報告
他人の大事よりも、身内の大事の方が大事。
「うむ……。報告は受けていたが……中央の王が死んだのは本当だったか……。しかし……」
驚くほどの美しさだ……。とヴァイドはグレイの隣に座るグレイスに目を奪われる。元気達はグレイスの入浴が終わると、城へ報告に来ていた。
「ヴァイド……見過ぎだ。グレイスが怯えている……。グレイス……大丈夫だ。俺の弟だから怖がらなくていい」
城の執務室のソファーに座るグレイスがグレイにコクリと頷く。
「準備出来たよ。召し上がれ!」
元気がお茶を準備すると、ヴァイドとグレイが俺を言い。グレイスがペコリとお辞儀をする。そして元気がヴァイドの隣に座った。
「俺もビックリしたよ。泥だらけで気付かなかったけど、ミリャナの次位に美人なんじゃないかな?」
元気の発言に、グレイがピクリと反応する。
「……。いや……。ミリャナも美人だが、グレイスの方が美人だと思うぞ?ミリャナは美人というか可愛い系だろう?」
「あ~。確かに……でも、ミリャナが一番だよ。あと数年もすれば、世界で1番になる。まぁ。今でも一番だけどね」
「そうかぁ?ミリャナには、ちぃっと色気が足らんのでは無いか?」
フンと鼻で笑うグレイに、元気がムキになる。
「はぁ?おっさん、ミリャナの何処を見てるんだよ?ミリャナはちゃんとエロいし!出るところ出てるし、ダンジョンに行き始めてからキュッとして、ぷりっぷりなんだからな!」
「それを言うならグレイスだって……」
グレイがそこまで言うと繋いだ手をグイッと引っ張るグレイス。顔が真っ赤で少し怒っている様子だ。
ヴァイドが元気の頭を軽くはたいた後、グレイとグレイスの繋いだ手を指さした。
「今はミリャナ自慢の時間では無い……。兄上は何故。ずっとグレイス……だったか。グレイスと手を繋いでいるんだ?」
「うむ……。こうしてないと、不安になるらしい……まぁ。今から色々と話す。……こら。グレイス。……食べかすをポロポロ落とすんじゃ無い。……ほら。口にも食べかすをこんなにつけて……」
グレイが、グレイスのピンクのドレスに落ちたクッキーのカスを払ったり。口についたカスを布巾で拭う。するとグレイスが嬉しそうに微笑んだ。
「ハハハ。おっさんってぶっきら棒で気が利かなそうだったけど、この様子なら大丈夫そうだね」
その光景に唖然とするヴァイドに、元気がお茶をすすりながらそう言う。
「……兄上は面倒見はいいぞ。お前には、気を遣う意味が無いだけだ。……しかし。あれは異常だろう?」
「そう?結婚するんだし普通じゃ無い?」
「結婚!?」
ヴァイドが驚きガタン!!!と立ち上がる。
「ぎゃちぇ!?」
ソファーが揺れた振動で、お茶を落とした元気。
金玉袋まで染みたお茶の熱さで床を転げ回る。それを見たグレイスがビクッと怯え、グレイに抱きついた。
「ヴァイド!急に立ち上がるな!馬鹿者!グレイスが怯えてしまっただろうが!……グレイス大丈夫だ怖がらなくて良いからな……。元気も茶が掛かった位で大袈裟だ馬鹿者……」
「仕方ないだろ!入れたばかりで熱かったんだから!」
元気がそう言いながら、涙目でパンツに手を入れ袋を冷やす。
「す、すまない元気。あまりにも驚いてしまって……」
ヴァイドが申し訳無さそうにソファーに座り直す。
「ったく……ヒール……」
元気は燃え盛る様な袋の痛みを癒すと、席に戻る。それを見ていたグレイが元気に向かって口を開いた。
「元気よ……。お前のヒールは、古い傷等も癒せるのか?」
「うん。何でも治るよ?」
「……。そうか。報酬の変更だ。酒の代わりに後で頼みたい事がある」
「いいけど。おっさんも金玉火傷してんの?」
「馬鹿者。俺じゃ無い……」
そう言って、グレイがグレイスを見やる。グレイスはグレイの腕にしがみついたまま俯いている。
「あ……。そうか……いいよ。大丈夫」
「うむ。ありがとう」
元気がニコリとグレイに返事をすると、グレイもニコリと笑顔を返した。
「あ、兄貴……。結婚って何だよ?どう言う事になってるんだ?」
動揺し過ぎて、ヴァイドの言葉遣いが崩れる。
「そのままの意味だ。俺はグレイスと結婚する。駄目だと言うのであれば、この国を出る事も考えている……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ……。意味が解らん……暴走し過ぎだ兄貴。取り敢えずどうしてそうなったか、詳細を教えてくれ……」
「うむ。……ほら。グレイス。もう大丈夫だから……。おい……まったく。……眠っておる……」
そう言いながら、グレイスとの頭を優しく撫でるグレイを見て、本当に何があったんだ?と思うヴァイドだった。
その後。一通りの説明を受けたヴァイドは、グレイにすんなりと返事をした。
「なるほど……。良いよ結婚。おめでとう兄貴」
「……すんなりと許可するのだな?」
「だって、王が死んだ以上。その娘の事を追って来る者はいないんだろ?その友達とやらも……もう会わない。って言ってるんだ。兄貴が良いならいいよ。……その代わり……」
「……何だ?」
「城に戻って来て。それが条件だ」
「…………その事は前にも言っただろう……」
「自由に暮らしたいのは解るけど、あんな狭い部屋じゃグレイスが可哀想だろ?」
「そ、それはそうだが……」
グレイが困った様にグレイスを見やる。ヴァイドはその反応にイケる!と好機を見いだす。そして一気にこのまま畳み掛けようとした時だった。
「おっさん。何で、そんな嫌がるのさ?」
邪魔者が出現した。
「そうか、元気は知らぬな……。俺は。逃げ出したんだ。この城から……」
元気の問いに、グレイスを撫でながら、ポツリと答えるグレイ。雰囲気が落ち込んだグレイを見て、ヴァイドが元気の頭をはたく。
「余計な事を聞くな。馬鹿者。……それに、逃げたって言っても、兄貴は悪く無いじゃ無いか……」
「な、何かゴメン……」
「フフフ……。元気。謝らんでいい。俺は、グレイスからも逃げようとした……この逃げ癖は、今に始まった事じゃ無いんだ」
執務室に沈黙が流れる。しかし沈黙に耐えられない元気。
「ま、まぁ。生きてれば、人生色々とあるさ!ね!叔父上」
「はぁ。人生って……子供が軽々しく何を言っている……。発言の装飾は良いが、中身が恐ろしく軽薄だ……」
それらしい事を言ってみたが、元気も自分で言っていて白々しい。と感じる。
「フフフ……。色々とあるか……。元気。質問したんだから、聞け……。話してやる」
「う、うん……」
そう真面目に言うグレイを見て。聞いといてゴメンだけど……。おっさんの過去にはそれ程興味は無いんだよなぁ。ミリャナの過去の話しにしない?と思う元気だった。
グレイの過去に何が!
まぁ。興味ないでしょうが、お付き合い下さいw
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