残された王族
母の愛は偉大です。
ポタンの発言に皆が騒然とする中で、ニコラウスが目を覚ます。ソファーの横でヒラリーが膝枕している状態だ。
「……僕はどうして……あれ!ヒラリー!?」
「ニコラウス……。良かった……」
驚くニコラウスを見てヒラリーが涙を流す。
「泣かないで、ヒラリー。……ここは……天国か……。もう。離さない……ずっと一緒だ……」
そう言いながらヒラリーに抱きつこうとする
ニコラウス。そんなニコラウスにヒラリーが……ビンタした。
「ずっと一緒だ……。じゃ、無いわよアナタ!何で!私より!先に!死んじゃってる!のよ!馬鹿!馬鹿!お馬鹿!!!!!!!」
! の数だけ、ニコラウスにビンタするヒラリー。
「や、辞めるんだヒラリー!そのままでは殿下が、また死んでしまうぞ!」
グレイがヒラリーを止める。だが時既に遅し……。ニコラウスが白目を剥いて動かない。それを見て元気が急いでヒールする。
「ヒラリーさん。激しすぎだって……」
「ご、ごめんなさい……」
ヒラリーがシュンとする。
「元気ちゃん。ヒラリーはね。昔から元気なのよ!」
嬉しそうにそう言うグレイス。
「フフフ……。そうなんだね」
元気には慣れた様子だ。
「あ、あれ……。何だか……凄い衝撃が……!ヒラリー!?どうして君がここに!?……そうか……。ここは天国か……。あぁヒラリー……」
またヒラリーに抱きつこうとするニコラウス。それに反応して、ヒラリーがまたビンタをしようとする。
「はぁ……。そこまでだ……。二人ともソファーに座ってくれ……」
「だ、誰だ。君は!……天使様なのか?……しかし……。いや……だが……」
困惑するニコラウスを見て、笑いを堪えるダルドリー、ヴァイド、元気。
「グレイはね!星の王子様よ!違うけどね。私の王子様なのよ!素敵でしょ?」
グレイスがそこにトドメを刺した。
「ダッハハハハハハ!辞めてくれグレイス!もう堪らん!」
と机をバンバンと叩きながら、爆笑するダルドリー。
「アハハハハハハハ!無理だぁ!済まない兄貴!悪気があるわけじゃ無いんだ!でも、アハハハハ!」
と顔を腕で隠しながら笑うヴァイド。
「アハハハハ!どう見ても天使じゃ無くて熊だろ!……あいた!?おい!何で俺だけ殴るんだよ!」
そして、近くで笑う元気にグレイの拳骨が飛んだ。
「何で笑うの!?みんな嫌いよ!」
グレイスがグレイの後ろに、ぷん!と隠れてしまう。するとグレイスに皆が口々に謝り。その光景をニコラウスが呆然と眺めた。
ニコラウスに話を聞く為に、グレイスとヒラリーを外す。それに元気も付いて行こうとしたが、ポタンに止められた。そしてその代わりに、ダルドリーが護衛で付いて行った。
「集中力の切れた兄上は、役に立たん。ヴァイドがいれば良い」
「確かに、兄上は感覚の人だからな……。まぁ。今回も兄上が持ってきた案件だ。何かある。と言うか既にな……」
「父さん良いなぁ……俺も行きたかったなぁ……」
「女々しいわよパパ。ママに言うわよ」
「ゴメン。嘘です」
片方のソファーに元気とグレイが座り。後方にポタンを抱えたヴァイドが立つ。そして正面のソファーにニコラウスが一人で座る。ニコラウスはその状況に萎縮していた。
ニコラウスは、金髪ショートカットの爽やか青年だ。手足が長い。白い制服の様な物を着ている。高身長の爽やかイケメン。元気の一番嫌いなタイプだ。
対して、元気はいつものシャツと短パンにスラックス。自然とヘイトが溜まる。
「殿下。我々はアルカンハイトの領主一族。私は領主補佐のグレイ。後のが、領主のヴァイド。抱かれているのが、エルフの女王ポタン。横のが、アルカンハイトの神。元気だ」
「か、神様……。こんな子供が……」
その言葉に、元気のアンチイケメンセンサーが反応し、ヘイトが早くも爆発する。
「おい、イケメン!生き返らせて貰っておいて、俺を子供扱いとは、どう言う事だ!?おい!ちょっと表に……あいて!」
