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在り方~マザー~

教会の中でのお話し

 中央の教会から、アルカンハイトの教会へ来て五年。最初は違いに戸惑ったものの人身売買等が無いこの孤児院は良いと思う……。


 だけど、貴族からの寄付領地からの支援も少なく食べるのに必死だ。


「この子供の面倒を頼む……名前はリャナと言うらしい」


「……そう言われましても……」


 そう言われても子供が一人でもこれ以上増えると、餓死者が出る可能性が更に増える。児捨は何とか思い留まって貰いたいものです。


 そして赤子は困る。私には夜の仕事があるのだ。


 そうしなければ、子供達に食事を与えられない……神様はパンなどくれない……私が準備しなければイケないのだ。


「月々の金は……何とかする……。取り敢えず、小金貨(100万)ある……また、その内持って来る……」


「あ……ちょっと!」


 男は私に赤子を渡すと夜の町へと姿を消しました。


 小金貨一枚……。正直助かります。


 暫くは夜のお仕事をお休みして、この赤子……リャナの面倒をちゃんと見てあげられそうです。


 この男はハブリムと言うそうです。


「約束の金だ……。リャナに何か変化はあったか?」


「……夜な夜なうなされています……他には、読み書きや物覚えが異常に良い事位でしょうか?」


「そうか……。では、また来る……」


 時々ハブリムは小金貨を持って来ます。助かりますが、不気味です。


 リャナが孤児院へ来て五年が立ちました。


「リャナ……。勝手に町に出てはイケませんって言ったでしょ?」


「……ごめんなさい」


 口数が少なく何を考えているのか解らない……親が親なら子供も子供かと思う……不気味だ。


 リャナが来て六年が過ぎました。


「リャナ……。これで何度目ですか?」


「三十二度目……」


「……ちゃんと覚えてるのは結構ですが、パンを盗むのは駄目だと何度も言っていますよね?」


「ごめんなさい……」


 ……育ち盛りの子供……仕方がありません……仕方が無いのです……。


 リャナが来て七年。


「リャナ!あんた!またやったの!?」


「お腹空いたんだから仕方が無いじゃない」


「皆、我慢してるのよ!……罰として教会のトイレ掃除です!」


「は~い」


 子供を叱ってはいけない……解ってます。……解ってますとも……。でも今回で三百七十回目。パンだのハムだの肉など……やり過ぎです。


 妖精の子供だと、ハブリムから聞きましたが……リャナは悪魔の子供じゃあ無いんでしょうか?


「マザー……これ、プレゼント」


「……リャナ……あなた……」


 リャナがやって来て八年目……。八歳の子供が私の目の前に……。お酒を持って来ました。


「マザーお酒好きでしょう?」


「……神の使徒はお酒等……」


「神様何かいないでしょ?……私達はいつもお腹が空いているわ……」


「そ、それは……。……そんな事よりも……どうしたのこのお酒?」


「盗んだ……。大丈夫バレて無いから」


「この馬鹿者!そう言う問題じゃ無い!」


 妖精だの悪魔だのの問題ではありません……。このままでは、孤児院から凶悪な犯罪者が出るかもしれません……どうにかしなければ……。この娘には私しかいないのですから。


 …………お酒は……。弁償するにも……お金が無いので……しまって置きましょう。


「リャナ……あんた……。今度は何したんだい?」


「別に……。孤児院を馬鹿にした奴の家を燃やそうとしただけ……」


「……もうそりゃ、犯罪だよリャナ?兵士の処へ行きな……。もう戻って来なくていいよ……」


 九年目……リャナはどうも猟奇的過ぎる。はぁ……頭が痛い……。母親ってのは皆こうして理想の女性像から離れて行くのだろうか……。


 シスターやってるけど、私だって結婚したく無かった訳じゃあ無い!……子供だって……。まぁ、子宮がもう無いから……子供は無理なのだけど……。


「マザー私って頭が良いでしょ?だから学校に行くわ……」


「……そう……。でもお金は?」


「貯めた」


「……そう」


 どうやって?とはもう聞かない。聞くだけ無駄だ。


「……私……。将来ここのマザーになるから」


「は?……あなた……何を言ってるの?」


「何をってそのままの意味よ?……じゃ」


 本当に何を考えているのあの子は……?


