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手紙と漂流物

アルカンハイト三兄弟勢揃い。

 グレイが城に戻り一週間。


「……本当に何が起こっているのだ……」


 兄弟三人で一緒に暮らすと言う夢が叶ったヴァイドは、執務室にて頭を抱えていた。


 グレイスの亡命を受け入れた後から、ルニマルニア中央王国の貴族達が、亡命を希望した手紙を送って来るようになったのだ。


「コイツら……アルカンハイトを切り捨てておいて、都合が良すぎるだろ……。しかし……。悪魔だの、吸血鬼だの此奴らは何を言っているのだ?」


 王が食われた。娘が攫われた。女が夜な夜な消えて行く。我々家族だけでも助けてくれ。等々。自己中心的で理解に苦しむ内容ばかりだ。


「ほたっておけ。来たければ自分で動くだろう……。ポタンこれはどうすれば良いのだ?」


「これは、ギルド同士の収益表なので、計算して脱税等が無いか、最終チェックして印を押して下さい。この『電卓』を使えば簡単に出来ます。……叔父様が言う通り。本当に困ったら自分達で来るでしょう。受け入れるかは、熟考が必要ですけど……」


 現在ポタンは、グレイに仕事の引き継ぎを行っている。グレイが子供はもっと自由にするべきだ!と仕事を引き受けたのだ。


 グレイの机は何かあった時。すぐ動ける様にと、入り口の横に設置されている。


「やはり。受け入れは難しいか……」


「そうですね。やっと安定して来たのに、適当に仕事して、脱税に精をだす。無能な貴族など必要ありません……。こちらは、各ギルドからの報告書です。目を通して、問題が起きてないか確認して、問題があれば各部署へ連絡下さい」


「うむ。解った。ヴァイドよ。ポタンの言う通りだ。守るべきは、我が国民の安全が第一。他国民などほたっておけ。ポタンが有能なのは理解したが、頼りすぎだ。馬鹿者」


「そ、それは……。すまん。ポタン」


「フフフ……構いませんよ。ですが、今は、国の発展のスピードが早く。ゴタつく事も多いのです。なので安易に、搾取しかしない貴族など受け入れると、暴動が起こるかもしれません。現在。貴族など国民は必要としていません」


「……貴族は必要無いか。その内我々も……」


「フフフ……でもリーダーは必要ですよ?面倒臭い事を率先してやってくれる。リーダーが……。御爺様。も理解されてるでしょ?」


「うむ。領主や国王とは格好いい物と思っていたが……。悩んでばかりだ。……兄貴が何であんなにお小言を言っていたのか、領主になってから解ったよ」


「気付いただけ賢い。兄上は賢すぎる……。俺とは違い上手に逃げ切ったのだからな……」


「ハハハ……仕方ないよ。兄上は遊ぶ為なら何事にも本気だからね」


「そうだな……。兄上には、戦場を駆ける事も遊びだったのかもしれん……」


 ダルドリーと一緒に戦場に行った時の事を思い出し、グレイとヴァイドが苦笑いをする。


「何だ?俺の悪口か?」


 そんな時だった。いきなり執務室のドアが開いて、ダルドリーが入って来た。


 釣り人ベストに、ジーパン、黒長靴だ。そんなダルドリーが、黒い布に包まった大きい荷物を抱えている。


「いや……。兄上の賢さを称賛していたのだ」


「ハハハ……。そうだね、兄上。今日は帰りが早いけどどうしたんだい?」


「あぁ。ちょっと見て欲しい物があってな……。ポタンもいるな。丁度良い」


 ポタンを見て、ダルドリーがニコリとするが、ポタンは塩対応だ。


「……。もうお魚はいらないわよ?父さん。捌けないのに何で釣って持って帰って来るの?」


「そりゃ。いいのが釣れたら見せたいだろ?も~。そんなぷりぷりしちゃって~ほら~、おいで!」


 抱っこしようと、ダルドリーがポタンに近寄る。それにポタンが反応し飛び上がった。


「ちょっと。その服で抱っこは辞めて!魚臭いのよ!やだ!」


「そんな事を言うなよ~待てってポタ~ン」


 荷物を抱えたまま、ポタンを追いかけ回すダルドリー。一生懸命ポタンは逃げ回るが、身体能力はダルドリーの方が遥かに上。いつも捕まり。魚臭い手で撫で回される。


「あ、兄上……。辞めてやれ……本気で嫌がっておるでは無いか……。それで、その包みは何なのだ?」


 グレイがダルドリーを止める。


「あぁ。そうだったな!ポタンまた後で遊ぼう!」


 ポタンにニコリとするダルドリー。そんなダルドリーを無視して、ポタンがヴァイドの背中に隠れる。


「御爺様。父さんを、お城に拘束する事を私は所望します」


「ふむ。そうしたい気持ちは山々程にあるのだが、ポタンにも出来ぬのだから無理だな」


「フフフ……。諦めろポタン。俺はしつこいぞ?」


 そう言いながら、ソファーに座り。布を抱っこする様に抱えるダルドリー。それを見た三人が、一斉に言葉を失う。


 そして、ダルドリーが布を開くとそこには、四肢が無い。人間の女の姿があった。


「酷すぎる……。どうしたんだ兄上……それ……」


「ヴァイド。女性にそれなど失礼だぞ!」


「ご、ごめん……」


 息はある様だが、あまりにも異様。


 あばらが浮き出る程に痩せこけ、青白い肌。目は窪み。頭皮は半分焼け爛れ。両腕は肩の部分から、切断され焼かれている。布が掛かっているが股から下が無い。下半身も同じ状況なのだと予想出来た。


