それぞれの役名
魔国の様子。
「ミノスよ情況はどうだ?」
「は!只今。滞りなく進んでいます」
現在ミノスは、戦場へ送る兵士の選別をしている。魔国でも人間同様。戦闘したい者としたく無い者と別れているのだ。
「ハハハ……ここは我とお前しかおらぬ。かしこまるな」
「うむ。王がそう言われるのであれば……
魔王城執務室にて、ヴェルゴレとミノスが向ソファーに座りかい合っていた。
魔王城は元気のお陰ですぐに元通りになり。ヴェルゴレの支持者達も城に粗方戻って来た。
戦争の方も、ポタンの提案を元に血気盛んなオルガン派閥だった魔族を、積極的に送り出している。体勢が落ち着き始めていた魔国なのだが、急遽ポタンが連れて来た来客者に困っている二人だった。
「それで……ニコラウスの様子はどうだ?」
「うむ……。最近は慣れて来た様子ですな……。城の経営等も熱心に学んでいる。ユートピアで生活をしていた魔族と、やはり気が合う様です……良く言えば平和主義者。悪く言えば、無知。無邪気。殺し合いには向かぬ性格の様です……長生き出来ないタイプの人間でしょう」
「うむ。平和主義者か……平和だからと言って戦争を辞めてしまえば国内での戦乱が巻き起こるからな……難しい所だ」
「結局。しばらくはエルフの女王が言った通り。戦場を流刑地。血気盛んな者共の遊び場とするのが良いでしょうな」
「……フフフ……遊び場か……先代達が聞いたら腰を抜かしそうだな……」
「ガハハハ!確かにそうですな!……ですが奴隷狩りの被害等は一気に減るでしょうな。平和の裏の闇。それが表である平和には必要なのでしょう」
「うむ……やはり。皆が皆。日の元に立って手を取り合い幸せに。とは行かぬなのだな……」
ヴェルゴレはそう言って苦笑する。ミノスはそれを見てやはり王はこの男しかおらぬ。と思うのだった。
夕食が終わり。寝室へ戻るとヴェルゴレをミルオレが出迎る。とは言っても会うのは一週間振りだ。
「ミルオレ帰っていたのか……」
「うむ。女遊びにも飽きたのでな……たまにはそちとも遊んでやろうかと思ってなのう」
赤いパジャマ姿で本を読むミルオレ。大きな天蓋ベッドに横たわっている。
「フフフ……そうか……。そうだミルオレ……アルカンハイトでの暮らしはどうだった?」
「ん?何じゃいきなり?」
ミルオレがパジャマを脱ぎながらキョトンとする。ヴェルゴレも鎧を脱ぐ。
「いや。これから先交流が増えると思ってな。どう言う所か聞いておきたいなと思ってな」
「ふむ。女酒。食い物全てにおいて凄いが……暇じゃな。温い。平和過ぎる。刺激が少ない。ひとえに平和過ぎてつまらん……かのう?」
「えらく辛辣だな……」
「フフフ……。血生臭い事があるから、輝く物があるのじゃ……知っておろう?」
パジャマを脱ぎ終わったミルオレがヴェルゴレを誘う。
「フフフ……ミルオレらしい答えだ」
その後。夜明けまで休憩無しで朝チュンした二人だった。
「ニコラウスよ!其方は戦争をどう思う!」
朝食の席で大声を上げるヴェルゴレ。
「辞められるなら!辞めた方が良いと思います!」
ヴェルゴレに大声で返すニコラウス。
長テーブルの端っこと端っこにて向かい合う二人。本当はテーブルの短い方での食事が良いが。体裁上それは許されない。と筆頭執事。悪魔族のグレゴリーが言い。常に見張っている状態なのだ。
「魔族は悪い者!と教えられて来ましたが!いい人もたくさん居ます!それは人間と変わりません!人間にも悪い人はいます!」
「うむ!そうだな!我々も人間は邪悪と教えられて来た!」
「なので!仲良くしたいですが!そうも簡単では無い様です!」
「うむ!その心は!」
「解りません!……ですが!これから学んで行こうと思います!母上が僕を守ってくれた意味がそう言う事だと思うので!……僕はこの日の為に、母上や運命の神様に生かされたんだと思います!」
ニコラウスの母親が死んだ時の運命の神は、フェルミナだ。神の意思はまったく関係無い。
「ふむ……母親と……運命の神か……」
「そして!ヒラリーが平和に生きられる世界に成れば良いと思います!」
「ヒラリーとは!誰だ?」
「僕のお嫁さんにしたい人です!」
「ハハハ!女の為に王に成るのか!?」
「はい!ヒラリーに良いお城に住んで貰って一緒に幸せに暮らしたいです!そして、僕達の子供が僕達の様にならない様にしたいです!」
「それは!難しい事だぞ!?」
「ヒラリーの為に!が、頑張ります!」
「そうか!出来るといいな!」
「はい!」
純粋で愉快な男である。世間を知らないからこそ見える物あるのだろう。ヴェルゴレはそう思った。
そして、この子供の夢を叶えるのが大人である。我々の役名なのだろうと。
「良く学べニコラウス!そして、お前の夢を我にその内見せてくれ!」
「はい!頑張ります!」
この日からヴェルゴレ直々に、ニコラウスへの国政や運営等の手解きが開始した。
真摯に取り組むニコラウスの姿に、ヴェルゴレは過去の事をふと思い出す。
『我々が朽ちようとも……次代の王が貴様らを統一するだろう』
先代王。ニコラウスの父親の言葉だ。
「フフフ……。そうか……支配では無く……統一か」
「あの……魔王様?どうされましたか?」
「いや、何でも無い。ニコラウス。次はギルド関連の流れだ。各所を見て回る。ついて来い」
「は、はい!よろしくお願いします!」
ヒヨコの様にピヨピヨついて回るニコラウスを、可愛がらずには居られないヴェルゴレだった。
ニコラウスが連れて行かれた所。それは魔王城!次代の王様の教師は心優しき魔王様ですw
次回は何処だろ?置き忘れた話。何かあったかな?
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