心と命
ちょっと真面目回?
「ありがとうニコラウス。何となく解ったわ……。多分……ずっと眠っているって事は……まだ変化の途中ね……」
「変化?」
元気がポタンに聞き返す。他の皆は飛ばされそうで口を開かない。めげない男。それが元気である。
「人間から魔物へね……変態とも言えるわ……パパのとは違う意味よ?」
「またまた~。ポタンったら~」
そう言ってへらっと笑う元気を無視して、ポタンが話しを続ける。
「魔力って言うのは心のパワーなの」
「心のパワー?」
「パパは嬉しいと、何処がぽかぽかする?」
「心のかな……」
「悲しいと何処が痛む?」
「心……」
「人を愛する時は?」
「あぁ……何か解った気がする……」
「魔力は何処から流れる?」
部屋にいる一同が心臓を押さえた。
「魔が差す……それが魔物になる条件」
「成る程ね感情で魔力が暴走するのもそういう事か……」
「多分。魔力って願いを叶える為の物なのよ……人を殺す為の物じゃ無いの……」
「だから……。間違った使い方をすると魔物になるのか……」
「間違い続けた種族……それが魔族よ。普通は長い年月を掛けて変化するんだろうけど……異世界人の場合は強大な魔力量のせいで早いの……それが、不適合と言われる要因……結局。心の問題ね」
「魔力は心のパワーってのは解ったけどさ。ドンドン変化して巨大になって行くなら、中央の街の人達がヤバくないか?城の貴族達がが攫ってるんだろ?」
「そうね……。フフフ……だからゴミには地獄を見せてあげようかしらね?」
「ゴ、ゴミって……ポ、ポタン……。目が怖いよ?」
「パパは腹が立たないの?」
「そりゃ……ねぇ。でも……物騒な事は……」
「ママが攫われても同じ事が言える?」
元気はポタンにそう言われて、ミリャナが攫われて、魔物がいる部屋へ放り込まれる所を想像する。そしてその次の瞬間だった。
元気の魔力……心のパワーがボワっと一気に爆発した。
「ぶっ殺す……」
グレイとヴァイドはその魔力に必死に耐えるが、ニコラウスが耐えられずに嘔吐してしまう。
「お馬鹿!パパ!想像よ!」
「あ……ごめん……。ニコラウスごめんよ!ヒール!本当にごめん……」
そう言いながらポタンをソファーに座らせ、急いでニコラウスの吐いた物を片付ける元気。
「か、神様!ぼ、僕が自分でやります!」
「い、嫌大丈夫だから休んでて!」
「い、いえ僕が……」 「いや!だから俺が!」
ゲロ雑巾を奪い合い、何故か喧嘩に発展しそうになる二人。
「はぁ……。パパ良いから座って……」
ポタンがゲロと雑巾をパッと飛ばした。
それを見てまたもや一同がゴクリと息を呑む。そして、元気が席に戻るとポタンが説明を再開する。今度は元気の膝の上だ。
「パパ?街の人達の気持ち……理解出来たかしら?」
「うん……。スゲェ。腹立つし……死にたくなる……。ミリャナが居なくなったら俺は死ぬよ。ポタン……ごめんね……」
感情移入し過ぎて元気がぽろぽろと泣いてしまった。
「もう!泣かないの!ママは死なせないし、危険にも晒さないわ!私とパパが居るんだから当たり前でしょ!それとも出来ないの?」
「い、いや!守る!絶対に!」
「じゃ、泣いている場合じゃ無いわよ!解った?」
「うん!解った!」
そう言って涙を拭く元気。それを見てグレイとヴァイドが呆れ。世界の運命はミリャナ握っているかもしれないと思う。
「だから……とにかくそのゴミ箱を一旦封鎖しましょ」
「え?ゴミ箱?封鎖?」
「えぇ。人を殺しといて自分達だけ助かろうなんてゴミが集まる城は、ゴミ箱でしょ?そこに蓋をして、殺し合って戴きましょう?」
「す、凄い事を考えるなポタン……」
驚くヴァイド。
「じいじは反対?」
「いや……。俺は構わん……命を粗末にする輩は地獄を見るべきだと思う」
ヴァイドはポタンに賛成だ。
「しかし……。人道的にもあまり良く無いのでは無いか?」
否定的な意見にポタンの耳がピクリとする。
「はぁ。顔の割に優しいのねおじちゃん」
「な!?そんなのでは無い!大体が子供の考える作戦では無いだろう!其方らこそ人の命を何だと思っておるのだ!馬鹿者が!その貴族達にも家族や友人、愛する物達がおるのだぞ!解っておるのか!」
