実直
リャナw
次男として産まれたグレイは、次期領主。ダルドリーの補佐をする様に言われて育った。
「しっかりと励む様に」
「フフフ……。グレイはダルドリーと違ってしっかり者だもの、大丈夫よね?」
「はい。父上。母上。頑張ります」
天真爛漫だったダルドリーに頭を抱えていた両親は、グレイに立派な補佐になる事を期待した。
グレイは領主の座をダルドリーと争う気は無かった。
エルフの勇者と、ご先祖様が黒竜を討伐する英雄譚を読み、ご先祖様の様に立派な騎士になるのが夢だったからだ。
そして、ヴァイドが産まれるとヴァイドの面倒も一生懸命みた。
真面目だったグレイは厳しく。遊び好きだったダルドリーは優しく。ヴァイドに接する。飴と鞭ならば当然、子供は飴を好む。
「兄貴は、俺の事が嫌いなんだろ!」
そう言うヴァイドに、グレイはいつも頭を悩ませていた。
「まぁ。大人になれば、お前の有り難みが解るさ!今度はグレイも、一緒に遊びに行こう!」
相談しても、そう言う事しか言わないダルドリーに、グレイは毎回。溜息が出た。
「苦労を掛けるな。グレイ」
「本当に。あの二人にはグレイの爪の垢を煎じて飲ませたいわ……。グレイ。ありがとうね」
「はい!これからも頑張ります!父上母上!」
グレイは両親に褒められるのが嬉しくて、頑張った。
そして頑張り過ぎた。
「貴方……。見た目も、雰囲気もオジさんクサいのよね……。私。ダルドリー様の様なお人が好みなの」
思春期を過ぎた頃から、グレイはダルドリーの名前を良く聞く様になった。
ダルドリー様が良い。グレイはつまらなさそう。
子供の頃からの鍛錬で熊の様に身体が大きく、老け顔だったグレイは、女子受けが悪かった。
「グレイにはグレイの良さを解ってくれる人が現れるさ!ハッハッハ!」
そう言って無邪気に笑うダルドリーに、悪気は無い。と解っていてもグレイは腹が立った。
グレイが高等部に上がったそんなある日。グレイの前にリャナが現れた。
「貴方のお兄さんが、つきまとって来て困っているんだけど……」
そう言うリャナがグレイの目には、新鮮に映った。
ダルドリーは、勉強が嫌いなだけで、才色兼備。控えめに言っても天才。そんなダルドリーを悪く言う女子は魔法学校にはいなかったからだ。
ダルドリーを嫌うリャナの事を、グレイが好きになるのに時間は掛からなかった。
そして、グレイは決死の覚悟で告白をした。
「リャナ。初めて会った時から好きだった……。俺の一生をお前に捧げる。一生お前だけを守って生きたい……結婚を前提に付き合ってくれ……」
「え?お付き合い?結婚?嫌よ。そんな時間無いわ。私と付き合いたいなら、大金貨(約一千万)を用意しなさい。それに、私も貴方に会った時から、言いたい事があったの。……貴方、汗臭いわよ?」
リャナにフラれたグレイはこの日、部屋で独り泣いた。
「貴方。老けすぎなのよ。……話聞いてあげるわ……」
数日後。リャナの方から話し掛けられ。なる程。恥ずかしがっていただけだったんだな!とグレイは思った。
そして、素直に悩みを打ち明けた。
「なる程。人生色々とあるのね。まぁ。その内きっと良い事があるわよ。じゃはい……」
「はいって、何だその手は?」
「小銀貨1枚。話しを聞いてあげたんだから当然でしょ?……毎度。ついでにアドバイスしてあげる。そのマント。ダサいわよ?そんなの格好いいと思うのは、中等部までよ」
父親から貰った大事なマントで、お気に入りだったのだが、リャナにそう言われて次の日からつけなくなった。
その後も。
「髭が汚い」 「髪を整えろ」 「コロンをつけろ」 「朝稽古は臭いから辞めろ」 「眉毛を整えろ」 等々アドバイスを受けた。
そして、真面目だったグレイはすべて実行した。
そして、そんなある日の事だった。
「好きです。付き合って下さい」
とある貴族の令嬢から告白をされたのだった。
「リャナ!やったぞ!俺に彼女が出来たのだ!お前のお陰だ!感謝する!」
この頃には、リャナは好きな女では無く。友人だと、グレイは感じていた。