「釣り場に小舟が流れ着いていてな……。その中にいたんだ」


 肢体が無いその女は、乳房も焼かれていてそこには焼け跡しか無く。腹部もベッコリとヘコんでいる。何故生きているのか、ポタンでも謎な状態だ。


「……。繋がったわ……成る程ね」


 そう呟くポタンに、ダルドリーがニヤリとする。


「やはり。元気に治して貰う前にポタンに見せて正解だったな。アイツは治しはするが、順序立てて解決しないからな。そして、俺と同じで説明が雑だ」


「……。そうね。脳味噌が小石程しか無いもの……。いつも頭の中がカランコロン鳴ってるわ」


「俺はグレイスの件も含めて、アルカンハイトへの来訪者はこれだけでは済まないだろうな。と思っている……。なので、根本を一から解決するべきでは無いか?と思うんだが……。ポタンはどう思う?」


「……。そうね。中央貴族からの手紙……。あれがそのままの意味であれば……。最悪かもしれない……。そして、その人がここに流れて来たって事は、アルカンハイトの存在もその、悪魔だの吸血鬼にバレているのか……それとも……。誰かが助けを求めているのか……。取り敢えず。傷を治して話しを……」


「待てポタン。それは元気にさせる」


「え?何で?」


「尻の座りの深い奴だ。衝撃を与えんと動かんし、熱が入らんだろ?」


「それは、そうだけど……。パパにそういう事は……」


 させたく無い。と思うポタン。エヘヘと脳天気に笑っていれば良いとポタンは思うのだ。


「何を言っているのだ。アイツも領主一族に名を……。今は王族か、王族に名を連ねるのだろ?ミリャナと結婚するにも、町の人々を納得させるだけの、理由と功績がいるだろう?ミリャナは町の英雄と、地母神の娘だぞ?」


「……。それは……」


 確かに。とポタンは思う。ミリャナが今までフリーだったのもそう言った理由だ。ミリャナに下手に手を出せば、町中の人から私刑に処される。


「……。取り敢えず。元気が決める事だ。ポタンもそれで良いのでは無いか?」


 グレイが困るポタンに助け船を出す。


「難しい所は我々が対応して、魔力や実力行使が居るときだけ動いて貰おう。元気にかなう者など、そうそう居ないんだ」


「……そうですね。じゃ。呼びます」


 ポタンがそう言うと、元気をダルドリーの前に召喚した。


「おわ!?ビックリした~!え!?父さんに……。え?何それ……。人?」


 アイリスのパンツを被った元気が、ダルドリーの抱える女性を見て固まる。


「パパ……。その人……治せる?ついでにパパの頭も」


「……成る程ねポタンが呼んだのか。召喚成功したんだな!……フフフ……。だが、俺の方が先に成功したけどね~……あ、ごめんごめん。パチパチはしないで、すぐ治すから!」


 帯電を始めるポタンから逃げる様に、ダルドリーの前へ行く元気。


「元気。どれ位まで修復可能だ?」


「どれ位って……全部かな?ちょっと。その人。ソファーに寝かせて。起きた時、変なおっさんに抱かれてたら恐いだろ?」


「あぁ。そうか……」


 ダルドリーは女性をソファーに寝かせると席を立ち、様子を見守る。


「ヒール……」


 元気が女性を癒すと、頭や四肢の火傷の後が消え。ニョキニョキっと手足と髪の毛が生え。乳房が復活した。


 その光景に、グレイとヴァイドが目を見張る。二人は元気が使うここまでのヒールは、初めて見るのだ。


「もう。人間を辞めたのか……元気は……」


「聞いてはいたが、恐ろしいな……」


「ちょっと、人を化け物みたいに言わないでくれます?なりたくてなったわけじゃ無いんだから……」


 後ろからそう言う二人に気付く元気。兄弟が勢揃いだな。何があったんだろ?と元気は思う。


「あれ?これ……。大丈夫か?や、辞めた方が良いかな?ポタン?」


「……。辞めちゃ駄目……」


 耳をピコピコ動かしながら答えるポタン。何故怒っているのか解らない元気だったが、言われた通り。ヒールを続けた。


 そして、皆が見守る中、女性が目を覚ます。


「……。ここは……私は何故。生きてるの?……ねぇ!コルネリウスは!?何処なの!?ねぇ!?教えて!?」


「え!?なに!?どゆこと!待って!えぇ!?なに!?」


 動揺した女性が、元気に摑みかかる。が、元気の頭を見た女性が、「ひっ」っと声をあげ。怯える様に離れた。


「ビ……ビックリした~。……落ち着いて、ここには、貴方を傷つける人はいないから……」


 元気がそう言うと、女性が周りを見回す。それに皆がコクコクと頷き、視線を元気に戻す。そして……


「……。どうして貴方は……パンツを被っているの?」


「……え?」


 元気はアイリスに、グレイスの時のお礼として、今日は一日。私のパンツを被って生活する様に!と言われ。パンツを被ったままだったのを忘れていた。

元気はヒール中。何に困惑したのでしょうね?


次回解りますw


祝。1日pv400人突破しました!読んでくれた方々。ありがとうございます!

これからも、引き続き。よろしくお願いします。

それと……ブクマ:評価:コメント等々。是非に協力よろしくお願いします。


モチベがググんと上がりますw

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