尋問
結局悪いのは……
「と、取り敢えず……尋問をしても良いか?ニ、ニコラウス……」
ぎこちないが、ニコラウスとポタンの言い分を受け入れようとするグレイ。
「はい。知っている事は何でもお話します」
ニコラウスがグレイにニコリとする。
「で、では、その……。殿……お主達をその様な目に合わせたのは何者なのだ?」
「……彼女は転移者です。あの日の昼に召喚の儀式が行われました……」
「なぜ、転移者が王を?」
「召喚に立ち会った兵士の友人から聞いた話しですが……召喚時。彼女は気を失って居たそうです。それを確認した王が彼女を寝室へと運ばせたらしいです……王は美しい者が好きなので……」
「……そうか。世界の王が……何をしておるのだ……まったく……」
グレイがこめかみを押さえ溜息を吐く。
「そして、その日の夜に王が殺されたと城が騒がしくなり……グレイスさんをヒラリーが逃がしに行ったのですが、ヒラリーの帰りが遅かったので探しにいきました。そこで遭遇したのです」
「ふむ。そこで激怒した彼女に襲われた。と言う訳か?災難だったな……しかし、こうなると彼女も王の被害者では無いか……」
グレイがううむと唸り髭をさする。
「いえ……彼女は違いました。僕を愛してあげると言って急に襲って来たのです。楽しそうに笑っていました」
「訳が解らん……」
「僕も解りませんでした。でも、ヒラリーが丁度やって来て理解しました……。彼女の言う愛は死です」
その後、ニコラウスがヒラリーに何が起きたかを話した。
「成る程……。それであの状況だったのか……」
「……そこからヒラリーが寝ている間、情報を集めました……。浅はかな考えですが、この情報を元にこの国に亡命させて貰おうと考えたのです」
「偉い!情報は最強の武器よ、良くやったわねニコラウス」
ニコラウスにニコリとするポタン。
「は、はい!ありがとうございます!……へへへ」
ポタンに褒められたニコラウスが嬉しそうに照れる。それをポタンの陰から元気が静かに睨む。それに気付いたニコラウスが焦って姿勢を正す。
「す、すいません!……僕……幽閉されていて、その……誰かに褒められる事なんてほとんど無かったので……つい嬉しくて……」
「そ、そう言うの卑怯だぞ……。何か睨んだ俺が悪者みたいじゃないか……」
「……百パーセントパパが悪いわ。そんな事をするなら、もう抱っこはさせないからね」
「ご、ごめん!もうしないからもう少し……」
そう言いながら元気がまたポタンのお腹に顔を埋める。それを見てニコラウス以外が溜息を吐いた。
「すまぬな……ニコラウス。馬鹿者が話しの腰を折ってしまって……。集めた情報とやらを教えて貰えるか?ゆっくりでいい……」
グレイがニコラウスに優しく微笑む。するとニコラウスもニコリとする。
環境は違えど……この男もグレイスと同じ時間を奪われた人間なのだ。とグレイは認識を改め子供に話しを聞く様に話す事にした。
「僕は王が死んで自由に外へ出られる様なったから、昔仲良くしてくれた人達に話しを聞いて回ったんだ……でも、ほとんどが死んじゃってて……だから……怖かったけど監視したんだ!へへへ」
グレイの対応に安心したのか、子供っぽく話し出すニコラウス。
「監視だと!危険過ぎるぞ!ニコラウス!笑い事では無いぞ!」
へへへと悪戯っ子の様に笑うニコラウスを、グレイは近所の子供を怒る様に怒ってしまう。
「ご、ごめんなさい!父上!」
「ち、父上?」
「あ……。ごめんなさい……つい……。怒鳴られるのも……久々で……へへへ」
「す、すまぬな。俺もちょっと気が入り過ぎた……許してくれ……」
「うん」
二人でニコリとしあい、グレイが続きを促す。
「それで……何を見た?」
「最初の頃は……人間の女の子の姿だったんだけど……徐々に彼女が変化してったんだ……」
「変化……だと?」
「……成る程ね……。既に魔物化が始まってるのね……」
「魔物化だと?」
ポツリと呟いたポタンに皆が注目する。
「召喚された者が魔力に適応出来ないと、姿が心に引っ張られ浸食されるの」
「何だそれは、初耳だぞポタン……」
今まで黙っていたヴァイドが口を開く。
「……後で説明するから先に話しを聴きましょ。……良い?……じいじ?」
ポタンが上目遣いで、ヴァイドを見上げる。
「あぁ!勿論だ!ポタンの言う通りにしよう!」
ポタンのおねだり光線にヴァイドの心が浸食された。
「ニコラウス。続きを話して……魔物化し終わった例なら知ってるけど……過程は知らないの……」
ポタンが話しを聴きたくてわくわくしていると、そこに登場する邪魔者。
「し終わったって……。そんなの何処にいるんだよ?まさか俺とか言わないでよ?」
「パパは魔物よ。とっても邪魔物。……一番有名なのが黒竜よ。心が強さを求めた結果。魔力に引っ張られ浸食された元転移者……。それが黒竜」
「「「「「え!?」」」」
一斉に皆が驚いた。
「竜族何て見たこと無いでしょ?」
「確かに……。竜っぽい物を竜と評すが……純粋な竜は未確認だな……」
ヴァイドがポタンの話しに相づつ。
「でもさ~。それって……」
「パパ……。次話しの邪魔をしたら……飛ばす……」
ポタンがギロリと元気を睨む。
目の奥まで真っ黒で、本気で言っていると元気には解る。本を読む邪魔をしてポタンの反応を元気が楽しんでいたら、一度宇宙に飛ばされて死にかけた。
「ご、ごめん……。ニコラウス。……話しの続きをお願いします」
異様に焦る元気と、雰囲気が変わったポタンを見て皆がゴクリと息を呑む。
「じゃ、ニコラウスお願いね……」
ニコラウスにニコリとするポタン。
「は、はい!頑張ります!」
ちゃんと話さないと飛ばされる!と緊張するニコラウス。そして、飛ばすって何だ?とはとても聞けない一同だった。
長くなりそうなので、一旦切りw
魔力の秘密が明かされます次の次位に!
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