ポタンのピクニック④
頑張れブルドン!w
リュライが除霊を終わらせた後。一行は部屋へと入り各独房を確認する。ポタンはリュライの元へと戻り一緒に探索だ。
「……酷いな」
ブルドンが独房の中を見て口を押さえながら呻く。スカリーも言葉を失っている様子だ。
独房らしき部屋の中には所々に黒い染みが染みついており。壁には鎖が垂れている。その光景が過去に起こっていた出来事の凄惨さを物語っていた。
「どうやら、しばらくは使われてはいない様だな……」
「……そうですね……生臭い匂いもそこまでしませんね」
そう言うポタンにリュライが何かを言おうとしたが、今更か……と言う様に開きかけた口を閉じる。赤子が何処で血の臭いなどと聞きたかった様だ。
ポタンは禁忌にちょくちょく触れるので、死なない程度に時々身体の至る所が破裂する。なので血生臭い匂いには慣れっこなのだ。
「……では、先に進もうか……ポタンの目的はこの先であろう?」
「あれ?……バレちゃってましたか?」
「ただの死体処理に大金をはたく意味が無い……城内の調査が目的なのかと思ったが……その様子からして……違うのだろう?」
リュライがポタンを横目で見やる。ポタンはリュライの推理能力と義理堅さに感心し、全てを話す事にした。
「……はい。実は中央の地下に集合墓地。カタコンベを見つけまして……それが気になるんです!」
「……カタコンベか……あまり行きたい場所では無いが……金は受け取っているからな……付き合うしか無いか……」
「フフフ……。リュライ様。お給料アップは任せて下さいね!」
ニコニコのポタンにリュライが顔をしかめる。
「……まるでピクニック気分だな。それに国家予算を簡単に使うなど……」
「……勝手ではありませんよ?……救命団の仕事はもっと評価されるべき物です。救命団のお陰で助かった命がどれ程あるか……。それに今回の調査は多分ですが中央や世界の未来の為になります」
「ほう。世界の未来の為か……」
リュライが面白そうにそして挑戦的にポタンを見る。ポタンもその視線に楽しさを感じる。ポタンには頭を使った遊び相手が居ないのだ。
「……中央の乱れ具合がおかし過ぎます。勿論。権力を持ってしまったが故に欲が膨張し暴走したってのもありますが……それでも多過ぎでしょ?百六十を超える貴族の奇行に城への移住……」
「しかし……それが、中央の風習であれば何もおかしくは無いだろう?」
「リュライ先生。中央に人身売買や拷問の風習など無いぞ……今回の王になってからだ」
うしろで話を聞いていたブルドンが不機嫌になってしまった。中央の悪口を言われたと思った様だ。
「すまない。言い方が良く無かった……」
「いや。こちらこそすまない……今の城の姿を見ればそう思うのも当然だろう……」
リュライとブルドンが謝り合い。お互いにフッと笑い合った。さっきの除霊でブルドンのリュライへの信用度がだいぶ上昇した様だ。
「尊い……」
スカリーがそう呟く。それにリュライが反応する。
「尊いとは何だスカリー?」
「い、いえ!何でもありません!……難しい話は後で良いのではありませんか?先に進まないと日がくれちゃいますよ?」
焦るスカリーの言うとおり。時刻が解らない以上考察よりもまず調査だ。
「ふむ。そうだな……先行は……」
「リュ、リュライ先生方がどうぞ!俺は後方の警備をしますので!」
「フッそうか……では、行くか……ポタン」
「え?……そ、そうですね。行きましょう!」
「どうしたポタン……体調不良なら一旦……」
「だ、大丈夫です!行きましょう!」
「そうか……」
リュライはまだ何か言いたそうだったが、口を開く事は無く。次の部屋へと向かった。
薄暗い通路を進むと次の部屋に着く。
「……いるな……」
「ですね……そろそろとは思ってましたが……」
部屋の手前で立ち止まる。ポタンとリュライ。
「な、何がいるのだ!?」
ブルドンがそれに過剰に反応する。先程の事が相当衝撃的だった様だ。
「ちょ、ちょっとブルドンさん声がデカいです!」
「すまぬ……。で、何がいるのだ……」
恐る恐るブルドンがリュライに問いかける。
「……うむ。グレムリンだな……小悪魔の類いだ……霊体では無い……安心しろ」
「そ、そうか……。……いや。安心も何も心配などしておらぬ!……グレムリンならば俺の出番だな!」
