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ポタンのピクニック⑤

ポタンのピクニック最終話です。

 薄暗い階段を降りた先は左右へと続く、横四メートル。縦三メートル幅程の通路だった。


 階段を降りた所の正面には、人骨が一人分埋まっていた。かなりの時間が経っている様で所々骨がひび割れている。


 右の道は左へ。左の道は右へカーブしていて、照らされた通路には様々なサイズの頭蓋骨や骨が埋まり。壁一面を覆っていた。


 そして、鼻をつくような刺激臭が薄く漂い、その臭いが……ブルドンの恐怖心を煽る。


「悪趣味が過ぎる……。それに何なのだこの臭いは……」


 ブルドンがポッケからハンカチを出して、口と鼻を押さえる。ポタンがそれを見て皆にマスクを出して渡した。


「このゴムと言う紐を耳に掛けて、布の部分を口に当てて下さい」


 ポタンが説明をすると、言われた通り着用する。


「便利だなこれは……ポタンよ。これは売り出す予定は無いのか?……救命団の仕事で使えそうだ」


「そうですね……。制作書を今度商人ギルドの方に回しておきます……。そんな事よりもリュライ様。何か感じますか?」


 ポタンは商売の事よりも、今は知的好奇心で頭が一杯だ。


「……奥に、何か嫌な感じがあるが、思念等は無い様だな……しかし、一番奇妙な事は……この骨の数だ……」


「骨の数……ですか?」


 リュライの言葉にクビを傾げるポタン。


「……近年の人間は殆どが魔石になるだろう?」


「あ!そうか!」


 リュライの言葉にポタンが驚き大声をだす。


「うわぁ!?じょ、女王よ!大きな声を出すな!心臓に悪い!」


 そして、ポタンの声にブルドンが驚いた。


 スカリーは熱心に髑髏の観察中。ドクロ……彼女の琴線に触れる物の様だ。


「す、すいませんブルドンさん……。……確かに……魔力の少ない人でも、一年もすれば魔石に変わりますね……。じゃぁ……ここの人達は原始の……」


「あぁ。純粋な原始の人間だろうな……エルフと交わる前のな……」


 原始の人間……それは、ラストが作り出した欲望の化身。エルフだけでは繁殖しなかった為、造られた存在だ。


 その後、エルフと交わり魔力を持つハーフエルフが増え、血が薄れて行き今の魔力を持つ人間になったのだ。


「今は無き原始の……人間……。とても貴重な場所ですね……」


 髑髏を見てポタンが感動する。その様子をブルドンが不可解そうに見る。


「貴重?何を言っているのだ?南の大陸にはたくさん居るぞ?自分達を純潔とのたまう人間達がな。……鎖国的で今は交流は無いが」


「えぇ!何ですかそれ!」


 ブルドンの発言に驚くポタン。それにブルドンがビクッとする。


「だ、だから!大きな声を出すなと言っているのだ……。ここにあるのは、過去の戦争時に捕まえた純潔達の骨だろう……気になるなら王国図書館に資料があるから、今度読んでみると良い……そんな事より先に進もう。いつまでも居たい場所ではないぞ……」


「そんな事ではありませんが……そうですね先に進みましょうか……構造的に道は円形になってる見たいですしぐるりと回って見ましょう」


 ポタンは心のメモ帳に、中央図書館に行く。とメモする。アルカンハイトの図書室には中央大陸の本しか無い。広がる世界にポタンの好奇心が止まらないが、今はこのカタコンベの調査だ。


「うむ。そうだな……」


 話に一旦折り合いを付けると、一同は薄暗い道を進んで行く。すると通路の中間辺りに大きな扉が現れた。


 造りはシンプルな鉄の扉だがここにも鍵が掛かっていた。


「嫌な気配はここからだな……」


「そうですか……じゃ、行きましょう!」


 ポタンがためらわずに鍵を破壊する。ブルドンがそれに驚き、リュライが呆れる。スカリーはポタン同様わくわくしている様子だ。


「……ポタンはもっと危機感を持つべきだな……まぁ。今更なのだろうが……」


「フフフ……。いざとなったら、皆で逃げれば良いのです!」


 ポタンがリュライにニコリとする。


「将来どうなるか……考えるだけでも末恐ろしいな……」


 ブルドンがそう言うと扉を開く。


 思念やモンスターは居ない。とリュライがさっき言ったのを覚えていたので恐怖心は無い。


 扉の中は石造りの部屋だった。


 広さは四メートル四方程で奥には台座がある。そしてその上に何かが乗っているのが確認できた。


「……髑髏水晶!凄い!」


 スカリーが髑髏水晶を見て黄色い声を上げ、ふらふらと近づく。それにポタンも同意する。


「えぇ……。凄く……綺麗……」


 ポタンもスカリーに続き、リュライの腕から飛び出すと水晶髑髏へとふらふらと近づく。


「二人とも気をしっかりと持つのだ!」


 リュライがそう言うとパァン!と両手を合わせた。


「あ、あれ?……いつの間に部屋の中に?」


「あれ?……何で……?」


 我に返った二人が困惑する。二人は意識してでは無く、無意識的に部屋の中へ入っていたのだ。


「あの水晶髑髏は、呪物の類いの物だろう……触れてはならん……。ここに埋葬された人間達の思念を全て吸ったのだろう……呪いが強力だ。アレに触れれば心を持って行かれるぞ」