 その後も問題事ばかり……。学校では喧嘩。町では不良グループとつるみ何かをしている模様。何かある度に私が呼び出される日々。


「ハブリム!?あんた!いい加減にリャナを引き取ったらどうだい!?」


「む、無理だ……妻の薬を探さなきゃならん!……それに……火消しの費用は出してるだろう?」


「そう言う問題じゃ無いでしょうが!……そもそもあんたが父親でしょう!?何で私ばっかり頭を下げに回らないといけないのよ!」


「そ、それは……。あの子の母親代わりは君なんだから……仕方が無いだろう?」


「……母親って……。そりゃ……可愛いとは思うけれどもさね……限界ってもんが……」


「何かあれば……俺も協力するから……。この事は二人の秘密で頼むぞ……。ほら、金と……今日は差し入れに酒を持って来た」


「…………あんたも、リャナも私を何だと思ってるんだ……ったく……」


 私が酒好きってイメージを何処で持ったんだか……。


「酒場のグリトラがマザーは酒に目が無いって言ってたからな……」


「チッ……あのお喋り女め……。元気なのかい?あの身売り娘は……」


「……先週死んだよ。兵士が言うには病気で死亡……。本当の所は中央の戦場に慰安婦として連れて行かれたらしい……。金に釣られたんだろうな」


「……そうかい……」


 ……どんなに悪い事をしても良いから……。リャナ……あんたは……。


「私の娘よマザー……」


「……あんた……いつ結婚したんだい?」


「去年の冬季頃」


「子供が出来る前に挨拶にこんか!馬鹿者!」


 ちょこちょこっとしか孤児院に姿を見せないと思ったら結婚!?そして子供!?この娘は本当に!自由が過ぎる!……たっく……幸せそうにしやがって……。


「これ……差し入れ」


「……あんたも、グリトラに聞いたのかい?……私が酒好きだって」


「ええ、いい人だったわよ。悪い事を色々と教えて貰ったわ」


「……そうかい……馬鹿。真似するんじゃ無いよ……」


「もうしないわ……。この子が……ミリャナがいるもの……」


「そうかい」


 それからはリャナが、孤児院へ良くミリャナと一緒に来る様になった。


「マザー。ミリャナのオムツ変えて」


「マザー。ちょっと買い物行くからミリャナの面倒お願いね」


「マザー仕事の間ミリャナをよろしく」


 ……ウチは託児所じゃ無いんだが!?……まぁ、ミリャナはリャナと違ってほやっとしてて可愛いから……いいが……。孫って……こんなものなのかね……。


 目に入れても痛く無いとは良く言った物だね。この子の為なら死ねるよわたしゃ……。


 それから数年の後……。ミリャナが唐突に言った言葉に私は心臓が止まるかと思った。


「マザー……。お父さんとお母さんが死んじゃった……」


「え!?」


 戦場に行って……死んだらしい。いつの間に……。大事な事は言わない馬鹿者。大馬鹿者……リャナ……。グリトラの真似はしないって言ったじゃあ無いか……。ミリャナはどうするんだい!リャナ……。


「……ザ……マザー……?」


「あ、あぁ……ミリャナ……。あんたは……大丈夫な訳無いな……。どうするかい?暫くは教会で一緒に……」


「ううん。ミールが……まだ。ミールが生きてるから……。家に……帰らなきゃ……」


「そうかい……。困った時や寂しい時は……遠慮無く言いなさい……。私は……ミリャナの味方だからね……」


「……うん」


 リャナの大馬鹿者……。こんなに幼い娘を残して……。親や娘より先に死ぬ娘があるものか!


「……良かったねハブリム。これで小汚い孤児院とも手が切れる」


「……そんな事を言うな……俺だって……」


「俺だって何だい!?悲しいのかい!フザケルナよ!馬鹿者!……ハァハァ……。もういい……帰れ……」


「……寄付は……続ける……。あんたにもリャナにも悪いと思ってるんだ……」


「……そうかい。あんたの懺悔を聞いてやりたいのは山々だがね……。今は無理だ……。今日は帰っとくれ……」


 酒……。リャナと一緒に飲みたかったな……神様……あんた……一体何してんだい?


