森の子供達
元気の周りが騒がしくなってきました!
「元気~!助けてぇ~!」
「情けないぞミール!この程度で値を上げるな!」
フェルミナが家に居着いてから、2人は仲良しである。
「ふはははははは!フェルミナバスター!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
漫画にドハマリしたフェルミナはミールを実験台に、毎日楽しく健康的な日々を送っている。フェルミナは、布切れで身体を覆っているだけなので、色々凄い事になっているのだが、巻き込まれたく無いので元気は近寄らない。
ゲーム三昧のニート生活よりか良いだろう。始まりはゲームで、ミールがフェルミナにマウントを取り出したのが悪かった。
今はフェルミナがゲームでやられた事をミールにやり返しているのである。あれから、フェルミナは孤児院には戻らず、ゲーム部屋にしばらく籠もっていた。
どうやら本来は外で遊ぶのが好きなタイプらしい。楽しそうに遊ぶ2人はほたっておいて、今日は水汲みの日だ。
元気は裏の森の泉へと向かう。
魔法で出した水よりも質が良く、今は飲み水として使用している。どうやら、治癒効果がある様だ。
あの森自体にそういった効果があるのかもしれない。傷がすぐに治ったのもミリャナが病気にならないのも、いつでも可愛くて美人なのも、そういった事からだろうと元気は考えていた。
「じゃ、水汲みに行って来るから」
「おう、元気。留守番は任せろ!」
「ま、待って元気!お、俺も!」
「貴様は駄目だ!まだ特訓が終わってないでは無いか!北斗百列アタック!」
「あべしぃぃぃぃいぃぃ!!!!!」
今日も平和で結構である。森の獣道を進むと泉が見えて来る。
「神の加護を受けし人間よ、どうかこの子を……」
木々が囁く様な、美しい声が聞こえる。元気は少し戸惑ったが、神様が家にいるのでそこまで驚かない。
「あなたは誰ですか?この子って?」
泉に向かいながら返答してみる。
「私は森の精霊ドライアド、神樹ユグドリアスの使いです。泉の畔に我々森の子供がいます。どうかその子を……森の子供達を助けて」
「我々の森の子供?」
ドライアドからの返答はもう無かった。
泉に到着すると大きな葉にゆらゆらと揺られながら、子供が泉の中央に浮いている。元気は急いで泉の中に入り、葉っぱごと岸へと連れて行く。確認すると銀髪の幼児だった。
意識を失っているだけで息はある……だが服を着ておらず、体が冷え切っていて青白い顔をしている。元気は毛布を魔法で出しその子をまるっと包むと、家まで急いで飛んで帰った。
「む、早かったな!」
家に戻ると、満足そうにミールの前で仁王立ちしているフェルミナが元気を出迎える。ミールは漫画の様に足をピクピクしながら横たわっている、限界を越えた様だ。
「森の精霊ドライアドにこの子を頼まれたんだけど」
フェルミナに毛布で包めた芋虫状態の幼児を見せる。
「あぁ、森の子供か」
「森の子供?我々の子供って言ってたけど、フェルミナは何か知ってる?」
「森の子供とはエルフの事だ、しかし何でこんな所に?」
フェルミナが不思議そうに幼児を見る。
「エルフ!」
元気の琴線にエルフという言葉が、ビンビンと響く、異世界キタコレ!である。元気は急いで家に戻り、玄関の左手にある自分の部屋へと、幼児を連れて行く。
ベッドの上に幼児を寝かせ、子供服を出して着せる。お腹に大きな白い兎ちゃんのアップリケが付いた、ピンクの幼児服だ。
「か……。可愛すぎる……」
次にタオルケットを出し、熱を少し加えて温めてから幼児にかけた。
「ほう、魔力で色々と……元気は器用だな」
フェルミナは綺麗な顔立ち似合わず、バリバリの体育会系だ。魔力のイメージやコントロールが苦手で、ミールにかける技も叩く、殴る、蹴る、が多い。
「後は、気付くのを待つしか無いんだけど……そうだ!」
元気はよくなぁれ。よくなぁれ。とイメージした。
「ヒール!」
魔法の名前をいう必要は無かったが、つい口から聞き慣れた名前がぽっと出る。そのお陰でイメージが更に固まり、治癒に成功した様だ。
幼児の顔色が見る見るうちに良くなっていき、元気は安心する。
「元気、貴様、それは……う~ん……まぁ良いか」
腕を組み、そこにおっぱいを乗せたフェルミナが、思わせぶりな感じで思案する。
「何だよ?」
「いや、治療や蘇生は神の領域の魔法なんだが、どうだろうな、神力とは違うから良いと思う」
「何かまずいの?」
「神にもよるが、領域を荒らすと怒って罰を下す奴が居るんだ」
「何それ、超怖いんですけど?」
「まぁ、癒やしの女神のマーリュクは優しいから大丈夫だろう」
癒やしの女神の罰か、優しいと言ってるし、こらぁ、駄目だぞ、メッ!とかいってゲンコツでもされるのだろうか?……とても興味深い。
「罰って、何されるの?」
「この前は、四肢をもいで不老不死にしていたな、優しいが少し陰湿な奴なのだ」
何処かで聞いた話しだった。
触らぬ神にたたり無しだ。メッ!と四肢断裂されてはたまらない。
「お!目を覚ますぞ」
フェルミナがウキウキした様子でそういうと、子エルフは目を覚まし、キョロキョロと周りを見渡し。その後、じ~っと元気を見つめる。
「パ~パ?」
「え?俺?ち、違うよ~?」
元気が否定すると子エルフは見る見る泣きそうな顔になっていく……。
「おい!元気!泣きそうだぞ!酷いなお前!」
フェルミナが腕組みを辞めて、ぶるるんと焦る。それを見て元気も焦る。
「いや!?そんな事言ったって!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
「おい!どうにかしろ!此奴、魔力を放出しながら泣いているぞ、たまらん!我々エルフは魔力の干渉に弱いのだ!」
フェルミナの霊体が揺らめき始めた。
「フェルミナが消えるのは別に構わないが、ミールが消えるのは困るな……」
「お前、今酷い事をいわなかったか?」
「いってない」
考えがお口からお出かけしてしまった様だ、気を付けよう。と思う元気。子供の扱いは施設で散々見て来たので、お手の物だ。
「パパだよ~ん。お~よちよち、可愛いでちゅね~泣かないでね~」
抱っこして上下に揺らしながら、あやしてみると子エルフが泣き止む。
「お、おま、ククク……まぁ、よくやった、パパ……」
そういうと屋根裏へフェルミナは飛んで行った。しばらくしてミールとフェルミナの笑い声が響いて来たので、奴等のおやつはしばらく無しだ。
としの頃は二、三歳位だろうか?