ブルドンが意気揚々と前に出て扉に手を掛けた。
「ちょっと待って数が多過ぎるわ!」
「へ?」
ポタンがブルドンを止めるが、間に合わなかった。ゆっくりと扉が開いて行く。
「何だ!?この数は!」
「だ、団長!に、逃げましょう!これは無理です!」
ブルドンとスカリーが驚くのも無理は無い。扉の先の部屋にいたのは部屋一杯のグレムリンの群れ。グレムリンはゴブリン同様一匹程度であれば、脅威では無いが群れを成すと魔法を使う分ゴブリンよりも遥かに厄介なのだ。
姿形は、全身真っ黒で体毛が無い尻尾の尖った耳の長い猿である。大きな赤い目が闇夜でも光る。十メートル四方の部屋の中に三十匹はいる。それが一斉にブルドンに注目した。
「マズいな……逃げた所で一斉に魔法でも使われたら、崩落が起きて全員地下に埋まってしまうぞ……」
「ど、どうしましょう!」
リュライが最悪のケースを想像する。それに合わせてポタンも焦る。
「こうなったら、俺が囮を!」
そう言ってブルドンが部屋に入ろうとした時だった。
「「「「「「「ギイェギァ!!!」」」」」」
グレムリンが一斉にバスケットボール程の大きさの火の玉を出した。
「ひぃぃいいいいいぃぃぃ!!!」
ブルドンがそれを見て悲鳴を上げる。それを合図に火の玉がポタン達目がけて飛んで来た。
ドズダダダダダダダダダダダダ……!!!
地下通路内に火の玉がぶつかる衝突音が響きわたる。
「……な、何が……起きているのだ……これは……リュライ先生か?」
ブルドンがポカンとする中。ブルドンの目の前で火の玉が次々に破裂している。
「……いや私では無い……ポタンか?」
リュライがポタンを見る。
「いいえ……私ではありませんよ……フフフ……ね。スカリーさん?」
ポタンがそう言いながら。嬉しそうにスカリーを見やった。
「……ポタンさん……あなた……図りましたね……」
スカリーがニコニコするポタンを睨む。
「ど、どう言う事だ?……何が起きているのだ?訳が解らん……」
「……私にも解らん……これはどう言う事だ?……スカリー」
全員が轟音の中。スカリーを見やる。
「はぁ。何で解ったんですか?ポタンさん……?」
「フフフ……。女性同士の笑い合う姿を見て『尊い』等と言うお馬鹿な男が父親な物でして……」
「成る程ですね……。失言でした……。まさか転生者がアルカンハイトにいたとは……」
「転生?召喚では無くて?」
「あぁ。その方は召喚者なのですね。私は転生者です。産まれも育ちもアルカンハイトです。……取り敢えずポタンさん、中のモンスターどうにかして貰って良いですか?……召喚者程の魔力は無いんです」
「解りました……後でお話を聞かせて下さいね」
「……解りました」
リュライとブルドンがポカンとする中、ポタンが魔法を部屋の中に放った。
「ブラックホール……」
ポタンがそう言うと飛んで来ていた火の玉の数がどんどんと減って行く。
そして、火の玉が途絶え部屋の中が見える様になると部屋の中の中心に二メートル四方程の黒い球体が浮いていた。
グレムリン達は、その球体に飲み込まれない様に壁や扉に張り付いているが、どんどんと飲み込まれて行き消えて行く。
「……良くイメージ出来ましたねあんなの……」
「フフフ……。イメージは爆発を超える超爆発で空間をねじ曲げて穴を開ける感じですね」
「簡単に言いますけど……原理を知っててもイメージは無理でしょう……さすがエルフと言った所ですね……防壁……そろそろ限界です」
スカリーはどうやら、両手を前に出す様なポーズを取らないと魔法が使えない様で両手を前に出したままポタンを見る。
「解りました」
ポタンはそう言うと、残った十匹程のグレムリン達にまとめて電撃を流す。バチン!と電撃が流れたグレムリン達が叫ぶ時間さえも与えられず一斉にブラックホールに飲み込まれた。
それと同時にブラックホールも消滅する。グレムリンとブラックホールが消えて静かになった部屋の中には、チリ一つ残っていなかった。
「……お、俺は何か悪い夢でも見ているのか?」
キョトンとするブルドン。リュライは片手をアゴに添えて何かを考えている様子だ。
「……私も同じ心境だが……今は先を急ごう……人の過去など知った所で……今はどうしようも無い……」