 あぁ~。私の神様はやっぱりコイツだね……。お酒様……あんただけが……私の救いさね……。


「マザー?お酒って美味しいの?」


「ミリャナ……?いつの間に?……ハハハ……綺麗になったねぇ……。リャナに似て本当に可愛い……。おいで……ちょっとだけ飲んでごらん……」


「いいの?」


 駄目だよ。……でも一緒に飲みたい……わたしゃ……。寂しい……。一緒に飲もう……。


「ありゃ……。寝ちゃったのかい?フフフ……。可愛いねぇ……。何処も彼処も……リャナの面影があるわ……。あの子ほどは憎たらしく無いけどね……」


 今度はこの子を守ろう……。あの子の代わりに……ミリャナを私が……。


 それから色々とあった様だが……。ミリャナにも良い神様が現れた様で、孤児院にも色々と恩恵を賜った。


 お酒を出してくれる本物の神様だ。だが、簡単にミリャナをくれてやる訳にはいかん。


 ミリャナの叔母として、あの元気と言う男の事を見極め無ければ……。ダルドリーの様に嫁を戦場に連れて行く様な男は絶対に許さん!


 そうこうしてる間に月日は過ぎ……。もう何が何だか解ら無い事になって行った。


 元気。あの男は本当に……神なのだろう。私の頭じゃ……思考が追い付かない。


「……リャナ……何だいこりゃ?」


「お酒……」


 死んで生き返って……。この娘は私の心臓を捻り潰して殺そうとしてるんじゃ無いかと思う。神様もグルか……?


「母さんそれじゃ解んないでしょ?」


「……苦手なのよ……こう言うの……元気よろしく……」


「……母さん投げ過ぎじゃ無い?こう言うのは本人の口から言わないと……」


「…………元気。正論を語る人間はゴミよ……覚えておきなさい」


「……言ってる意味が解るから何か腹立つけど……ここは使い所が違うって」


「チッ……」


「舌打ち!?」


「賢くなった物ね……。あなたはお馬鹿のままで良いのよ……」


「ヒドイ!」


 ……短期間で仲良くなったもんだね……。変な者同士気が合うのかね?


「それで……。リャナ何だい……このお酒は……あんたが酒を持って来る時は、大概面倒な事が多いんだ」


「……マザー……。全部聞いたわ……私の勘違いだったって……」


「何が?」


「マザーが母親だって思ってたのよ私……」


「……そう」


 ……母親だと……思ってた?なら何であんなに……。


「あなたに構って欲しくて……。特別になりたくて……色々とやったのよ私……子供だったわ」


「……そう」


 ……構って欲しいから……盗みや悪い事を繰り返したって事?異常な回数よ?……まんまと策略に引っ掛かったけどね……。


「だから……。その時のお詫び……」


「そうかい……」


 お詫びして……終わりかい?……これで……終わりかい?……私はまだ……。


「だから……。長生きしてね……お母さん……」


「……。まだまだ死ぬつもりは無いよ……。私はひ孫まで見るつもりなんだ……。ねぇ神様?」


「え!?ひ孫……。エヘヘ……。が、頑張ろうかな~……」


「……元気。顔が気持ち悪いわよ……じゃ、私はこれで……」


「ちょっと母さん……」


「リャナ……」


 何だい……。ずいぶんと可愛らしい顔をする様になっちゃって……。昔より今の方が子供じゃあ無いかい……。


「お帰り……。もう、悪い事をするんじゃあ無いよ……」


「わ、解ってるわよ……。もう、子供じゃあ無いんだから……。……ただいま……」


「か、母さん待って!」


 ありゃ、婿姑問題むこしゅうとめもんだいも大丈夫そうだね……。


 フフフ……今日は小さな神様に乾杯するとしようかね。

マザーの心境とオンナからオカンに変わる変化が解って貰えればなと思いますw



少しワロタ! もっと読みたい! 心がピクリと反応した! と思われた方は、ブクマ:評価:いいね等々。よろしくお願い致します。


下の ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。


『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw



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