目がぱっちりとしていて銀色短髪。耳が長い。……鬼の様に可愛い幼児だ。ツルペタだったので女の子で間違いない。
「お名前はいえまちゅか~?」
可愛いお目々をパチクリさせるだけで、ポカンとしている。とりあえずベッドに寝かせようと横にしたらまた泣き出した。
抱っこすると、泣き止む……。
魔力で抱っこ紐を出して抱っこ状態を維持し、ついでにミルクを出す。この年はもう離乳食だろうか?解らないのでとりあえず、おやつという事でミルクを与えておく。
一生懸命ミルクを飲みながら耳がピクピクしている。
「超可愛いんだが……」
元気が幼女に見蕩れていると、フェルミナが戻って来た。
「いや、すまない……それで、その子供はどうするのだ?」
「わからんけど、ドライアドに助けてって言われたからなぁ、森の泉には世話になってるし、この子行く所無いんだろ?」
「そうだなぁ、エルフは本来、大樹林の奥深くに住んでいるのだ」
「大樹林って?」
「ここから東にある大陸の大きな森で、神樹ユグドリアスの管理する土地だ。森自体に魔力が満ちていて、人間が入ると二度と出られぬ自然の迷宮だとユグドリアスは言っていた。子供を届けに行くか?案内するぞ?」
「自然の迷宮とか、そんな所行きたく無いんだけど」
「あぁ、空から行けばすぐだ、魔力は森の中だけだからな」
「まぁ、このままって訳にもいかないからな、送って行った方が良いか、喪男の俺が子持ちとか洒落にならんし、ミリャが何と思うか……」
「元気がどう思われようがどうでもいいが、森の様子が気になるな……」
「……お前、何か酷い事言わなかったか?」
「言ってない」
元気が睨むと、ニコリとするフェルミナ。仕返しが出来て満足気だ。
「森までどれ位かかるの?」
「飛ばせば半日位か、しかし人間の魔力では半日は飛べないだろう?私は平気だが……。無理だろ?」
ちょっとムカつく顔をしながら、マウントを取ってくるフェルミナ。
「そこら辺の事は大丈夫と思うけど、飛ぶ速さは?」
「人間が走る速さの5倍位だろうか?」
「なるほど、余裕かな?」
「余裕とはどういう事だ?」
不可思議な顔をしているフェルミナと幼女を連れて元気は家の外に出る。家の前の広場につくと、速くて空を飛ぶ乗り物をイメージした。
「な、何だこれは!?」
「ジェット機。魔力を半分近く持って行かれたけど成功だ!魔力ってやっぱり凄いな!」
黒いステルス戦闘機。元気はウキウキしながら乗り込んで、操縦桿に魔力を流し浮かせて見る。すると機体がス~っと浮かぶ。
「何かジェット機と言うよりか、UFOみたいだな……。飛行にかかる魔力は……うん、大丈夫そうだ。お~いフェルミナ、乗り込んで道案内たのむよ~」
「あぁ!今行く!」
颯爽と乗り込もうとしたフェルミナが、ジェット機をすり抜け、顔面から地面へと落ちた。相当痛かった様で、転げ回っているのが見える。
「なに、遊んでるんだよ?早くしろって」
「痛ったぁ、お前!今の見ていただろ!?乗れないのだ!どうにかしてくれ!お前だけズルいぞ!こんな格好いいの初めて見た!早く!乗りたい!早く!」
興奮して語彙力が無くなっていくフェルミナが、子供の様にまくし立てる。フェルミナの為に霊体でもさわれる様、機体をコーティングする。すると今度は慎重にフェルミナが乗り込んで来た。
「おぉ、何か格好いいな!何かわくわくするな!」
そういって嬉しそうにはしゃぐフェルミナを見ながら、転げ回っていたフェルミナの様子を思い出す元気。
フェルミナは、白い羽衣を着ているのだが……転げ回っているフェルミナの尻が丁度、元気の方を向いた時に見てしまった。
……フェルミナは履いてない。
さて、子供を送っていきます。が……的な。w
登場人物は、何となく覚えておいてくれればいいですw
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『★★★★★』で……元気も喜び頑張りますw