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裏と表と求める救いの形~リャナ~

ミリャナのお母さん。リャナのお話し。

「この町並み……久々ね……」


 ミリャナとお揃いのワンピースを着て、2年前まで、毎日通っていたアルカンハイトの中央通りを歩くリャナ。


「あれって……」 「おい……。リャナ様じゃ無いか?」「いやしかし……リャナ様は……」


 いつもは賑わう中央通りだが今日は静かだ。


「……これは、何かしら?」


 強面の露天商に話しかけるリャナ。


「あ、えっと、これは、フランクフルトと言います……」


「そう、それじゃ、あるだけ戴けるかしら?」


「へ、へい!只今!」


 急いで用意する強面の露天商。


「……。大きくなったわね。ロイ。毎日、幸せかしら?」


 リャナの声かけに固まる露天商のロイ。ロイはリャナの元で育った孤児だ。


「……は、はい……。リャナ様……。俺……僕。ずっと、待ってた……」


「フフフ……。男の子が泣くんじゃ無いわ」


「うん!良かった……。生きてたんだ!良かった……」


 泣きながらフランクフルトを袋に詰めて、ロイはリャナに渡す。


「はい、これ」


 リャナがお代を渡すと、急いでロイが断る。


「い、いらないよ!リャナ様からお代なんて……」


「ロイ?お金はどんなお金でも受け取りなさい。前に教えたでしょ?」


 ニコリと微笑むリャナに、ロイの顔もくしゃりと笑顔になる。


「……うん。本当にリャナ様だ!お帰りなさい!」


「フフフ……。えぇ。ただいま」


 その言葉を聞いた露天商達が、一気に色めき立った。


「わぁ!やっぱり!リャナ様だ!」「リャナ様が帰って来たぞ!」「わぁ!リャナ様!」 「うちの店のも持って行ってくれ!」「こっちのも!」


 露天商には、孤児達が多い。それに、リャナファンも多数いる。


「もう、貴方達、仕事をしなさい!フフフ……。みんな、元気そうね。ただいま」


「「「お帰りなさい!リャナ様!……へへへ」」」


 アルカンハイトの地母神。それがリャナの町での通り名だ。


 助産に育児相談。人生相談。露天のいざこざ。アルカンハイトでリャナに相談した事が無い人間は、いないと言っていい程の人気者だった。


 中央通りを抜け、噴水広場を路地に入ると孤児院だ。バーニャの店へ寄ったが不在だった。


「あら、ハイド……。こんにちは」


 リャナに声をかけられ、門番のハイドが驚いた。


「リャ、リャナ様!何故私の名前を!?」


 驚くのもそのはず。ハイドはリャナに挨拶をした記憶が無い。


「何故って。新兵の頃にダルドリーに挨拶をしに来たでしょ?あの頃は、少年だったのに立派になったわね」


 30秒にも満たない時間だったハズだ!とハイドは思い出す。一度きりその時に顔を合わせたと。そして、心が震えた。


「一兵卒の私等の顔を覚えていて下さり。光栄に御座います……」


 そう言って仰々しく、敬礼をするハイド。


「フフフ……。私などのって、貴方も私を覚えているのでしょう?驚く事じゃ無いわ。ここ、通っても良いのかしら?」


「も、勿論です!お帰りなさいませ!リャナ様」


「もう。大袈裟ね。ただいまハイド」


 リャナの後ろ姿を見送りながら、ハイドは思った。今度はちゃんと、こんにちは。と言おうと。


 こうしてまた一人、リャナのファンが増えたのだった。


「あ、お母さん!どうしたの?」


「ミリャナ。ご苦労さま。これ、差し入れよ。城に居たら、ヴェルニカがつきまとって来て、うるさいのよ。だから遊びに来たの」


「フフフ……。そんな事を言ったら可哀想だわ」


「あの子トイレの前まで付いて来るから、気が休まらないのよ……。マザーは、いるかしら?」


「うん。お部屋にいると思うわ」


「そう。ちょっと行って来るわね」


「うん。フフフ……。マザーきっと、驚くでしょうね」


「えぇ。……そうでしょうね」


 リャナはミリャナに、お土産を渡すと礼拝堂を通って、マザーの部屋に向かった。


 ドアをノックすると、リャナはマザーの部屋に入る。


「こ、これ!返事をしてから部屋に……」


 酒を隠そうとするマザーが、リャナを見て固まり。そんなマザーをリャナが睨みつけた。


