歩み~ミール・アルト~
陰が薄くなって来たミールのお話し。
涼しい風が吹き始めた頃。ミールとアルトはポタンの紹介により。荷物運びの仕事を始めていた。
「すっかり涼しくなって来たな~ミール」
台車の後ろから、アルトがミールに声をかける。それに答えるミール。
「そうだな」
「そうだ、ミール。手袋作ってやろうか?」
「そうだな」
「マフラーもいるか?」
「そうだな」
「おうい。馬鹿ミール」
「そうだ……馬鹿ってなんだよ、馬鹿アルト」
「そうだな。しか言わないからだろ!馬鹿ミール!」
ミールとアルトは、アルカンハイトからユートピアまでの食材運びを毎日行っている。
「その話、昨日も言ってたろ?」
「あれ?そうだっけ?へへへ。いいじゃねえか、何度も聞けって~」
「はいはい。それで?」
「だから~、手袋だよ!手袋!」
「……お前さ……。手袋作れるの?」
「え?作れないけど?」
「じゃ、どうやって作るんだよ?」
「練習する?」
「練習する?って……。俺に聞くなよ」
「いいじゃんか~」
「はいはい。それで?どうやって練習するんだ?」
「どうしよっか?」
「…………。知らん」
「え~。酷いぞミール!一緒に考えろよ!」
「はぁ。お前に教えてくれるか、姉さんに聞いてみるよ」
「わぁい!本当かミール!やっぱりミールは、頼りになる!」
アルトが歓び、両手を挙げる。
「そうかい、そうかい……おい!ちゃんと押せよ、重いだろ?」
「エヘヘ。ごめんごめん……。怒った?」
「はぁ。怒ってない……」
「そうか……。フフフ」
こんな調子でアルカンハイトからユートピアまでの道を進み、トンネルを抜けるとユートピア農場区域へと出る。
「いつ見ても凄いよね~」
「そうだな」
「右も左も動物がいっぱいだ!野菜も果物も美味しそう!ミール~お腹減った~」
「ユートピアまで後少しだ。ついたら何か食べよう」
「やった!私!サンドイッチが食べたい!」
アルトが歓び、また両手を挙げる。
「解ったから。手を離すなって……。その嬉しい時に両手挙げるの治せよ……」
「え~。無理だって、ミールも他の女の子見るの辞めないだろ?」
「……そうだな」
「そうだなじゃ、ねえ!馬鹿ミール!」
「そうだな」
二人は町へ着くと、第一区画の商店街へと向かう。
「いつ来ても、道にゴミが落ちてないのが驚きだよな~。変な臭いもしないし」
「そうだな」
「水も透明できらきらしてる……」
「ああ」
「獣人って綺麗好きなのかな?」
「かもな」
「お前……。言葉を変えて返事をすれば良いと思ってるのか」
「……。そうだな」
「はぁ。もういいや……。お、良い匂いがする。やっぱり、お肉が食べたいぞミール!」
「解ったよ」
「やった!ありがとうミール!」
「もう!手を離すなって!まったく……」
「へへへ……。すまんすまん」
食材屋で荷物を降ろすと、中央噴水周りのベンチで休憩だ。
「あの、公園のブランコっての面白そうだな」
アルトがお肉の串焼きを食べながら、公園で遊ぶ獣子達を眺める。
「遊んで来てもいいぞ?」
ミールも串焼きを頬張り、眺める。
「やだよ!もう、私は子供じゃ無いんだから!」
「何言ってんだよ。まだ子供だろ、僕達……」
「知ってるよそんな事!……だけどさぁ……。早く大人になりたいなぁ……」
アルトがションボリしながら、お肉を頬張る。
「……俺は、なりたく無いな……」
「何で!?何でだミール!」
アルトがミールをぐわんぐわんと揺さぶる。
「あぁ~。もう。静かに食べろよアルト!行儀が悪いぞ!」
「ちぇ。またお小言かよ……」
「はぁ。……。アルトは何で早く大人になりたいんだ?」
「え?そりゃ。お嫁さんになる為に決まってるだろ?」
アルトがミールをキョトンとしながら見る。
「……。誰の?」
ミールもアルトを見る。
「誰の?って。ハハッ!ミールは本当に馬鹿だな~。そんなの、ミールに決まってるだろ?解らなかったのか?」
アルトがいつもの様に、ニッコリと笑いながらそう答えた。
「……。ほら。これも食べていいぞ。アルト……」
ミールは視線を公園に戻すと、残っていた串焼きをアルトに渡す。
「お!本当か!やっぱり、ミールはいいやつだよな~へへへ。もう、何処にも行くなよな!ミール!」
「そうだな……」
ニコニコしながら、串焼きを頬張るアルト。
それを横目で見ながら。家を買うには、後どれ位お金が必要なのだろうか?と考える。ミールだった。
本当は祭りの時も書こうと思ってて忘れていました。
祭りの様子もその内ssで王国編の何処かに挟もうと思いますw
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