「え……。何それ怖い……」


「……た、助かりましたリュライ様」


 ポタンとスカリーが急いで扉の前に戻る。


「……あれが、綺麗だと言うのか……其方らは……」


 ブルドンはランタンで照らされ、ぬるりと光る髑髏を見ても気を抜かない。なので心を持って行かれる心配は無い様だった。


「しかし、思念や魔物じゃ無く。呪物でよかった……」


 リュライはそう言うと、水晶髑髏まで歩いて行き手を触れる。そして水晶髑髏に向かって「鉄槌!」と言い放った次の瞬間。髑髏水晶が音も無くボロリ。と崩れてしまった。


「えぇ!勿体ない!?」


 とスカリー。


「リュ、リュライ様!?何を!」


 とポタン。


「うおぅ!?」


 そして二人の声にブルドンが驚く。


「……これに触れた王族やそれに準ずる物達が狂い、中央の城の中がおかしかったのだと思われる。……破壊しとか無ければ危険な物だろう?」


 何を驚いているのかが解らない風に、キョトンと三人を見やるリュライ。


「そ、それはそうですが……それはそうなんですが……ぐぬぬ……」


 お洒落だったから、コレクションしたかった。とは言えないスカリー。


「……。そうですね……仕方の無い事ですね……」


 元気を使って、水晶髑髏に触れるとどう狂って行くのか研究したかった……。とは言えないポタンだった。


「……終わったのならもう戻ろう……。この二人の叫び声で俺の心があの世へと持って行かれそうだ……」


「……よし!じゃ、戻りましょうか!図書館にも行かなければ行けませんし!」


 水晶髑髏の破壊にて、カタコンベ探索は終了した。


 ポタンは地上に皆を連れて瞬間移動で戻ると、アルカンハイトに戻ったら転生の話を聞く約束をスカリーに取り付け、リュライには、救命団の給料アップの話やマスクの話などをする事を約束した。


 そして、二人と別れるとブルドンに中央図書館への案内を頼み。ポタンは中央図書館へと向かった。


「はぁ……。凄すぎ……」


 図書館は城の西側に位置する。


 城の西側の扉を出ると、目の前に大きな鉄の門があり。そこから石畳が真っ直ぐに伸びている。その先の巨大な白い古代神殿の様な建物が図書館だ。


 図書館までの道は広い並木道になっており。木の間の所々に白いベンチがある。道の中間辺りには大きな噴水があり。石畳以外の場所は芝生が生えていた。


 優しい草木の香りがカタコンベの刺激臭で疲れていた鼻孔を優しく撫で。眩しい日の光がとても心地よい。外で読書を楽しむのには、もって来いの環境だった。


「ブルドンさんありがとう御座いました」


「うむ……。本当は部外者は立ち入り禁止なのだが……女王なら構わんだろう……じゃ、俺は現場に戻る。何かあったら呼んでくれ」


「はい!ではまた後で!」


 ブルドンと別れるとポタンは図書館へと足を踏み入れた。


「ぐはぁ……。凄すぎる~」


 図書館内部は一階、二階共に本棚のジャングル。外観とは打って変わって、木製の造りになっている。曇りガラスの天窓が優しく館内を照らし、全体的にふんわりとした雰囲気だ。


 右手には司書の待機場所。正面には二階へ上る大きな木の階段がある。二階部分の下の空間には長いテーブルの読書スペース。二階のテラスには個人用のテーブル椅子が等間隔で並び、封鎖前は結構な人が利用していた事が覗えた。


「グフフ……。では早速。中央の本を堪能しよ~っと!うひゃひゃ~い!」


 ポタンは一人の時だけ、テンションが無駄に高い系幼児だった。


 その後は城内のお片付けが終わるまで、純潔と呼ばれる種族の事や戦争の事。南の大陸についてやカタコンベの事を調べながら、ポタンは至福の時間を過ごした。


 この後。ちょっとした出会いがあるのだが、それはまた別のお話しである。純潔と南の大陸のお話もまたその内に。


 兎にも角にも……こうしてポタンのピクニックは終わりを告げたのだった。



予想以上に長くなっちゃった。


ここで色々と触れるとこの先に支障がありそうなので一旦終了だすw


次回は元気とリャナの様子で中央の章は終了かな?



少しワロタ! もっと読みたい! 心がピクリと反応した! と思われた方は、ブクマ:評価:いいね等々。よろしくお願い致します。


下の ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★ で評価できます。最小★1から最大★5です。


『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw



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