リュライが部屋の中に入り次の扉へ向かって歩き出す。それにブルドンとスカリーが続く。ここの思念は魔物化し終わっていたので思念は残って無い様だ。
「はぁ。私……クビですかね……」
スカリーがションボリと後で肩を落とす。
「スカリーよ救命団をクビになったら中央騎士団に来い!歓迎するぞ!」
ブルドンがスカリーにニコリとする。
「ブルドン殿。うちの副隊長を勝手に勧誘しないで貰いたい。大体何故クビに何て言う話になるのだ?」
歩きながらリュライがスカリーに問いかけ。それにションボリとしたたままスカリーが答える。
「……経歴詐称に……技能力詐称ですよ?……そんなのクビでしょ?」
「……私は知っていたので詐称にならない……それで良いだろう?……今救命団は正規の隊員が少ないんだ。お前に抜けられると困る」
それを聞いたスカリーの眼鏡がキラリと光った。
「だ、団長!……。へへへ……はぁ。ツンぽいけど実は……的なイケメン……最高過ぎ……やっぱり尊いわ~団長……。じゅるり」
ポタンは元気の様な反応をするスカリーを見て、異世界の人間は本に書いてある程。まともな人間はいないもかも知れないと思った。
薄暗い通路を進み。次の部屋の扉の前に立つとリュライが中の気配を探る。中に何者の気配も無いのを確認すると、一同は部屋の中へと踏み込んだ。
するとそこには厳重に鍵が掛けられた大きな扉があった。
しかし扉は前方にでは無く、地面に設置してある。ここが最後の部屋の様だ。
「……地下への入り口か……。この先がカタコンベなのだろうな……。。……鍵が掛かっているが最近開けた後がある」
リュライがしゃがみ込みランタンで扉を照らすと鍵の部分だけ埃が払ってあった。
「……一体誰が……」
そう呟くブルドンに、ポタンが独りごちる様に返答する。
「……誰がって……こんな所の鍵の所有者なんて一人しか思い浮かびませんよ」
「……王か」
「でしょうね……リュライ様どうですか?何か感じますか?」
「うむ。あまり近寄りたくは無い気配がするが……その顔は行きたいのであろう?」
リュライがポタンを見るとニコニコだ。
「勿論です!……いざとなれば瞬間移動で逃げれば良いのです!」
ポタンはそう言うとパキン!と扉の鍵を壊した。
「……どうしてこんな所に行きたいのかが解らん……」
「探究心は心と頭の一番の栄養なのです!」
「ますます解らん……。ちょっとそこをどけ、開けてやる……もうこれ位しかやる事が無いのでな……」
ブルドンがそう言いながら鉄の扉をギギギギギっと開く。色々とあり過ぎて心が少し折れてしまった様だ。
「フフフ……。力は一番あるのですから、そんなに気落ちしないで下さいな、ブルドンさん」
スカリーがポンポンとブルドンの肩を叩く。
「スカリー。嬉しくは無いが、慰めの言葉として受け取っておこう……」
リュライが階段の内部をランタンで照らすが、石畳で作られた階段の奥は飲み込まれてしまいそうな深い闇だ。奥底からは甲高い風の流れる音だけが低い口笛の音の様に響いて来る。
「気を引き締めろ……何が起こるか解らんからな……」
リュライの言葉に一同は頷くと、人間二人が並んで降りれられる程の広い階段を、一列に並んで降り始めた。
「……こう言うホラー物って……最後方の人から消えちゃうんですよね……」
スカリーが最後方をしずしずと付いて来るブルドンを振り返り、異世界ホラーのテンプレで脅かす。
「……ホラーが何かは知らぬが……スカリー……。何かあったら俺はお前を呪うからな……」
スカリーを睨み返すブルドン。色々とホラー経験値が上がったブルドンには、ホラーテンプレは効果がバツグンの様だった。
えっと……スカリーはそう言う事になりましたw
まぁ。もうちょっと後で出すつもりだったのですが、何処でも多分変わんないのでそれ程気にせずに読んで貰って大丈夫ですw
次回からカタコンベ内部突入です。
少しワロタ! もっと読みたい! 心がピクリと反応した! と思われた方は、ブクマ:評価:いいね等々。よろしくお願い致します。
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『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw