表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/241

実直

リャナw

 次男として産まれたグレイは、次期領主。ダルドリーの補佐をする様に言われて育った。


「しっかりと励む様に」


「フフフ……。グレイはダルドリーと違ってしっかり者だもの、大丈夫よね?」


「はい。父上。母上。頑張ります」


 天真爛漫だったダルドリーに頭を抱えていた両親は、グレイに立派な補佐になる事を期待した。


 グレイは領主の座をダルドリーと争う気は無かった。


 エルフの勇者と、ご先祖様が黒竜を討伐する英雄譚を読み、ご先祖様の様に立派な騎士になるのが夢だったからだ。


 そして、ヴァイドが産まれるとヴァイドの面倒も一生懸命みた。


 真面目だったグレイは厳しく。遊び好きだったダルドリーは優しく。ヴァイドに接する。飴と鞭ならば当然、子供は飴を好む。


「兄貴は、俺の事が嫌いなんだろ!」


 そう言うヴァイドに、グレイはいつも頭を悩ませていた。


「まぁ。大人になれば、お前の有り難みが解るさ!今度はグレイも、一緒に遊びに行こう!」


 相談しても、そう言う事しか言わないダルドリーに、グレイは毎回。溜息が出た。


「苦労を掛けるな。グレイ」


「本当に。あの二人にはグレイの爪の垢を煎じて飲ませたいわ……。グレイ。ありがとうね」


「はい!これからも頑張ります!父上母上!」


 グレイは両親に褒められるのが嬉しくて、頑張った。


 そして頑張り過ぎた。


「貴方……。見た目も、雰囲気もオジさんクサいのよね……。私。ダルドリー様の様なお人が好みなの」


 思春期を過ぎた頃から、グレイはダルドリーの名前を良く聞く様になった。


 ダルドリー様が良い。グレイはつまらなさそう。


 子供の頃からの鍛錬で熊の様に身体が大きく、老け顔だったグレイは、女子受けが悪かった。


「グレイにはグレイの良さを解ってくれる人が現れるさ!ハッハッハ!」


 そう言って無邪気に笑うダルドリーに、悪気は無い。と解っていてもグレイは腹が立った。


 グレイが高等部に上がったそんなある日。グレイの前にリャナが現れた。


「貴方のお兄さんが、つきまとって来て困っているんだけど……」


 そう言うリャナがグレイの目には、新鮮に映った。


 ダルドリーは、勉強が嫌いなだけで、才色兼備。控えめに言っても天才。そんなダルドリーを悪く言う女子は魔法学校にはいなかったからだ。


 ダルドリーを嫌うリャナの事を、グレイが好きになるのに時間は掛からなかった。


 そして、グレイは決死の覚悟で告白をした。


「リャナ。初めて会った時から好きだった……。俺の一生をお前に捧げる。一生お前だけを守って生きたい……結婚を前提に付き合ってくれ……」


「え?お付き合い?結婚?嫌よ。そんな時間無いわ。私と付き合いたいなら、大金貨(約一千万)を用意しなさい。それに、私も貴方に会った時から、言いたい事があったの。……貴方、汗臭いわよ?」


 リャナにフラれたグレイはこの日、部屋で独り泣いた。


「貴方。老けすぎなのよ。……話聞いてあげるわ……」


 数日後。リャナの方から話し掛けられ。なる程。恥ずかしがっていただけだったんだな!とグレイは思った。


 そして、素直に悩みを打ち明けた。


「なる程。人生色々とあるのね。まぁ。その内きっと良い事があるわよ。じゃはい……」


「はいって、何だその手は?」


「小銀貨1枚。話しを聞いてあげたんだから当然でしょ?……毎度。ついでにアドバイスしてあげる。そのマント。ダサいわよ?そんなの格好いいと思うのは、中等部までよ」


 父親から貰った大事なマントで、お気に入りだったのだが、リャナにそう言われて次の日からつけなくなった。


 その後も。


「髭が汚い」 「髪を整えろ」 「コロンをつけろ」 「朝稽古は臭いから辞めろ」 「眉毛を整えろ」 等々アドバイスを受けた。


 そして、真面目だったグレイはすべて実行した。


 そして、そんなある日の事だった。


「好きです。付き合って下さい」


 とある貴族の令嬢から告白をされたのだった。


「リャナ!やったぞ!俺に彼女が出来たのだ!お前のお陰だ!感謝する!」


 この頃には、リャナは好きな女では無く。友人だと、グレイは感じていた。


「そう。それは、おめでとう良かったわね……。じゃはい」


「え?今日は何も……」


「何を言ってるの?私のお陰でしょう?お礼を言ったじゃない。お礼は良いからお金を頂戴な。それとも、自慢をしに来ただけかしら?私はこれから、仕事に行くのだけど……。俺はこれからイチャイチャラブラブ。遊びに行きますって、貧乏で苦学生な私を笑いに来たのかしら?」


