日本異世界生活。開始~ラスト~
マロニーちゃんを捨てた。柴田が登場です。
ラストが飛んだのは、孤児施設〈ひまわり〉の一室……時刻は0:35分。元気が召喚された35分後の元気の部屋へと転移した。
「へぇ……。元気はこんな部屋にすんでたのか……。フフフ……しばらくは、元気の姿を借りて、情報収集だ……。うわ!何だコレ!?箱の中に人がいる!」
見る物全てが新鮮で心が踊るラスト。
「うわ……。本がいっぱいだ……。ベッドもふかふか……そうだ!夜の間に世界を見ておこう!」
ラストは窓を開けると、施設の外へと飛び出した。
「うわぁ!綺麗だな~!凄い凄い!人がいっぱいだ!建物もいっぱい!」
ラストは、朝まで世界中を飛び回った。
「こっちの世界も結構広いんだな~。しばらくは楽しめそう……。そろそろ戻らないと……夜が空けて来た」
世界を見て回ったラストは、ひまわりへ向けて急いで帰る。地球へ来たラストだったが、魔力は異世界同様。使用出来る様だった。
ひまわりへ戻ったラストは、部屋の物色を行う。
「しばらくは普通の人間として暮らす為に、色々と覚えなきゃな……。とりあえず……言語や文字をっと……」
ラストは3時間かけて、ラノベや教科書。インターネットで、言語や数式を習得した。
「ふぅ……。覚えるのは簡単なんだけど、後は使い方だな……どうしよう。普通に部屋から出てもいいのかな?」
ラストが部屋の外を覗くと、廊下が左右にあり、等間隔に部屋がある。
貴族の屋敷かな?とラストが思っていると、右手の奥の大きな部屋から、良い匂いが漂って来た。
ラストはふらふらと匂いにつられて食堂へと歩き出した。
「げ、元気君!?どうしたの!?キャッ……」
眼鏡を掛けた女性が、元気を見て驚き皿を落として割ってしまった。
「あらら、勿体ない……」
ラストは皿を再生すると、テーブルの上に載せる。それを見てお姉さんは、「ひっ」と声を上げた。
「えっと、この良い匂いは何だい?胸の大きなお姉さん」
「む、胸?そ、そんな事より……今のは?何?元気君……」
「何って……。魔法だよ?」
「ま、魔法?」
「あれ?知らない?ちょっとお姉さん、ごめんね……アカシックレコード……」
ラストは、お姉さんの記憶を読み取った。
「げ、元気君……。新しい遊び?私……ビックリしたわ……」
お姉さんはそう言って、ニコリとしようとするが、しかし笑顔が引き攣ってしまう。元気の姿をしたラストに確かな違和感を感じる。
「えっと……。怖がら無くていいよ。柴田さん。僕は、いきなり失敗しちゃったみたいだね……この世界に魔法が無いとは思わなかったよ」
「な、何を……。言っているの?」
柴田がラストから後ずさる。
「柴田さんなら、大丈夫だね……元気の事。好きみたいだし」
「元気君の事って……。あなた……。元気君じゃない……。何を言っているの?」
「僕はね、ラスト。君達の言う異世界から来たんだ……」
ニコリと笑うラスト。反応に困る柴田。目の前に居るのは元気なのだが、明らかに雰囲気が違うのだ。
「へ、変な事を言わないで……。引き篭もり過ぎて……変になっちゃったの?」
「変?ハハハ……。元気はやっぱり面白いよね。ブルマを盗むなんて……でも、こちらでは面白い事では、無かったんだね」
「当たり前でしょう?窃盗は立派な犯罪よ……。それを面白いだなんて……」
「そんなの、人間が勝手に作ったルールでしょ?」
「それは……」
「フフフ……ごめんね。意地悪する気は無いんだ……。そうだ!僕の事、信じられないでしょ?」
ラストはそう言うと、パチンと指を鳴らした。
「柴田さん。昔、お父さんに焼かれた右腕の火傷……見てごらん」