机をドン!と叩き激怒するグレイにそう言われて、元気とポタンがシュンとしてしまう。それを見ていたヴァイドが口を開く。
「確かに子供の考える作戦では無いな。兄上の考えも正しい……しかし、ポタンの言う事は感情や道徳を抜いたら正しいのだ。いらない物はいらない」
「ヴァイド!お前まで!」
グレイがヴァイドをギラッと睨む。
「だから、こう言うのはどうだろうか?一度チャンスを与える……。そうすれば、根っからの悪人か善人か、解るだろう?」
「しかし、悪人だからと言って殺して言い訳では……。ましてや子供が手を出すのだぞ……」
そう言ってポタンと元気を見やるグレイ。
「汚い仕事は俺達ですれば良いだろう?案を貰うだけだ」
「むぅ……」
ニコリと笑うヴァイドに、グレイが髭を触りながら悩む。
「まぁ。兵士だって人を殺す。これは良い経験になるだろう?兄貴?」
「……。まったく……ポタンには早過ぎるぞ……それにポタンは女の子だ……。二人とも人を殺すと言う事はその人間の未来を奪い、家族や友人。愛する人を悲しませると言う事だけは覚えておけ……」
「「はい」」
元気とポタンが、グレイに向かって返事をする。
「ハハッ。良い返事だ。さてポタンと元気よどうすれば良いと思う?」
ヴァイドがポタンと元気を見てニコリとする。
「……チャンスを与えるって事は……やり直すって事だろ?」
「やり直すチャンス……悔い改めさせるって事ね……」
「でも、悔い改めました!って言っても人を攫って暴力を振るう奴らだ……平気で嘘をつくだろ?……そんなの見ただけじゃ……」
「…………あるわね……方法が……。嘘発見器……心は嘘をつかない……」
「なるほど!ポタン天才!」
元気がポタンをギュッとするが。しかしポタンは浮かない顔だ。
「フフフ……。ポタン何か言いたい事があるんじゃ無いのか?」
ヴァイドがポタンにニコリと言葉を促すと、ポタンがポロポと涙を流す。
「……ごめんなさい。遊び感覚で考えていました……」
「お、俺も……すいませんでした……ちょっと遊び感覚でした……」
頭を下げるポタンと元気。
「……解ればもう良い。それで……何か閃いたのだろう?教えてくれポタン……其方の頭脳には凄く感銘を受けているのだ……泣かないでくれ……。俺も怒鳴ってすまんかった……」
グレイも二人に頭を下げる。それを見ていたニコラウスが突然立ち上り。そして皆に向かって頭を下げた。
「すいませんでした!僕がここに来てしまったばっかりに!」
それを見たヴァイドがパン!と手を叩く。
「ほら!ごめんね大会は終わりだ!……ニコラウスも座れ。話しが進まん……それでポタン教えてくれ嘘発見器とは何なのだ?」
「ありがとう。じいじ」
場を整えてくれたヴァイドにポタンが笑顔を送る。それにニコリと仕返すヴァイド。
「嘘発見器とは、名前そのままの装置なんだけど、それの魔力反応版を作って、閉じ込めた人達に敵意があったり、嘘をついたりしてたらその心に反応して、通れない防壁を張るの」
「ふむ。それで心の卑しい人間だけ城に残すと言う訳だな?」
「うん……でも……城の中はとても酷い事になると思う……」
ポタンがグレイをチラリと見る。
「……ポタンの言う通りにしよう。次からは人の命の話しをしていると言う事を忘れぬ様にな」
「うん!忘れない。ありがとうおじちゃん」
グレイとポタンがニコリとし合う。それに混ざろうと元気も決意表明する。
「お、俺も忘れない!」
「……パパは忘れないじゃ無くて、そもそも考えないでしょ?……はぁ。そこがパパの良い所であり、悪い所よね……」
とポタン。
「そうだな……」
とグレイ。
「ハハハ……。兄上が同じ事を母上に言われていたな」
とヴァイドが笑い。
「神様は心の優しいお方なのですね。凄く漢名を受けます!素晴らしいです」
とニコラウスが元気を褒める。
「物は言い様ね……」
「そうだな」
「まったくだ」
ポタンに賛同するヴァイドとグレイを見て、褒めらたのに釈然としない元気だった。
知識と経験。想像と現実。色々とありますね!
グレイが学校の先生みたいになってますw
次回は、計画を立てて防壁を張る話しまでですw
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