「そう。それは、おめでとう良かったわね……。じゃはい」
「え?今日は何も……」
「何を言ってるの?私のお陰でしょう?お礼を言ったじゃない。お礼は良いからお金を頂戴な。それとも、自慢をしに来ただけかしら?私はこれから、仕事に行くのだけど……。俺はこれからイチャイチャラブラブ。遊びに行きますって、貧乏で苦学生な私を笑いに来たのかしら?」
「い、いや。そんなつもりではない。ほら。……俺は、本当に感謝しているのだ」
「あら。二枚もくれるのね。毎度……。。……注意しなさい。あの娘。評判良くないわよ。まぁ。私も良くないけど……」
「フフフ……。何だ?嫉妬か?今更……あがふ!?」
「貴方は嫉妬の意味を知っているかしら?じゃ、私行くわね。また何かあったら、よろしくどうぞ」
リャナはグレイの顎にフックをかまして仕事へ向かった。リャナへの相談は、この日が最後だった。
その数ヶ月後。リャナとダルドリーが付き合い始める、ダルドリーがダンジョンに潜り。大金貨を準備したのだ。
「はぁ。本当に無駄だったわ……。さよなら、グレイ。ダルドリー様に近づく為に付き合ったのに……。貴方。本当に役立たずね」
そう言う彼女にフラれたグレイは、幸せの絶頂から、地獄の底に落ちた気分になった。
「俺は家を出るぞグレイ。後は頼んだ」
そう言うダルドリー。
「あんな、親不孝者もう知らん!グレイ!領主はお前が継げ!」
「そうね……。グレイの方がしっかり者だものね」
そう言う両親。
「ねぇ。兄貴……。兄上を連れ戻して来てよ……。ねぇ!お願いだよ……」
そう言うヴァイド。
毎日。毎日。ダルドリーの話ばかり聞くグレイ。
そんな日々の中で。ある日に言われたリャナの言葉が脳裏に浮かんだ。
「貴方って……。誰の為に生きているの?夢は無いの?……夢を見ても仕方が無い?……はぁ。そんなんだから、オジサン何て言われるのよ……」
夢はある。立派な騎士になって、英雄になりたい……。そして、その英雄譚を自分で書いて、誰かの心を震わせたい!誰かに夢を与えたい!俺は!兄上の代わりでも、ましてやオジさん等では断じて無い!
ダルドリーの事しか話さない。両親やヴァイドにグレイの心が怒りで震える。そうなると、もう止まれ無かった。
グレイは黙って城を飛び出すと、兵舎へ飛び込み。それ以来城に寄りつかなくなった。
その後。両親が死んでから、兄弟の交流が復活するのだが、どんな理由にせよ。あの日城から逃げ出した事を、ずっと負い目に感じているグレイなのだった。
「その後は、何事も飛ばず鳴かずのその日暮らしだ。そんな俺を求めるコイツが恐ろしかった。怖かったのだ。……だから逃げたのだ……。情け無いだろ?」
そう言いながら、グレイスを撫でるグレイ。
「ふぅん。おっさんも色々と大変だったんだな」
「お前はまたそんな適当に……」
ヴァイドが元気を睨む。
「し、仕方ないだろ……。苦手なんだよ重い話し」
「ハハハ……。それもそうだな。俺も聞かされる立場になればそうだろうな」
元気の返答に愉快そうに笑うグレイ。するとグレイスがむくっと起き上がった。
「……私……。お城に住んでみたい……。おとぎ話みたい……。自由にお散歩しても良いのでしょう?」
「何を言っておる?いままで城に……。。……そうか……じゃぁ。そうするか」
グレイはグレイスがワクワクしているのに気付き、そう答える。するとグレイスがニコリとしてグレイにまた抱きついた。
「ヴァイド……。かまわんか?その、今更だが……」
「はぁ……。何年も説得してたのに、グレイスが言えば一発か……。勿論だよ。兄貴。おかえり」
「あぁ。ただいま……。今度は、何事からも、もう逃げん」
笑い合うグレイとヴァイドを見て、何だか良かったなぁ。と思う元気だった。
今度。リャナのお悩み相談室でも書こうかなw
さて、グレイと言うキャラが少しは立ったかな?と思います。どう歩き出す事やら。
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