柴田が絶句する。
「誰にも……言ってない……何であなたがその事を……」
「良いから、見てごらんよ」
柴田が恐る恐る、右腕の火傷を確認する。すると綺麗に火傷の痕が消えていた。
「な、何で……。こんな事……」
柴田の体が恐怖で震え出す。
「魔法だよ。知ってるでしょ?アニメやゲームでのアレと似た様な物だよ」
ニコリと笑うラストに柴田は悲鳴を上げそうになるが、必死に堪える。
そして、聞かなければいけない事を質問した。
「あ、あなたが元気君じゃ無いとして……元気君は、何処に行ったの……?」
柴田の脳裏に最悪の事態が想像される。
「元気は今。異世界で面白楽しく暮らしてるよ。友達も、彼女も出来て、結婚するって言ってた」
理解出来ない事を言うラストに、柴田が激昂する。
「異世界だなんて!嘘言わないで!」
「ハハハ……嘘じゃ無いよ。ほら」
ラストが空中に異世界の景色を映し出す。すると元気とミリャナの姿が映る。元気とミリャナが楽しそうにご飯を食べている姿に、柴田は驚いた。
「…………。これ……本当に、本当なの?元気君は今。幸せになっているの?」
柴田が映像越しに元気に触れるが、指が突き抜ける。それを見てラストがある事を閃いた。
「柴田さん。元気に会わせてあげる。だから一つお願いを聞いて欲しいんだ。もちろんお礼はするよ」
「……元気君に…………何かしら?」
「僕の事を他の皆には内緒にしてよ。それだけで良いんだ。僕は、この世界に遊びに来ただけで、何か怖い事をしようって訳じゃ無いんだ」
「…………元気君に直接……聞くわ……。連れて行って……」
柴田がラストに手を伸ばす。それをラストが握ると、二人で異世界へと飛んだ。
一瞬にして景色が、ミリャナの家のリビングへと変わる。そして急に現れたラストに全員が驚いた。
「げ、元ちゃん!?」
「な、何で俺が出て来たんだ!?ろ、露死南無天か!?」
「だ、旦那様!?あ、あれは私専用にするわ!良いわよね!」
「何を言っているのよアイリス!パパなんか二人も要らないわ!変な事を言うのは、辞めて頂戴!」
ごちゃっとする一堂に、満足したラストがネタばらしをする。
「ハハハ……。僕だよ。みんな!ラストだよ。ジャーン!そっくりでしょ?」
元気達に両手を広げて見せるラスト。
「ラスト!お前!驚くじゃ無いか!せめて……家の外に……」
元気が、ラストと一緒に居る柴田の姿を見て固まる。そして、それを見たミリャナが異常を察知した。
「ラスト。いらっしゃい……。元ちゃん?そちらの方はどちら様かしら?」
ミリャナが元気を見てニコリと笑う。
「旦那さま!また!女の子ですか!?私がいると言うのに!」
アイリスが元気に抱きつき、ポタンがラストに説明を求めた。
「ちょっと、アイリス黙って……。ごきげんよう。ラスト様……。そちらの方は?」
「やぁ。食事中すまないね……。この人が元気に会いたいって言うからさ……連れて来ちゃった」
ラストが笑顔で柴田を見やるが、柴田はポカンとしている。そして、元気が紹介を始めた。
「こちらは、元の世界でお世話になってた柴田さん……。孤児施設の職員さんだ……。お久しぶりです……柴田さん」
「あ、え、ええ。久しぶりね。元気君……。ん?久しぶりって……。本当に元気君なの?」
時間の流れの違いに、我に返った柴田が再度混乱した。
「はい、俺です……。その、こちらと、あちらは時間の流れが違うらしくて、ここに来てもうすぐ……。一年が過ぎます……」
柴田は目を閉じて深呼吸をすると、思考を整えてから元気に話しかけた。
「……そう。……ちゃんと、ご飯は食べてる?」
「……はい」
「お勉強はしてる?」
