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まったく面倒くさい。王子に言い寄られて困っているのは私だというのに。

王家に目をつけられてしまえば、私の復讐がばれてしまうではないか。せっかく全方位だましているというのに。



「いくしかないかしらね」



いきなり学園の噴水へ飛び込みながら独り言ちる。周りからはいつもの奇行だと思われているはず。しかし、第一王子の婚約者アイシャのように私の擬態を見抜いているものはある程度いるに違いない。王妃はどちらであろう。


帰宅次第、王城へ向かう準備を伝えなければならない。きっと父は王城へ行くためのドレスすら私へのお金は無駄だとして出してはくれないであろうけれども、王城へ行くのだ。見てくれだけはどうにか整えなければなるまい。気狂いの振りもどこまでするか。



いっそ裸足で王城を走ろうか。



執事長もマーサも婚期が遠のくと悲しい顔をさせることにはなるだろう。あんまりにも評判が悪いとなると、公爵家としてはかなり立場が悪くなると父は気づいているだろうか。まあ、周りに同調して笑うだろう。あの暗愚はどうしようもない。



「敵地に向かうのよ。しっかり騙さなければ。狐も狸も暗愚もいるところなのだから」



安住の地とは真反対の場所へ、いざ。



自宅からは王城から馬車の案内があった。アイシャ様の言う通り王妃様は()()()()()()()らしい。哀れなものとしてみられているのか、はたまた王子をたぶらかそうとしている人間とみられているのか。見極めねばと馬車の中で手を固く握る。跳ね上がる心音を押さえつけるように息を深く吐いた。




馬の蹄が止まる。王城へ着いたらしい。扉が開けられ、近衛騎士らしい人間が手を取ろうとしてきた。わざと避けて飛び降りる。その無作法さに王城の侍女は眉を少し潜ませる。だがさすが王城というべきであろう。一瞬でしかなかった。


そのまま案内されるが、まっすぐ王妃の庭へ案内されていた。馬車も表からではなかったようだ。


これならば暗愚()にも会わなくて済むかもしれない。もちろん第一王子にも。



(まあ、これならば安心ね。よっぽどのことがない限りはあほな女の振りを押し通してしまえばいい。ついでに第一王子が迷惑であると伝えられたらもっといい)



「お待たせいたしました。こちらへどうぞ」


「いらっしゃいませ、シャーロット様」



いるはずのない声に思わず目を丸める。



「アイシャ様」


「私も本日はお邪魔させてもらってますわ。非公式の場でございます。多少の粗相は見逃してもらうように私からも頼みますので、アイシャ様はいつも通りでお願いしますね」



するりと近づいたと思えば扇子で口元を覆って囁いてきた。



「愚かなふりをしないといけないのでしょう? ここは王城。だれが見ているかわからない。人払いされた個室ですら危ういのです」



生唾を飲み込む。アイシャ様に手を取られるまま、お茶会もどきの席へ座らされた。



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