「また……。お酒を飲んでるのね……本当に救えない人……」


「な、何故じゃ……。リャナ……」


「……生き返ったから、挨拶に来たのよ……。来ない方が良かったかしら?」


 高圧的な態度を取るリャナ。


「…………。ふん!勝手に出て行った奴が良く言うわ!帰ったのならさっさと働け!人出がたらんのじゃ!」


「そう。……マザー。貴方そのお酒どうしたの?まさか、孤児院のお金で買ったんじゃ無いわよね?」


「ち、ちがわい!元気に貰ったんじゃ!」


「……。そう……ならいいわ……。良いけど、飲むのは夜だけにしなさい、他のシスターに失礼よ」


「わ、わかっとるわ!早ういけ!」


 怒鳴るマザーにリャナは溜息が出る。そして思う。少し……痩せたわねと。


「……ただいま……」


「あぁ。……おかえり」


 そう言葉を交わして部屋を後にするリャナ。


「……。あぁ……神よ……。ありがとう御座います……。あぁ……。あの娘を……私の宝物を……ありがとう御座います……ありがとう御座います……ありがとう御座います……」


 震える声でマザーがそう繰り返すのを、扉の前で静かに聞くリャナ。


 マザーが母親だと知ったのは、ダルドリーと結婚する少し前だった。


 父親である、商業ギルド長ハブリムから手紙が届いたのだ。


 リャナはハブリムと会って、怨み辛みを全て伝え罵り。あわよくば殺してやろう。と思っていた。それ程までに、自分を捨てた父親と母親を憎んでいた。


 しかし……。殺したい程に憎んだ男。それは、金だけを持った。病気の妻を持つ哀れな小太りの男だった。


 一夜の過ちで生まれた子供。それがリャナだった。


 申し訳無い申し訳無い。と繰り返す男をリャナは心から消すと、孤児院への継続的な支援と二度と顔を見せないのを条件にハブリムを許した。記憶から殺した。


 そして、マザーが何故。自分にだけ辛く当たるのかが、この時初めて理解できたのだった。


 リャナは幼い頃から、いつもお金の為にヘラヘラニコニコしているマザーが嫌いだった。


「お前達の為にしているんだ!馬鹿!」


「もっと!テキパキと働け!嫌なら出て行け!」


「ノロマ!トンマ!馬鹿者!そんなんじゃ、嫁の貰い手が無いぞ!」


 とリャナにだけ怒る。マザーに更に腹が立って嫌いだった。


「ごめんね~リャナ……こんな私を許してね~」


「幸せになってね~リャナ」


「私をいつか殺しておくれリャナ~」


 お酒を飲む度に、訳の解らない事を言い出すマザーが大嫌いだった。


 私は、こんな風にはならない!と学業に勤しんだ結果。魔法学校に入れたリャナは、ダルドリーと出会う。入学費や月賦は当時。リャナが自分で働きながら払い、自分でちゃんとやれてると思っていた。


 しかし、今なら解る。魔法学校に通う学費はそんな物では到底足りない。確実にハブリムからの支援があったのだろうと。


 心の中に、怒りもあるが……ミリャナやミール……。そして、ダルドリーと出会えた事は、どんな理由であれ……。あの人間達のお陰だ……しかし……。許せるか?と言われれば許せないし、許したく無い。だからと言って謝って欲しい訳でも無い……当然……。忘れる事も出来なかった。


「そんなに泣くんだったら……。お母さんとして、一緒に居てくれれば良かったじゃ無い……。私の親である事を捨てた貴方も、ミリャナを置いて死んだ私も……。本当に……救えない……」


 はぁ……っと溜息を吐くと、リャナは歩き出す。ミリャナの笑顔。ミールの笑顔。ダルドリーの笑顔を見ようと。救いを求めて歩き出す。


「そうだわ……。元気をからかいに行こうかしら……。良い子を見つけたわねミリャナは、フフフ……。ポケーッとしてて、何にでもムキになって……。まるで昔の私を見てるみたいで可愛いのよね……フフフ。そうしましょ」


 この後。突然、家にやって来たリャナのおもちゃにされた元気なのだった。

急遽思い出したお話し。


ハブリムや、マザーを出した時に思い付いてて忘れてたw


マザーが元気に甘える理由は、孫の旦那でお孫さんだからですw


ブクマ:評価:コメント等々よろしくお願いします。

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