「……ちょっとだけ」
「まったく……。今……幸せ?」
「はい……。とっても……。幸せです」
「そう……。良かった……」
そう言うと柴田が周りを見渡す。そして、ミリャナを見据えた。
「あの……。わたくし柴田と言います。元気君の……彼女さんでよろしかったでしょうか?」
「か、彼女!……は、はい……そうです」
ミリャナが柴田の視線を受けて、ビシッと背筋を伸ばす。そして、柴田が元気の頭を撫でながらミリャナへと喋り出した。
「この子は……。面白いと思う事を始めると、周りに迷惑を掛けます」
「はい」
「すぐ、いじけて、すぐ泣きます」
「はい」
「お勉強が嫌いで、お馬鹿です」
「はい」
「そのクセに小生意気で、ずる賢いです」
「はい」
「でも、面倒見が良くて……。凄く……優しい子なんです……」
「……はい」
「どうかこれからも。この子をよろしくお願いします……」
柴田がミリャナに深々と頭を下げる。それに、ミリャナが笑顔で答えた。
「もちろんです!だって、家族ですから」
二人の言い合いに元気が照れる。
「ちょっと、ミリャナも柴田さんも、そう言うの辞めてよ……」
元気が柴田の手を払うと、パシンと柴田が元気の頭をはたいた。
「……良い娘じゃない……。良かったわね」
「……うん」
見透かした様な態度や、いつまでも子供扱いする所……そのクセに優しい所……元気は、柴田のこういう所が嫌いだった。そして、大好きだった。
「はぁ……。部屋から出たと思ったら……。異世界にいるだなんて……本当にあなたは……。難解過ぎるわ……」
元気を見て柴田はフッと鼻で笑う。そしてラストへ向き直った。
「えっと……。ラスト君だったかしら?もう良いわ。戻りましょう。子供達のご飯を作らなくちゃ……」
「そうかい?じゃ、元気達またね!」
ラストが柴田の手を握ると、指を鳴らそうとする。
「待って!」
それを元気が止めた。
「どうしたの元気?」
「柴田さんに……ちょっと」
「何かしら?」
元気が少しモジモジした後。
「今まで。お世話になりました!ありがとうございました!」
そう言って、元気が柴田に頭を深々と下げた。
「どういたしまして……。フフ……。元気でね。元気君……」
柴田はそう言うと、ラストを見てうなずく。それを合図に、ラストと柴田はひまわりへと戻ったのだった。
「ありがとう……ラスト君」
「いえいえ。これで、信じて貰えたかな?」
「ええ……。それで……。あなたはこれから、どうするの?」
「学校に行こうと思うよ!勉強も一通り終わったし、スクールライフってのをやってみたいんだ」
ラストがニコニコするが、柴田は微妙な顔だ。
「言っちゃなんだけど、元気君の姿のままじゃ、学校はキツいんじゃ無い?あの子……やらかしちゃってるし……。その……イジメも……」
「大丈夫だよ。だって、死ぬ事は無いんでしょ?」
「それは、そうだけど……」
「ハハハ……。僕はね。そう言うのも含めて楽しみたいんだ!」
「そう……。やっぱり。あなたは、元気くんの友達なのね。おかしいわ……。フフフ……」
「そうかい?ハハハ……。さぁ、僕も手伝うから、ご飯を作ろうよ!」
ラストがグッと力こぶを作って見せる。
「それは、私の仕事……」
「……いいんだ。こう言う事も楽しみたいんだから!」
「そう……。じゃ、お願いね」
こうして。ラストの『日本異世界生活』が始まる事となったのだった。
元気に成り代わり、異世界生活をエンジョイする気のラスト。サブで時々追って行こうと思います。異世界の創造主ラストのワクテカハチャメチャスクールライフwこうご期待w
ブルマ:評価:コメント等々よろしくお願いします。