「い、いや。そんなつもりではない。ほら。……俺は、本当に感謝しているのだ」


「あら。二枚もくれるのね。毎度……。。……注意しなさい。あの娘。評判良くないわよ。まぁ。私も良くないけど……」


「フフフ……。何だ?嫉妬か?今更……あがふ!?」


「貴方は嫉妬の意味を知っているかしら?じゃ、私行くわね。また何かあったら、よろしくどうぞ」


 リャナはグレイの顎にフックをかまして仕事へ向かった。リャナへの相談は、この日が最後だった。


 その数ヶ月後。リャナとダルドリーが付き合い始める、ダルドリーがダンジョンに潜り。大金貨を準備したのだ。


「はぁ。本当に無駄だったわ……。さよなら、グレイ。ダルドリー様に近づく為に付き合ったのに……。貴方。本当に役立たずね」


 そう言う彼女にフラれたグレイは、幸せの絶頂から、地獄の底に落ちた気分になった。


「俺は家を出るぞグレイ。後は頼んだ」


 そう言うダルドリー。


「あんな、親不孝者もう知らん!グレイ!領主はお前が継げ!」


「そうね……。グレイの方がしっかり者だものね」


 そう言う両親。


「ねぇ。兄貴……。兄上を連れ戻して来てよ……。ねぇ!お願いだよ……」


 そう言うヴァイド。


 毎日。毎日。ダルドリーの話ばかり聞くグレイ。


 そんな日々の中で。ある日に言われたリャナの言葉が脳裏に浮かんだ。


「貴方って……。誰の為に生きているの?夢は無いの?……夢を見ても仕方が無い?……はぁ。そんなんだから、オジサン何て言われるのよ……」


 夢はある。立派な騎士になって、英雄になりたい……。そして、その英雄譚を自分で書いて、誰かの心を震わせたい!誰かに夢を与えたい!俺は!兄上の代わりでも、ましてやオジさん等では断じて無い!


 ダルドリーの事しか話さない。両親やヴァイドにグレイの心が怒りで震える。そうなると、もう止まれ無かった。


 グレイは黙って城を飛び出すと、兵舎へ飛び込み。それ以来城に寄りつかなくなった。


 その後。両親が死んでから、兄弟の交流が復活するのだが、どんな理由にせよ。あの日城から逃げ出した事を、ずっと負い目に感じているグレイなのだった。


「その後は、何事も飛ばず鳴かずのその日暮らしだ。そんな俺を求めるコイツが恐ろしかった。怖かったのだ。……だから逃げたのだ……。情け無いだろ?」


 そう言いながら、グレイスを撫でるグレイ。


「ふぅん。おっさんも色々と大変だったんだな」


「お前はまたそんな適当に……」


 ヴァイドが元気を睨む。


「し、仕方ないだろ……。苦手なんだよ重い話し」


「ハハハ……。それもそうだな。俺も聞かされる立場になればそうだろうな」


 元気の返答に愉快そうに笑うグレイ。するとグレイスがむくっと起き上がった。


「……私……。お城に住んでみたい……。おとぎ話みたい……。自由にお散歩しても良いのでしょう?」


「何を言っておる?いままで城に……。。……そうか……じゃぁ。そうするか」


 グレイはグレイスがワクワクしているのに気付き、そう答える。するとグレイスがニコリとしてグレイにまた抱きついた。


「ヴァイド……。かまわんか?その、今更だが……」


「はぁ……。何年も説得してたのに、グレイスが言えば一発か……。勿論だよ。兄貴。おかえり」


「あぁ。ただいま……。今度は、何事からも、もう逃げん」


 笑い合うグレイとヴァイドを見て、何だか良かったなぁ。と思う元気だった。

今度。リャナのお悩み相談室でも書こうかなw


さて、グレイと言うキャラが少しは立ったかな?と思います。どう歩き出す事やら。


ブクマ:評価:コメント等々よろしくお願いします(*^_^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