「ちょっと、黙ってろ……。後でミリャナの昔話を聞かせてやるから……」
「……。まったく……。初対面で子供扱いはいかんよ君は!……ミリャナに感謝する様に!」
「す、すいません!神様!ミリャナ様に多大な感謝を!」
「うむ。よろしい!」
胸の前で腕を交差させ、ミリャナとは女神様なのだろう。と祈りのポーズを取るニコラウス。それを見て満足そうに元気が頷く。
「はぁ。もう良いか?……まず聞きたいのは……殿下は何故生きておられるのかだが……」
「それは……」
前王族は、代替わりの時に粛清された。
何故。彼が残っているか。それは呪い。呪縛。前王が現王に呪いを掛けたのだ。
ニコラウスが死んだら、現王も死ぬ呪い。自分の子供を使った呪いだ。
前王は現王がニコラウスを殺す。と思った。
子供を使って相打ちに持ち込もうとしたのだが、死ぬ間際に女王が阻止した。
「ニコラウスが死ねば、アナタも死ぬわ……。脅しじゃあ無い……だから、あの子を殺さないで……。もし殺したら……私もアナタを呪うわ……」
女王の愛で救われたニコラウスは、そのまま幽閉されたのだった。
「それから、10年。部屋の中で一人で過ごしました……。そんな中で……ヒラリーと出会ったんだ……。僕は、勉強も駄目で……運動も駄目。お金も地位も何にも無い……ヒラリーにいつも怒られてばっかりだったけど……。ヒラリーと出会えて初めて……生きてて良かったと思えたんだ。だから……神様……。本当にありが……」
過去を語り終えると、ニコラウスが元気を見やる。そして固まった。
「うぐえぇっへえ!お、お礼なんで……ぐひっふぃ……言うなよなぁ~うぐふぃ……俺こそ見た目で判断じで……ぐふぇっつっふ。ごふぇんなぁ~」
号泣だった。
「……もう。パパったら……。しょうが無いんだから……。もう泣かないの……ほら。よしよし……」
「ポ。ポダ~ン」
ポタンが元気に飛んで行き、抱っこをされてあげる。すると元気がポタンのお腹に顔を埋め。ポタンが元気の頭を撫で撫でした。
「まるで、親と子が逆では無いか……」
「本当に……。話が進まん……」
その様子に呆れるヴァイドとグレイ。
「パパの事はほったらしておいて……。中央の様子が知りたいわ。ニコラウス教えてくれるかしら?」
「ポ、ポタン!王族に対して失敬だぞ!?」
グレイがポタンの発言に焦る。
「あら?この人は前王族よ。そして、亡命者……。立場はおじちゃんの方が上よ?」
「お、おじちゃん……」
「賢いと思ってたけど、お馬鹿なんだもの……おじちゃんで良いわよ……」
「うむ……。まぁ。かまわんが……。しかしだな……」
「御爺様もですよ?」
「うむ……そうだな。そんな事よりも……じいじ。はどうだろうか?」
顎をさすりながら、ヴァイドが提案する。
「え?」
「じいじの方が呼びやすく無いか?」
「……その方が良いなら……」
「うん。それが良い!敬語も無くて良いのだが……」
「それは……」
「おい!もう。そう言う話は後でしろ!殿下の御前だぞ……あ。うむ……」
一人、生真面目なグレイだった。
「グレイさん。ニコラウスで良いよ。ポタンちゃんの言うとおりだ……僕は、ヒラリーの恋人……ただのニコラウスなんだ」
そう爽やかに、グレイに微笑むニコラウス。
「うむ……じゃが……」
「それに、こんなに可愛い。女の子の言う事は聞かなくちゃ……。天罰が落ちちゃうよ」
そう爽やかに、ポタンに微笑むニコラウス。それにポタンが反応する。
「やだ!イケメン!」
元気はそれを聞いて、本当に天罰を落としてやろうかな。と思うのだった。
重要な話は多い様で少ないかな?ヴァイドと出かけた二人の方が後々。重要かな?w
次回は様子。化け物とはどう言う事でしょうか?
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