元気のピクニック③
妖精リーナの過去のお話し。
妖精の国。『フラワーガーデン』そこに一人の女の子がいました。
名前はリーナ。黄色いワンピースを着た白い長い髪の『アネモネ』と言うお花から産まれた、蝶々の様な羽根を持った妖精でした。
リーナは他のフェアリーよりも愛情が深く、皆に優しい人気者でした。
リーナがいつもの様にお花の蜜を集めていた、そんなある日の事でした。
目の前のお花から、新たなフェアリーが誕生しました。
皆の願いから産まれるフェアリーは、いつ何処で産まれるのかは解りません。
その子供は、お花の朝露が零れる様にリーナの腕の中へと産まれ落ちました。
『マーリーゴールド』から産まれた黄色い髪の赤ちゃん。小さな蝶の様な羽根が、それはもうとてもとても可愛い子供でした。
リーナは初めての光景に驚きましたが、同時にこう思いました。
「この子はきっと、私の願いから産まれた子なのだわ!」と……。それがリーナの犯した最初の間違いでした。
リーナは妖精の村へと産まれたばかりの子供を連れ帰ると、その子に『リャナ』と名付けました。
リーナは、リャナは自分の名前とソックリなのが良いと思ったのです。
本当は勝手に名前を付けたら駄目でしたが、彼女は自分だけの特別が欲しかったのでした。
「ああ、何て可愛いのかしら……」その日からリーナはリャナの面倒を良く見ました。
どんどん、どんどんと愛情が溢れて止まりませんでした。
しかし、可愛い可愛いリャナです。他のフェアリー達も可愛がりました。
可愛がられるリャナは、誰にでもニコリと微笑みかけます。皆もそれが嬉しくてひっきり無しにリャナを可愛いがりました。
しかし、リーナはそれが気に入りませんでした。
「リーナの笑顔は私だけの物なの……。私の特別……リャナを私だけの物にしたい……」
リーナは、皆に抱かれるリャナを見て、日に日にそう思う様になりました。
そしてある日の夜にリーナはこう思いました。
「リャナを連れて、フラワーガーデンを出れば良いんだわ!そして二人で暮らせば良いのよ!」
これがリーナの二つ目の間違いでした。
その日の内に、リーナはリャナを連れてガーデンから出ました。
そしてガーデンを出た二人は、森の前にある小さな小屋に移り住みました。
最初は幸せでしたが、リーナはお腹が空く事に気付きました。
妖精は妖精の国でしか、長生き出来ない事をリーナは思い出しました。
外の世界ではご飯が必要なのです。リーナは食べる物を求めて、町に向かいました。
ガーデンから出てはイケない。その掟を破ったリーナは、怒られるのが嫌でガーデンには帰りませんでした。
これが三つ目の間違いでした。
町に着くと、門で二人は止められました。
どうやら、町に入るにはお貴族様の許可がいる様で「待っていろ」と言われたのです。兵士がパンとスープをくれたので、リーナは大人しく待つ事にしました。
人間は怖い。と聞いていたリーナでしたが、ご飯をくれる人間をリーナは好きになりました。
「私はリーナ。この子はリャナよ。貴方いい人ね!お名前は?」
「……ハブリムだ……」
「フフフ……良いお名前ね。あんまり美味しく無いけど、食べ物をありがとうね!」
「……あぁ」
ハブリムはお喋りが好きでは無い様で、あまりリーナとお話をしたがりませんでした。
そしてお貴族様がやって来ました。
「やぁ。妖精のお嬢さん……。町に入りたいと言う事だけど……。お金はあるのかい?」
「お金?……なあに?それ?」
「……フフフ。お金はね、食べ物やお洋服を買う為に必要な物なんだ。このお金で色んな物と品物をブツブツ交換するんだよ?」
「そ、そうなの!?……ハブリム。ゴメンね。パンとスープ食べちゃった……」
「……構わん」
やっぱりハブリムはお話が嫌いな様です。リーナが話し掛けるとそっぽを向きます。
