ポタンのピクニック③
リュライ。それは、この物語で初めて出て来たまともな大人なのかも知れませんw
ポタンが人数分ランタンを出して隠し通路へと侵入する一行。薄暗く狭い通路を抜けると開けた部屋に出た。石造りの広い空間だ。
出入り口の他に六つ程の部屋がある様で左右に扉がある。何者の気配も無くとても静かだ。
「……ここは……一体何なのだ……」
ブルドンが各部屋を覗き穴から見て回る。中には簡易ベッド以外には何も見当たらない。
「……凶悪犯用の独房ですかね?」
スカリーはブルドンと他の部屋を確認するが、やはり変わった物は無かった。
入り口の反対正面には木の扉があり。開くとまた通路だ。そしてその通路を進むと、また突き当たりに扉があり、さっきと同じ様な部屋に出る。どうやら城を中心に向かってぐるりと回る様に、無数の空間が通路で繋がっている様だった。
「……次の部屋だな……」
部屋を六つ程回った頃にリュライがそう呟いた。
「ハハハ!隠し通路を発見したのは凄いと思ったが、今まで何も無かったでは無いか!」
ブルドンが今まで通り扉を開けた瞬間。グアッと冷たい空気が辺りを支配した。
そして部屋の中にはカビ臭い様な、ドブ川の様な異様な匂いが充満し、先程の部屋の様子とは明らかに違った。
その様子にブルドンとスカリーが息を呑む。
「だ、団長……。いますか?」
「な!何がいるのだ!?」
先頭で部屋の中の様子を見ていたブルドンがスカリー声にビクリとし声を荒らげる。
「ちょっと……ブルドンさん声が大きいです。場所を考えてくださいませ」
「す、すまぬ……。で……何がおるのだ?何もおらんぞ?」
ブルドンがリュライとポタンを見やる。そして扉の前を譲る様に後方へ下がった。
「……ポタンには全部見えているのか?」
「えぇ。これは……酷いですね……」
ポタンとリュライがそう呟くその先には、無数の女子供の思念が蠢いていた。
それのどれもが阿鼻叫喚の表情だ。
「どう見えるポタン?」
「……苦しんでいる様に見えますね」
「ふむ。声は聞こえぬか……」
「え!リュライ様は聞こえるのですか!?」
ポタンの瞳が期待でキラリと光る。それを見てリュライが苦笑。
「……そんな顔をされる様な良い能力では無い。……声を聞こうとあの者達と周波数を合わせるのだ」
「周波数……ですか……」
エルフ達の念話の様な物かな。と思いポタンは思念のチャンネルを変えて見る。すると徐々に静な空間から声が聞こえ始めた。
「……何で?」「どうして」「私が何かしたの?」「痛いよ~」「出たいよ~」「家に帰して」「死にたい……」「苦しい」「助けて」
「うわ……出来た……。これって会話は可能ですか?」
「……無理だな。残ってるのは思念だ。魂では無い。……しかし驚きだな……説明だけで出来る様になるとは……」
「へへへ……。……推理するに、何処から連れて来られた……攫われた人達でしょうか?」
「うむ。さすがエルフ……賢いな……。教会の人身売買……街での人攫い……裏では結構起こっていたのかも知れんな……」
「そうですね……そして……痛い。熱い……拷問でしょうか?……上の綺麗な部屋は、貴族達のお眼鏡に叶った……性処理用の待機場所とか……」
「……赤子が考える内容では無いが……そうだろうな……ここらで選別が行われたのだろう……生きるか死ぬかのな……」
「……成る程……では、この先は……」
「うむ。拷問部屋やそれに準ずる場所があるのだろうな……。……はぁ。ポタンよ。子供がそんな顔をするのでは無い……」
「も、申し訳ありません……」
悪いとは思うが、ポタンはドキドキが止まらない。未知への探究心が止まらないのだ。
「……このままでは、進みにくいな……スカリーポタンを頼む」
「はい!……。……ヒヤッ!?……これは……凄いです……凄いですね!」
ポタンを受け取るやいなや、スカリーの眼鏡が輝きを増した。
「どうしたのスカリー?」
「ポタン様!どうやら私!ポタン様を通してならば見える様です!見えます!たくさん見えますぞ!?」
スカリーが驚くほど興奮している。どうやら魑魅魍魎大好き系女子の様だ。
「む、……女王よ何だ?……腕になど触れて……先程は怖い話をしていたが、実は怖くなったのだろう?フフフ……」
「……いえ……。信じていない者でも、触れれば見える物なのかと思いまして……。ブルドンさんはどうですか?……見えますか?」
「ん?見える?なにを言っておるのだ?女王は…………!?……み、見えんぞ!……何も見えん!……俺は何もみておらん!」
ブルドンがそう言うと、バッとポタンから離れる。どうやら見えるらしい。しかし、ミリャナ達はポタンを抱いても見えない様子。相互関係が気になる。
「ブルドンさんって……信じて無いんですよね?お化け……」
「あ、当たり前だ!あんなのは弱い心が作り出す幻だ!……断じて恐怖する対象でも何でも無い!……断じて無いのだ!」
必死なブルドン。お化けを信じる者には見える者を通せば見えるのか……とポタンは思う。そしてそんなブルドンを見てスカリーがニヤリとした。
「……では、ブルドンさんどうぞお先にーー」
「ーーいや!俺は背後の警備をしよう!リュライ先生方々!先頭はお任せしますぞ!」
ブルドンが急に仰々しくなる。
「……あまりからかってやるな……ブルドン殿の反応が普通なのだ……すまぬなブルドン殿」
「い、いえ……。その、先程は俺も失礼した……。インチキ等と……。み、見えてはおらんがな!」
「フフフ……。素直な男だ……。さて少し思念。を払うので部屋には入らぬ様に、強い思念が中に入ると、思考が乗っ取られるのでな……」
リュライはそう言うと部屋の中に入る。するとあっという間に思念体(お化け)に囲まれた。
しかしある一定の距離からはリュライには近づけない様だ。
「ポタン。これは拒絶の想いだ。お前になど興味が無い。その想いを纏う」
「想いを……纏う……」
「強大に成長した思念には通じぬが……これ位の者であれば魔除けになる……そしてこれから行うのが、エクソシズムの基本にして最大の奥義だ……」
リュライがそう言うと、パァン!と手を叩く。その次の瞬間。ズアッと一気に思念体が霧散した。
「……凄い……」
スカリーがそう呟く。ポタンも目が離せない。
「……む。匂いが……消えた……空気もガラッと変わったな……」
ブルドンも部屋の中の異変に気付いた。
「エクソシズム奥義。無慈悲の鉄槌。怨み辛み妬み嫉みを全て無に帰す。無人道的な力だ……私怨の欠片も残さない」
そう言いながら涙を流すリュライを見て、この男は誰よりも心根が優しい男なのだろう。とポタンは思うのだった。
えっと、次回か次々回で終了の予定ですw
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