安い御用です!」


 女性の全裸はシゲキが強すぎる。なんせ元気は健康的でパンチラの様な……プラトニックなエロスが好きなのだ。


「それにしても、元気様はその子供に名前を与えたのですね」


「あぁ、ポタンだ、以後よろしくな!傷つけたりしたら許さないからな」


「し、しませんよ!我々は一族を愛していますし傷つけたりしません!ただ、何と言えばいいのでしょう?羨ましい?と思ったのです……我々には名前がありませんから」


「そうなの?不便じゃない?」


「森にいるときは思念で会話しますので特に困りません……。あ、あの、よろしければ、わたくしにも名前をもらえ無いでしょうか?」


 イケメンエルフが物欲しげに頰をほんのりと赤く染める。


「ん~じゃぁ、イケメンで」


 元気は三秒で名前を決めた。


「い、イケメン!何か良い響きです!どういう意味でしょうか!?」


「神々に寵愛を受け、カーストの頂点に君臨する者の事だ」


「カースト?という物が解りませんが、神々に寵愛を受けたものですか!素晴らしいです!ありがとうございます!」


「いえいえ、どういたしまして」


 イケメンが喜び過ぎて少し元気の心が痛む。


「そうだ、元気様!水汲みに来られていたようなので忘れて行かれた桶の様な箱に、泉の水を汲んで家の外へ運んでおきました!」


「あ、ありがとう……。あの……やっぱさ、他の名前に……」


「いえ!元気様が、ビシッ!と決めてくださった名前です!私はこれが良いです!今日から私はイケメンなのです!」


「そ、そう……」


 ずっとイケメンだろお前は……と元気は思うが言わない。


「では、わたくしはこれで!」


とイケメンスマイルを見せると、イケメンは森へ帰っていった。


 「良い奴なんだよなぁ~、悪いことしたかな?まぁ、イケメンにイケメンって言うのは悪い事では無いよな……」


 元気はそう思う事にして、ポタンを抱っこしゲップをさせるために背中をトントンした。


 ポタンがけぷっと、ゲップするのを確認すると、イケメンが桶みたいな箱と言っていたポリタンクを家の中へ運びこむ。そして元気は、あらっ?と気付く。


 「今ここに入っているのは、女の子達が浸かっていた泉の水……」


 元気はとりあえず、喉が渇いていたのでコップで一杯。聖なる水を一気に飲み干した。


「うんま!」


 その後、風呂桶へ一気に泉の水を流し込み、魔力式の湯沸かし器で湯を沸かす。


「ポタン、お風呂に入りましょうね~」


「あ~、う~」


 元気は昼間からポタンと風呂へ入ることにした、もの凄く気持ちよかった。


 お風呂から上がると、ポタンが湯冷めしないように緩めの風魔法で髪を乾かす。

 ポタンは風が気持ちいのか耳がピクピク動く、いちいち可愛い……。


 その後、ポタンを抱っこし庭を散歩していると、見慣れないのに何処かで見た事のある苗木を発見した。高さは元気と同じ150センチ程だ。


「なんだこれ?」


「おぉ、元気、元気そうでなによりじゃ、フォフォフォ、何か文字遊びみたいになってしまったの……」


 元気は見なかった事にしようと、散歩の続きを再開する。


「こ、これこれ!何所に行くのじゃ、元気よ!待たんか!?」


 何故か喋る木が庭に埋まっている。


「いやぁ、木だけに気のせいかと思って、ってか、何でここにいるの?あの流れ、死んじゃうまで行かないにしてもさ、暫く眠りについて現れない流れじゃ無いの?」


「儂もそう思っとったんじゃが、何か意識だけは大丈夫だったようじゃ、もちろん神の力は殆ど無くなってしまったがな!しかし、木だけに気のせいとはお主中々やりおるのう!フォッフォッフォッフォ!」


 木の神様はオヤジギャクがお好きな様だ。


「じゃぁ、力を返せば元に戻るの?」


「いやぁ、無理じゃな、今力を返されたら体が耐えきれなくなり、ここら一帯を巻き込んで爆発するじゃろう。それに神様扱いも飽きたし、このままでよい」


 「爆発は困る。……それで何でここに?」


「ん?今、世界で一番安全なのがここじゃからじゃよ」


「そうなの?」


「なんじゃ、自覚無しか?お主は今、世界で一番目、二番目に強い力を持っているのだぞ?魔力や神力量に関しては、じゃが、儂の神力は神々の中では1番じゃったし、魔力に関しても人間の中では元気は上位じゃったじゃろ?」


「じゃろ?と言われても、比べたこと無いからなぁ」


「ふむ……そのうち、この領地のダンジョンにでも潜ってみると良いじゃろ、自分の力を自覚するのは大事じゃ」


「ダンジョンとかあるの!?」


「なんじゃ、知らなかったのか?」

 

「家から殆ど出てなかったから、知らなかったよ。……それで安全なのは解ったけどさ、何で庭に埋まってるの?エルフ達と一緒に裏の森でも良かったんじゃない?」


「最初はそう思っておったんじゃが、フェルミナがここに連れて来たんじゃ」


「フェルミナが?」


「そうじゃ、まったく、いくつになっても甘えん坊なんじゃからな、フォッフォッフォッフォ!」


 ユグドリアスはまったくと言いながらも嬉しそうに笑う。


「フェルミナとじいさんってどんな関係なのさ、仲よさげだけど?」


「フォッフォッフォッフォ!じいさんか、いやぁ、愉快愉快!お前は良いのぉ、フェルミナがなつくのも理解出来るわい」


「いやぁ、もう、良いかなって、庭に間借りしてる居候だし、家主はミリャだけど」


「フォフォ、居候か、まぁ、好きに呼ぶが良い、お前がどう呼ぼうが気にせん」


 気にしないと言っているが、喋る木が庭に埋まっているのだ、色々と気になる所である……木だけに


「フェルミナはのう……元々は、エルフだったんじゃ、しかしある時運命の神を殺してのぅ、その代わりに神になったのじゃよ」


 ユグドリアスによる神語りが始まる。


 エルフであることは本人が言っていたが、フェルミナが神を殺して神になった?


 あの、ノーパン女神の身に何があったんだろう?と純粋に元気は気になった……木だけに。


上はイケメン。


次回はフェルミナの過去が明らかに?

フェルミナ、、、、、、神様っぽいのは初めだけでしたねw


ブクマ、評価、応援!よろしくお願いします!

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