「本当!ハブリムはやっぱりいい人ね!……でも、お金はどうやったら手に入るのかしら?」
「フフフ……。私がお手伝いをしてあげよう……その子供にも美味しいご飯が……必要だろう?」
「この子はリャナって言うの!この子には美味しいご飯が必要よ!」
「フフフ……。じゃあ、一緒においで……」
「うん!」
人間は何ていい人だろう!リーナはそう思いました。
こうしてお貴族様の屋敷へ行ったリーナとリャナでしたが、二人はその日から会えなくなりました。
「リャナに会いたいな……。売るって何だろう?」
暗い牢屋の中でリーナがそう呟きます。あの日からリャナに会っていません。羽根も貴族に取られてしまいました。悲しくて涙が出ます。
涙が地面に落ちたその時でした。
そこから光が広がって、光の中から森の管理人:ドライアドが現れました。
「ドライアド様……」
「リーナ……。これで解りましたか?外の世界に出てはイケない掟の意味が……」
「……はい。ごめんなさい……」
「では、帰りましょう……皆が心配しています」
リーナはガーデンの皆の顔を思い出し、涙が止まりませんでした。
しかし、一人で帰る訳には行きません。リャナがいないのです。
「ドライアド様!リャナも一緒に!」
「……あの子の事は諦めなさい……子供の内に羽根を取られてしまったあの子は、ガーデンの魔力に耐えられません……」
フラワーガーデンの魔力で大きくなる妖精は、背中の羽根で成長に合った魔力吸収を行うのでした。
羽根が無いと直接ガーデンの魔力が身体に入り込み、身体が破裂するのです。赤ちゃんであるリャナは耐えられません。
「羽根を失ったあの子は、人間の世界で生きるしかありません……。羽根が無い貴方もきっと魔力により苦しい思いをするでしょう……。でも、ある程度成長しているので死ぬ事はありません……」
「でも……」
「こちらの世界で、そのまま死にますか?……貴女がそう望むのなら……私は帰ります……」
リーナは思い出します。お貴族様の下卑た笑い声。捕まった日にされた事。全部を思い出すと恐怖で身体が震えて、また涙が溢れて来ました。
「……帰りたいです……」
「そうですか……。では、帰りましょう……。貴女に対する罰は……リャナです。一生あの子にした事を反省しながら生きなさい……」
ドライアドはそう言うと、フラワーガーデンへとリーナを連れて戻ったのでした。
「それからその子は、平穏に暮らしました……。。……リーナのお話しはこれでお終い。愛が深い故に嫉妬し……間違いを犯した。妖精のお話しよ……。フフフ……何で元気ちゃんが泣くのよ……」
「だって……」
「……。リャナも今は幸せそうだから泣く事は無いわ」
「うん……。でも、母さんは貴族の所から孤児院に?リーナ達を売るって言ってたんだよね?その貴族……」
涙を拭きながらドライアドに質問する元気。空想家な元気は話を聞くだけで、頭の中に映像が浮かんでしまい、直ぐに感情移入してしまうのだ。
この世界に慣れて来て、涙脆さが特に酷くなった。ミリャナに甘えまくっている弊害だ。
「その後……ハブリムが助けに来てくれた様です。……この事は内緒にね。貴族殺しは大罪なのでしょう?……お礼を言いたいのですが……。あれから私は、森を出るのが怖くて……会えないのです」
「貴族殺し……。ハブリムって人は……いい人なんだろうな……。良かった話じゃあ無いけど……母さんもリーナも無事で良かったよ」
「フフフ……。元気は本当に素直で良い子ね……」
「え?そうかなぁ?……へへへ」
褒められ無条件で喜ぶ元気。そんな元気は目の前にいるドライアドがリーナだと言う事に気付かないのだった。
えっと、何か個人的に、書いてて面白くなって来ましたw
結末までお付き合いくだせぇw
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